設立1年目の法人が絶対やってはいけない税金・社会保険のミス5選【税理士が解説】

設立1年目の法人が絶対やってはいけない税金・社会保険のミス5選【税理士が解説】
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法人を設立したばかりの一人社長・マイクロ法人が知らないうちに大損してしまう、税金・社会保険の落とし穴を5つ徹底解説します。

「決算が近づいたらまとめて相談しよう」と思っていませんか? 実は決算直前に動き始めても手遅れになることが多く、設立直後から対策しておかなければならないことがたくさんあります。既存の法人にも参考になる内容ですので、ぜひ最後までご確認ください。

ミス① 会社設立前の経費を捨ててしまう

「会社ができる前の期間の費用は経費に落とせないのでは?」と思う方が多いですが、実はそれができます。会社スタート前の経費のことを繰延資産と税法上呼んでおり、代表的なものが「創立費」と「開業費」の2種類です。

種類内容具体例
創立費法人の設立のために支出した費用司法書士への手数料、登録免許税など
開業費法人設立後〜業務開始までの期間に特別にかかった費用セミナー参加費、取引先との打ち合わせ費用(会議費)など

これらは一旦「経費」ではなく「資産」として貸借対照表に計上しますが、任意償却OKというルールがあります。つまり、好きなタイミングで経費に落とせるのです。

📌 任意償却のメリット

  • 開業1年目の決算時に全額経費に落とすことも可能
  • 赤字が出ている年はとりあえず資産として置いておき、2年目・3年目に利益が多く出たタイミングで経費に落とすことも可能
  • 落とすタイミングを自由に選べるため、節税効果を最大化できる

会社がまだできていない段階の費用なので、基本的に社長個人が立て替えをするイメージです。法人を作ってから、その分のお金を社長個人に返金するという処理をします。

⚠️ 注意:開業費にならないもの

以下のものは開業費として認められません。

  • 設備・機械・車・建物などの固定資産
  • 仕入商品などの在庫
  • オフィス・店舗の敷金・礼金

証拠書類(レシートや領収書)を捨ててしまって節税のチャンスを逃している方が非常に多いです。開業準備期間中のレシート・領収書は絶対に捨てずに保管してください。決算前に慌てて探そうとしても、まず忘れています。早めに会計ソフトを導入して記録しておくことが重要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 設立前の費用は「創立費」「開業費」として繰延資産に計上できる
  • 任意償却なので好きなタイミングで経費に落とせる
  • レシート・領収書は必ず保管し、早めに会計ソフトへ入力する

ミス② 税務届出を忘れて節税効果が激減する

法務局での法人設立登記が完了しても、他にやっておかなければならない届出が2種類あります。税務上の届出社会保険関連の届出です。

税務上の届出には以下のものがあります。

届出書類提出先期限ポイント
①法人設立届出書税務署・都道府県・市区町村設立後2ヶ月以内法人の存在を報告するだけの書類。出さないと各種特典が受けられない可能性あり
②給与支払事務所等の開設届出書税務署設立後1ヶ月以内役員報酬を取る場合も必須。忘れると源泉徴収義務違反になる
③源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書税務署随時半年に1回の納付にできる特例。常時従業員10人未満の事業所のみ対象
④青色申告の承認申請書税務署設立後3ヶ月以内(原則)出し忘れるとその年度は白色申告扱いになり、各種特典が使えなくなる
⑤法人設立届出書(地方版)都道府県・市区町村設立後2ヶ月以内個人事業主と違い、法人は複数箇所への提出が必要

