経費比率が高いと税務調査される?税理士が解説するボーダーラインと対処法
確定申告で税務署が必ずチェックする経費比率。業種別ボーダーラインと調査を回避する記載術を解説します。
国税は確定申告書の経費比率を必ずチェックしている
確定申告シーズンに最も多く寄せられる質問が、「経費って一体いくらまでなら使っていいんですか?」というものです。今回は確定申告と経費比率、つまり売上に占める経費の割合について深掘りして解説していきます。
国税庁は、皆さんが提出した確定申告書の中の経費比率をしっかり確認しています。では、この経費比率はどれくらいに収まっていればいいのか、そのボーダーラインはいくらくらいなのか。そして、経費比率が高くなってしまった時の対処法についても解説します。
青色申告決算書を見ると、左上の売上からスタートして、そこから下はすべて経費です。仕入れ、水道光熱費、運賃、交通費、地代家賃など、さまざまな項目があります。例えば売上が3,928万円の個人事業主の場合、青色申告特別控除55万円を引いた後の所得が357万1,720円となります。青色申告特別控除は青色申告の特典として認められる外部算定経費のようなものですので、実質的な利益はこれを加えた412万1,720円ということになります。つまり、経費を大体3,500万円ほど使っている計算になります。
「経費って800万円までって聞いたけど?」と思われる方もいるかもしれませんが、それは誤りです。その800万円というのは、法人(中小企業)の交際費を経費に落とせる年間の上限額のことで、個人事業主の経費とは別の話です。混同されている方も多いので注意してください。
個人事業主の経費とは?必要経費・家事費・家事関連費の違い
そもそも経費とは何なのかというと、所得税法上は曖昧なルールしかなく、「売上を獲得するために直接関連した支出」のことを必要経費と呼びます。
個人事業主のお金の支出には実は3種類あります。
①必要経費:売上に直接関連するもの。経費として認められます。
②家事費:完全にプライベートな支出。これは経費に落とせません。具体的には家計費・生活費・娯楽費、医療費、生命保険料、自宅の家賃や水道光熱費、習い事代、所得税や住民税などが該当します。なお、個人事業主が払う事業税は租税効果として経費に落とせますが、所得税と住民税は残念ながら家事費扱いになります。
③家事関連費(家事按分):①と②の中間に位置するもので、仕事とプライベートの両方にまたがる支出です。自宅兼オフィスや自宅兼店舗の家賃・水道光熱費、プライベートと仕事の両方で使っている携帯電話代、車の維持費などが該当します。これらは、仕事に関わった分だけ明確に区分できて、自信を持って立証できるのであれば経費に落としてもよいとされています。ただし、その割合を説明できなかったり、根拠がなければ比率が小さくてもアウトになってしまいます。
経費比率とは、この必要経費と家事按分で経費に落とせた分の合計が売上に占める割合のことです。
税務調査のターゲットになりやすい経費比率とは
先ほどの青色申告決算書の記載例(売上3,928万円・利益412万円)は、経費比率が高いように見えますが、結論から言えばこれは適正です。その理由は後ほど説明します。
ただし、業種によっては経費比率が高い場合に税務調査のターゲットになる可能性があります。また、経費比率が高いだけでなく、特定の経費科目の変動が激しい場合も注意が必要です。税務調査官は調査先を選定する際に「3期間PL(損益計算書)」を作成します。これは3期間分の損益を並べて、売上に対する外注費・交際費・旅費交通費などの特定科目の変動を確認するものです。
例えば、売上が20%増えているのに交際費が30%増えている場合、「増えすぎだ、おかしい、何か脱税っぽいことをしているに違いない」と判断され、調査の準備が始まるわけです。
従来はこうした経費チェックを人的に行っていましたが、今後はAIの導入が進みます。国税庁の資料「税務行政のデジタルトランスフォーメーション」によると、国税総合管理システム(通称:KSKシステム)があらゆる業種の統計データを蓄積していますが、これがパワーアップして「KSK2」として生まれ変わる予定です(当初2024年9月予定でしたが、現在は遅れているようです)。このシステムをフル活用して、より調査先の選定をシビアに行っていくことが予想されています。
業種別の平均利益率データ(個人企業経済調査)
個人事業主において「経費はここまでOK」という明確なラインは存在しません。しかし、ボーダーラインを判断するためのヒントとなるデータが3つあります。
1つ目:個人企業経済調査
これは個人事業の統計データを集めたもので、産業別に1企業あたりの年間売上高・年間営業利益・年間営業利益率が示されています。主な業種の平均データは以下の通りです。
・建設業:平均売上約1,500万円、利益288万円、利益率約19%
・製造業:平均売上1,169万円、利益250万円、利益率21.4%
・卸売・小売業・修理業:平均売上2,760万9,000円、利益178万円、利益率6.4%(非常に低い)
