会社と社長どちらにお金を残すべき?税理士が解説する役員報酬の最適設定
法人と個人、どちらにお金を残すかで手取りが大きく変わります。役員報酬の設定次第で税負担が大きく異なるため、正しい判断基準を押さえておくことが重要です。
「法人vs個人」はつまり役員報酬をどう設定するかの問題
「節税して会社にお金を残すのと、最高税率でも社長個人に渡してしまうのとでは、どちらがお得なのか?」というご相談は非常に多いテーマです。マイクロ法人を運営している方を中心に、会社にお金がたまったまま「どうやって抜けばいいのか」という悩みを抱えている方が多く、中には5,000万円・1億円規模で会社に資金が滞留しているケースもあります。
このテーマを別の言葉で言い換えると、「役員報酬をどのように設定すべきか」という問題です。役員報酬の設定には、税金面での有利・不利に加えて、会社の経営方針やプライベートの事情、ライフステージなど、さまざまな要素が絡んできます。それらを考慮したうえで、会社と個人それぞれに多くお金を残した場合のメリット・デメリットを比較していきます。
📌 ポイント
「法人にお金を残すべきか、個人に渡すべきか」という問いは、突き詰めると役員報酬の最適な設定額をどう決めるかという問いと同じです。税率・経営方針・生活費の3つの軸から考えることが重要です。
📝 このセクションのまとめ
- 法人vs個人の問いは「役員報酬の設定額」の問いと同義
- 税率・経営方針・プライベートの事情の3軸で判断する
- 会社に数千万〜1億円が滞留するケースも珍しくない
会社にお金を残すメリット① 法人税率の優位性
役員報酬を抑えて会社に多くお金を残す場合、まず注目すべきは税率の有利さです。
中小企業の法人税は、法人住民税・事業税を合わせた実効税率がざっくり約30〜34%です。一方、個人の所得税は累進課税のため、所得が増えるほど税率が上がり、住民税と合わせると最大55%に達します。
| 課税所得 | 所得税率 | 住民税 | 合計税率 | 法人税との比較 |
|---|---|---|---|---|
| 〜899万9,000円 | 33% | 10% | 43%未満(※) | 法人税(約34%)より低い |
| 900万円〜 | 33% | 10% | 43% | 法人税より高くなる |
| 最高(4,000万円超) | 45% | 10% | 55% | 法人税より大幅に高い |
※課税所得が899万9,000円までは、所得税33%+住民税10%でも理論上は法人税率(約34%)を下回ります。しかし課税所得900万円を超えると合計43%となり、法人税率を上回ります。
📌 ポイント
課税所得が900万円を超えると、個人の税負担が法人税率を上回ります。この水準を超えた分の稼ぎは、会社に残して法人税を払うほうが税金的に有利になります。
📝 このセクションのまとめ
- 法人税の実効税率は中小企業でおよそ30〜34%
- 個人の所得税+住民税は最大55%まで上がる
- 課税所得900万円が「法人vs個人」の分岐点
会社にお金を残すメリット② 財務体質の強化と融資の有利性
会社に多くお金を残すことで、財務体質が強化され、事業を発展させるための資金的な土台を作ることができます。内部留保が多ければ一般的に倒産リスクも低くなるため、金融機関からの信頼が厚くなり、融資を受ける際に有利に働きます。
その融資で新たな事業に投資を行い、さらに内部留保を拡大していくという良い循環を作ることができます。
📌 ポイント
節税の本来の目的は「ただ税金を減らすこと」ではなく、手元にキャッシュを残し、それを元手に新たな投資につなげることです。節税のつもりが単なる経費の無駄遣いになるのは本末転倒です。場合によっては、しっかり法人税を納めることで金融機関からの信頼が高まり、融資面で有利になることもあります。
📝 このセクションのまとめ
- 内部留保が多いほど倒産リスクが低く、銀行からの評価が高まる
- 融資→投資→内部留保拡大という好循環を生み出せる
- 節税は「キャッシュを残して投資に回す」ことが本来の目的
