医師・医療法人の節税はMS法人活用が鍵|税理士が解説する仕組みと注意点
医師が節税するうえで必ず出てくる「MS法人」。医療法人との違いや活用法・注意点を徹底解説します。
医療法人とMS法人の違い
まず医療法人とは、病院・診療所・介護施設などを開設することを目的として設立される法人のことです。簡単に言うと、医療行為を行うための法人です。全国の病院の約7割、一般診療所の約4割が医療法人によって運営されています。
医療法人は医療法に基づいて作られた特別な法人であり、公益性が強いため、医療法の範囲を超えて利益を追求することは認められていません。例えば、医療法人で賃貸不動産を所有して他人に貸して賃料を取ったり、物品を販売して利益を得たりといった営利活動はできません。また、医療法人によって得た利益を配当することもできません。
一方、MS法人(メディカルサービス法人)は、その名のとおり医療法人などの医療に関連するサービスを病院に提供することを主な事業目的とした法人です。会社法に基づいて設立され、株式会社・合同会社などの形態をとります。
📌 ポイント
MS法人は一般の営利法人と同様に、並行して事業を行い、利益を株主に配当したり社内に蓄積したりすることができます。医療法人ができない部分を補う役割を担っています。
MS法人が行う事業の例としては、以下のようなものがあります。
- 病院で使う備品類の管理・販売
- 受付窓口・経理業務
- 医療法人に対しての医療機器のリース
- 美容関連事業
- 不動産賃貸事業
- 有価証券の投資
- 講演会の企画・運営
📝 このセクションのまとめ
- 医療法人は医療法に基づく特別な法人で、営利活動・配当は原則不可
- MS法人は会社法に基づく法人で、株式会社・合同会社などの形態をとる
- MS法人は医療法人ができない営利活動を補完する役割を持つ
医療法人・MS法人に共通するメリット①:所得税と法人税の税率差による節税
開業医の年収の平均は約2,700万円です。診療科別に見ると、整形外科医は約3,000万円となっています(設備投資額なども含む数字のため、差し引いて考える必要があります)。
これだけの高収入を個人で得ると、税率がかなり高くなります。所得税では課税所得が1,800万円を超えると40%、住民税の10%を合わせると50%超の税率になります。
| 区分 | 税率(所得税) | 住民税等含む実効税率 |
|---|---|---|
| 個人(課税所得1,800万円超) | 40% | 50%超 |
| 法人(中小法人) | 23% | 33〜34%程度 |
この税率差が、法人を作る大きなメリットです。業績が順調で所得が1,800万円を超えたときが、医療法人化を検討するタイミングの一つです。また、個人の課税所得が大きくなりすぎた場合に、業務の一部をMS法人に移行して利益を圧縮することでも、節税効果が期待できます。
📝 このセクションのまとめ
- 個人の場合、課税所得1,800万円超で所得税40%+住民税10%=50%超の税負担
- 法人の実効税率は33〜34%程度に抑えられる
- 所得が1,800万円を超えたタイミングが医療法人化の検討時期の目安
医療法人・MS法人に共通するメリット②:所得分散と退職金の活用
個人で病院経営をしている場合、どうしても院長に所得が集中するため税率が高くなります。医療法人化し、院長自身が理事長に就任しつつ、他の理事として両親・配偶者・子どもなどの親族を配置することで、役員報酬の支給という形での所得分散が可能になります。
例えば、両親・配偶者・長男の4人に年間100万円ずつ支給すれば、それだけで400万円の利益を所得分散できます。100万円程度であれば受け取る側の所得税もほとんどかかりませんし、所得を分散させることで全体の税率が下がり、手取りが増えます。
📌 ポイント
後継者や親族に役員報酬などを支払うことは、実質的な生前贈与となり、相続税対策の一環にもなります。また、MS法人を設立して配偶者や子を株主・社長・役員にすることでも同様の所得分散効果が得られます。MS法人の役員は医師資格がなくても就任できるという点がポイントです。
次に退職金の活用についてです。退職金は老後の生活の重要な原資であるという理由で、税制面で優遇されています。具体的には以下の3つの優遇があります。
- 分離課税:退職所得は他の所得と分けて計算される
- 退職所得控除:勤続年数に応じた大きな控除が受けられる
- 1/2課税:退職所得控除後の金額をさらに1/2にして課税される
通常の役員報酬として受け取る場合と比べ、かなり低い税負担で受け取ることができます。個人事業では退職金を支給することができませんが、法人であれば理事・役員の退任時に退職金を支給することが可能です。さらに、支給した退職金は法人の損金に計上できるため、利益が多く出た年に退職金を経費にすれば法人の課税所得も圧縮できます。
これら以外にも、法人化によるメリットとして以下のものがあります。
- 最大195万円の給与所得控除が受けられる
- 生命保険料の一部を損金にできる
- 決算日を自由に決めることができる
- 売上のピークを避けることで十分な節税対策の時間を取ることができる
📝 このセクションのまとめ
- 親族を役員にして役員報酬を支給することで所得分散が可能
- MS法人の役員は医師資格不要。配偶者・子を株主・役員にできる
- 退職金は分離課税・退職所得控除・1/2課税の3つの優遇で税負担が大幅に軽減
- 退職金は法人の損金に計上でき、法人税の節税にもなる
MS法人ならではの活用法①:資金調達と事業の多角化
医療法人は株式や社債を発行して資金調達することができません。一方、MS法人は普通の株式会社と同じように、株式発行など通常の方法で資金調達が可能です。調達した資金を医療法人に融通することもできます。
