株の配当金550万まで所得税ゼロでも国民健康保険料が爆増?税理士が解説する確定申告の落とし穴

株の配当金550万まで所得税ゼロでも国民健康保険料が爆増?税理士が解説する確定申告の落とし穴
e_zeirishi

確定申告で所得税ゼロでも、国民健康保険料が跳ね上がって結局損するケースがあります。

前回動画の補足:国民健康保険料の解説が漏れていた

前回の動画では、年収160万円の壁の創設による株式投資・主に配当金の課税への影響について解説しました。しかしその内容が所得税と住民税だけで終わってしまっていました。

会社員などの社会保険加入者には関係ないのですが、国民健康保険に加入されている方——個人事業主や自営業の方、年金受給者の方など——は、実は国民健康保険料の負担がかなり上がるケースがあります。その解説が完全に漏れており、誤解や混乱を招く結果となってしまいました。大変申し訳ありませんでした。

今回はその補足版として、「株の配当550万まで所得税ゼロでも、国民健康保険料が爆増して確定申告したら結局大損するって本当なのか?」というテーマで、株式投資の税金について数字を使ってしっかり解説します。

📌 前回動画の結論(おさらい)

  • 株式投資のみで食べており他に収入がない前提で、年間43万円までであれば所得税も住民税もかからない(無税)
  • 株の配当だけであれば年間550万円までであれば所得税が0になる
  • ただし、これには確定申告が必須条件

→ しかし、国民健康保険加入者には国保負担アップがついてくるため、単純に「確定申告すればお得」とは言えません

📝 このセクションのまとめ

  • 前回動画は所得税・住民税のみの解説で、国民健康保険料の影響が抜けていた
  • 国保加入者は確定申告によって保険料が大幅に増える可能性がある
  • 今回はその補足として、国保負担を含めたトータルの税負担を検証する

令和7年度税制改正:基礎控除の改正内容をおさらい

今回の解説は令和7年度税制改正と絡めて進めます。まず基礎控除について確認しましょう。基礎控除とは、給与所得者以外であれば誰もが適用される税金の控除制度です。

昨年まではベースとなる金額が48万円だったのが、今回の改正でマックス95万円まで上がります。ただし所得が増えるにつれて段階的に減少します。

所得金額所得税の基礎控除額(令和7〜8年)備考
132万円以下95万円給与年収200万円強相当
132万円超〜88万円令和7・8年限定
68万円令和7・8年限定
63万円令和7・8年限定
58万円令和9年以降も適用
2,350万円超0円控除なし

⚠️ 注意

基礎控除の改正は所得税のみの話です。住民税の基礎控除は従来の43万円から据え置きとなっています。通常は所得税が変われば住民税の計算も変わるのですが、地方税収などの事情からなぜか住民税は置き去りになっています。これに連動して、住民税の非課税世帯の判定基準(所得45万)も据え置きのままです。

📝 このセクションのまとめ

  • 所得税の基礎控除は最大95万円に引き上げ(所得132万円以下の場合)
  • 88万・68万・63万のラインは令和7・8年限定で、令和9年以降は58万に統一
  • 住民税の基礎控除は43万円のまま据え置き

証券口座の種類と確定申告の基本:特定口座・一般口座・NISA

株式投資をする際、証券口座を開設します。現在はネット証券が中心ですが、口座の種類は大きく3つに分かれます。

  • NISA口座:非課税口座のため、税金が一切かからない。今回の話には関係なし
  • 特定口座(源泉徴収あり):税金の計算から徴収まで証券会社が全て行う。確定申告不要で便利だが、税金が自動的に徴収される
  • 一般口座:自分で確定申告が必要

特定口座(源泉徴収あり)で放置している場合でも、自ら確定申告することは可能です。確定申告することで初めて受けられる控除があり、それが基礎控除配当控除です。

📌 配当控除とは?

配当控除は税額控除(免税制度)で、所得税最大10%、住民税最大2.8%をカット・免除してもらえる制度です。

  • 大前提として、確定申告で総合課税を選ぶことが必須条件
  • 外国株式やJ-REITは対象外
  • 特定口座(源泉徴収あり)で放置していると受けられない(20.315%徴収されたまま終わり)
  • 所得が大きい場合や投資信託の分配金が含まれる場合は、10%の割合が変わって小さくなることもある

📝 このセクションのまとめ

  • 特定口座(源泉徴収あり)は便利だが、確定申告しないと配当控除が受けられない
  • 配当控除は総合課税での確定申告が必須条件
  • 外国株・J-REITは配当控除の対象外

