法人成りで消費税を最大8割節税|2割特例の活用法を税理士が解説
インボイス制度後も、法人成りと2割特例の組み合わせで消費税を最大8割節税できます。
「法人化のメリットが消えた」は本当か?
インボイス制度がスタートして以来、「法人化することによる消費税の節税メリットがなくなってしまった」という声をよく耳にします。しかし、それは正確ではありません。メリットは結構残っています。
従来のように簡単に4年間の消費税を免除してもらえる、という形は確かに難しくなりました。ただし、2割特例という制度を使えば、消費税を最大8割節税することが可能です。今回は「法人成り」と「2割特例」を組み合わせた活用方法を詳しく解説します。
📌 この記事で分かること
- 法人化(法人成り)のメリット・デメリット
- 消費税の免税制度の基本的な仕組み
- 2割特例の詳細と適用要件
- 個人事業主が法人成りする際の消費税節税ポイント
📝 このセクションのまとめ
- インボイス制度後も法人成りによる消費税節税メリットは残っている
- 2割特例を活用すれば消費税を最大8割節税できる
法人化のメリット・デメリットを整理する
物事をスタートする時は、周りの声を鵜呑みにするのではなく、必ずメリット・デメリットを比較することが大切です。法人(会社)として起業する場合のメリット・デメリットを確認しましょう。
| 項目 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 信用力 | 個人に比べて高い。金融機関からの資金調達や採用にも有利 | 登記簿で代表者の個人住所まで公開される |
| 所得税・法人税 | 最高税率が個人(所得税+住民税で最大55%)より低く、法人は25〜32%程度で済む | 赤字でも法人住民税の均等割(年間約7〜8万円)が発生する |
| 消費税 | うまく活用すれば消費税の節税が可能 | 設立・運営コストがかかる(合同会社で約6〜10万円、株式会社で約20万円) |
| 社会保険 | ― | 社会保険が強制加入となる |
| 経理・会計 | ― | 個人より複雑になり、会計事務所への報酬も高くなる傾向がある |
個人的には、起業する際はまず個人事業主・フリーランスとしてスタートし、様子を見てから法人化に移行するステップを踏むことをお勧めします。そのようにした方が、消費税の節税メリットをたくさん受けられる可能性が高いからです。
ただし、大切な取引先が「法人でないと取引できない」という場合は、最初から法人化せざるを得ません。また、事業を積極的に拡大して設備投資・資金調達・採用を考えていく場合も、法人の方が有利と言えます。
📝 このセクションのまとめ
- 法人の所得税負担は最大32%程度で、個人の最大55%より低い
- 設立・運営コストや社会保険強制加入などのデメリットもある
- まず個人事業でスタートし、法人化へ移行するステップが基本
消費税の免税制度の基本的な仕組み
事業活動を行っていれば、売上に対して消費税(8%または10%)を受け取り、仕入れ先や外注先への支払いには消費税を含めて支払います。原則として、受け取った消費税から支払った消費税を引いた差額を国に納めなければなりません。
しかし消費税法には、この納税を免除する「免税制度」があります。
📌 免税の基本ルール
基準期間(ざっくり2年前)の課税売上高が1,000万円以下であれば、その年度は消費税の納税が免除されます。
- 個人事業主の場合:開業1年目・2年目はほぼ無条件で免税
- 法人の場合:設立初年度(第1期)・第2期が対象(ただし条件あり)
例えば令和5年1月1日に個人事業をスタートした場合(インボイス未登録を前提)、1年目・2年目は免税となります。3年目以降は、2年前(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超えていれば課税事業者となります。
法人の場合は、さらに以下の条件を満たす必要があります。
- 資本金が1,000万円未満であること
- 大企業の子会社などでないこと
⚠️ 注意:資本金の設定に要注意
何も知らずに資本金1,000万円以上で法人を設立してしまうと、消費税の免税特例が受けられなくなります。大企業の子会社の場合も同様です。
また、「特定期間」というルールもあります。特定期間とは「前の年の最初の半年間」のことで、この期間の売上が1,000万円を超えていると、その年度は課税事業者となってしまいます。ただし、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えていても、給与の支払い総額が1,000万円を超えていなければこの規定には引っかかりません。