また、MS法人が不動産を保有している場合は、不動産を担保にした融資も受けやすくなります。
続いて事業の多角化についてです。MS法人を活用することで、医療法に縛られずにさまざまな事業を展開できます。具体的な例は以下のとおりです。
- MS法人で不動産を購入し、一部をクリニックに貸し付け、一部を調剤薬局などに貸し付ける
- 病院と関係のない第三者に対して賃貸を行い収益を上げる
- いわゆる「ドクターズコスメ」と呼ばれる医師監修の化粧品販売事業をMS法人で展開する
- 医療法人経営の経験を活かしてコンサルタント事業を行う
- 個人で所有している有価証券や不動産をMS法人に移転し、資産管理会社として活用する
📝 このセクションのまとめ
- MS法人は株式発行など通常の方法で資金調達が可能
- 不動産保有のMS法人は担保融資も受けやすい
- 化粧品販売・コンサルタント・資産管理など医療以外の事業も展開できる
MS法人ならではの活用法②:法人税・相続税の対策
病院の窓口業務・会計業務・診療報酬請求の事務・清掃業務など、医療行為以外の仕事を医療法人からMS法人に委託します。するとMS法人にはそれらの業務への対価が支払われます。
このように医療法人からMS法人へのお金の流れを作ることで、医療法人に利益が蓄積することを避けられます。医療法人の側では売上が減ることで法人税が抑えられます。一方、MS法人には利益が流れ込みますが、これを役員報酬として支払えば、MS法人でも利益が増えず、法人税を低く抑えることができます。
📌 ポイント
医療経営と関連業務を分散することで、医療法人・MS法人の双方で法人税の節税ができます。さらに、この仕組みは相続税対策にも効果があります。
相続税対策としての効果について、まず「出資持分」という概念を理解する必要があります。出資持分とは、厚生労働省の定義によると「出資額に応じて払い戻しまたは残余財産の分配を受ける権利」のことです。つまり、出資した人が出資額に応じて持っている財産権のことです。
現在では出資持分のある医療法人の新設はできませんが、いまだに多くの医療法人が「出資持分あり」の形態をとっています。医療法人は配当が出せないため利益が蓄積しやすく、純資産価格の評価額も高くなる傾向があります。
例えば、理事長が30年前に3,000万円を出資して医療法人を立ち上げ、純資産額が5億円になっている場合、事業承継時の相続税評価額はその純資産価格の5億円をもとに計算することになります。すると納税額も高くなり、納税資金のために銀行からお金を借りたり、手持ちの資産を売却したりすることも考えなければなりません。
そこで、医療法人からMS法人へのお金の流れを作ることで医療法人に経費を計上し、利益を減らすことができます。これにより出資持分の評価を下げ、相続税の納税額を抑えることが期待できます。
📝 このセクションのまとめ
- 医療法人の業務をMS法人に委託することで、医療法人の利益蓄積を防ぎ法人税を節税
- MS法人への役員報酬支払いにより、MS法人側の法人税も抑えられる
- 医療法人の純資産評価額を下げることで、出資持分の相続税評価額も低減できる
MS法人活用の注意点
MS法人の活用にはメリットが多い一方で、いくつかの重要な注意点があります。
① 医療法人の理事とMS法人の取締役の兼任はできない
両者の代表者が同一人物であることは、医療法人の原則である非営利性に抵触するためです。
② 運営コストがかかる
MS法人を作る場合、人件費・オフィス賃料などのコストを考慮する必要があります。
③ 消費税負担が増える可能性がある
⚠️ 注意
保険診療にかかる消費税は非課税とされているため、クリニックや医療法人の収益には原則として消費税がかかりません。しかし、MS法人の売上は消費税の課税対象になります。MS法人を作ると、それまで払わずに済んでいた消費税の支払いが増えてしまいます。今後さらに消費税が引き上げられる可能性も頭に入れたうえで、消費税負担以上のメリットがあるかどうかを検討する必要があります。
④ 税務否認リスク
医療法人とMS法人の取引はともに同族間の取引になるため、取引の合理性やMS法人の実在性が税務上問題になる場合があります。医療法人は会計年度ごとに事業報告書を都道府県に提出する必要があり、その際に一定額以上の取引があるMS法人との取引も報告しなければなりません。問題のある取引は取引自体が否認される可能性があります。
このリスクを避けるためには、以下の点を確認・整備しておくことが重要です。
- 取引価格が相場からかけ離れていないこと
- 請求書・領収書・契約書をきちんと残していること
- MS法人がオフィス・用品を備えていること
- 従業員がいて、社会保険・労働保険に加入していること
📌 ポイント
MS法人を作る場合は、メリット・デメリットを事前によく検討し、できれば収支のシミュレーションも行ったうえで判断することをおすすめします。MS法人はルールに基づいて適正に運営していくことが大切です。
📝 このセクションのまとめ
- 医療法人の理事とMS法人の取締役の兼任は非営利性に抵触するため不可
- MS法人の売上は消費税課税対象。消費税負担増のデメリットを考慮する必要あり
- 同族間取引として税務否認リスクがある。書類整備・実態のある運営が必須
- MS法人設立前に収支シミュレーションを行うことを推奨
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 社長の資産防衛チャンネル の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 社長の資産防衛チャンネルを応援しています!
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