中小企業の法人保険で失敗しない!よくある失敗事例3選と正しい活用法を税理士が解説
法人保険は「節税」ではなく「課税の繰り延べ」です。正しい目的で使わないと大きな失敗につながります。
なぜ中小企業に法人向け生命保険が人気なのか
中小企業の経営者、特に利益が出ていて納税額が多い会社の社長さんは、「節税のために生命保険に加入する」というイメージを持たれている方が非常に多いです。一人社長・マイクロ法人から、ある程度人を抱えた中小企業まで、「節税=生命保険」という図式が広く浸透しています。
しかし、これは実は誤りです。間違った使い方をされている方が非常に多いのが現状です。
⚠️ 注意
法人保険は「節税」ではありません。正しくは「課税の繰り延べ(税金の先送り)」です。今払うべき税金の支払いを遅らせて、数年後にまとめて払うイメージです。結局は払うことになります。
本当の意味での「節税」は「免税」と言います。たとえば、旅費規程に基づく旅費・日当の支払いなどは、会社からお金が出て社長個人の懐に入るにもかかわらず、法人・個人ともに課税されないため、これが「免税」に当たります。
一方、法人保険でよく語られるような「節税効果」のほとんどは、課税の繰り延べです。だからといって悪いものではありません。中小企業が会社を守り・成長させていく上で、資金繰りはとても大切です。納税の支払い時期をコントロールできるという意味では、法人保険は十分に活用価値があります。
かつては支払った保険料が全額経費に落とせるがん保険など、画期的な商品もありました。しかし税制改正のスピードが速くなり、そういった保険はほぼ残っていません。今は生命保険本来の使い方、つまり会社防衛の観点に立ち返ることが重要です。
📝 このセクションのまとめ
- 法人保険は「節税」ではなく「課税の繰り延べ(税金の先送り)」
- 本当の節税は「免税」であり、旅費規程などが該当する
- 法人保険の本来の目的は「会社防衛」にある
失敗事例① 節税目的で高額保険に加入して払えなくなった
中小企業の経営者の身の回りでよく起こっている失敗の1つ目は、節税目的で高額の保険に加入したものの、保険料が払えなくなってしまうケースです。
コロナ禍が落ち着いた後、むしろ経営が大変になった事業所は多くあります。そういった状況の中で、もともと節税目的で加入した保険の保険料が高すぎて支払えなくなり、資金繰りに困っている経営者が非常に多いのが実態です。
⚠️ 注意
好調な経営状態がずっと続くとは限りません。節税目的で加入した保険が払えなくなると、保険としての意味がなくなります。この場合、解約するしかないことがほとんどです。
保険を解約するとどうなるのでしょうか。保険は基本的に加入時の年齢で保険料が決まるため、後から入り直すと保険料が高くなります。また、保険料の支払いをストップして解約返戻金を受け取る権利だけを残す「払済保険」という方法もありますが、保険の種類によっては課税される場合があります。
📌 ポイント
「払えないから止めてください」と安易に判断するのは危険です。払済にした場合でも課税される場合があるため、必ず専門家に確認しましょう。保険に入る時点での設計と目的の明確化が非常に重要です。
📝 このセクションのまとめ
- 節税目的で高額保険に加入するのは危険。業績悪化時に払えなくなるリスクがある
- 解約後に再加入すると年齢が上がっているため保険料が高くなる
- 払済保険にする際も課税リスクがあるため、専門家への確認が必須
失敗事例② 退職金について無計画なまま保険に加入した
2つ目の失敗事例は、将来の退職金について無計画なまま保険に加入してしまうケースです。営業担当者に勧められるがままに加入したり、付き合いで入ってしまったりするケースが非常に多いです。
社長自身の退職金貯蓄を目的とした法人保険の仕組みを整理すると、以下のような流れになります。
| フェーズ | 内容 | 税務上の扱い |
|---|---|---|
| 保険加入・保険料支払い時 | 保険料の一部が経費計上され、利益と相殺される | 課税の繰り延べ(法人税の軽減) |
| 保険の満期・解約時 | 解約返戻金が会社に戻ってくる。その一部が収益計上される | 法人税等の課税が発生 |
| 退職金の計上 | 解約返戻金を原資として社長が退職金を受け取る | 退職金は会社の経費になり、解約返戻金と相殺できる |
| 社長個人の退職金受取 | 退職所得として個人に課税される | 所得税・住民税(ただし退職所得控除あり) |
このプランがうまく機能する理由は、入口(保険料支払い時)の法人税の節税効果が、出口(退職金受取時)の個人の税負担を上回ることが多いからです。うまく課税の繰り延べをして「逃げ切る」ことができるプランと言えます。
解約返戻率のピークと退職金計画の重要性
長期平準タイプの生命保険には「解約返戻率」というものがあり、いつ解約するかによって戻ってくる金額が変わります。
| 解約時期 | 解約返戻率の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 40歳時点で解約 | 約80% | 1,000万円支払いで800万円しか戻らない |
| 60歳時点で解約 | 約90% | 1,000万円支払いで900万円が戻る |
📌 ポイント
