消費税申告書の書き方と節税を税理士が解説|2割特例・簡易課税・インボイス対応

消費税申告書の書き方と節税を税理士が解説|2割特例・簡易課税・インボイス対応
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インボイス導入で初めて消費税申告が必要になった方へ、仕組みから申告書の書き方まで徹底解説します。

所得税の確定申告と消費税の確定申告の違い

所得税と消費税は、同じ「確定申告」という言葉を使っていても、対象・申告期間・計算方法が大きく異なります。まずはその違いを整理しましょう。

項目所得税消費税
対象個人事業者(個人・法人)
課税期間1月1日〜12月31日1月1日〜12月31日
申告期間翌年2月16日〜3月15日翌年1月1日〜3月31日(令和6年は4月1日まで)
計算の基本収入-経費-控除=所得 → 所得×税率もらった消費税-払った消費税=納税額
自分の税金が経費になるか所得税・住民税は経費にならない消費税の納税額は所得税の経費になる
前払い制度予定納税(年税額15万円超で7月・11月に各1/3)中間納付(年税額60万円超が対象)

⚠️ 注意

個人事業主の方は、消費税の納税額を所得税の経費に計上することを忘れがちです。税込み経理の場合は「租税公課」として処理するケースが多いですが、この点はしっかり覚えておいてください。

消費税の申告期間は3ヶ月間あります。令和6年(2024年)は3月31日が日曜日のため、申告期限は4月1日となっています。

📝 このセクションのまとめ

  • 消費税の対象は「事業者」で、個人・法人どちらも対象になりうる
  • 申告期間は所得税より長く、翌年1月〜3月末(令和6年は4月1日)
  • 消費税の納税額は所得税の経費になる(租税公課)
  • 年税額60万円超の場合は中間納付(前払い)が必要

消費税の基本的な仕組みと計算式

消費税の計算の基本は非常にシンプルです。

📌 消費税の基本計算式

年間にもらった消費税(課税売上にかかる消費税額)
- 払った消費税(仕入れ税額控除)
= 納める消費税額

具体的な例で見てみましょう。インボイスに登録した個人事業主(課税事業者)が取引先から1万円+消費税1,000円=1万1,000円を受け取り、仕入れ先や経費の支払いで2,000円+消費税200円=2,200円を支払ったとします。

  • もらった消費税:1,000円
  • 払った消費税:200円
  • 納税額:1,000円 - 200円 = 800円

これが「本則」と呼ばれる原則的なやり方です。ただし、この本則はインボイスを大量に集めなければならないなど、実務上非常に手間がかかります。そこで、売上規模に応じた特例制度が設けられています。

なお、「払った消費税」に含まれるのは仕入れだけではありません。仕事のために必要な買い物や接待の飲食代なども含まれます

📝 このセクションのまとめ

  • 消費税=もらった消費税-払った消費税
  • 払った消費税には仕入れだけでなく事業経費全般が含まれる
  • 本則は正確だが手間がかかるため、特例制度の活用が重要

売上規模別の消費税計算方法|本則・簡易課税・2割特例・免税

消費税の計算方法は、基準期間(2年前)の年間課税売上高によって選択できる方法が変わります。基準期間の売上高を基準に、下の表で確認してください。

基準期間の売上高選択できる方法計算方法の概要事前届け出
5,000万円超本則のみもらった消費税-払った消費税不要
5,000万円以下簡易課税(または本則)もらった消費税×業種別みなし仕入率必要(事前)
1,000万円以下2割特例(または簡易課税・本則)もらった消費税×20%不要
1,000万円以下かつインボイス未登録免税事業者申告不要

📌 ポイント

簡易課税・2割特例・免税事業者の場合は、払った消費税(仕入れや経費のインボイス)を気にする必要がありません。インボイスを集める手間も、インボイス番号のチェックも不要です。本則の場合はインボイスをすべて集める必要があり、実務上の負担が大きくなります。

📝 このセクションのまとめ

  • 売上5,000万円超は本則一択
  • 売上5,000万円以下は簡易課税が選択可能(事前届け出が必要)
  • 売上1,000万円以下かつ免税→課税に転換した方は2割特例が使える
  • 免税事業者はインボイス未登録のままなら申告不要

2割特例とは|対象者・計算方法・適用期間

2割特例は、インボイス導入に伴い令和5年(2023年)から新設された期間限定の特例制度です。

計算式:
売上(税込み)× 10/110(軽減税率の場合は8/108)× 20% = 納税額

例えば税込み1万円の売上があった場合、本来の消費税額は909円(10/110)ですが、2割特例を使うと181円(909円×20%)の納税で済みます。つまり、売上のおよそ1.8%程度が消費税の納税額になるイメージです。

