節税のつもりが脱税に!税理士が解説するSNSで拡散される危険な節税スキーム3選
SNSやYouTubeで話題の節税スキームが、実は脱税になるかもしれません。旅費日当・業務委託・関連会社取引の3つについて、税理士目線で危険ポイントを徹底解説します。
SNSで拡散される節税情報の危険性
「法人の場合、出張旅費日当で社長が1日何万も受け取って節税できる」「社員を全員業務委託にしたらめちゃめちゃ節税できる」――こういった情報がSNSやYouTubeで拡散されています。
⚠️ 注意
SNSでバズっていたから、あるいはYouTubeでおすすめされていたから、そんな軽い気持ちで税金の削減をしようとすると、税務調査でとんでもないことになるかもしれません。今回は実際に質問を受ける特に危険なスキームについて、プロの税理士目線で解説します。
今回取り上げるのは以下の3つのスキームです。これらが「全て悪い」わけではありませんが、誤った使い方をすると脱税扱いになる非常に危険なものです。
- 過大な旅費日当
- 実態なき業務委託契約
- 関連会社を活用したグレーな利益移転
📝 このセクションのまとめ
- SNS・YouTubeで拡散される節税情報には危険なものが多い
- 軽い気持ちで実行すると税務調査で大きなペナルティを受ける可能性がある
- 今回は特に質問の多い危険な3スキームを解説する
スキーム①:過大な旅費日当
出張旅費日当は、個人では使えない法人ならではのスキームです。この制度自体が悪いわけではありません。まず正しい仕組みを理解しましょう。
📌 旅費日当の正しい仕組み
会社で働いている社長や社員が業務上の理由で出張した際に、会社からその人に対して旅費を支給するというものです。実際にかかった交通費・宿泊費とは別に支給することも可能ですし、実費精算をせずに「1出張につきいくら」という形で日当を支給することもできます。
なぜ旅費日当が人気なのかというと、受け取る側で課税されないという非常に大きなメリットがあるからです。通常、会社から給与を受け取ると所得税・住民税の課税対象になりますが、旅費日当として受け取ればお金を受け取っているにもかかわらず非課税となります。さらに社会保険料もかかりません。法人側は経費になって節税になるという、両者にとってメリットのある制度です。
ただし、旅費日当を適正に運用するためには2つの重要な要件があります。
- 要件①:出張旅費規定の整備と運用――規定を作り、出張のたびに集計して毎月役員報酬や給与と一緒に旅費日当を支給する運用が必要。ネットで拾えるテンプレートでも構わないが、金額設定を明記して社内に保存・運用すること。これがなければ実態がないとして経費否認される可能性がある。
- 要件②:金額設定が適正であること――これが最も重要なポイント。
所得税法の基本通達では、旅費日当を受け取る側で課税されないための条件として以下の2点が示されています。
- 支給する会社の役員・従業員全員を通じて、適正なバランスが保たれた基準によって計算されたものであること
- 支給額が、同業種・同規模の他の会社が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであること(=世間相場通りかどうか)
税務調査で見られるのは、日当1日あたりの金額がいくらかというところです。では、いくらなら妥当なのでしょうか。税の条文にはどこにも書かれていませんが、肌感覚としての安全ラインは以下の通りです。
| 対象者 | 1日あたりの安全ライン(国内出張) | 備考 |
|---|---|---|
| 代表取締役社長 | 5,000円〜1万円程度 | 大阪〜東京間の出張を想定した肌感覚 |
| 一般社員(平社員) | 1,000円程度 | 世間相場を意識した金額 |
| 海外出張の場合 | 2万〜3万円程度 | 認められた事例あり |
「ちょっと電車でクライアント訪問した程度で1日3万円」というのは完全にアウトです。会社員として勤めていたとき、出張日当として1日何万円も支給してくれる会社はありませんよね。それが世間相場です。
