高齢の親を扶養に入れるメリット・デメリットと条件を税理士が解説
後期高齢者の親を扶養に入れると税金が安くなる一方、介護保険料が大幅に上がるケースもあります。メリット・デメリットと条件を整理して解説します。
扶養には2つの意味がある
「扶養」という言葉は一般的に「生活の面倒を見る」という意味で使われますが、経済的な制度の文脈では2つの異なる意味があります。この2つを混同しないことが、正しい判断をするうえでとても重要です。
- 税制上の扶養:扶養親族として申告することで、あなた自身の税金(所得税・住民税)が安くなる制度
- 社会保険における扶養:生計を一にしているため、扶養されている方(被扶養者)の保険料が免除される制度
それぞれ別の制度であり、要件も効果も異なります。以降ではこの2つに分けて詳しく見ていきます。
📝 このセクションのまとめ
- 扶養には「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2種類がある
- どちらの扶養の話をしているかを常に意識することが重要
税制上の扶養:控除額と節税効果
税制上の扶養とは、親を扶養親族として年末調整または確定申告で申告することで、あなた自身の所得税・住民税が安くなる仕組みです。
所得税における扶養控除の金額は親の年齢・同居の有無によって異なります。
| 対象親族の区分 | 所得税の扶養控除額 | 住民税の扶養控除額 |
|---|---|---|
| 70歳未満 | 38万円 | 33万円 |
| 70歳以上(別居) | 48万円 | 38万円 |
| 70歳以上(同居) | 58万円 | 45万円 |
📌 ポイント:年収600万円の方の節税シミュレーション
70歳以上の親と同居している場合を例に試算すると、以下のとおりです。
- 所得税:58万円 × 約20%(復興特別所得税含む)= 約11.6万円の節税
- 住民税:45万円 × 10%= 4.5万円の節税
- 合計で約16万円程度の税負担が軽減される
なお、この控除額はあなたの「所得が減る」金額であり、税金が直接その金額分減るわけではありません。控除額にあなたの税率をかけた分が実際の節税額となります。
📝 このセクションのまとめ
- 70歳以上の親と同居すると、所得税で58万円・住民税で45万円の控除が受けられる
- 年収600万円の方なら合計約16万円の節税効果がある
- 控除額=税額の減少額ではなく、所得の減少額であることに注意
税制上の扶養親族に入れるための要件
親を扶養親族として申告するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。書類上で申告するだけでよいわけではありません。
- 生計を一にしていること(同じ財布で生活している、または定期的に仕送りをしているなど)
- 親の年間合計所得金額が48万円以下であること(収入ではなく「所得」で判定)
- 他の事業者の青色事業専従者・専従者控除の対象になっていないこと
⚠️ 注意
例えば父親が事業を営んでいて、母親が青色事業専従者給与を受けている場合、その母親を扶養控除の対象にすることはできません。専従者として税制上のメリットを受けているため、扶養控除との二重適用は認められていません。
📝 このセクションのまとめ
- 生計を一にしていることが大前提
- 親の合計所得金額が48万円以下であること(収入ではなく所得で判定)
- 青色事業専従者・専従者控除の対象者は扶養控除に入れられない
社会保険上の扶養:後期高齢者は扶養に入れられない
社会保険における扶養については、75歳以上の後期高齢者は社会保険の扶養に入れることができません。これが大きなポイントです。
75歳以上になると、それまでの社会保険制度から後期高齢者医療保険制度に切り替わります。そのため、もともとあなたの扶養に入っていた親御さんでも、75歳になった時点で扶養から外れ、自分で後期高齢者医療保険料を納付しなければなりません。
参考として、74歳以下の親を社会保険の扶養に入れるための主な要件は以下のとおりです。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 生計を一にしていること | 税制上の要件とほぼ同じ |
| 親の年収(60歳以上) | 180万円未満 |
| 親の年収(60歳未満) | 130万円未満 |
| 同居の場合 | 親の年収があなたの年収の半分未満 |
| 別居の場合 | 親の収入があなたの仕送り額より少ないこと |
📌 ポイント
後期高齢者(75歳以上)の親は社会保険の扶養に入れることができないため、扶養に入れることで得られるメリットは税制上の節税効果のみとなります。それでも年間十数万円の節税になるため、条件を満たすなら活用を検討する価値があります。
📝 このセクションのまとめ
- 75歳以上の後期高齢者は社会保険の扶養に入れることができない
- 75歳になると後期高齢者医療保険制度に移行し、自身で保険料を納付する
- 後期高齢者の親を扶養に入れるメリットは税制上の節税のみ
同居・同一世帯にすると介護保険料が大幅に増加する
税制上のメリットがあるなら扶養に入れてしまえばよい、と考える方も多いですが、同居して同一世帯になる場合には注意が必要です。
