家族名義の副業で重加算税!税務調査の実例と令和6年改正を税理士が解説
家族の名前を借りただけで重加算税?実際の審判事例と令和6年改正の要点を解説します。
この記事でお伝えする内容
今回は、ビジネスに家族の名前を使って税務調査で痛い目に遭った事例を取り上げます。悪気はなかったにもかかわらず重加算税を課されそうになったケースです。
具体的には以下の内容についてお話しします。
- 確定申告をしなかった時の罰金(加算税・延滞税)の仕組み
- 実際にあった税務調査トラブルの経緯
- 国税不服審判所での審判の論点と衝撃の結末
- 令和6年からの法改正(無申告加算税の厳罰化)
📌 ポイント
今回は国税不服審判所・令和5年1月27日裁決の実際の事例をもとに解説します。国税不服審判所とは、税金版の裁判所のようなものです。
📝 このセクションのまとめ
- 加算税の仕組みを理解してから実例を見ると、何が問題だったかよく分かる
- 国税不服審判所は税金版の裁判所
確定申告をしなかった時の罰金(加算税・延滞税)の基本
まず「罰金」と言いましたが、正確には本来の正しい税額に追加してかかってくる税金、つまり附帯税のことです。附帯税にはいろいろありますが、確定申告をしなかった場合に課されるのが無申告加算税です。
個人の所得税の確定申告は毎年3月15日が申告期限です。この期限を過ぎてから確定申告をした場合(期限後申告)、無申告加算税が課されます。
| 状況 | 無申告加算税の税率 |
|---|---|
| 税務調査の前に自主的に提出 | 5% |
| 税務調査が来ると分かってから慌てて提出 | 15%(50万円超の部分は20%) |
さらに申告書を提出した時から延滞税も加算されます。現在の延滞税は年間2.4%からスタートです。
無申告7年間だとどれだけの税金がかかるか?具体例
例えばネットショップをやっていて、所得税が本来年間300万円かかるところを7年間ずっと無申告だった場合を見てみましょう。
| 税金の種類 | 通常の無申告加算税の場合 | 重加算税が課された場合 |
|---|---|---|
| 所得税(7年分) | 2,100万円 | 2,100万円 |
| 住民税・事業税 | 約1,645万円 | 約1,645万円 |
| 無申告加算税 | 約402万円 | — |
| 重加算税(40%) | — | 約840万円 |
| 延滞税 | 約328万円 | 約328万円 |
| 附帯税合計 | 約730万円 | 約1,168万円 |
⚠️ 注意
通常の無申告加算税が約402万円なのに対し、重加算税が課されると約840万円と約2倍以上になります。本来ちゃんと3月15日までに申告していれば払わなくて済んだ税金が、重加算税の場合は約1,168万円にも膨れ上がります。
重加算税とは何か?隠蔽・仮装の具体例
重加算税は「重たい税金」という感じがしますが、実際に重たいです。課される条件は隠蔽・仮装があった場合です。
隠蔽・仮装の具体例としては以下のようなものが挙げられます。
- 確定申告書や帳簿に虚偽の記載があった
- 架空名義を使ってやり取りをしていた
- 税務調査の際に虚偽の答弁をした
- 二重帳簿(税務署に出している帳簿と実際の帳簿が異なる)
| 申告状況 | 重加算税の税率 |
|---|---|
| 期限内申告あり(過少申告)+隠蔽・仮装 | 35% |
| 無申告・期限後申告+隠蔽・仮装 | 40% |
📌 ポイント
税務調査官は、申告書に隠蔽・仮装がないかを必ずチェックします。少しでも認定できれば重加算税を課せるため、税務調査では「通常の加算税で済むか、重加算税になるか」が頻繁な争点となっています。税務職員にとっても重加算税を取ることは評価につながるため、積極的に認定しようとする傾向があります。
📝 このセクションのまとめ
- 無申告の場合、加算税・延滞税で本来の税額を大きく上回る負担になる
- 隠蔽・仮装があると重加算税(40%)が課され、通常の約2倍以上になる
- 税務調査では「通常加算税か重加算税か」が大きな争点になる
実際の事例:母親名義で副業ネットショップを運営した会社員のケース
ここからは、国税不服審判所のホームページに掲載されている実際の事例(令和5年1月27日裁決)を簡単にまとめてご紹介します。
会社員の方が副業で2012年にネットショップを開設しました。海外から商品を輸入し、国内のネットショップで販売するビジネスです。2014年にはショッピングサイトにお店を出展しました。
ショッピングサイトへの出展には特定商取引法の規定により出品者情報の記載が必要です。そこに記載したのは以下の内容でした。
- 正式名称:H社(実在しない会社名)
- 代表者:母親の名前
- 住所:利用していたバーチャルオフィスの住所
商売は繁盛しましたが、税務的な問題が発生しました。2014年から2020年まで7年間、確定申告を一切しませんでした。
その結果、2021年に税務調査が入り、税務署の指導を受けて2022年1月に7年分の期限後申告を行いました。すると翌2022年2月、税務署から無申告加算税に加えて重加算税も課すという通知が届きました。
⚠️ 注意
この方は重加算税に納得がいかず、2022年5月に国税不服審判所へ審査請求(訴え)を起こしました。諦めずに戦ったことが後の結果を左右しました。
📝 このセクションのまとめ
- 会社の副業禁止規定を避けるため、母親名義でネットショップを運営
- 7年間無申告→税務調査→重加算税を課される流れ
- 納得できない場合は国税不服審判所に審査請求できる
国税不服審判所での争点:双方の主張
税務署と納税者の双方がそれぞれの主張を展開しました。
【税務署側の主張】