2割特例の対象者:

  • 基準期間の売上が1,000万円以下であること
  • 免税事業者から課税事業者に転換した方(インボイス登録を機に転換した方を含む)
  • 最近個人事業や法人を始めてインボイス登録した方も対象

2割特例が使える年度:

年度2割特例
2023年(令和5年)適用可
2024年(令和6年)適用可
2025年(令和7年)適用可
2026年(令和8年)適用可(1年間)
2027年(令和9年)以降適用不可 → 簡易課税または本則へ

⚠️ 注意

2割特例は令和8年(2026年)までの期間限定です。2027年以降は簡易課税か本則かを選択する必要があります。また、基準期間の年間課税売上が1,000万円を超えた時点で2割特例は使えなくなります

📌 ポイント

2割特例は事前の届け出が不要です。確定申告の際に申告書上で2割特例を適用するかどうかを選択します。

なお、2023年10月1日にインボイス登録をした方は、2023年1月〜12月の1年間ではなく、2023年10月〜12月の3ヶ月分の消費税申告が必要になります。

📝 このセクションのまとめ

  • 2割特例は売上の約1.8%を消費税として納める簡便な方法
  • 事前届け出不要で、確定申告時に選択できる
  • 令和8年(2026年)までの期間限定制度
  • 2023年10月インボイス登録者は10〜12月の3ヶ月分のみ申告

簡易課税とは|業種別みなし仕入率の一覧

簡易課税は、基準期間の売上が5,000万円以下の事業者が選択できる方法で、業種ごとに定められた「みなし仕入率」を使って消費税を計算します。払った消費税を実際に集計する必要がなく、計算が非常に楽になります。

例えばサービス業の場合、売上1万円(税込み)の消費税は本来909円ですが、みなし仕入率50%を適用すると909円 × 50% = 454円の納税で済みます。

業種みなし仕入率納税割合のイメージ
卸売業90%(1割納税)売上消費税の10%
小売業80%(2割納税)売上消費税の20%
製造業70%(3割納税)売上消費税の30%
飲食業60%(4割納税)売上消費税の40%
サービス業50%(5割納税)売上消費税の50%
不動産業40%(6割納税)売上消費税の60%

⚠️ 注意

簡易課税を選択するには事前に届け出(簡易課税制度選択届出書)が必要です。2割特例と違い、確定申告のタイミングで急に選ぶことはできません。

📝 このセクションのまとめ

  • 簡易課税は業種別みなし仕入率を使い、払った消費税を集計しなくてよい
  • みなし仕入率は卸売業90%〜不動産業40%まで業種で異なる
  • 事前の届け出が必須(確定申告時の選択は不可)

消費税の節税方法|インボイス導入の背景も含めて解説

結論から言うと、消費税の節税の余地は所得税や法人税ほど多くはありません。消費税はもらった消費税から払った消費税を差し引くシンプルな構造のため、グレーゾーンが少なく、国にとっては節税・脱税されにくい税金です。インボイス制度が強行された背景にも、こうした「見える化」による課税の確実化という事情があります。

とはいえ、いくつかの節税策は存在します。

① 海外売上を増やす(不課税・輸出免税)

海外との取引や海外での事業は「不課税」または「輸出免税」として消費税がかかりません。例えばYouTubeの広告収入は、Googleというアメリカの会社を通じたビジネスのため、海外売上として消費税が課税されません。消費税はあくまで国内取引にかかる税金だからです。

② 従業員ではなく外注を活用する(本則の場合)

従業員への給与には消費税がかかりませんが、外注費には消費税がかかります。つまり外注費として支払えば「払った消費税」が増え、納める消費税が減ります。世の中で業務委託や派遣が増えている背景には、こうした消費税の仕組みも影響しています。

③ 固定資産を購入する(本則の場合)

固定資産を購入した場合、所得税・法人税では減価償却として数年間に分割して経費計上しますが、消費税では購入(納車・引き渡し)した年に全額を「払った消費税」として控除できます。例えば今年の消費税負担が多いと感じたら、年内に車を購入・納車することが節税策の一つになります。

④ 開業・設備投資時の還付(本則の場合)

店舗や工場を建てるなど、開業当初は払った消費税がもらった消費税を上回るケースがあります。その場合は消費税が還付されます。ただしこれは本則を選択している場合のみです。