親御さんの介護保険料が増加する可能性があります。これは後期高齢者に限らず、65歳以上の親全般に当てはまります。
介護保険料は市区町村によって異なりますが、横浜市の例を見てみましょう。
| 状況 | 世帯の状況 | 親の収入(公的年金等+その他所得合計) | 介護保険料(年額) |
|---|---|---|---|
| 別世帯(住民税非課税世帯) | 働いている人なし | 80万円以下 | 19,500円(第2段階) |
| あなたと同一世帯 | あなたに一定の所得あり | 80万円以下 | 72,000円(第5段階) |
⚠️ 注意
同居して同一世帯になることで、親の介護保険料が年間約1万9,500円から約7万2,000円へ、5万円以上も増加するケースがあります。税制上の節税効果(約16万円)と比較しながら、トータルで判断することが重要です。
📝 このセクションのまとめ
- 同居して同一世帯になると、親の介護保険料が大幅に増加する可能性がある
- 横浜市の例では年間約1万9,500円→約7万2,000円と5万円超の増加になるケースも
- 65歳以上の親全般に当てはまる注意点
介護サービス費・施設の食費・居住費も増加する可能性がある
同一世帯になることで影響を受けるのは介護保険料だけではありません。高額介護サービス費制度における上限額や、介護施設の食費・居住費にも影響します。
高額介護サービス費とは、1か月に受ける介護サービス費用が一定の上限額を超えた場合に、超えた分が払い戻される制度です。この上限額は本人の所得だけでなく、同一世帯の収入も考慮されます。
| 状況 | 世帯の状況(令和3年8月改正後) | 1か月の上限額(世帯) |
|---|---|---|
| 別世帯(住民税非課税世帯) | 公的年金等収入+その他合計所得が80万円以下 | 24,600円 |
| あなたと同一世帯 | 一定の所得あり | 44,400円以上 |
| あなたと同一世帯 | 所得が多い場合 | さらに上限額が上昇 |
世帯の所得が多ければ多いほど上限額が上がり、結果として介護サービス費の自己負担が増える可能性があります。
さらに、特別養護老人ホームや老人保健施設などの介護施設に入居している場合は、食費や居住費の負担額にも世帯の収入が考慮されます。同一世帯になることで、施設の食費・居住費が上がるケースもあります。
📌 ポイント:親が元気な場合はデメリットが少ない
介護サービスの費用増加・施設の食費居住費の増加は、親が介護サービスを受けていない場合は影響がありません。親がまだ元気で介護サービスを利用していない場合は、税制上のメリットが大きく上回ることが多いです。
📝 このセクションのまとめ
- 高額介護サービス費の上限額は同一世帯の収入で決まるため、同居すると上限額が上がる
- 介護施設の食費・居住費も同一世帯の収入が考慮される
- 親が介護サービスを受けていない場合は、これらのデメリットは発生しない
世帯分離という選択肢とその注意点
同居すると介護関連費用が増加する可能性があることから、世帯分離を検討する方も多くいます。世帯分離とは、同居しながらも住民票上の世帯を「親世帯」と「子世帯」に分けることです。同居していても、役所で手続きをすることで世帯を分けることは可能です。
⚠️ 注意:世帯分離の目的に関する留意点
介護関連費用の軽減を目的とした世帯分離は、役所での手続き時に認められないことがあります。世帯分離を検討する際は、この点を十分に理解したうえで対応してください。
📝 このセクションのまとめ
- 世帯分離とは同居しながら住民票上の世帯を分けること
- 介護費用の軽減を目的とした世帯分離は役所で認められない場合がある
後期高齢者の親を扶養に入れるべきかの結論
以上を踏まえて、後期高齢者の親を扶養に入れるべきかどうかの判断基準をまとめます。
| 親の状況 | 同居・別居 | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 元気で介護サービス未利用 | 別居のまま | 税制上のメリットのみ。扶養に入れるのが有利なことが多い |
| 元気で介護サービス未利用 | 同居・同一世帯 | 介護保険料の増加はあるが、比較的メリットが大きいケースが多い |
| 介護サービスを利用中 | 同居・同一世帯 | 介護保険料・サービス費・施設費が増加する可能性あり。個々の状況に応じて判断が必要 |
📌 まとめポイント
- 後期高齢者の親は社会保険の扶養には入れられないが、税制上の扶養控除は受けられる
- 親が元気で介護サービスを受けていない場合は、扶養に入れることで大きな節税効果が期待できる
- 介護サービスを受けている場合は、同一世帯になることで介護関連費用が増加するリスクがあるため、個別に試算して判断することが重要
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士ナガイ の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 税理士ナガイを応援しています!
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