雇用保険の仕組みを専門家がわかりやすく解説|基本手当から育児休業給付まで

雇用保険の仕組みを専門家がわかりやすく解説|基本手当から育児休業給付まで
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雇用保険の仕組みを、基本手当から各種給付まで体系的に解説します。日数や年数が多くて混乱しがちな制度ですが、全体像から順に整理すると理解しやすくなります。

雇用保険とは何か?給付の全体像

雇用保険は、労働者の雇用に関する給付を行う保険です。「雇用」とは会社に雇われている状態のことを指します。雇用保険で有名なのは、いわゆる「失業保険」と呼ばれる基本手当ですが、失業時の給付だけでなく、スキルアップのための給付や、雇用の維持(まだ退職していないが賃金が減少した場合など)に対する給付も含まれます。

雇用保険は政府が実施し、窓口は公共職業安定所(ハローワーク)が担当します。

給付の全体像を整理すると、大きく「失業等給付」と「育児休業給付」に分かれます。失業等給付の中には以下のような給付が含まれます。

  • 求職者給付:仕事を探している人への給付(基本手当など)
  • 就職促進給付:早く仕事が見つかった場合のお祝い金的な給付
  • 教育訓練給付:スキルアップのために資格取得などをする場合の給付
  • 雇用継続給付:まだ退職していないが、収入が減少した場合に補う給付

給付の種類と「どういう状況でもらえるか」を対応させて覚えておくことが大切です。

給付の種類対象となる状況退職の有無
基本手当(失業給付)失業中・求職活動中退職済み
高年齢求職者給付金65歳以上で失業した場合退職済み
高年齢雇用継続給付60歳以降に賃金が大幅に低下した場合在職中
育児休業給付育児のために休業中在職中(休業中)
介護休業給付介護のために休業中在職中(休業中)

💡 補足:動画では触れていませんが…

教育訓練給付には「一般教育訓練給付」「特定一般教育訓練給付」「専門実践教育訓練給付」の3種類があり、給付率や上限額が異なります。スキルアップを検討している方は、対象講座かどうかを事前にハローワークで確認しましょう。

📝 このセクションのまとめ

  • 雇用保険は失業時だけでなく、スキルアップや雇用維持のための給付も含む
  • 窓口はハローワーク(公共職業安定所)
  • 給付の名前から「どういう状況でもらえるか」をイメージすることが理解の近道

雇用保険の対象者(被保険者)と保険料の仕組み

雇用保険も保険ですから、まず保険料を納めていることが前提です。では誰が対象になるのでしょうか。

📌 被保険者の要件

週の労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある労働者が対象となります。パート・派遣などの雇用形態や国籍は問いません。

健康保険の被保険者要件(原則として週所定労働時間が正社員の3/4以上)と比べると、雇用保険の方が対象範囲が広くなっています。週20時間以上であれば雇用保険の対象となるため、週40時間フルタイムで働いている方の半分程度の労働時間でも加入対象です。

また、65歳未満の方は「一般被保険者」、65歳以上の方は「高年齢被保険者」として区別されます。65歳以上の方は年金を受給しながら働いているケースが多いため、この区分が設けられています。

高年齢被保険者に関して、マルチジョブホルダー制度という仕組みがあります。65歳以上の方は複数のパートやアルバイトを掛け持ちするケースが多く、1社あたりの労働時間が20時間に満たないことがあります。この制度では、2社合計で週20時間以上になれば被保険者として認められます。

保険料の負担については、給付の性質によって事業主と労働者の負担割合が異なります。

保険料の種類負担者理由
失業等給付・育児休業給付に対応する保険料事業主と労働者で折半労働者自身がメリットを受けるため
雇用保険二事業に対応する保険料事業主が全額負担事業主側にメリットがある仕組みのため

