一人社長でも使える企業型DCとは?税理士・社労士が徹底解説する節税術
企業型DC(確定拠出年金)は一人社長でも使える「最後の節税策」として注目されています。
企業型DCとは?イデコとの違いをおさえよう
企業型DC(確定拠出年金)は、別名「401k」とも呼ばれる制度です。大企業だけのものというイメージを持たれている方が非常に多いのですが、実は中小企業や一人社長の会社でも十分に活用できる制度です。
まず、年金制度の全体像を整理しましょう。厚生労働省のウェブサイトによると、年金制度は以下のような「階建て」構造になっています。
| 階層 | 対象者 | 制度名 |
|---|---|---|
| 1階部分 | 全員(自営業・学生・会社員・経営者) | 国民年金 |
| 2階部分 | 会社員・会社経営者 | 厚生年金 |
| 3階部分 | 任意加入 | イデコ・企業型DC |
イデコ(個人型確定拠出年金)も企業型DCも、この「3階部分」にあたります。老後の年金をさらに上乗せするための制度です。基本的な内容はほぼ同じですが、「個人版か企業版か」という点が大きな違いです。
📌 ポイント
イデコ=個人向けの確定拠出年金。自分で掛け金を拠出し、商品を選んで運用する。
企業型DC=企業版の確定拠出年金。会社が掛け金を出し、社員自身が運用する。
イデコは資産運用や投資の側面も持ちますが、本質は年金制度です。商品選びを間違わなければ、リスキーなものに投資しなければ大きな失敗はないと言えます。
📝 このセクションのまとめ
- 年金制度は3階建て構造で、企業型DCはその3階部分にあたる
- イデコ=個人版、企業型DC=企業版という違いがある
- 企業型DCは大企業だけでなく、中小企業・一人社長でも活用できる
企業型DCの具体的な仕組みを解説
企業型DCとは、「会社または会社と社員がそれぞれ支払った掛け金を、社員自身が自分で運用して、原則60歳以降に受け取る年金」のことです。
近年、法改正が相次いでおり、制度の使い勝手が大きく向上しています。
| 改正時期 | 内容 |
|---|---|
| 2022年5月〜 | 企業型DCに加入できる年齢が70歳まで延長(会社の規約による) |
| 2022年10月〜 | イデコと企業型DCの併用が可能になった |
2022年10月からのイデコとの併用解禁は特に大きな改正です。会社が企業型DCの掛け金を出してくれる上に、自分でイデコにも上乗せして掛け金を増やすことができるようになりました。
企業型DCの仕組みを図解すると、次のような流れになります。
- 会社が運営管理機関(証券会社・銀行・生命保険・信託銀行など)を選択し、加入手続きのサポートを受ける
- 運営管理機関が社員の加入履歴を管理・記録し、運用指示を取りまとめる
- 会社が出した掛け金は資産管理機関(主に信託銀行)が保管する
- 60歳以降になったら、資産管理機関が社員本人に給付を行う
📌 ポイント
会社が運営管理機関を選べば、それに紐づいた資産管理機関はおのずと決まります。会社が資産管理機関を別途選ぶ必要はありません。
また、従来の退職金制度では会社が退職金を1社で運用・預かっていたため、会社が倒産したり運用に失敗したりすると退職金が減ってしまうリスクがありました。企業型DCは個人資産として保全されるため、そのリスクがない点も大きな特徴です。
📝 このセクションのまとめ
- 2022年5月から加入可能年齢が70歳まで延長された
- 2022年10月からイデコとの併用が可能になった
- 運営管理機関(証券会社・銀行等)を選ぶことが導入の第一歩
- 会社が倒産しても掛け金は個人資産として保全される
イデコと企業型DCの主な違いを比較
イデコと企業型DCは基本的な内容はほぼ同じですが、細かい点でいくつかの違いがあります。以下の表で比較してみましょう。
| 項目 | イデコ(個人型) | 企業型DC |
|---|---|---|
| 加入主体 | 個人 | 会社(退職金制度・福利厚生として導入) |
| 掛け金の負担者 | 自分 | 会社(本人が上乗せも可能) |
| 月額上限(イデコ未加入の場合) | 6万8,000円(自営業) | 5万5,000円 |
| 月額上限(イデコ併用の場合) | — | 2万7,500円 |
| 各種手数料の負担 | 自分 | 会社 |
| 運用商品の数 | 多い(SBI証券等) | 少ない傾向(運営管理機関による) |
| 節税の形 | 所得控除(所得税・住民税の節税) | 全額損金(経費)算入 |
📌 節税効果の違い
イデコは個人が負担するため所得控除という形になり、所得税と住民税の節税になります。
企業型DCは基本的に全額会社負担となるため、福利厚生費として全額損金(経費)に算入できます。節税効果は非常に高いものになっています。
なお、銀行が運営管理機関の場合は元本確保型の商品がやたら多い傾向があります。運用商品の選択肢という点ではイデコより少ない傾向がありますが、これは運営管理機関の選択によって変わります。
📝 このセクションのまとめ
- 企業型DCの掛け金は会社が負担し、全額損金(経費)算入できる
- イデコとの併用時の上限は月2万7,500円、未加入なら月5万5,000円
- 手数料も会社負担のため、従業員側の負担がない
- 運用商品はイデコより少ない傾向がある
会社側のメリット・デメリット
企業型DCを導入する会社側には、節税以外にも重要なメリットがあります。一方で、無視できないデメリットも存在します。
【会社側のメリット】
- 福利厚生の充実:採用活動において「退職金制度あり」とアピールでき、人材確保に有利
- 掛け金の運用リスクなし:会社が掛け金を出しても、運用するのは本人のため、増減は本人次第。会社はリスクを負わない
