法人成りで消費税を最大8割節税|2割特例の活用法を税理士が解説

法人成りで消費税を最大8割節税|2割特例の活用法を税理士が解説
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インボイス制度後も法人成りによる消費税節税メリットは残っています。2割特例を活用すれば消費税を最大8割節税できます。

法人化(法人成り)のメリット・デメリット

物事をスタートする時は、周りの声を鵜呑みにするのではなく、必ずメリット・デメリットを比較することが大切です。法人=会社として起業する場合のメリット・デメリットを整理しましょう。

法人化の主なメリットは以下の3つです。

  • 信用力が高い:大切な取引先が「法人でないと取引できない」という場合、最初から法人化せざるを得ないケースもある。設備投資・資金調達・採用を考えていく場合にも法人の方が有利。
  • 所得税の節税ができる:個人事業主の所得税+住民税の最高税率は55%。一方、法人の場合は25〜32%程度の税負担で済む。法人向けの節税策も豊富。
  • 消費税の節税ができる:うまく活用すれば消費税を大幅に節税できる(詳細は後述)。

個人的には、起業する場合はまず個人事業主・フリーランスとしてスタートし、その後法人化に移行するステップを踏むことをお勧めします。そのようにした方が、消費税の節税メリットをより多く受けられる可能性が高いからです。

一方でデメリットも存在します。

デメリット項目内容
個人情報の開示法務局の登記簿で代表者の個人住所まで公開される
社会保険の強制加入個人事業主と異なり、法人は強制加入となる
設立コスト合同会社:約6〜10万円、株式会社:約20万円
運営コスト会計事務所への報酬が個人より高くなる傾向
法人住民税の均等割赤字でも年間約7〜8万円の支払いが必要(個人は数千円)
経理の複雑化個人に比べて経理処理が煩雑になる

📝 このセクションのまとめ

  • 法人化のメリットは「信用力」「所得税節税」「消費税節税」の3つ
  • 個人の所得税最高税率55%に対し、法人税は25〜32%程度
  • 設立・運営コストや均等割など固定費が発生する点に注意
  • まずは個人事業主としてスタートし、様子を見て法人化するのが基本

消費税の免税制度の基本的な仕組み

事業活動を行っていれば、売上に対して付加される消費税(8%・10%)を一旦受け取り、仕入れ先や外注先・その他経費に関しては消費税を支払います。受け取った消費税から支払った消費税を引いた差額を国に納めるのが原則です。

ただし、消費税法には免税制度(特例)があります。

📌 ポイント:免税事業者の判定基準

基準期間(ざっくり「2年前」)の課税売上高が1,000万円以下であれば、消費税の納税が免除されます。

お医者さんの社会保険診療収入やアパート・マンションの家賃収入などは非課税ですが、それ以外の売上は多くの場合、課税売上となります。

個人事業主の場合、開業1年目・2年目はほぼ無条件で免税になることが多いです。法人の場合は開業初年度と第2期が対象ですが、後述する条件があるため注意が必要です。

具体例:令和5年1月1日から個人事業をスタートした場合(インボイス未登録を前提)

事業年度消費税の扱い判定の基準
第1期(令和5年)免税基準期間なし
第2期(令和6年)免税基準期間なし
第3期(令和7年)課税 or 免税令和5年の課税売上が1,000万円超かどうかで判定

法人の場合、免税の適用を受けるためには以下の条件を満たす必要があります。

  • 資本金が1,000万円未満であること(知らずに1,000万円以上で設立すると免税特例が受けられない)
  • 大企業の子会社などでないこと

さらに、特定期間(前の年の最初の半年間)の課税売上高が1,000万円を超えている場合は、その年度から課税事業者となります。ただし、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えていても、給与の支払い総額が1,000万円以下であればこの規定には引っかかりません。

⚠️ 注意

法人設立時に資本金を1,000万円以上に設定してしまうと、消費税の免税特例が受けられなくなります。また、インボイス登録や自ら課税事業者を選択した場合も免税は受けられません。

📝 このセクションのまとめ

  • 基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円以下なら消費税免税
  • 個人事業主は開業1・2年目がほぼ免税、法人は初年度・第2期が対象
  • 法人は資本金1,000万円未満・大企業の子会社でないことが条件
  • 特定期間(前年上半期)の売上・給与が両方1,000万円超なら課税事業者になる