それ以上の金額を支給しているケースもありますが、それはたまたま税務調査が入っていないだけか、調査が入ったけれども他の項目が色々あってたまたまスルーされただけという可能性があります。
なお、同業他社の旅費規定があれば、それを根拠として否認されそうになったときの対抗策として活用できます。
⚠️ 経費否認された場合のペナルティ
過大な旅費日当が経費否認されると、順等に行けば役員賞与扱いになります。役員賞与は原則として経費に落とせないため、その分の法人税(取り消された経費の約25〜30%)の負担が増加します。さらにペナルティ(加算税・延滞税)が上乗せされます。加えて、役員賞与は個人の給与扱いになるため所得税・住民税もかかる、つまりダブル課税になります。
📝 このセクションのまとめ
- 旅費日当制度自体は合法の法人限定スキームで、受取側は非課税・社会保険料もかからない
- 出張旅費規定の整備・運用と、世間相場に沿った金額設定の2点が必須要件
- 社長の国内出張で1日5,000円〜1万円、一般社員で1,000円程度が安全ライン
- 過大支給が否認されると役員賞与扱いとなり、法人税+所得税・住民税のダブル課税になる
スキーム②:実態なき業務委託契約
「社員を全員業務委託に切り替えたら社会保険も払わなくていいし、消費税も安くなる」という話を聞いたことがある方も多いでしょう。理論上はそうですが、適当にやってしまうと完全にアウトです。
まず、会社が他の人に仕事をお願いする方法は基本的に2つあります。
| 契約形態 | 雇用契約(給与) | 業務委託契約(外注費) |
|---|---|---|
| 報酬の性質 | 時間=労働対価(月給・時給) | 成果物・案件単位で報酬 |
| 身分 | 会社員(労働者) | 個人事業主扱い |
| 社会保険 | 加入義務あり | 適用除外 |
| 残業代・退職金 | 支払い義務あり | 不要 |
| 消費税 | 課税対象外 | 課税対象(インボイスがあれば仕入税額控除可) |
| 経理科目 | 給与 | 外注費・支払手数料など |
業務委託契約は法的には「業務委託契約」という言葉は民法上に厳密には存在せず、請負契約・委任契約・準委任契約、またはこれらの混合的な発注の仕方を総称して「業務委託契約」と呼んでいます。
業務委託契約の節税メリットを具体的な数字で確認
なぜ業務委託契約が好まれるのか、具体的な数字で見てみましょう。
【前提条件】売上1,000万円、その人への支払い550万円(インボイス登録済みの場合)
| 項目 | 雇用契約(給与)の場合 | 業務委託契約の場合 |
|---|---|---|
| 売上(税抜) | 1,000万円 | 1,000万円 |
| 経費(税抜) | 給与550万円 | 外注費500万円(税抜) |
| 課税所得 | 450万円 | 500万円 |
| 法人税(約25%) | 約113万円 | 約125万円 |
| 消費税(売上分) | 100万円 | 100万円 |
| 仕入税額控除 | 0円(給与は課税対象外) | 50万円(外注費の消費税分) |
| 納付消費税 | 100万円 | 50万円 |
| 合計税負担 | 213万円 | 175万円 |
業務委託契約にすることで、この例では38万円の節税になります。法人税は若干増えますが、消費税が大幅に削減できるためです。
📌 インボイスがない場合は注意
業務委託の相手がインボイスを持っていなければ、消費税の仕入税額控除は受けられません。その場合、消費税の計算は雇用契約の場合と同じになってしまいます。節税効果を得るには、相手がインボイス登録済みであることが条件です。
また、業務委託契約には消費税節税以外にもメリットがあります。
- 労働基準法の適用除外(社会保険に加入しなくてよい)
- 残業代・退職金の支払い義務なし
- 給与計算などの経理事務が不要
業務委託の実態判定基準と税務調査での狙われ方
業務委託契約そのものが悪いのではありません。問題なのは、実態は雇用契約・給与扱いなのに、形だけを外注費にしているケースです。これは税務上アウトです。