事例①:配当金95万円の場合——所得税・住民税・国保の比較

前提条件として、株の配当金だけを受け取っており(売却なし)、年間95万円の配当がある場合を見ていきます。

まず確定申告をしない(申告不要・分離課税)の場合、特定口座(源泉徴収あり)では所得税15.315%、住民税5%が自動的に徴収されます。

項目確定申告なし(申告不要・分離課税)確定申告あり(総合課税)
配当金(年間)95万円95万円
所得税の基礎控除なし95万円(改正後)
住民税の基礎控除なし43万円(据え置き)
所得税額14万5,492円(15.315%)0円(課税所得0)
住民税額4万7,500円(5%)2万9,400円(配当控除後)
所得税・住民税 合計約19万円約3万円

確定申告をした場合の住民税の計算を補足します。課税所得は95万円 − 43万円(住民税基礎控除)= 52万円となり、税率10%をかけると5万2,000円。そこに均等割(都道府県・市区町村に住所を置く場所代のような税金で大体4,000円程度)を加えると5万6,000円。さらに配当控除(2.8%=2万6,600円)を引いて2万9,400円となります。

所得税・住民税だけを見れば、確定申告した方が約16万円もお得という計算になります。しかし、ここで終わりではありません。

国民健康保険料を加えると話が変わる

会社員の方は社会保険に加入しており、健康保険料は給与額面で決まるため株の利益は全く関係ありません。しかし個人事業主・自営業の方や年金受給者の方など、国民健康保険に加入している方は所得に応じて保険料が跳ね上がります

以下は大阪市・40歳以上・扶養家族0人の条件で計算した事例です(配偶者等がいる場合も、その方がパートや勤務先で社会保険に加入しているという前提)。

項目確定申告なし(申告不要)確定申告あり(総合課税)
所得税14万5,492円0円
住民税4万7,500円2万9,400円
国民健康保険料3万2,000円(所得なし・一部免除)16万4,000円
トータル負担22万4,992円19万3,400円

📌 事例①の結論(配当金95万円・大阪市の場合)

国保料を含めたトータルで比較すると、確定申告した方が約3万円お得という結果になります。所得税・住民税だけで見ると16万円の差があったのが、国保料の増加によって差が縮まります。ただしこれは大阪市(保険料率がやや高い自治体)の場合です。

東京都渋谷区の場合、国保料は大阪市より安く約13万円程度になるため、渋谷区でもこの所得レベルであれば確定申告した方がまだお得という結論になります。

⚠️ 注意

国民健康保険料は自治体によって保険料率が全く異なります。また扶養家族の人数によっても変わります。確定申告をする前に、必ずお住まいの自治体の国民健康保険料シミュレーションで事前確認することを強くお勧めします。

📝 このセクションのまとめ

  • 配当金95万円・大阪市の場合、国保料込みでもトータルでは確定申告した方が約3万円お得
  • 確定申告すると国保料が3万2,000円→16万4,000円に跳ね上がる
  • 自治体・扶養家族人数によって結果は大きく変わるため、事前シミュレーションが必須

事例②:配当金550万円の場合——確定申告すると7万円損する!?

次に、タイトルにある配当金550万円の事例を見ていきます。550万円という数字は、配当控除を使ってちょうど所得税がほぼ0になるラインとして試算した金額です。

確定申告なし(申告不要・分離課税)の場合

配当金が年間550万円ある場合、特定口座(源泉徴収あり)では以下の税金が自動徴収されます。

  • 所得税(15.315%):84万2,325円
  • 住民税(5%):27万5,000円
  • 合計:約110万円

確定申告あり(総合課税)の場合

550万円の所得になると基礎控除は63万円(95万円は受けられない)となります。住民税の基礎控除は43万円のままです。課税所得を計算して税率をかけると、所得税は累進課税で税率も上がり54万6,500円、住民税(均等割含む)は51万1,000円となります。

そこから配当控除を引きます。所得税の配当控除は550万円の10%で55万円、住民税は2.8%で15万4,000円。結果、所得税は0円、住民税は35万7,000円となります。

所得税・住民税だけを比べると確定申告した方が約80万円も安くなる計算です。しかし、ここでも国保料を加えると話が変わります。

項目確定申告なし(申告不要)確定申告あり(総合課税)
所得税84万2,325円0円
住民税27万5,000円35万7,000円
国民健康保険料(大阪市)3万2,000円(所得なし・一部免除)86万2,000円
トータル負担114万9,325円121万9,000円

⚠️ 注意

大阪市の場合、配当金550万円で確定申告すると、トータルの負担が約7万円も損する結果になります。国保料が86万2,000円という非常に高い金額になるためです。確定申告すれば所得税はゼロになっても、国保料の増加がそれを上回ってしまいます。