📝 このセクションのまとめ
- 基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円以下なら免税
- 法人は資本金1,000万円未満・大企業子会社でないことが条件
- 特定期間(前年の上半期)の売上・給与が共に1,000万円超なら課税事業者になる
消費税の計算方法3種類と2割特例とは
消費税の計算方法は、従来は「本則課税」と「簡易課税」の2種類でしたが、インボイス制度スタートと同時に「2割特例」が加わり、3種類になりました。
| 計算方法 | 概要 | 向いている業種・状況 |
|---|---|---|
| ①本則課税 | 受け取った消費税-支払った消費税=納税額 | 経費・仕入れが多い赤字事業者 |
| ②簡易課税 | 受け取った消費税×業種ごとのみなし仕入率で計算 | 卸売業など仕入率の高い業種 |
| ③2割特例 | 受け取った消費税×20%のみ納税 | 多くのフリーランス・個人事業主 |
具体例で見てみましょう。ライターで売上500万円(消費税50万円受け取り)、経費100万円(消費税10万円支払い)のケースで比較します。
| 計算方法 | 計算式 | 納税額 | 節税効果 |
|---|---|---|---|
| 本則課税 | 50万円-10万円 | 40万円 | ― |
| 簡易課税(ライター:50%) | 50万円×50% | 25万円 | 15万円お得 |
| 2割特例 | 50万円×20% | 10万円 | 30万円お得 |
2割特例を使えば、本則課税と比べて30万円の節税になります。支払った消費税の控除はできませんが、受け取った消費税の8割をカットできるわけです。
なお、簡易課税には以下のような制約があります。
- 基準期間の課税売上高が5,000万円以下であること
- 事前の届出が必要
- 一度選択すると原則2年間は継続適用しなければならない
📝 このセクションのまとめ
- 2割特例は受け取った消費税の2割だけ納めればよい画期的な制度
- ライターの例では本則課税40万円→2割特例10万円で30万円の節税
- 簡易課税は事前届出・2年継続適用などの制約がある
2割特例の適用要件と注意点
2割特例は非常に有利な制度ですが、細かな要件があります。ミスをする人も多いので、しっかり確認しておきましょう。
📌 2割特例の適用期間
令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間が対象です。
- 個人事業主の場合:令和5年〜令和8年の最大4回
- 3月決算法人の場合:令和6年3月期〜令和9年3月期の最大4期
2割特例が使えるのは、インボイス登録によって免税事業者から課税事業者になった場合のみです。
以下のケースでは2割特例は使えませんのでご注意ください。
- 基準期間の課税売上高が1,000万円を超えており、インボイス登録の有無にかかわらず課税事業者になる場合
- 資本金1,000万円以上で法人を設立した場合
- 消費税課税事業者選択届出書を自ら提出して課税事業者になった場合
⚠️ 最重要注意:届出書の混同に要注意
インボイス登録の届出と、消費税課税事業者選択届出書は別のものです。インボイス登録と同時に誤って「消費税課税事業者選択届出書」を提出してしまった場合、2割特例が使えなくなります。
この届出書を出してしまった方は、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出することで取り下げることができます(ただし、以前から課税事業者の選択をしている場合はすぐの取り下げはできません)。急いで手続きされることをお勧めします。
なお、2割特例には事前の届出は一切不要です。消費税の確定申告書に2割特例を使っている旨と、それに基づいた計算を記載すればOKです。また、簡易課税のような2年継続適用などの要件もありません。
📝 このセクションのまとめ
- 2割特例はインボイス登録で免税→課税になった場合のみ適用可能
- 適用期間は令和5年10月〜令和8年9月末までの各課税期間
- 消費税課税事業者選択届出書を誤って出すと2割特例が使えなくなる
- 2割特例に事前届出は不要、2年継続適用の縛りもない
個人事業主が法人成りする際の消費税節税ポイント
ここからが本題です。個人事業主が法人成りする際に、2割特例をどう活用するかを解説します。
例えば、令和5年に売上が1,000万円を超えた個人事業主がいたとします。インボイス登録によって免税から課税事業者になったこの方は、令和5年・令和6年は2割特例を使うことができます。