保険料率は事業の種類によって異なります。一般の企業、農業・林業・水産業、建設業でそれぞれ料率が異なりますが、労災保険ほど細かい区分ではありません。

💡 補足:動画では触れていませんが…

雇用保険料は毎月の給与から天引きされます。令和6年度の雇用保険料率(一般の事業)は労働者負担が1000分の6です。給与明細の「雇用保険料」欄で確認できます。

📝 このセクションのまとめ

  • 週20時間以上・31日以上の雇用見込みがあれば被保険者(雇用形態・国籍不問)
  • 65歳以上は「高年齢被保険者」。マルチジョブホルダー制度で2社合計20時間でも対象になる
  • 失業等給付・育児休業給付の保険料は事業主と労働者で折半。雇用保険二事業は事業主全額負担

基本手当(失業給付)の仕組みと受給要件

基本手当は、一般的に「失業保険」と呼ばれるものです。正式名称は「基本手当」といいます。働く意思と能力があり、求職活動を行っている失業者に対して支給される給付です。

「次の仕事が見つかるまでの間、大変ですね、お金を支給しますよ」という趣旨の給付ですので、次の仕事を探す意思がない方や、求職活動を行っていない方はもらえません。

基本手当を受け取るまでの流れを整理すると、以下のようになります。

  1. 在職中に雇用保険の被保険者期間を積み上げる
  2. 退職する
  3. ハローワークに求職の申し込みをする
  4. 受給要件の判定(もらえるかどうかの確認)
  5. 給付日数の判定(何日分もらえるかの確認)
  6. 待機期間(7日間)
  7. 給付制限期間(自己都合退職の場合)
  8. 基本手当の受給開始

受給要件の判定では、退職理由によって必要な被保険者期間が異なります。

退職理由必要な被保険者期間遡る期間
自己都合退職(自分でやめた場合)12ヶ月以上過去2年間
会社都合退職(倒産・解雇など)6ヶ月以上過去1年間

会社都合の場合は条件が緩くなっています。これは「倒産や解雇はかわいそうな状況だから、要件を緩くしてあげよう」という考え方によるものです。

なお、12ヶ月以上というのは通算での計算が可能です。例えば、前の職場で10ヶ月、転職後の職場で5ヶ月務めた場合、合計15ヶ月となるため要件を満たします。

⚠️ 注意

自己都合退職の場合、求職の申し込み後に7日間の待機期間があり、その後さらに給付制限期間(約1ヶ月)があります。この期間中は基本手当を受け取れません。一方、会社都合退職(倒産・解雇)の場合は7日間の待機期間のみで、給付制限期間はありません。

💡 補足:動画では触れていませんが…

給付制限期間は、2020年10月以降の離職者から、自己都合退職の場合でも5年間のうち2回目以降は3ヶ月から1ヶ月に短縮されました。また、正当な理由のある自己都合退職(ハラスメント被害、病気・けが等)は会社都合と同様に扱われる場合があります。

📝 このセクションのまとめ

  • 基本手当は「働く意思と能力があり、求職活動をしている人」が対象
  • 自己都合退職:過去2年で12ヶ月以上の被保険者期間が必要
  • 会社都合退職:過去1年で6ヶ月以上でOK(要件が緩い)
  • 申し込み後、まず7日間の待機期間。自己都合はさらに給付制限期間(約1ヶ月)がある

基本手当の給付日数・受給期間・所定給付日数

「もらえる」と判定されたら、次は「何日分、いくらもらえるか」が決まります。ここで登場するのが所定給付日数受給期間という言葉です。

📌 2つの「期間」の違い

  • 受給期間:基本手当を受け取れる「期限」。原則として離職日の翌日から1年間。この期間内にもらい切らないと失効する。
  • 所定給付日数:1年間のうち、実際に何日分もらえるかの日数。退職理由・年齢・算定基礎期間によって異なる。

受給期間は原則1年ですが、妊娠・出産・病気などで30日以上働けない場合は最長3年間延長できます。つまり最大で1年+3年=4年まで延ばすことが可能です。

所定給付日数は、退職理由と算定基礎期間(今まで何年間被保険者として働いていたか)によって決まります。長く勤めた人ほど多く受け取れる仕組みです。

自己都合退職の場合の所定給付日数は以下の通りです。

算定基礎期間(勤続年数の合計)所定給付日数おおよその月数
1年以上10年未満90日約3ヶ月
10年以上20年未満120日約4ヶ月
20年以上150日約5ヶ月

1年未満の場合は所定給付日数がないように見えますが、そもそも自己都合退職では被保険者期間が12ヶ月以上なければ基本手当をもらえないため、「1年未満」という区分は実際には発生しません。12ヶ月以上あれば最低でも「1年以上」のカテゴリに入るわけです。