⚠️ 注意

簡易課税や2割特例を選択している場合は、払った消費税の額に関係なく売上ベースで税額が決まるため、固定資産購入による節税効果も、開業時の還付も受けられません。本則・簡易課税・2割特例のどれが有利かは、事業の状況によって異なります。特に簡易課税は事前届け出が必要なので、慎重に判断してください。

📝 このセクションのまとめ

  • 消費税の節税余地は所得税・法人税ほど多くない
  • 海外売上(YouTube収入など)は不課税・輸出免税で消費税がかからない
  • 本則の場合は外注費の活用・固定資産購入・開業時の還付が節税策になる
  • 簡易課税・2割特例では払った消費税が関係しないため還付は受けられない

消費税申告書の作り方・書き方|会計ソフトの活用と注意点

消費税申告書の作成には、会計ソフトを使うことを強くおすすめします。Excelでの管理は難しく、会計ソフトであれば入力内容から自動的に申告書が生成されます。

会計ソフトへの入力時の注意点

会計ソフトに経費を入力する際は、税区分の選択が重要です。例えば「通信費・課税仕入れ10%」のように入力しますが、インボイス対応後は「適格請求書100%控除」か「80%控除」かも選択する必要があります。税区分の種類は多く、主なものは以下の通りです。

  • 課税仕入れ10%(標準税率・最も多いケース)
  • 課税仕入れ8%(軽減税率・食料品など)
  • 課税仕入れ5%(旧税率)
  • 対象外(不課税取引)

不課税取引・非課税取引に注意

すべての支払いが課税仕入れになるわけではありません。以下のフローチャートで取引の区分を確認してください。

条件区分具体例
国内で行われる取引でない不課税取引YouTube広告収入(海外取引)
事業者が行う取引でない不課税取引給与・メルカリでの個人売買
資産の譲渡等に該当しない不課税取引補助金・会費(強制的な会費)
非課税取引非課税取引居住用家賃・土地の売却収入
輸出取引輸出免税海外向け輸出売上
上記以外の国内取引課税取引一般的な商品・サービスの売買

例えば、会計士協会の会費のような「強制的に収める会費」はサービスの対価ではないため、不課税取引として「対象外」で入力します。一般的な事業者の支払いは9割以上が課税取引ですが、こうした例外があることは覚えておきましょう。

📌 ポイント:簡易課税・2割特例の方は経費の税区分を気にしなくてOK

簡易課税や2割特例を選択している場合は、払った消費税を集計する必要がないため、経費の税区分の入力は省略しても問題ありません。ただし売上の税区分(課税売上10%など)は正確に入力してください。

申告書(第1表・第2表)の見方

会計ソフトで正しく入力すれば、消費税申告書(第1表・第2表)が自動生成されます。申告書の主な項目は以下の通りです。

  • 課税標準額:課税売上高(税抜き)
  • 消費税額:課税売上にかかる消費税(もらった消費税)
  • 控除対象仕入税額:払った消費税
  • 差引税額:もらった消費税-払った消費税(100円未満切捨て)
  • 地方消費税:国税分に2.2/7.8を乗じた額

例えば、課税売上にかかる消費税が22万1,970円、払った消費税が11万5,391円の場合、差引税額は10万5,500円(100円未満切捨て)となります。さらに地方消費税として2万9,700円が加算されます。

申告書の課税期間の記載について

2023年10月1日にインボイス登録をした方も、申告書の課税期間欄には「令和5年1月1日〜令和5年12月31日」と記載します(実際の申告対象は10〜12月分ですが、記載ルール上こうなります)。

2割特例の申告書への反映

2割特例を適用する場合は、申告書上で「2割特例適用」の欄にチェック・丸印を付けます。そうすることで、計算式が通常の本則とは異なる2割特例の金額に自動的に切り替わります。会計ソフトで2割特例を選択していれば、ソフト側が自動で対応してくれます。

完成した申告書は、e-Tax(電子申告)で提出するか、紙に書き写して税務署に提出します。

📝 このセクションのまとめ

  • 消費税申告書の作成は会計ソフトを使うのが最善
  • 経費入力時は税区分(課税仕入れ10%・不課税など)を正確に選択する
  • 給与・補助金・会費など不課税・非課税取引の見落としに注意
  • 簡易課税・2割特例の場合は経費の税区分入力を省略できる
  • 申告書はe-Taxまたは紙で提出。2割特例は申告書上で選択する

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル オタク会計士ch【山田真哉】 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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