特に決算処理で外注費や支払手数料という勘定科目は最も怪しまれます。金額が膨らんでいたり多額になっているときは、税務調査で狙われやすい科目です。
実態判定は以下の基準を総合的に見て判断されます。
| 判定基準 | 雇用契約(給与)の特徴 | 業務委託の特徴 |
|---|---|---|
| 業務の拒否権 | 上司の指示は基本断れない | 「この仕事はできません」と断ることが可能 |
| 専属性 | 原則専属(副業は例外) | 複数の会社から仕事を受けることが可能 |
| 業務の指揮監督 | 強め(場所・時間の指定あり) | 場所・時間の拘束なし |
| 報酬の算定根拠 | 月給・時給(時間=対価) | 1案件いくらという成果報酬 |
| 手続き | 雇用契約書 | 業務委託契約書→請求書発行→入金確認 |
例えば、動画編集やサムネイル制作を外部の方にお願いしている場合、これらは上記の業務委託の特徴に全て当てはまります。こういう形であれば全く問題ありません。
⚠️ 絶対にやってはいけないケース
毎日会社に通勤させて、他の会社に行くこともなく、時間給で仕事をさせている――これは明らかに雇用契約です。このような実態で業務委託契約を結んでいると、税務調査で否認された場合に消費税の仕入税額控除が取り消されます。さらに、現在働いている社員を無理やり業務委託に切り替えると不当解雇となり、労働基準法上の問題に発展する可能性があります。これは旅費日当よりも重い話です。
📝 このセクションのまとめ
- 業務委託契約は、インボイス登録済みの相手なら消費税節税効果があり、社会保険負担もなくなる合法的な契約形態
- 実態が雇用契約なのに形だけ外注費にするのは税務上アウト
- 外注費・支払手数料の科目は税務調査で特に狙われやすい
- 実態判定は「拒否権・専属性・指揮監督・報酬算定根拠」を総合的に判断される
- 社員を無理やり業務委託に切り替えると不当解雇となり労働基準法上の問題も発生する
スキーム③:関連会社を活用したグレーな利益移転
「会社を2つ・3つと複数作って、1つを赤字にして、黒字の会社からその赤字の会社に経費を払って税金を逃す」――これはどうでしょうか。
胸に手を当てて考えてみてください。胸を張って自分の子どもに言えますか?それが答えです。
具体的な仕組みを説明します。皆さんの会社が黒字で、売上1,000万円・経費なしだとすると、利益1,000万円に対して約250〜300万円の法人税を負担しなければなりません。この税金を払いたくないということで、悪いことを考えるわけです。
自らもう1つ法人という箱を作る、あるいは知り合い・友人の会社を活用して、「外注費800万円があります」という形でその会社に経費を支払います。受ける側の赤字企業では売上800万円が立ちますが、過去の赤字が1,000万円残っていれば、売上800万円を計上しても利益は▲200万円のまま。A社の方は利益が200万円だけになり、結果的に払うべき法人税が約50万円程度に圧縮できてしまうというスキームです。
⚠️ これは脱税です
実態のない外注費やコンサル料などの名目で支払うのは完全にアウトです。これはグレーな節税ではなく脱税です。実態のない経費を支払うことは「仮装隠蔽」に値し、単なる税務調査の申告漏れではなく脱税扱いになります。最も罪が重い形になりますので、くれぐれもこのようなスキームに飛びつかないようにしてください。
また、同族会社・関連会社間の取引は税務当局が非常にシビアに見ます。社長が同一であったり、異なる社長でも親族であったりする場合、値決めも自由にできてしまうため、恣意的な利益移転が行われる可能性があるとして、特に厳しくチェックされます。実際に税理士事務所の調査を受けた際も、関連する併設の株式会社との関連性は非常に細かく見られました。
では、実態があればOKなのかというと、実態があればOKですが、いきなり800万円計上するような無茶な金額はアウトです。例えば以下のようなケースは現実的です。
- 完全親会社にロイヤリティ的なものを支払う
- グループ企業として経理業務を一括管理している会社に手数料を支払う