源泉徴収とは何か

源泉徴収とは、給与から税金を徴収してお国に納付することです。会社が社長に役員報酬を払う際には、以下のものを差し引いて各機関に納める必要があります。

  • 健康保険料・厚生年金保険料(社会保険)→ 年金事務所
  • 所得税 → 税務署(原則として翌月10日までに納付)
  • 住民税 → 地方自治体

この納付期限を毎月管理するのは大変なため、納期の特例の申請をおすすめします。

📌 納期の特例とは

「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出することで、毎月の納付が半年に1回になります。

  • 上半期(1月〜6月)に徴収した分 → 7月10日までに納付
  • 下半期(7月〜12月)に徴収した分 → 翌年1月20日までに納付

※常時従業員が10人未満の事業所のみ対象。大規模になると原則通り毎月納付が必要。

⚠️ 納期の特例のデメリット

半年に1回にまとめると、1回あたりの納付金額が大きくなります。役員報酬を多く取っている場合は特に金額が膨らむため、資金繰りに注意してください。また、半年に1回だとかえって忘れやすいというリスクもあります。

青色申告を出し忘れると何が失われるか

青色申告の承認申請書を期限内(原則として設立後3ヶ月以内)に提出しないと、その年度は白色申告扱いになり、以下の特典が使えなくなります。

  • 少額減価償却の特例:1セット30万円未満の設備等を一括で経費に落とせる(青色申告法人のみ)
  • 欠損金の繰越控除:赤字を最大10年間繰り越して、黒字と相殺できる

特に欠損金の繰越控除は非常に大きな節税メリットです。具体例で見てみましょう。

条件青色申告の場合白色申告の場合
1期目の赤字▲150万円を繰り越せる▲150万円は切り捨て(なかったことに)
2期目の利益100万円100万円
繰越欠損との相殺100万円 − 100万円 = 0円(課税所得ゼロ)相殺できない
法人税等の納税額ほぼ0円(法人住民税の均等割のみ)約30万円(100万円に対して課税)
残余欠損金50万円をさらに翌期以降へ繰り越せるなし

昔はこの繰越期間が5年・7年でしたが、現在は10年に延長されています。特にベンチャー企業のように黒字化まで時間がかかるケースでは、この制度を絶対に活用すべきです。法人で白色申告のままという方は、経験上500社中1社程度しかいません。法人であれば必ず青色申告を選択してください。

📝 このセクションのまとめ

  • 法人設立後は税務署・都道府県・市区町村の3箇所に届出が必要
  • 給与支払事務所の開設届は設立後1ヶ月以内、青色申告承認申請書は3ヶ月以内
  • 源泉徴収の納期の特例を活用すれば半年に1回の納付でOK(10人未満の事業所)
  • 青色申告を出し忘れると、欠損金の繰越控除(最大10年)が使えなくなり大損

ミス③ 役員報酬の設定ミスと社会保険未加入で自分の給与が0円になる

「駆け出しだから最初の半年は役員報酬0円で様子を見る」という方がいますが、これは絶対にNGです。

法人税法では、役員報酬(一人社長の給与)について非常に厳しいルールが定められています。

要件内容
定期同額であること毎月決まった金額でないと経費として認められない
不相当に高額でないこと極端に高額な役員報酬は否認されることがある

また、役員報酬は年に1回しか改定できず、決算終了後3ヶ月以内に決定しなければなりません。この期限を過ぎると、その期の役員報酬は0円とみなされ、法人に利益が残ったまま多額の法人税を課せられることになります。

⚠️ よくある失敗パターン

  • 役員報酬を決めずに放置:法人に利益が残り、多額の法人税が発生。さらに社会保険の届出もできない。
  • 役員報酬が少なすぎて貸付金が増える:給与0円のまま生活費として会社からお金を引き出すと「貸付金(資産)」になる。返せない場合は賞与とみなされ、経費にもならず源泉徴収も発生。さらに融資審査でも不利になる。
  • 役員報酬を高く設定しすぎる:個人の所得税・住民税の負担が重くなる。払えなくなると源泉漏れ・納付漏れが発生。
  • 途中で役員報酬の金額を変更する:定期同額ルール違反となり経費否認される。