会社にお金を残すデメリット 資金の自由度低下と役員貸付金問題
会社にお金を残すことにはデメリットもあります。大きく2つの問題があります。
① 資金の自由度が低い
オーナー社長にとって「会社のお金も自分のもの」という感覚はあるかもしれませんが、法人の資金の使い道は事業に関わるもの(事業資金・社宅・交際費など)に限定されます。個人の趣味や生活費には使えないため、キャッシュの自由度という意味では個人のお金と比べてかなり低くなります。
② 役員貸付金問題
会社に多くお金を残そうとして、役員報酬を極端に少なく設定する方がいます。例えば月5万円・月10万円といった給与では、生活費が足りなくなります。その結果、プライベートの支払いを会社の口座から行うケースが出てきますが、これは「会社が社長にお金を貸している」状態となり、これを役員貸付金と呼びます。
⚠️ 注意
決算書に多額の役員貸付金が計上されていると、銀行から「貸したお金が会社の事業に使われず、社長個人や他の会社に流用されているのではないか」と判断される可能性があります。融資の審査で不利に働くことが多く、場合によっては融資条件として役員貸付金の解消を求められることもあります。実際に「役員貸付金があるから融資は難しい、来期中に精算してください」と銀行から直接言われたケースもあります。
会社に多くお金を残す選択をする場合でも、最低限、会社からお金を借りなくても済む水準の役員報酬を設定することが重要です。
📝 このセクションのまとめ
- 法人の資金は事業目的に限定されるため個人より自由度が低い
- 役員報酬が低すぎると生活費不足から役員貸付金が発生する
- 役員貸付金は融資審査で大きなマイナス評価につながる
- 最低限、会社から借りずに生活できる役員報酬額を設定すること
社長個人にお金を残すメリットとデメリット
役員報酬を高めに設定して社長個人に多くお金を残す場合のメリットは、ズバリお金の自由度の高さです。個人のお財布に入ったお金であれば、会社に縛られることなく基本的に何に使っても自由です。
- 生活費・住宅ローン・教育費
- 高級車の購入
- 趣味・レジャー費用(釣りなど)
- 会社の資金繰りを補填するための会社への貸し付け(役員借入金)
なお、社長個人のキャッシュを会社に入れることを役員借入金と呼びます。銀行からの借入と違い、返済期日や条件を自由に設定できるのがメリットです。ただし、役員が亡くなった場合には、この貸付金が相続財産として相続税の対象になる点には注意が必要です。会社の資金繰りが悪い場合は貸付金を回収できなくても相続財産として評価されてしまうため、いずれは解消しておくことが望ましいです。
一方、個人にお金を残すことのデメリットは税金と社会保険料の負担の重さです。
| 負担の種類 | 内容 | 税率・負担感 |
|---|---|---|
| 所得税+住民税 | 課税所得900万円超で法人税率を超過 | 最大55% |
| 社会保険料 | 給与の約30%(会社と折半) | 実質オーナーが全額負担 |
| 合計負担 | 所得税+住民税+社会保険料 | 手取りが大幅に減少 |
社会保険料は年々負担が上がっており、現在は給与の約30%がかかります。これは会社と従業員で折半する建前ですが、オーナー社長にとっては実質的に30%すべてを自分で負担しているのと同じ状態です。役員報酬を上げるとお金の自由度は高まりますが、その分だけ手残りが少なくなることを覚悟しなければなりません。
📝 このセクションのまとめ
- 個人に残したお金は使途が自由で、会社への貸し付けも可能
- 役員借入金は返済条件を自由に設定できるが、相続財産になる点に注意
- 所得税+住民税が最大55%、さらに社会保険料約30%が上乗せされる
- 役員報酬を上げるほど手残りが少なくなるトレードオフがある
結論:ケースバイケースだが「月100万円(年1,200万円)」が一つの目安
ズバリ結論を言うと、「場合によります(ケースバイケース)」です。ただし、判断の基準となる考え方はあります。
