年金増税の布石?高齢者の定義65歳→70歳引上げで税負担はどう変わるか税理士が解説
高齢者の定義が70歳に変わると、年金課税のルールが大きく変わる可能性があります。
高齢者の定義を70歳に引き上げ――政府の経済財政諮問会議で議題に
経済財政諮問会議という政府の会議で、高齢者の定義を65歳から70歳に引き上げるということが議題にされていました。この会議に上がってくるということは、もうほぼほぼその方向性で決まりだと読んでいます。
まだ最終確定ではありませんが、現実味を帯びてきたと言わざるを得ません。今回は、そもそもなぜ政府がこの引き上げを考えているのか、そして世の中や税金にどのような影響があるのかを解説していきます。
📌 今回の記事のポイント
- 高齢者の定義を70歳に引き上げたい理由(4つの背景)
- 定義変更で予想される社会的影響
- 年金の税金の仕組みと計算方法
- 公的年金等控除への影響と増税シナリオ
- 廃止された「老年者控除」復活への期待
📝 このセクションのまとめ
- 政府の経済財政諮問会議で高齢者の定義を65歳→70歳に引き上げることが議題になっている
- 会議に上がった段階でほぼ方向性は決まりつつあると見られる
なぜ高齢者のラインを引き上げたいのか――4つの理由
以前からこの70歳への引き上げは言われていましたが、その理由は様々なものが考えられます。
理由①:平均寿命・健康寿命がともに伸びている
厚生労働省の資料によると、2001年から2019年にかけて平均寿命・健康寿命(日常生活に制限のない期間の平均)はいずれも延伸しています。直近のデータでは男性の平均寿命が81.41歳、女性が87.45歳となっており、一目瞭然で伸び続けています。
理由②:国の労働力が足りていない
定年はかつて60歳が当たり前でしたが、現在は65歳が定番になってきています。来年2025年からは65歳までの継続雇用が義務付けられ、70歳までの雇用も努力義務となっています。
内閣府の資料によると、15歳〜64歳の「生産年齢人口」は年々減少しており、以下のように推移・予測されています。
| 年 | 生産年齢人口 |
|---|---|
| 2020年 | 約7,460万人(総人口の半分強) |
| 2030年(推計) | 約6,870万人 |
| 2040年(推計) | 6,000万人を割り込む |
| 2065年(推計) | 5,000万人を割り込む |
2020年と比べると最終的に約3,000万人近くの減少となる見込みです。この15歳〜64歳の括りで見ると、とにかく働き手が減る一方です。そこで、この生産年齢人口を形式上増やしてしまおうということで、高齢者の定義の5歳引き上げが検討されているわけです。
理由③:外国人労働者が増えない
現在円安が続いているため、かつてのように出稼ぎに日本へ来るという方が非常に減っています。日本で働くよりも他の国で働いた方が稼げるという状況になっているためです。
理由④:年金の支給を遅らせたい
年金の額面そのものは上がっているものの、物価水準の上昇がそれ以上に進んでいます。また、高齢者の中にも富裕層がいる一方で貧困層もいます。そういった問題を解決するためにも、できるだけ長く働いてほしいという意図があると考えられます。
📌 ポイント
労働力不足・長寿化・外国人労働者の減少・年金財源の問題――これら複数の課題を一度に解決する手段として、高齳者の定義引き上げが検討されています。結局のところ「死ぬまで働いて納税してほしい」という方向性と言えるかもしれません。
📝 このセクションのまとめ
- 平均寿命・健康寿命の延伸が引き上げの根拠の一つ
- 生産年齢人口は2065年に5,000万人を割り込む見通しで、労働力不足が深刻
- 円安で外国人労働者が集まらない状況も背景にある
- 年金支給開始年齢の引き上げ(先送り)も狙いの一つと考えられる
高齢者の定義変更で予想される社会的影響
高齢者の定義を70歳に変更した場合、様々なことが変わると考えられます。
- 定年の引き上げ:60歳→65歳ときて、次は70歳への引き上げが予想される。実際、ファストフード店など様々な職場で高齢者が活躍している様子が見られ、人手不足を反映している。
- 年金支給開始年齢の引き上げ:現在65歳の支給開始が70歳にずれ込む可能性がある。
- 介護保険サービスへの影響:サービスの対象年齢や内容が変わる可能性がある。
- 映画などのシニア割引の変更:現行の「60歳以上」「65歳以上」から「70歳以上」に引き上げられる可能性がある。
- 配食・見守り支援サービスの対象年齢変更
- 税制面への影響:労働者人口が増えれば国民の所得が上がり税収が増えるが、それに加えて法改正による増税がセットで考えられる可能性がある。
📝 このセクションのまとめ
- 定年・年金支給・介護保険・シニア割引など幅広い分野に影響が及ぶ
- 税制面では自然増収に加え、法改正による増税も想定される
そもそも年金の税金はどう計算されるのか
年金であれ何であれ、何かしら所得・収入があれば確定申告が必要です。ただし、年金に関しては特例があり、以下の3つの要件をすべて満たす場合は申告不要となっています。
- 年間の年金収入合計が400万円以下であること
- その年金収入について所得税が源泉徴収されていること
- 年金収入以外の所得が年間20万円以下であること
⚠️ 注意
申告不要は「税金が非課税」という意味ではありません。年金は2か月に1度まとめて受け取る際に所得税が源泉徴収されており、それで完結しているという扱いです。また、確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は別途必要となる場合があります。
なお、申告不要の要件に該当していても、医療費控除など各種控除がある場合は、あえて確定申告(還付申告)をした方が税金の還付を受けられてお得になります。
次に、年金収入から税金を計算する流れを見ていきましょう。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①年金収入(額面) | 2か月ごとに受け取る年金の合計額 |