消費税の計算方法3種類|2割特例とは

インボイス制度スタート以前は、消費税の計算方法は「本則課税」と「簡易課税」の2種類でした。インボイス制度スタートと同時に「2割特例」という第3の計算方法が加わりました。

計算方法概要向いている事業者
本則課税受け取った消費税-支払った消費税=納税額経費・仕入れが多い事業者(赤字含む)
簡易課税受け取った消費税×業種別みなし仕入率で計算卸売業など仕入率が高い業種
2割特例受け取った消費税×20%のみ納税それ以外の多くの業種(特にサービス業等)

簡易課税を選択する場合は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下であること、事前の届け出が必要なこと、一度選択すると原則2年間は継続適用しなければならないなど、様々な制約があります。

具体例:ライター業で売上500万円・経費100万円の場合

計算方法計算式納税額
本則課税受取消費税50万円-支払消費税10万円40万円
簡易課税(ライター業:50%)受取消費税50万円×50%25万円
2割特例受取消費税50万円×20%10万円

📌 ポイント

2割特例を使えば、本則課税の40万円に対して納税額が10万円で済みます。差額30万円の節税になります。2割特例では支払った消費税を控除することはできませんが、受け取った消費税の8割をカットして節税できます。

📝 このセクションのまとめ

  • 消費税の計算方法は「本則課税」「簡易課税」「2割特例」の3種類
  • 2割特例は受け取った消費税の20%だけ納税すればよい制度
  • サービス業など多くの業種で2割特例が最も有利になることが多い
  • 簡易課税は事前届け出・2年継続適用など制約が多い

2割特例の詳細と適用要件

2割特例には細かな適用要件があります。要件を満たさないと使えないため、しっかり確認しておきましょう。

適用期間:令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間のみという期間限定の制度です。

2割特例が使える条件:インボイス登録をすることによって、免税事業者から課税事業者になった場合にのみ適用されます。

以下のケースでは2割特例は使えません

  • 基準期間の課税売上高が1,000万円を超えていて、インボイス登録の有無にかかわらず課税事業者になる場合
  • 資本金1,000万円以上で法人を設立した場合
  • 消費税課税事業者選択届出書を自ら提出して課税事業者になった場合

⚠️ 最重要注意:届出書の混同に気をつけて

インボイス登録の届出書と、消費税課税事業者選択届出書は別のものです。インボイス登録のつもりで誤って「消費税課税事業者選択届出書」を提出してしまうと、2割特例が使えなくなります。

もし誤って提出してしまった場合は、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出することで取り下げができます。ただし、以前から課税事業者の選択をしている場合はすぐに取りやめることができないため注意が必要です。

個人事業主の場合、2割特例を使えるチャンス:

課税期間期間2割特例
令和5年(一部)令和5年10月〜12月適用可
令和6年令和6年1月〜12月適用可
令和7年令和7年1月〜12月基準期間(令和5年)の売上次第
令和8年令和8年1月〜9月30日まで基準期間(令和6年)の売上次第

法人(3月決算法人)の場合、2割特例を使えるチャンス:

課税期間決算期2割特例
第1期〜令和6年3月31日適用可
第2期〜令和7年3月31日適用可
第3期〜令和8年3月31日適用可
第4期〜令和9年3月31日適用可(令和8年9月30日が属する期)

📌 ポイント:2割特例の手続きはシンプル

  • 事前の届け出は一切不要
  • 確定申告書に2割特例を使っている旨と、それに基づいた計算を記載すればOK
  • 簡易課税のような2年継続適用の要件もなし

📝 このセクションのまとめ

  • 2割特例の適用期間は令和5年10月〜令和8年9月30日までの期間限定
  • 「インボイス登録によって免税から課税になった場合」にのみ適用
  • 消費税課税事業者選択届出書を誤って提出すると2割特例が使えなくなる
  • 2割特例の申請は事前届け出不要・確定申告書への記載のみでOK