役員報酬が年1,300万円以上になると、所得税33%+住民税10%で合計43%の税負担となり、個人の手取りがあまり増えない状態になります。一方、役員報酬が年1,200万円(月100万円)程度であれば、課税所得が900万円の壁を下回るため、所得税+住民税の合計税率が33%程度に収まります。
📌 ポイント
月100万円(年1,200万円)の役員報酬で生活に支障がないのであれば、それ以上は法人に多く残すことを基本方針とすることをおすすめします。法人に残ったキャッシュは、新たな事業資金や設備投資に活用して会社を強くすることに使いましょう。
また、法人に蓄積したキャッシュの活用策として小規模企業共済の活用もおすすめです。
- 1社あたり最大月800万円まで加入可能
- 掛け金は全額法人の損金として認められる
- 解約時の返戻金を退職金の原資として活用できる
- 退職金は分離課税・退職所得控除・1/2課税と税制上の優遇が手厚い
- 退職金には社会保険料が一切かからない
長期的な視点では、法人を「貯金箱」として長期間お金を貯め、最終的に退職金として受け取るのが最も税制的に有利な方法です。普段の生活費として必要な分だけ役員報酬で受け取り、残りは法人に蓄積するというのが基本的な考え方になります。
📝 このセクションのまとめ
- 役員報酬の目安は月100万円(年1,200万円)。それ以上は法人に残すのが基本
- 小規模企業共済を活用して法人のキャッシュを節税しながら積み立てる
- 最終的に退職金として受け取るのが最も税制上有利
- 退職金には社会保険料がかからず、退職所得控除・1/2課税の優遇がある
状況別の判断基準:新設法人・個人資金需要が多い場合
基本方針はあくまでも「ケースバイケース」であり、状況に応じた判断が必要です。代表的な2つのケースを整理します。
【ケース①】新設法人の場合
新設法人では、まず資金繰りを安定させて融資を受けられる体制を整えることが最優先です。最初のうちは役員報酬をある程度低く抑え、会社の存続・成長のためになるべく法人にお金を残しておく方法が考えられます。
【ケース②】個人に多くのお金が必要な場合
住宅ローンの支払いが多い・生活費や教育費がかさむ・それほど事業拡大を考えていないといった場合は、中小企業の軽減税率が適用される年間利益800万円の水準に収まるようにコントロールする方法が考えられます。年間利益800万円までは法人税率が15%に抑えられるため、この水準を意識しながら役員報酬を設定するのが一つの目安です。
| 状況 | 推奨方針 | ポイント |
|---|---|---|
| 新設法人・資金繰り不安定 | 役員報酬を低く抑え、法人に多く残す | 融資を受けられる体制づくりが最優先 |
| 月100万円で生活に支障なし | 役員報酬は年1,200万円を上限に設定 | 残りは法人に蓄積→小規模企業共済活用 |
| 住宅ローン・教育費など個人支出が多い | 法人利益が年800万円に収まるよう役員報酬を設定 | 軽減税率15%を活用 |
| 長期的な資産形成を重視 | 法人を貯金箱として積み立て、退職金で受け取る | 退職所得控除・1/2課税・社会保険料ゼロの恩恵 |
最終的には、プライベートで毎月いくら生活費が必要なのかを明確にすることが、役員報酬設定の出発点になります。住宅ローン・教育費・生活費など、東京などの都市部では相当な金額が必要になるケースも多く、この点を踏まえずに設定を決めることはできません。
📝 このセクションのまとめ
- 新設法人は融資体制の整備を優先し、法人にお金を残す
- 個人の支出が多い場合は法人利益800万円(軽減税率15%)を目安にする
- 役員報酬設定の出発点は「毎月いくら生活費が必要か」を把握すること
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 社長の資産防衛チャンネル の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 社長の資産防衛チャンネルを応援しています!
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