| ②公的年金等控除を差し引く | 一定額を控除(年齢・収入によって異なる) |
| ③雑所得の計算 | ①-②=雑所得(年金に係る利益) |
| ④所得控除を差し引く | 医療費控除・配偶者控除・基礎控除など |
| ⑤課税所得の計算 | ③-④=課税所得 |
| ⑥税率をかける | 所得税:5%〜45%、復興特別所得税:2.1%上乗せ、住民税:10% |
他に所得がある場合はそちらと合算して合計所得を計算しますが、年金収入だけの場合はこの流れで計算を行います。
📝 このセクションのまとめ
- 年金収入400万円以下・源泉徴収済み・他所得20万円以下の3要件を満たせば確定申告不要
- 申告不要でも住民税の申告は必要な場合がある
- 医療費控除などがある場合は還付申告をした方がお得
- 年金収入→公的年金等控除→雑所得→所得控除→課税所得→税率適用という流れで計算
公的年金等控除の仕組み――65歳を境に優遇が変わる
今回の高齢者の定義引き上げで最も影響が出そうなのが、この公的年金等控除です。
公的年金等控除は、まず年齢65歳以上か65歳未満かで計算方法が異なります。65歳以上の方が優遇される仕組みになっています。また、公的年金等の雑所得以外の合計所得が1,000万円以下・1,000万円超2,000万円以下・2,000万円超でさらに控除額が変わりますが、ここでは最も一般的な「1,000万円以下」のケースで見ていきます。
| 年齢区分 | 年金収入額 | 公的年金等控除額(最低ライン) |
|---|---|---|
| 65歳未満 | 130万円以下 | 60万円 |
| 65歳以上 | 330万円以下 | 110万円 |
この控除額の意味するところは、年金収入がこの最低控除額以内であれば雑所得が0円になるということです。つまり年金収入だけで見れば、65歳未満は年間60万円(月5万円)まで、65歳以上は年間110万円まで所得が発生しないということになります。
さらに、この公的年金等控除に加えて、給与所得者以外なら誰でも受けられる基礎控除48万円があります。これを合計すると、実際に税金がかからないボーダーラインは以下のようになります。
| 年齢区分 | 公的年金等控除 | 基礎控除 | 非課税ライン(合計) |
|---|---|---|---|
| 65歳未満 | 60万円 | 48万円 | 108万円 |
| 65歳以上(現行) | 110万円 | 48万円 | 158万円 |
| 70歳以上(定義変更後) | 110万円 | 48万円 | 158万円(変わらず) |
📝 このセクションのまとめ
- 公的年金等控除は65歳以上(110万円)と65歳未満(60万円)で異なる
- 基礎控除48万円を合算すると、65歳以上の非課税ラインは年間158万円
- 65歳未満の非課税ラインは年間108万円
増税の布石――65〜69歳の非課税ラインが158万円→108万円になる可能性
ここが今回の核心です。高齢者の定義が70歳に引き上げられた場合、公的年金等控除の年齢区分も同様に変更される可能性があります。
現在は「65歳以上」が優遇区分ですが、これが「70歳以上」に変わるとすると、65歳〜69歳の方は「70歳未満」として扱われ、公的年金等控除が110万円から60万円に引き下げられる可能性があります。
| 年齢区分 | 現行の非課税ライン | 定義変更後の非課税ライン | 変化 |
|---|---|---|---|
| 65〜69歳 | 158万円 | 108万円 | ▼50万円の削減 |
| 70歳以上 | 158万円 | 158万円 | 変わらず |
| 65歳未満(〜64歳) | 108万円 | 108万円 | 変わらず |
⚠️ 注意
現在65〜69歳の方は、年間の年金収入が158万円まで税金がかかりませんでした。しかし高齢者の定義変更によって、この非課税ラインが108万円に引き下げられる可能性があります。年金収入が108万円〜158万円の方は、新たに税負担が発生することになります。
つまり、今回の「高齢者の定義引き上げ」は、単なる社会的な区分変更にとどまらず、65〜69歳の方への事実上の増税につながる可能性があるということです。
📌 ポイント
法改正の裏には、はじめから税制改正による増税がセットで考えられている可能性があります。高齢者の定義変更は、増税の「布石」となり得るものです。
📝 このセクションのまとめ
- 高齢者の定義が70歳になると、公的年金等控除の優遇区分も「70歳以上」に変わる可能性がある
- 65〜69歳の方の非課税ラインが158万円→108万円に引き下げられる可能性がある(▼50万円)
- これは65〜69歳の年金受給者への事実上の増税となる
廃止された「老年者控除」の復活に期待したい
高齢者の定義変更が増税にしか影響を与えないのかというと、そういうわけでもありません。これはどちらかというと希望的観測ですが、かつて「老年者控除」という制度が存在していました。
老年者控除とは、ご自身が65歳以上であれば、所得控除として50万円の控除が認められるというものでした。この50万円に各自の税率をかけた分だけ、所得税あるいは住民税が安くなるという制度です。
もし公的年金等控除の改正によって増税方向に動くのであれば、ぜひ70歳以上の定義のもとでも構いませんので、この老年者控除を復活させていただきたいと思っています。
⚠️ 現実的には難しい可能性も
今後さらに高齢化社会が進んでいく中で、老年者控除を復活させると財政がさらに悪化するという懸念もあり、「昔の制度は今更やらない」という方向になってしまうかもしれません。しかし、増税の対になる措置として、ぜひ議論してほしいところです。
📝 このセクションのまとめ
- かつて65歳以上に50万円の「老年者控除」があった
- 増税とセットで老年者控除の復活も議論されるべき
- ただし高齢化社会の進展により財政上の理由から復活は難しい可能性もある
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!
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