母親の名前でネット販売をしているということは、ネット販売をしているという事実を隠蔽している。隠蔽しているから重加算税を課すべきだ。
【納税者側の主張①】
母親の名前を使ったのは、会社が副業禁止だったため自分の名前をネットに出せなかったから。また、母親も同居していて梱包作業などを手伝っていたので、まるっきり嘘ではない。税金を隠す目的で名前を使ったわけではない。
【税務署側の反論】
隠蔽・仮装というのは脱税目的かどうかは関係ない。何かを隠蔽した事実があればそれはダメだ。
【納税者側の主張②】
実際には、売上代金の入金口座名、商品発送時の名前、お客さんとのメールのやり取り、これらは全て本人自身の名前で行っている。まるっきり隠そうとしたわけではない。
【税務署側の再反論】
そもそもホームページに「H社」と書いているが、H社は実在しない会社だ。ビジネスで嘘をついているのだから、それは完全に重加算税の対象だ。
📌 ポイント
税務署は何かにつけて重加算税を狙ってきます。今回のように「ホームページに母親の名前があったから重加算税だ」というのも、かなり無理のある主張です。ただし、そもそも無申告だったからこそ、税務署も本気で重加算税を取りに来たという側面があります。
📝 このセクションのまとめ
- 税務署:母親名義の使用=隠蔽として重加算税を主張
- 納税者:副業禁止対策であり、売上口座・メール等は本人名義で隠す意図はなかったと主張
- 「脱税目的かどうか」と「隠蔽の事実があるかどうか」の解釈が争点に
国税不服審判所の裁決:重加算税の取り消し
国税不服審判所(審判員)の結論は、重加算税の取り消しでした。
その理由は以下の通りです。
- 確かに母親の名前を使ったり、会社名が嘘だったりと、特定商取引法上は問題のある点がある
- しかし税金の面で見ると、母親がネットショップをやっているとは言い切れない
- なぜなら、売上代金の入金口座やメールのやり取りは本人自身の名義で行われていたから
- まるっきり隠蔽しようとしているようには見えないため、隠蔽・仮装とは言い切れない
- したがって重加算税もない
📌 ポイント
この裁決から学べる重要な教訓が2つあります。
①納得できなければ戦うことも選択肢のひとつ。もし審査請求を諦めていたら、重加算税を取られたまま終わっていました。税理士等に報酬を払ってでも国税不服審判所で決着をつけたからこそ、取り消しになりました。
②そもそも無申告だったからこそ、税務署も本気で重加算税を取りに来ました。普段からちゃんと確定申告をしていれば、「副業禁止のために母親の名前を使っているが、税金はちゃんと払います」という状況であれば、最初から重加算税とは言われなかったと思われます。
📝 このセクションのまとめ
- 審判所は「売上口座・メールが本人名義=隠蔽とは言い切れない」として重加算税を取り消し
- 納得できない課税には審査請求という手段がある
- 根本的には無申告が全ての問題の原因
令和6年(2024年)からの無申告加算税の厳罰化改正
世の中には無申告のままずっと過ごしてしまう人が多いため、国はそこに今回メスを入れました。それが令和6年(2024年)からの無申告加算税の厳罰化です。
令和6年(2024年)1月1日以後の申告期限分から、罰金に対する税率が変わっています。これは令和5年分の所得税確定申告(2024年3月15日期限)からすでに適用されています。
| 状況 | 改正前 | 改正後(令和6年〜) |
|---|---|---|
| 無申告加算税(300万円超の部分) | 20% | 30%(1.5倍) |
| 繰り返し無申告(複数年継続)への追加 | なし | +10% |
| 繰り返し無申告の合計税率 | — | 40% |
| 繰り返し無申告+隠蔽・仮装(重加算税) | 40% | 50% |
⚠️ 注意
今回の事例のように7年間無申告だった場合、改正後のルールでは純粋に1.5倍の罰金が課される可能性があります。そこに延滞税も加算されますので、無申告はとにかく年々厳しくなっています。実はずっと無申告という方は、早急に対応してください。
また、期限内に申告することにはメリットもあります。仮に申告が不完全でも、3月15日の期限内に申告していれば、後から誤りが見つかった場合に課されるのは過少申告加算税です。
| 申告の状況 | 加算税の種類 | 税率(目安) |
|---|---|---|
| 税務調査前に自主修正 | 過少申告加算税 | 0% |
| 税務調査後に修正 | 過少申告加算税 | 10〜15%程度 |
| 無申告で税務調査前に提出 | 無申告加算税 | 5% |
| 無申告で税務調査後に提出 | 無申告加算税 | 15〜20%(改正後は30%超も) |
📌 ポイント
申告期限内(3月15日まで)に申告しておくと、税務調査前に自主的に修正申告をした場合の過少申告加算税は0%です。多少不完全でも、まず期限内に出すことが大切です。無申告加算税の税率より少なくとも5%程度低くなります。
📝 このセクションのまとめ
- 令和6年1月1日以後の申告期限分から無申告加算税が厳罰化(最大50%)
- 繰り返し無申告には追加10%が上乗せされる
- 令和5年分の確定申告(2024年3月15日期限)からすでに適用開始
- 期限内に申告することで、後の修正時の加算税を大幅に抑えられる
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル オタク会計士ch【山田真哉】 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは オタク会計士ch【山田真哉】を応援しています!
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