なお、会社都合退職(倒産・解雇)の場合は年齢によってより多くの給付日数が設定されており、最大で180日分受け取れるケースもあります。

📌 「20年」は重要なライン

日本の社会保険制度では、勤続20年以上かどうかが給付額・日数の分岐点になることが多いです。雇用保険の所定給付日数も20年以上で最大の150日分となり、退職所得控除の計算でも20年が境目になります。「20年サラリーマンを続けるとお得な制度が多い」と覚えておきましょう。

もらえる金額(基本手当日額)は、退職前6ヶ月間の賃金をもとに一定割合で計算されます。仕事が見つからなかった日数分だけ受け取れる仕組みで、例えば所定給付日数が90日でも、50日で就職が決まった場合は50日分の受給となります。

💡 補足:動画では触れていませんが…

基本手当日額には年齢ごとに上限額が設定されています。また、賃金が高いほど給付率(賃金日額に対する割合)は低くなる逓減方式が採用されています。具体的な金額はハローワークで確認できます。

📝 このセクションのまとめ

  • 受給期間は離職日翌日から原則1年。妊娠・病気等で最大4年まで延長可能
  • 所定給付日数は勤続年数で変わる:1〜10年未満=90日、10〜20年未満=120日、20年以上=150日(自己都合の場合)
  • 実際に仕事が見つからなかった日数分だけ受け取れる

高年齢求職者給付金と高年齢雇用継続給付の違い

「高年齢」という言葉がつく給付が2種類あり、混同しやすいので整理しておきましょう。名前が似ていますが、対象となる状況がまったく異なります。

給付の名称対象年齢退職の有無受給要件給付額
高年齢求職者給付金65歳以上退職済み(失業中)過去1年間に6ヶ月以上の被保険者期間被保険者期間1年未満:30日分、1年以上:50日分(一時金)
高年齢雇用継続給付60歳以上65歳未満在職中算定基礎期間5年以上・60歳時点比で賃金が75%未満に低下賃金低下率に応じて最大10%(64%以下の場合)

高年齢求職者給付金は、65歳以上の方が失業した場合にもらえる給付です。基本手当と異なり、一時金としてまとめてもらえるのが特徴です。被保険者期間が1年未満なら30日分、1年以上なら50日分を一括で受け取れます。受給要件は過去1年間に6ヶ月以上の被保険者期間があることで、65歳以上の方の特性を考慮して緩めに設定されています。

高年齢雇用継続給付は、60歳以降も在職中の方を対象とした給付です。60歳が定年の会社では、定年後に再雇用という形で給料が大幅に下がるケースが多くあります。この賃金低下を補うための給付が高年齢雇用継続給付です。

高年齢雇用継続給付には2種類あります。

  • 高年齢雇用継続基本給付金:60歳以降も退職せずそのまま再雇用された方が対象。60歳から65歳になるまでの間、継続して受け取れる。
  • 高年齢再就職給付金:一度退職して基本手当を受給した後、100日以上の残日数を残して再就職した方が対象。基本手当を受け取った分だけ給付期間が短くなる(最大2年間)。

受給要件として、60歳時点の賃金と比較して75%未満に低下していることが必要です。75%以上であれば支給されません。64%以下に低下した場合は、各月の賃金の10%を受け取ることができます。

🔄 最新アップデート

高年齢雇用継続給付は、65歳までの雇用が当たり前になりつつある社会情勢を踏まえ、将来的に廃止されることが決定しています。2025年4月以降、給付率が段階的に縮小される予定です。制度の最新情報はハローワークや厚生労働省のウェブサイトでご確認ください。