「節税効果を含めると実質の解約返戻率が100%超え」と売り出す場合がありますが、これはずっと黒字が続いた場合の話です。赤字が出ると節税効果がなくなり、表の返戻率どおりになります。この点を必ず理解した上で加入しましょう。
解約返戻率のピークのタイミングで退職金計上とうまく合わせないと、課税だけが発生してしまいます。会社の業績・事業計画、そして社長個人のライフプランをまとめて考えることが不可欠です。
役員退職金の計算方法と「役員退職金規定」の重要性
退職金をいくら取れるのか、より正確に言えばいくらまでの退職金であれば法人税法上の経費として認められるのか、この金額は一般的に以下の計算式で決まります。
📌 役員退職金の計算式(一般的算出法)
最終報酬月額 × 在籍年数 × 功績倍率
- 功績倍率:代表取締役社長の場合、目安は3倍程度
- この計算式は法人税法で規定されているわけではなく、実務上のルールとして使われている
ここで注意が必要なのが、マイクロ法人など役員報酬を低く抑えている場合です。たとえば月給5万円で30年間社長を続けた場合、計算すると次のようになります。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 最終報酬月額 | 5万円 |
| 在籍年数 | 30年 |
| 功績倍率 | 3倍 |
| 退職金の上限(目安) | 450万円 |
つまり、60歳で解約して2,000万円の解約返戻金が入ってくる保険に加入していたとしても、退職金として取れるのはうち450万円だけ、という事態が起こりえます。保険に加入する前に、退職金としていくら取りたいのかを明確にしておくことが必要です。
⚠️ 注意:高額退職金は税務調査でも問題になる
計算式に当てはまっていれば必ず認められるわけではありません。同じ税務署管轄の同業種・同規模の法人の退職金と比べて高すぎないか、税務調査で判断される場合があります。設計段階からこの点も考慮する必要があります。
さらに、役員退職金規定に計算式や金額を明記し、社内に保存しておかなければなりません。この書面がなければ、計算式に沿っていたとしても退職金を経費として計上できない可能性があります。
📌 ポイント:今からでも役員退職金規定は作れます
「会社設立は5年前だけど、規定を作っていない」という場合でも、これから取る退職金に関して、今から改めて役員退職金規定を整備すればOKです。急いで作成しましょう。なお、退職金は基本的に1回しか取れない点も覚えておいてください。
また、解約返戻率のピークのタイミングが複数年に分かれて何本も保険に加入している場合、退職金とぶつけて相殺することができなくなります。勧められるがままに何本も加入している社長さんが多いですが、これは非常によくある失敗例です。
📝 このセクションのまとめ
- 退職金の上限は「最終報酬月額×在籍年数×功績倍率」で計算される
- 役員報酬が低いと退職金の上限も低くなり、保険の解約返戻金を使いきれない場合がある
- 役員退職金規定を必ず書面で整備・保存しておく必要がある
- 解約返戻率のピークのタイミングと退職金計上のタイミングを合わせることが重要
- 高額退職金は税務調査でも問題になる可能性がある
失敗事例③ 保証額が足りず会社の借入金を返済できなかった
3つ目の失敗事例は、保証額が不足していて、社長に万が一のことがあった際に会社の借入金を返済できなかったケースです。これが生命保険の正しい考え方の核心部分です。
節税・貯蓄といった機能ばかりに目が向きがちですが、生命保険の一番大事な機能は「保証」です。いざという時に会社の倒産を防ぐことができるかどうか、ここが最も重要です。
たとえば、会社の借入金が1億円ある場合、必要な保険金(保証額)はいくらになるでしょうか。単純に1億円ではありません。
| 項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 短期債務の返済資金(借入金1億円に対して) | 約1億500万円 |
| (法人税率25〜32%を考慮した割り増し計算) | 保険金に課税されるため多めに必要 |
| 当面の運転資金 | 約2,000万円 |
| 合計(目安) | 約1億9,700万円(約2億円) |
📌 ポイント
保険金が入ってきてもそれに対して法人税(中小企業で25〜32%程度)が課税されるため、借入金の返済に必要な保険金額は借入金の額より多く設定する必要があります。必要な保証額は会社の試算表・決算書を見て個別に計算しましょう。
一人でやっていて借金もない会社であれば、それほど考えなくてもよいかもしれません。しかし、残された社員・社員の家族・取引先のことを考えると、保証をしっかり買うことは非常に重要です。会社の規模が大きくなればなるほど、この保証機能の重要性は増します。
📝 このセクションのまとめ
- 法人保険の最も重要な機能は「保証」であり、これが本来の正しい活用方法
- 借入金1億円の返済には、法人税課税を考慮して約1億500万円以上の保険金が必要
- 当面の運転資金も含めると、1億円の借入金に対して約2億円の保証が必要になる場合もある
- 必要な保証額は会社の決算書・試算表を見て個別に計算することが不可欠
法人保険の4つの機能と正しい活用の考え方