一方、東京都渋谷区の場合は国保料が約72万円に変わるため、渋谷区であればまだ確定申告した方が約7万円有利という結果になります。このように自治体によって計算が大幅に変わるため、非常に厄介です。

また、後期高齢者の方などは、所得が上がることで窓口での医療費負担が3割に跳ね上がったりするケースもあります。年間の医療費のことも考えると、単純に税額・保険料だけで判断するのはリスクがあります。

📌 国保加入者が確定申告してお得になるケース

国民健康保険加入者が確定申告をした方がお得になるのは、主に以下のケースです。

  • 複数の証券口座を持っていて、どちらかの口座で大きな損失(赤字)がある場合
  • 確定申告で申告分離課税を選択すると、利益と損失を相殺(損益通算)できる
  • 相殺してもなお赤字が残る(所得が0)であれば、国保料の負担も最低限に抑えられる

それ以外のケースでは、確定申告せずに申告不要を選んでおく方が有利になることも多いという点を覚えておいてください。

📝 このセクションのまとめ

  • 配当金550万円・大阪市の場合、確定申告すると国保料が86万2,000円となりトータルで約7万円損する
  • 渋谷区の場合は国保料が約72万円となり、確定申告した方が約7万円有利
  • 後期高齢者は医療費の窓口負担増も考慮が必要
  • 損益通算で所得がゼロになる場合を除き、国保加入者は申告不要が有利なケースも多い

今後の動向:国保負担の対象拡大が予定されている

現在は「確定申告した人だけ国民健康保険料が増やされ、申告しない人には影響がない」という状況です。これはあまりにも不公平ではないかということで、政府では国保加入者で確定申告しないケースでも社会保険の対象にしていこうという考えがあります。

最終確定ではありませんが、現在のところ個人事業主などを除く、いわゆる高齢者・後期高齢者の方をターゲットにしているとのことです。

⚠️ 注意

もしこれが実現してしまうと、確定申告しないケースでも保険料が約80万円上乗せされ、トータルの負担が約200万円になる可能性があります。そうなると逆に確定申告して配当控除を受けた方が有利になりかねません。今後の動向を注視する必要があります。

📝 このセクションのまとめ

  • 政府は確定申告不要のケースでも国保負担の対象拡大を検討中
  • 高齢者・後期高齢者が主なターゲットとされている
  • 実現すれば申告不要でも保険料が大幅増加し、状況が逆転する可能性がある

国民健康保険料の増加への対策はあるのか?

増え続ける国民健康保険料への対策は、残念ながらほぼないと言わざるを得ません。ただし、いくつかの選択肢は考えられます。

加入者カテゴリ健康保険の種類株の利益の影響
会社員・会社経営者健康保険(社会保険)影響なし(給与額面で決まる)
個人事業主・自営業国民健康保険確定申告次第で影響あり
年金受給者・後期高齢者国民健康保険・後期高齢者医療確定申告次第で影響あり(拡大予定)

対策として考えられる主な方法は以下の2つです。

  1. 国保から社会保険(健康保険)に切り替える
    最も手軽な方法は、アルバイトやパートに出ることです。政府は年収106万円の壁を撤廃し、週20時間以上の勤務であれば社会保険に加入させる方針で、社会保険の加入対象者拡大を目指しています。社会保険に加入できれば、株式投資の利益が保険料に影響しません。現在は最低賃金も上がっており、人手不足で仕事も見つけやすい環境です。
  2. マイクロ法人(会社)を設立して社会保険に加入する
    会社を設立してそこで社会保険に加入する方法です。役員報酬を低く設定すれば社会保険料の負担も低く抑えられます。ただし、この国保対策だけのためにわざわざ法人を作ることはあまりお勧めしません。なお、法人で資産運用をするなら税率の観点から株式投資よりも不動産投資の方が有利になるケースもあります。

📌 現実的な対策まとめ

国保負担を避けるための最も手軽な選択肢は、アルバイト・パートで社会保険に加入することです。今の時代は時給も上がっており、人手不足で仕事にも就きやすい環境です。国保対策だけのために法人設立するのはコスト面でも手間の面でもリスクがあるため、まずはこちらを検討してみてください。

📝 このセクションのまとめ

  • 国保負担増への対策はほぼ限られており、社会保険への切り替えが最も現実的
  • アルバイト・パートで週20時間以上勤務すれば社会保険加入の対象になる(政府方針)
  • マイクロ法人設立は対策になり得るが、国保対策だけのための法人設立はあまり推奨されない
  • 社会保険に加入できれば株式投資の利益は保険料に影響しない

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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