📝 このセクションのまとめ

  • 高年齢求職者給付金:65歳以上・失業中の方への一時金(30日分または50日分)
  • 高年齢雇用継続給付:60歳以上65歳未満・在職中で賃金が大幅低下した方への給付
  • 高年齢雇用継続給付は将来的に廃止が決定している

育児休業給付と介護休業給付の仕組み

育児休業給付と介護休業給付は、どちらも在職中(退職していない)の方が、育児や介護のために休業している間にもらえる給付です。

会社は育児休業や介護休業を取得させる義務がありますが、休業中の賃金を支払う義務はありません。働いてもらっていないのだからお金を払う必要がない、ということです。しかしそれでは生活費が確保できないため、国の雇用保険からこれらの給付が行われます。

育児休業給付と介護休業給付の主な違いと共通点を整理します。

項目育児休業給付介護休業給付
対象者1歳未満の子を養育する被保険者配偶者・父母・子・配偶者の父母を介護する被保険者
受給要件過去2年間に被保険者期間12ヶ月以上過去2年間に被保険者期間12ヶ月以上(同じ)
給付率休業開始から6ヶ月:67%、6ヶ月以降:50%67%
受給期間子が1歳に達する日の前日まで(最大2歳まで延長可)同一の家族につき通算3回・93日まで
分割取得最大2回まで分割可能通算3回まで(例:1ヶ月×3回)
複数人の同時取得夫婦両方が同時取得可能複数の被保険者が同時取得可能

育児休業給付の67%という数字は、健康保険の出産手当金と連動しています。出産前後(産前産後休業中)は健康保険から出産手当金として賃金の約2/3(67%)が支給されます。産後休業が終わり育児休業に入ると、今度は雇用保険の育児休業給付にバトンタッチして、同様に67%が支給されます。受け取る人の立場からすると、出産前後から育児休業中まで一貫して67%程度の収入が確保できる流れになっています。

📌 育児休業給付の延長について

原則は子が1歳になるまでですが、保育所に入所できない(待機児童など)場合は1歳6ヶ月まで、さらに延長が必要な場合は2歳まで延長できます。ただし3歳までは延長できないので注意してください。

介護休業給付の受給期間は、同一の家族に対して通算3回・93日までです。93日は31日×3回分に相当します。例えば「1ヶ月介護休業→職場復帰→1ヶ月介護休業→職場復帰→1ヶ月介護休業」という形で3回に分けて取得できます。

なお、休業中に会社から賃金が支払われる場合は、給付額が調整されます。

  • 会社から賃金が支払われない場合:給付率67%を全額受給
  • 会社から賃金の一部(例:40%)が支払われる場合:合計が80%になるまで給付(この例では40%を給付)
  • 会社から賃金の80%以上が支払われる場合:給付は支給されない

💡 補足:動画では触れていませんが…

2022年10月から「産後パパ育休(出生時育児休業)」制度が創設されました。子の出生後8週間以内に父親が最大4週間取得できる制度で、育児休業給付と同様に67%相当の給付が受けられます。通常の育児休業とは別に取得可能です。

📝 このセクションのまとめ

  • 育児・介護休業給付はどちらも在職中(退職せず休業中)の給付
  • 受給要件は同じ:過去2年間に被保険者期間12ヶ月以上
  • 給付率:育児休業は最初の6ヶ月67%・以降50%、介護休業は67%
  • 育児休業給付の67%は健康保険の出産手当金と連続した流れで設計されている
  • 介護休業給付は同一家族につき通算3回・93日まで
  • 会社から80%以上の賃金が支払われる場合は給付されない

📋 この記事を読んだら次にやること

  1. 自分の給与明細で「雇用保険料」の控除額を確認し、被保険者として加入しているか確かめる
  2. 万が一退職する場合に備えて、現在の勤続年数(算定基礎期間)と受け取れる所定給付日数を確認しておく
  3. 育児・介護休業を検討している場合は、勤務先の人事担当者またはハローワークに給付の具体的な手続きを確認する
  4. 高年齢雇用継続給付は廃止が決定しているため、60歳前後の方は最新情報をハローワークで確認する

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル ほんださん / 東大式FPチャンネル の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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