- 役員自身の資産形成:役員が企業型DCに加入した場合、自分への福利厚生として自分の資産を形成できる
- 税金・社会保険料の節減:掛け金は全額損金算入でき、節税効果が高い
特に、現代は人口減少・人手不足が続いているため、労働環境を整えることが経営者にとって非常に重要です。この福利厚生としてのメリットは、節税と同等かそれ以上に大きいと言えます。
会社が負担する掛け金の金額は会社によってまちまちですが、実際に導入している企業では1人あたり月3,000円〜1万円程度が多い傾向です。役職や勤務年数によって金額が変わる設計にすることもでき、企業型DC用の退職金規定を就業規則の中で細かく定めていきます。
【会社側のデメリット】
- 各種手数料がかかる:導入時・運用時・給付時にそれぞれ費用が発生する(詳細は後編で解説)
- 事務手続きが煩雑:入退社のたびに資格取得・喪失の手続きが必要。通常の社会保険手続きとは別に行う必要がある
⚠️ 注意
退職した社員の資格喪失手続きを忘れると、会社がずっと掛け金を払い続けなければならない状況になります。入退社の手続きは必ずタイムリーに行ってください。遡って手続きはできますが、気づかずに放置するのは非常に危険です。
📝 このセクションのまとめ
- 会社側の最大メリットは「福利厚生の充実」と「全額損金算入による節税」
- 掛け金の運用リスクは会社ではなく社員本人が負う
- デメリットは手数料コストと事務手続きの煩雑さ
- 退職者の資格喪失手続きの失念は特に危険
従業員側のメリット・デメリット
企業型DCは会社側だけでなく、従業員にとっても大きなメリットがあります。
【従業員側のメリット】
- 退職所得控除が使える:将来一時金で給付を受け取った場合、退職所得控除が適用されるため、大幅に税金が軽減される(イデコと同様)
- 退職後もイデコへ資産を移管できる:転職・退職した場合でも、イデコに資産を移して運用を継続できる
- 会社が倒産しても資産は保全される:個人資産として管理されているため、会社の経営状況に左右されない
- 各種手数料を会社が負担してくれる:加入時・運用時・給付時の手数料をすべて会社が負担するため、従業員の実質的な負担がない
- 税金・社会保険料の節減:掛け金と運用益が非課税になる
📌 手数料負担の重要性
イデコでは加入時に2,829円、運用時に最低でも月171円、給付時にも費用がかかります。企業型DCならこれらの手数料をすべて会社が負担してくれるため、従業員にとっては非常に有利です。
仮に個人のイデコで定期預金に投資した場合、手数料分だけ目減りしてしまうことになるため注意が必要です。
【従業員側のデメリット】
- 原則60歳まで給付を受けられない:目先のお金を大事にしたい方には使いにくいと感じる場合がある
- 資産運用の知識が必要:どの商品を選べばよいかわからない従業員も多い。結果として金利の低い定期預金を選んでしまうケースも
- 運用次第で受け取り額が変動する:増えることもあれば減ることもある自己責任の制度
- 退職後の手続きを自分で行う必要がある:会社を辞めた後はイデコへ移管し、自分で手続き・運用を続ける必要がある
- 転職先に企業型DCがない場合は掛け金が減る:例えば会社が月5万円出してくれていた場合でも、転職先に制度がなければイデコで自分が月2万3,000円等を拠出するしかなくなる
⚠️ 注意
退職所得控除については、退職するタイミングによっては使えないケースもあります。退職金の受け取り方・タイミングについては、事前に専門家に相談することをおすすめします。
📝 このセクションのまとめ
- 従業員にとっての最大のメリットは「手数料を会社が負担してくれること」と「退職所得控除の適用」
- 退職・転職後もイデコへ移管して資産を継続できる
- 60歳まで引き出せない・運用リスクがある点はデメリット
- 転職先に企業型DCがない場合は掛け金が大幅に減ってしまう可能性がある
一人社長こそ企業型DCを検討すべき理由
企業型DCは、パッと見では従業員10人以上の会社向けの制度に見えます。確かに、入退社が多い会社では手続きが煩雑になるため、ある程度体制が整っていることが望ましいです。
しかし、一人社長の場合は話が別です。一人社長にとっては、福利厚生という側面よりも「節税」が企業型DCの最大のメリットになります。
- 掛け金が全額損金(経費)算入できる
- 役員自身の資産形成ができる
- 入退社の手続きが不要で事務負担が少ない
📌 ポイント
法人向け節税ランキングでも第8位にランクインした企業型DCですが、実際に導入している中小企業はまだまだ少ないのが現状です。意外と知られていない「最後の節税策」として、一人社長や中小企業経営者にこそ積極的に検討してほしい制度です。
なお、企業型DCの導入・運用にあたっては、税理士だけでなく社会保険労務士(社労士)のサポートが必要です。ただし、企業型DCに対応できる社労士は全体の1〜2割程度と少ないのが実態です。導入を検討する際は、企業型DCの経験がある社労士に相談することをおすすめします。
📝 このセクションのまとめ
- 一人社長にとっては「節税」が企業型DC最大のメリット
- 従業員が多い会社では「福利厚生・採用力強化」にもなる
- 導入には税理士だけでなく社労士のサポートが必要
- 企業型DCに対応できる社労士は1〜2割程度と少ない
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。 本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!
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