2025年から始まる金融所得課税強化を税理士が解説|NISAと引き換えの増税とは
2025年から金融所得課税が強化されます。今は超富裕層のみが対象ですが、将来的な拡大に油断は禁物です。
金融所得課税とは何か?なぜ今話題になっているのか
金融所得課税とは、株式や投資信託の売却益・配当金に対する税制・税金のことを意味します。これは実は他の所得よりもかなり優遇されており、岸田政権の発足当初から見直しが議論されてきました。そして自民党総裁選においても、この金融所得課税の強化が公約として掲げられたことで、再び注目を集めています。
📌 ポイント
金融所得課税とは、株式・投資信託の売却益や配当金にかかる税金のこと。現行では一律20.315%という低税率が適用されており、この優遇税率が「不公平」として問題視されています。
📝 このセクションのまとめ
- 金融所得課税=株・投資信託の売却益・配当金への課税
- 岸田政権発足当初から見直し議論が続いている
- 自民党総裁選でも公約として掲げられ、再び注目を集めている
現行の金融所得課税の仕組みと優遇の実態
日本の個人の主要な税金である所得税は、累進課税方式という構造を取っています。つまり、儲けが大きくなればなるほど税率もどんどん上がっていく仕組みです。これに住民税の一律10%を加えたものが、総合課税の全体像です。
総合課税の対象となる所得には以下のものが含まれます。
- 給与所得(サラリーマンの給与)
- 不動産所得(賃貸収入など)
- 年金収入
- 副業の雑所得
- 個人事業主の事業所得
一方で、株式や投資信託の配当・売却益に対する税金は、このような累進課税ではなく、一律20.315%という非常に優遇された定率税率が適用されています。
| 税金の種類 | 所得税 | 住民税 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 金融所得(株・投資信託) | 15.315%(復興特別所得税含む) | 5% | 20.315% |
| 給与・事業所得(最高税率) | 45% | 10% | 55% |
なぜ金融所得がこれほど低税率なのかというと、国が株式投資を促進したかったという背景があります。ちなみに以前は10%という時代もあったほどです。
さらに特定口座(源泉徴収あり)を選択していれば、確定申告が不要で、その所得が皆さんの合計所得にカウントされません。つまり「表に出てこない」ということです。例えば、住宅ローン控除は所得2,000万円超だと適用できませんが、特定口座で申告しない株式投資の儲けはいくら大きくても、この2,000万円のラインを計算する際に含まれないのです。
📌 ポイント
特定口座(源泉徴収あり)を使えば、株式投資の利益は確定申告不要で、住宅ローン控除の所得判定にも含まれないという二重の優遇があります。
📝 このセクションのまとめ
- 金融所得は一律20.315%で、給与所得(最高55%)と比べて大幅に優遇されている
- かつては10%という時代もあった
- 特定口座(源泉徴収あり)なら確定申告不要、合計所得にもカウントされない
「1億円の壁」問題とは何か
税の公平性という観点から、この税率格差が長年問題視されてきました。それが「1億円の壁」問題です。
財務省の資料によると、横軸を所得金額、縦軸を税負担率(所得税のみ)としたグラフでは、年収1億円付近で税負担率がピーク(27.1%)に達します。
本来、年収が1億円を超えると所得税と住民税を合わせて55%(所得税だけで45%)に近づいていくはずです。ところが、1億円を超えたあたりからグラフは右肩下がりになり、所得20億円規模になると税負担率が20%台まで落ち込んでいくのです。
なぜこのような逆転現象が起きるのでしょうか。それはまさに金融所得課税が影響しているからです。財務省の資料では、高額所得者の所得のうち株式などの譲渡所得等の占める割合が示されており、所得1億円を超えたあたりから金融所得の比率が急上昇しています。
| 所得規模 | 税負担率(所得税) | 金融所得の割合 |
|---|---|---|
| 〜1億円 | 右肩上がりで上昇 | 低い |
| 1億円付近 | 27.1%(ピーク) | 急上昇し始める |
| 数十億円規模 | 右肩下がりで低下 | 高い |
| 100億円規模 | 20%台 | 約9割が金融所得 |
所得が100億円規模になると、なんと約9割が金融所得で稼いでいます。上場企業のオーナーや株式投資で生計を立てている方などが含まれます。このような逆転現象が以前から問題視されてきたのです。
⚠️ 注意
「1億円の壁」とは、所得が1億円を超えると逆に税負担率が下がっていく逆転現象のことです。これは脱税ではなく、金融所得の低税率(20.315%)が合法的に適用されているために起きています。
📝 このセクションのまとめ
- 所得1億円を超えると税負担率が逆に下がる「1億円の壁」が存在する
- 超高額所得者ほど金融所得の比率が高く、低税率の恩恵を大きく受けている
- 所得100億円規模では約9割が金融所得という実態がある
2025年から始まる金融所得課税強化の具体的な内容
この1億円の壁問題を解消するため、令和5年度税制改正で金融所得課税の強化がひっそりと決定されていました。「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化」という名目で、2025年(令和7年)からこの制度がスタートします。
具体的にどのような場合に追加課税が発生するのか、計算の仕組みを見ていきましょう。
📌 追加課税の判定方法
以下の2つを比較し、右側の方が大きければ差額を追加納税します。
- 左側:通常の所得税額(給与・事業所得等の通常計算)