役員報酬の目安はいくらか

絶対ではありませんが、ざっくりした目安として年収1,500万〜1,800万円がラインになります。このラインを超えて役員報酬を取ると、個人の税負担(所得税・住民税)の方が重くなる傾向があります。社会保険料も加味して考える必要があるため、毎年1回、会計ソフトで月次決算をしながら来期の着地予想を立て、シミュレーションして決めることが重要です。

📌 マイクロ法人の場合

個人事業の国民健康保険から脱退して法人の社会保険に加入し、役員報酬を低く抑えて社会保険料の負担を減らすスキームを使う場合は、役員報酬を月数万円〜5万円程度に設定するケースが多く、シミュレーションの概念はそれほど必要ではありません。ただし、一人社長でも会社を大きくしていく場合は、このシミュレーションが非常に重要です。

社会保険の届出も忘れずに

役員報酬を決めないと社会保険料も決まらないため、社会保険の届出ができません。一人社長でも原則として社会保険への加入が必要です。加入を放置していると最大2年間さかのぼって徴収されることがあります。税務署だけでなく年金事務所も調査に来ることがあるため、注意が必要です。

なお、一般の従業員・アルバイトを雇用する場合は、労働基準監督署への労災保険申請やハローワークへの雇用保険申請も必要です(社長本人は雇用契約ではなく委任契約のため対象外)。

📝 このセクションのまとめ

  • 役員報酬は定期同額・不相当に高額でないことが経費計上の条件
  • 決算後3ヶ月以内に決定しないと、その期の役員報酬は0円扱いになる
  • 役員報酬の目安は年収1,500万〜1,800万円が一つのライン
  • 役員報酬を決めないと社会保険の届出もできず、最大2年さかのぼって徴収されるリスクがある

ミス④ 消費税の選択ミスで税金を余分に払う

消費税の選択を誤ると、数十万円単位で損をすることがあります。まず「インボイスを取得するかしないか」の判断から始まります。

インボイス取得の判断基準

昔は法人設立初年度(資本金1,000万円未満)は消費税が免税でした。取引先から受け取った消費税をそのまま手元に残せたのです。しかし2023年10月からインボイス制度がスタートし、インボイスを取得すると受け取った消費税を納めなければならないルールに変わりました。

ビジネス形態インボイスの必要性理由
BtoC(一般消費者向け)例:飲食店・小売業△ 必須ではないことが多い消費者は仕入税額控除を気にしないため
BtoB(法人・事業者向け)例:システムエンジニア・建築業・製造業○ あった方が有利取引相手がインボイスの有無で消費税控除を判断するため

消費税の計算処理は3種類ある

インボイスを取得して消費税課税事業者になった場合、消費税の計算処理方法は以下の3種類から選べます。

方式計算方法売上3,000万円(消費税300万円)・経費1,000万円(消費税100万円)の場合の納税額備考
本則課税受け取った消費税 − 支払った消費税200万円(300万−100万)経費が多い事業者に有利な場合あり
2割特例(期間限定)受け取った消費税 × 20%60万円(300万×20%)基準期間の課税売上が1,000万円以下でインボイス取得した事業者が対象
簡易課税受け取った消費税 × 業種別みなし仕入率例:システムエンジニア(50%)→ 150万円(300万×50%)基準期間の課税売上が5,000万円以下、かつ事前届出が必要

上記の例では2割特例が最も有利ですが、必ずしも2割特例が有利とは限りません。例えば、経費が非常に多い事業所では本則課税が有利になる場合もありますし、修理業など業種によっては簡易課税のみなし仕入率が低く設定されているため(修理業10%・同20%など)、簡易課税が有利になることもあります。

📌 消費税の選択で大切なこと

会計ソフトを適正に活用すれば、現時点の「仮受消費税」と「仮払消費税」の差額(=納めるべき消費税の概算)が随時確認できます。2割特例の税額・簡易課税の税額と比較しながら、自分の業種に最適な方式を選択しましょう。簡易課税は事前の届出が必要な点にも注意が必要です。