しかし、令和7年から見ると、基準期間(令和5年)の課税売上高が1,000万円を超えているため、令和7年は2割特例が使えません。さらに令和6年も売上が1,000万円を超えているなら、令和8年も2割特例は使えず、本則課税か簡易課税を選ばなければなりません。
📌 法人成りによる「基準期間のリセット」
そこで令和6年中に個人事業を廃業して法人化するわけです。法人化することで、消費税の基準期間の判定がリセットされます。
令和7年に法人化した場合、その法人の基準期間の課税売上高は個人事業時代の数字ではなく、法人としての基準期間の売上高(=0円)で判定されます。個人と法人は別の事業者だからです。
この状態で新たにインボイス登録をすることで、免税事業者からインボイス登録によって課税事業者になったとみなされます。その結果、令和7年・令和8年も2割特例が使えるということになります。
| 年度 | 法人成りなし(個人継続) | 令和6年中に法人成り |
|---|---|---|
| 令和5年 | 2割特例 ✅ 使える | 2割特例 ✅ 使える(個人) |
| 令和6年 | 2割特例 ✅ 使える | 2割特例 ✅ 使える(個人) |
| 令和7年 | 2割特例 ❌ 使えない(基準期間売上1,000万超) | 2割特例 ✅ 使える(法人・基準期間リセット) |
| 令和8年 | 2割特例 ❌ 使えない | 2割特例 ✅ 使える(資本金・特定期間の要件クリアが条件) |
なお、令和9年以降は現行税制では2割特例が使えなくなります。ただし今回のお話はあくまでも消費税のみに焦点を当てたものです。法人化することで所得税から法人税に変わり、法人税の節税策が使えるようになるメリットも別途あります。
⚠️ 税金だけで判断しないこと
事業をやっていくにあたって税金が全てではありません。あくまでも事業がうまくいくことが最優先で、その次に税金の話です。優先順位を混同しないようにご注意ください。法人化するかどうかは、消費税だけでなく所得税・社会保険・事業拡大の方向性などをトータルで考えて判断してください。
📝 このセクションのまとめ
- 売上が1,000万円を超えると個人では令和7年以降2割特例が使えなくなる
- 令和6年中に法人化すれば、法人として基準期間がリセットされ令和7年・8年も2割特例を使える
- 法人化の判断は消費税だけでなく、事業全体をトータルで考えること
マイクロ法人の活用と法人成りの応用的な考え方
個人事業主の方から「個人と法人を分けてマイクロ法人を作り、社会保険料の削減をしたい」というご相談もよくあります。
マイクロ法人については以下のように考えると整理しやすいです。
| 状況 | マイクロ法人のメリット |
|---|---|
| 小規模でずっと運営していく場合 | メリットあり(社会保険料削減効果が見込める) |
| 事業拡大を考えている場合 | メリットは非常に低い |
| 期間限定で捉えている場合 | 活用を検討する価値あり |
また、法人設立時には登録免許税を半額にできる節税策もあります。法人成りを検討されている方はこういった設立コストの削減策も合わせて検討してみてください。
📝 このセクションのまとめ
- マイクロ法人は小規模・期間限定での活用に向いている
- 事業拡大を目指す場合はマイクロ法人のメリットは低い
- 法人設立時は登録免許税を半額にできる節税策も活用できる
まとめ:2割特例×法人成りで消費税を最大8割節税
従来のように簡単に4年間の消費税免税を受けることは難しくなりましたが、2割特例を使えば消費税を最大8割節税できます。これが今回の結論です。
📌 法人成り×2割特例の活用ポイント整理
- 個人事業でインボイス登録をして免税→課税になった場合、2割特例が使える
- 売上が1,000万円を超えると個人では2年後から2割特例が使えなくなる
- そのタイミングで法人化することで基準期間がリセットされ、再度2割特例が使える
- 法人設立時は資本金を1,000万円未満に設定し、インボイス登録のみ行う(課税事業者選択届出書は出さない)
- 2割特例の適用は確定申告書に記載するだけでOK(事前届出不要)
2割特例を使うためには細かな要件があります。特にインボイスの届出と同時に「消費税課税事業者選択届出書」を誤って提出してしまった方は、急いで取り下げの申請(消費税課税事業者選択不適用届出書の提出)をされることをお勧めします。
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!
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