- 右側:(合計所得 ※NISAを除く ー 3億3,000万円)× 22.5%
つまり、3億3,000万円が足切りラインとなり、これを超えた部分に対して最低でも22.5%の所得税を納めることになります。
なお、新NISA・NISA口座の利益はこの合計所得から除外されます。非課税制度の趣旨を守る形になっています。
また、22.5%という数字は、所得税の最高税率45%の半分に設定されています。
📝 このセクションのまとめ
- 令和5年度税制改正で金融所得課税強化が決定済み
- 2025年から「合計所得ー3億3,000万円」×22.5%という計算で追加課税が発生
- NISAの利益は合計所得から除外される
- 22.5%は所得税最高税率45%の半分
具体的な計算例:いくら稼いだら追加課税が発生するのか
実際の数字を使って、追加課税が発生するかどうかを確認してみましょう。ここでは所得税のみを取り上げます(復興特別所得税0.315%は計算の簡略化のため省略)。
| ケース | 株式投資の所得 | 左側:通常の所得税額 (所得×15%) | 右側:新計算式 (所得ー3.3億)×22.5% | 追加課税 |
|---|---|---|---|---|
| ケース① | 5億円 | 5億×15%=7,500万円 | (5億ー3.3億)×22.5%=3,825万円 | 追加なし(左>右) |
| ケース② | 10億円 | 10億×15%=1億5,000万円 | (10億ー3.3億)×22.5%=1億5,075万円 | 差額75万円を追加納税 |
この計算から、株式投資のみで考えると、所得が約10億円を超える人が追加課税の対象になることがわかります。
一方、株式以外に給与や事業所得もあるという方の場合は、もともとの所得税額が高くなるため、追加課税が発生するラインはもう少し低くなり、合計所得で約30億円規模になると言われています。
📌 ポイント
現時点での対象者は、日本全国でも200〜300人程度の超富裕層のみと言われています。今すぐ一般の投資家が心配する必要はありません。
📝 このセクションのまとめ
- 株式投資のみの場合、所得約10億円超が追加課税の対象
- 給与・事業所得もある場合は合計所得約30億円規模が目安
- 現時点の対象者は全国で200〜300人程度
油断できない理由:NISAは「釣り」で今後さらに拡大する可能性
「自分には関係ない」と思った方も、油断は禁物です。今回の金融所得課税強化は、あくまでも第一弾に過ぎない可能性があるからです。
見方によれば、誰もが使える新NISAという素晴らしい非課税制度を作った一方で、特定口座などで行う通常の株式投資の税金については、これから段階的に増税していくという方向性が見えてきます。
今後考えられる課税強化の方向性は以下の通りです。
- 足切りライン(現行3億3,000万円)を1億円や5,000万円に大幅引き下げ
- 最低税率(現行22.5%)を25%や30%に引き上げ
- 特定口座(源泉徴収あり)で申告しない場合でも国民健康保険料の算定対象に含める
特に3つ目の国民健康保険料の話は、高齢者や自営業者にとって税金とは別の保険料負担増につながる可能性があるとして、議論が始まっています。
⚠️ 注意
仮に足切りラインが1億円や5,000万円に引き下げられた場合、対象者は一気に拡大します。また、国民健康保険料の算定に金融所得が含まれるようになれば、高齢者や自営業者の負担が大幅に増加する可能性があります。
なお、この方向性は今回の自民党総裁選の結果にかかわらず実現されそうな雰囲気であり、令和5年度税制改正という形でほぼ2年前にすでに決定されています。
📝 このセクションのまとめ
- 今回の強化はあくまで第一弾。足切りラインの引き下げや税率引き上げが今後考えられる
- 国民健康保険料の算定への組み込みも検討されており、自営業者・高齢者は要注意
- NISAを普及させながら特定口座への課税を強化する方向性が見えている
- 今の財政状況を考えると、あらゆる税金が増税方向に進む可能性が高い
今から投資家がすべき対応と心構え
現状では対象者が全国で200〜300人程度という極めて限られた範囲ですが、今後の税制改正の方向性を見ると、株式投資の終わりの始まりになる可能性も否定できません。
現状の財政を考えると、おそらく今後あらゆる税金が増税方向に進むと思われます。だからこそ、しっかりと理論武装して対処していくことが大切です。
今から意識しておきたいポイントを整理します。
- 新NISAを最大限活用する:非課税枠は今後も守られる可能性が高い
- 税制改正の動向を継続的にチェックする:足切りラインの変更は投資戦略に直結する
- 国民健康保険料への影響も注視する:自営業者・高齢者は特に要注意
- 税理士や専門家に相談する:自分の所得構成に合わせた対策を検討する
📌 ポイント
今すぐ一般の投資家が慌てる必要はありませんが、税制改正の方向性を把握し、理論武装しておくことが重要です。足切りラインの引き下げや税率引き上げが行われた場合、対応が遅れると大きな損失につながる可能性があります。
📝 このセクションのまとめ
- 現時点の対象者は超富裕層のみだが、今後の拡大に備えた準備が必要
- 新NISAの非課税枠を最大限に活用することが重要
- 税制改正の動向を継続的にウォッチし、理論武装しておくことが大切
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。 本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!
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