個人事業主が法人成りする際の消費税節税ポイント

ここが今回の核心です。個人事業主が法人成りすることで、2割特例を活用した消費税節税をどのように実現するか、具体的なケースで見ていきましょう。

該当するケース:令和5年に売上が1,000万円を超えた個人事業主で、インボイス登録によって免税から課税事業者になった方。

年度個人事業主のまま継続した場合法人成りした場合
令和5年(10月〜)2割特例:適用可
令和6年2割特例:適用可
令和7年2割特例:使えない(令和5年の売上1,000万円超のため)法人化により基準期間リセット→2割特例:適用可
令和8年2割特例:使えない(令和6年の売上1,000万円超の場合)要件クリアなら2割特例:適用可

ポイントは、個人と法人は別の事業体であるという点です。令和6年中に個人事業を廃業して法人化することで、法人の基準期間における課税売上高の判定がリセットされます。

令和7年に法人化すれば、その法人の基準期間の課税売上高は「令和5年の個人事業の売上」ではなく、法人としての基準期間の売上(=0円)で判定されます。この0円の状態で新たにインボイス登録をすることで課税事業者になれば、令和7年・令和8年も2割特例が使えるのです。

📌 法人成りで2割特例を活用する手順

  1. 令和6年中に個人事業を廃業する
  2. 資本金1,000万円未満で法人を設立する
  3. 法人として新たにインボイス登録を行う(課税事業者選択届出書は提出しない)
  4. 令和7年・令和8年の確定申告で2割特例を適用する

なお、現行税制では令和9年以降は2割特例が使えなくなります。ただし、今回のお話はあくまでも消費税のみに焦点を当てたものです。法人化することで所得税から法人税に変わり、法人税の節税策が使えるようになるメリットも含めて、トータルで法人化を検討することが重要です。

税金のことだけを優先するのではなく、事業がうまくいくことが最優先であり、その次に税金を考える、という優先順位を忘れないようにしましょう。

⚠️ 注意:節税目的だけの法人設立を繰り返すことについて

「2年ごとに会社を作っては閉じて、消費税の2割だけ納め続ける」という方法は、税務上の問題が生じる可能性があります。消費税の節税は事業の実態に基づいて正当な方法で行うことが大前提です。脱税や租税回避と認定されるリスクのある行為は絶対に避けてください。

📝 このセクションのまとめ

  • 個人事業主が法人成りすると、消費税の基準期間の判定がリセットされる
  • 令和6年中に廃業・法人化し、法人としてインボイス登録すれば令和7年・8年も2割特例が使える
  • 法人設立時は資本金1,000万円未満に設定することが必須条件
  • 消費税節税だけでなく、所得税・法人税の節税や事業拡大もトータルで判断する

法人設立コストを抑える方法・マイクロ法人についても確認

法人化を検討する際、設立コストを抑えたいという方も多いでしょう。たとえば、登録免許税を半額にできる節税策も存在します。法人設立の費用を抑える方法についても事前に調べておくことをお勧めします。

また、個人事業主の方から「個人と法人を分けて、マイクロ法人を作って社会保険料の削減をしたい」というご相談もよく受けます。

状況マイクロ法人のメリット
小規模でずっと運営していく場合メリットあり(社会保険料削減効果が期待できる)
事業拡大を考えている場合メリットは低い
期間限定で活用する場合活用を検討する余地あり

📝 このセクションのまとめ

  • 法人設立時には登録免許税を半額にする節税策もある
  • マイクロ法人は小規模・長期運営の場合に社会保険料削減効果あり
  • 事業拡大を目指すならマイクロ法人のメリットは限定的

まとめ:インボイス制度後も法人成りの消費税節税メリットは残っている

インボイス制度のスタートにより、従来のように最大4年間の消費税免税を受けることは非常に難しくなりました。特にBtoB(企業間取引)の業種では、完全な免税は難しい状況です。

しかし、2割特例を活用することで、受け取った消費税の最大8割を節税することが可能です。そして、個人事業主が適切なタイミングで法人成りすることで、この2割特例の適用期間を延ばすことができます。

📌 今すぐ確認すべきチェックリスト

  • インボイス登録と同時に「消費税課税事業者選択届出書」を誤って提出していないか確認する
  • 誤って提出している場合は、「消費税課税事業者選択不適用届出書」で取り下げを急ぐ
  • 令和5年の課税売上高が1,000万円を超えている個人事業主は、令和6年中の法人化を検討する
  • 法人設立時は資本金を1,000万円未満に設定する
  • 2割特例は確定申告書への記載のみで適用可能(事前届け出不要)

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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