ただし、払えたとしても月5万円・10万円程度が限界であり、実態や業務内容次第ではそれ以上の高額な経費計上はできません。
関連会社(複数法人)を持つことのメリットとデメリット
節税目的以外で関連会社・複数法人を持つことには、正当なメリットもあります。
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 低税率の複数適用 | 課税所得800万円まで約25%(超過分は約32%)の低税率が会社の数だけ適用可能。さらに400万円まではもう1段税率が下がる。 |
| 消費税の免税ライン | インボイスがないとするなら売上1,000万円までが免税ライン。会社が複数あれば使いやすくなる。 |
| 軽減税率(簡易課税) | 売上5,000万円以下の小規模事業者しか使えない簡易課税が、2社あれば両社で適用可能になる場合がある。 |
| 交際費の枠 | 中小企業は年間800万円の交際費枠があり、2社分なら1,600万円使える。 |
| 経営セーフティ共済 | 倒産防止共済(経営セーフティ共済)も2社で活用可能。 |
| 相続税対策 | グループ通算税制の活用や、自社株評価の引き下げにつながる場合がある。 |
一方で、複数法人を持つことのデメリットも多くあります。
- 法人住民税均等割り(赤字でも年間約7〜8万円)が2社分かかる
- 税務申告コストが2社分かかる
- 基本的に別会社なので黒字と赤字の相殺が難しく節税しにくい
- 経理書類の整備や経理処理が面倒になる
- 関連会社間取引のリスクが上がる
- 場合によっては自社株の評価が上がって相続税対策に使えなくなることもある
📌 関連会社を作るなら正当な理由を
業種・業態で分ける、ブランディングのためにやる、将来的に子会社として切り離して売却することを想定して別会社を作る――こういった正当な目的があるなら全く問題ありません。節税のためだけに会社を安易に作ることはお勧めしません。儲けるため・利益を出すために関連会社を作っていくという形での正当な理由があればOKです。
📝 このセクションのまとめ
- 赤字の関連会社に実態のない経費を流すのは脱税(仮装隠蔽)であり最も罪が重い
- 同族会社・関連会社間の取引は税務当局が特にシビアに見る
- 複数法人には低税率の複数適用・交際費枠の拡大などのメリットはあるが、コスト・手間も2倍になる
- 節税のためだけに関連会社を作るのは専門家として反対。正当な事業目的がある場合はOK
まとめ:3つのスキームの正しい使い方
今回取り上げた3つのスキームについて、改めて整理します。
| スキーム | 制度自体はOK? | アウトになるケース | 安全に使うポイント |
|---|---|---|---|
| 旅費日当 | ○(法人限定) | 世間相場を大幅に超える金額・規定なし | 旅費規定の整備+社長1日5,000〜1万円以内 |
| 業務委託契約 | ○(実態があれば) | 実態が雇用なのに形だけ外注費 | 実態判定基準をクリアした真の業務委託のみ |
| 関連会社取引 | ○(正当な目的があれば) | 実態のない経費を関連会社に流す | 正当な事業目的・適正な金額での取引のみ |
これら3つは全て悪いわけではありません。正当な取引として適正な形でやっていれば何ら問題ありません。ただし、SNSやYouTubeで拡散されている「簡単に節税できる」という情報を鵜呑みにして安易に実行すると、税務調査でとんでもないことになりかねません。
⚠️ 最終確認:安易なスキームに飛びつかないために
実態のない経費を支払うことは「仮装隠蔽」に値し、単純な申告漏れではなく脱税扱いとなります。税務調査で最も罪が重い形になりますので、くれぐれも安易にこのようなスキームに飛びつかないようにしてください。不安な点は必ず専門家に相談することをお勧めします。
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!
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