📝 このセクションのまとめ

  • BtoCビジネスはインボイス不要なケースが多い。BtoBビジネスはインボイスがあった方が有利
  • 消費税の計算方式は本則課税・2割特例(期間限定)・簡易課税の3種類
  • どの方式が有利かは業種・経費の多さによって異なるため、会計ソフトでシミュレーションが重要
  • 簡易課税は事前届出が必須

ミス⑤ 顧問税理士不在のまま全てのミスが重なって大損する

ここまで紹介してきた4つのミスを全て一人でクリアするのは、勉強熱心な社長であれば可能かもしれませんが、多くの方は何かしらのミスを犯してしまいます。決算直前に顧問税理士を決めてお願いしても、節税はほとんどできません。節税には時間が必要です。

顧問税理士が必要なケース

ケース顧問税理士の必要性
個人事業主・フリーランス△ 必須ではないことが多い
マイクロ法人(事業規模拡大なし・自分で法人税申告書を作れる)△ 必須ではない
法人を作ってこれから事業拡大を目指す一人社長○ 必須

税理士の探し方

  • 知人の経営者・社長仲間からの紹介
  • 友人・同級生に税理士がいないか探す
  • 異業種交流会で仲良くなった人にお願いする
  • ネット・SNS・YouTubeで探す
  • 税理士紹介会社(エージェント)を利用する

税理士の選び方のポイント

  • 自分の事業目的・経営者としてどこまで成長したいかを軸に選ぶ
  • 節税だけでなく、資金調達・事業成長のサポートをしてくれるか
  • 弁護士・社労士など他の専門家を紹介してくれるネットワークがあるか
  • 税務・労務をワンストップでサポートできる会計事務所かどうか
  • 事務所の代表者よりも、実際の担当者との相性を重視する
  • 経理担当者任せにせず、社長自らが立ち合って選ぶ

📌 顧問税理士に依頼するメリット

  • 今回紹介したような各種届出・手続きのミスを防げる
  • 節税シミュレーションができる
  • 資金調達のサポートが受けられる
  • 経営に集中する時間が生まれる

📝 このセクションのまとめ

  • 法人を作って事業拡大を目指すなら顧問税理士は必須
  • 決算直前に依頼しても節税はできない。早めに相談することが重要
  • 担当者との相性・ワンストップ対応力・他士業とのネットワークを重視して選ぶ
  • 経理担当者任せにせず、社長自らが選定に関わること

5つのミスを防ぐためのチェックリスト

設立1年目の一人社長・マイクロ法人が最低限やっておくべきことをまとめます。

チェック項目期限・タイミング担当
開業前のレシート・領収書を保管する設立前〜設立直後社長
法人設立届出書を提出する(税務署・都道府県・市区町村)設立後2ヶ月以内税理士 or 社長
給与支払事務所等の開設届出書を提出する設立後1ヶ月以内税理士 or 社長
源泉所得税の納期の特例の承認申請書を提出する随時(早めに)税理士 or 社長
青色申告の承認申請書を提出する設立後3ヶ月以内税理士 or 社長
役員報酬の金額を決定する設立後3ヶ月以内 or 決算後3ヶ月以内税理士と相談
社会保険(健康保険・厚生年金)の加入届出をする役員報酬決定後すみやかに社労士 or 税理士
インボイス取得の要否を判断する設立直後税理士と相談
消費税の計算方式(本則・2割特例・簡易課税)を選択する設立直後〜決算前税理士と相談
会計ソフトを導入して月次管理を開始する設立直後社長

⚠️ 最大の教訓

「決算が近づいたら相談しよう」は絶対にNGです。節税・届出・社会保険の手続きは、いずれも設立直後から動き始めないと手遅れになります。できれば会社を作る前の段階から税理士・社労士に相談することをおすすめします。

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!

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