・不動産業・物品賃貸業:平均売上790万円(低め)、利益290万円、利益率36.7%(非常に高い)
皆さんの業種と照らし合わせてみて、ここに上がっている利益率よりも大幅に低い場合は、国税の目につきやすくなる可能性があります。このデータはリンクを参照してください。1つの目安として参考にしてみてください。
2つ目:申告所得税標本調査(国税庁資料)
こちらはそこまで参考にはなりませんが、所得別の納税者数の累年比率を示したものです。残念ながら国税庁は業種別のデータを公表していません。令和5年のデータで見ると、所得(事業所得)の分布は以下の通りです。
・100万円以下:5.2%
・100万円超200万円以下:19.9%
・200万円超300万円以下:19.1%
・300万円超500万円以下:22.7%(最大ボリュームゾーン)
・500万円超1,000万円以下:18.7%
・1,000万円超:8.9%、4.3%と徐々に減少
皆さんの売上から経費を引いた残額がどこに位置しているか、確かめてみてください。
消費税の簡易課税「みなし仕入れ率」が経費比率の目安になる
3つ目:消費税の簡易課税制度のみなし仕入れ率
これが実は経費比率の目安として非常に参考になります。消費税の計算は、得意先から受け取った消費税から、仕入れ先や経費に対して支払った消費税を差し引いた残額を国に納めるというルールです。しかしこの計算は非常に複雑で、各経費についてインボイスがあるかどうかをチェックした上で集計しなければなりません。
そこで、2年前の売上が5,000万円以下の事業者に限り、「簡易課税」という計算方法が認められています。簡易課税では、売上にかかった消費税から業種ごとに決められた「みなし仕入れ率」を掛けた金額を仕入れ税額とみなして、消費税を計算します。
業種別のみなし仕入れ率(みなし経費割合)は以下の通りです。
・卸売業:90%(物を仕入れて横流しするため付加価値が少なく、利益率が低い)
・小売業・修理業:80%(卸売より一手間かかるため利益率はやや高い)
・製造業・建設業:70%(材料を仕入れて加工するため利益率は高くなりやすい)
・飲食店:60%
・コンサル・士業(サービス業):50%(基本的に経費が少なく利益率が高い)
・不動産賃貸業:40%(経費がそれほどかからない)
この理屈で考えると、例えば年間売上2,000万円の事業者の場合、消費税200万円を預かっている形になります。
・卸売業(みなし率90%):みなし経費1,800万円、納付消費税20万円、利益は約200万円
・飲食店(みなし率60%):みなし経費1,200万円、納付消費税80万円、利益は約800万円
・コンサル(みなし率50%):みなし経費1,000万円、納付消費税100万円、利益は売上の約半分
先ほどの青色申告決算書の記載例(小売・修理業、売上3,928万円、利益412万円、利益率約10%)について言えば、小売・修理業のみなし仕入れ率が80%であることを考えると利益率が低いように思えますが、個人企業経済調査のデータでは卸売・小売業の平均利益率が6.4%程度なので、むしろ妥当な水準と言えます。
このように、業種ごとのみなし仕入れ率を参考に、自分の経費割合が適切な範囲に収まっているかを確認することができます。
経費比率が高すぎる場合の対処法:「本年中における特殊事情」の記載
確定申告のデータを入力し終えて蓋を開けてみたら、本当に利益率が低くて「どうしよう」と思うケースも当然あります。事業をやっていれば順風満帆にいつも行くわけではありません。そんな時はどのように対処すればいいのでしょうか。
対処法は、正直にその事情を開示することです。具体的には、青色申告決算書の3ページ目の右側にある「本年中における特殊事情」という欄に記入します(記載例すら載っていない欄ですが、必ず存在します)。
記載する内容の例としては以下のようなものが挙げられます。
・「アルバイト・パートの時給が最低賃金の引き上げによって今年は利益が大幅に低下した」
・「海外の仕入れ先の国の情勢の影響、あるいは円安の影響によって仕入れ価格が高騰し、利益が低下した」
・「新たな店舗を出店したことによって、そのイニシャルコストにより赤字になった」
こういった情報を開示することで、調査官の心証が不利になるのではないかと心配される方も多いと思いますが、むしろ逆効果です。係数管理をしっかり行い、自己分析ができてそれを開示できる事業者は「手堅くやっているんだろう」「経理業務もしっかりやっているんだろう」「わざわざ調査に行かなくても不正はないだろう」と判断されるケースも結構あります。
経費が多くなってしまって心配という方は、ぜひこの欄を活用してください。なお、法人の場合も法人事業概況説明書に似たような欄がありますので、そちらに記載して対処してみてください。
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!
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