法人保険には大きく4つの機能があります。この優先順位を間違えると、ミスマッチな保険に加入してしまいます。
| 機能 | 内容 | 優先度 |
|---|---|---|
| 保証 | 社長が亡くなった時などに会社にお金が入る | 最重要 |
| 貯蓄 | 解約返戻金として積み立て効果がある | 重要 |
| 融資(契約者貸付) | 支払った保険料の中から融資を受けられる機能 | 有用 |
| 課税の繰り延べ | 法人税の支払い時期をコントロールできる | おまけ |
📌 ポイント
節税(課税の繰り延べ)はあくまで「おまけ」として考え、保証・貯蓄・融資機能を主目的として保険を選ぶのが正しい考え方です。まず保険に入る目的を明確にすることが一番大事です。
会社の目的別・法人生命保険の選び方
目的に合った保険を選ぶことが重要です。代表的な3つの目的と、それぞれに適した保険のタイプを解説します。
| 目的 | 保険の種類 | 特徴 |
|---|---|---|
| いざという時の保証を充実させたい | 定期保険(掛け捨て) | 比較的保険料が安い。貯蓄効果はほぼなし。保証だけを買う目的に最適 |
| 社長自身の退職金原資を確保したい | 長期平準定期保険 | 貯蓄しながら課税の繰り延べ効果もあり、保証も買える。中小企業経営者に最も人気 |
| 社員の福利厚生を充実させたい | 養老保険など | 成長中・拡大を目指す会社に人気。退職金制度として活用できる |
また、保証を買いながら財務体質を強化したいという目的には終身保険もあります。支払った保険料が資産計上されていくため、課税の繰り延べ効果はないものの、保証を買いながら財務状態を良くすることができます。
社員の退職金制度:中退共と生命保険の違い
社員の退職金制度として使われる主な選択肢には次のものがあります。
- 中小企業退職金共済(中退共)
- 養老保険などの法人生命保険
- 企業型確定拠出年金(企業型401k・法人版iDeCo)
中退共は保険料を全額経費に落とせるメリットがありますが、大きなデメリットがあります。退職金の支払い時に、中小企業基盤整備機構から直接社員本人にお金が支払われる仕組みになっているため、会社側がコントロールできません。
⚠️ 注意:中退共は懲戒解雇でも退職金が支払われる
中退共では、懲戒解雇になった社員に対しても退職金が支払われてしまいます。会社が「この人には払いたくない」と思っても、コントロールできないのです。
一方、法人生命保険(養老保険など)を活用した退職金制度では、解約返戻金は会社に入ってくるため、実際に社員に退職金を渡すかどうかを会社が選ぶことができます。退職金をコントロールしたい社長さんには、生命保険の活用が非常に有効です。
📝 このセクションのまとめ
- 法人保険の目的は「保証・貯蓄・融資・課税の繰り延べ」の4つ。保証が最優先
- 目的に合った保険タイプを選ぶことがミスマッチを防ぐ
- 社員の退職金制度として中退共は支払いをコントロールできないデメリットがある
- 法人生命保険は退職金の支払い可否を会社がコントロールできる
法人保険はどこで・誰から入ればよいか
法人保険に加入する際、どこで・誰から入るかも重要です。よくある加入経路と、それぞれの注意点を整理します。
| 加入経路 | 注意点 |
|---|---|
| 特定の生命保険会社の営業担当 | 1社の商品しか提案されない。月次キャンペーンなど営業都合で勧められる場合がある |
| 銀行などの金融機関 | 「融資のお付き合いだから」と断りにくい雰囲気になりやすい。ただし保険を断っても融資に影響することはほぼない |
| 顧問税理士・会計事務所経由 | 事務所が代理店になっている場合、特定1社の商品しか提案されないことがある |
| 総合代理店(推奨) | 複数の保険会社の商品を比較できる。返戻率のピークや商品内容を比較した上で選べる |
📌 ポイント
法人保険は保険会社によって商品内容が大きく異なります。解約返戻率のピークが何%か・いつ来るかも保険会社によってまちまちです。特定の1社だけを見て決めるのは避け、複数社の商品を比較できる総合代理店に相談することをおすすめします。
銀行の担当者から保険を勧められることも非常に多いですが、保険を断ったからといって融資がおりなくなることはほぼないと断言できます。銀行の融資と保険の話は、ほぼほぼ連動しないと考えて問題ありません。
また、どこから加入するにしても最も大切なのは、内容をしっかり理解した上で入ることです。「よくわからないけど経理に任せてある」「勧められたからとりあえず払っている」という状態は非常に危険です。理論武装をして、分かった上で加入しましょう。
📝 このセクションのまとめ
- 法人保険は複数社の商品を比較できる総合代理店への相談がおすすめ
- 銀行の付き合いで保険に入る必要はない。断っても融資への影響はほぼない
- 内容を理解した上で加入することが最も重要
- 今入っている保険が本当に必要かどうか、専門家にセカンドオピニオンを求めることも有効
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!
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