会社設立で3月決算を選ばない方が良い理由とは?税理士が解説する決算月の選び方
法人設立時に「なんとなく3月決算」を選んでいませんか?実は決算月の選び方には重要なコツがあります。
決算日とは何か?個人事業と法人の違い
会社を設立する際には、資本金・会社名・役員・事業の目的など、さまざまなことを決める必要があります。その中の一つが「決算期(決算日をいつにするか)」です。
決算日とは、一言で言えば帳簿の締め日です。企業会計には「ゴーイング・コンサーン(企業は永続的に続く)」という考え方があり、企業は基本的に永続的に続くという前提のもとに成り立っています。そのため、どこか一定の期間で区切らないと、その会社の業績や財務状態が分かりません。基本的に年に1度、この締め日を決めて利益を算出したり、資産・負債の目録を作ったりしなければならない——それが決算日です。
📌 個人事業と法人の決算日の違い
- 個人事業主:1月1日〜12月31日で固定。変更不可。翌年2月16日〜3月15日の間に確定申告を行う。
- 法人:決算日を自由に選ぶことができる。1年を超えない範囲であれば、月末でなくとも可能。
法人は決算日を自由に選べるにもかかわらず、なぜか3月決算を選ぶ人が多い傾向があります。なお、昔の会社では20日決算・15日決算なども一定数ありました。メインの得意先の締め日に合わせるなどの理由があったようですが、税務申告書の作成などの手間を考えると、月末決算にしておいた方が手間は少なくなります。
📝 このセクションのまとめ
- 決算日とは帳簿の締め日であり、年に1度設定が必要
- 個人事業主は12月31日固定、法人は自由に選択できる
- 手間を減らすためには月末決算がおすすめ
なぜ3月決算が多いのか?その本当の理由
日本ではなぜか3月決算の法人が非常に多いのですが、その理由は「総会屋対策」の名残りです。
総会屋とは、少数の株式を所有した上で株主としての権利行使を乱用する組織のことです。昔、大手上場企業が株主総会を開催する際に総会屋が来て総会荒らしをするのを防ぐため、各上場企業が一致団結して決算日を揃えることで、総会屋が複数の株主総会に参加しにくくなるようにしました。
つまり、上場企業が慣習的にやってきたことが時代を経てスタンダードになってしまっているだけであり、中小企業にとって3月決算は特に必然性がありません。なんとなく3月にしているだけ、というのが実態なのです。
⚠️ 注意
「上場企業が3月決算だから」「なんとなくスタンダードに見えるから」という理由だけで3月決算を選ぶのはNGです。中小企業にとっては、自社の状況に合った決算月を選ぶことが重要です。
📝 このセクションのまとめ
- 3月決算が多い理由は「総会屋対策」の名残り
- 中小企業には3月決算である必然性はない
- 「なんとなく3月」で決めるのは避けるべき
決算月を決める6つのコツ
決算月を決める際には、以下の6つのポイントを総合的に考慮することが重要です。
コツ①:設立1期目はできるだけ長くする
会社を作って軌道に乗る前にいきなり決算が来るのは大変です。決算作業はかなりハードですし、税務顧問に決算書の作成を依頼するにしても、すぐに決算報酬・決算費用がかかります。
基本的には、会社設立から約1年後を決算日にするのが望ましいです。例えば4月に会社を作るなら、切りがよいのは翌年3月末ということになります(3月決算自体はおすすめしませんが、1期目を長くするという意味では一例として)。
コツ②:消費税の免税期間をフルに活用する
消費税の免税制度との関係も重要です。ただし、インボイス制度がスタートしたことにより状況が変わっています。
📌 消費税免税の仕組み(例:令和6年1月1日設立・12月決算の場合)
- 資本金1,000万円未満など一定の要件を満たし、インボイスも取得していない場合、第1期・第2期は消費税の免税事業者となる
- 第3期(令和8年)から、第1期の課税売上が1,000万円超であれば自動的に消費税課税事業者となる
- 第2期から消費税課税になるケースもあるため注意が必要
ここで重要なのは、第1期を短くすると消費税の免税期間が短くなる可能性が高まるという点です。例えば3ヶ月や半年で決算を組んでしまうと、それだけ免税期間が短くなります。フルで2年間の免税期間を確保するために、会社設立日からできるだけ長く(約1年)決算日まで余裕を持たせるパターンが非常に多く見られます。
⚠️ 注意
BtoBのビジネスのように、最初からインボイスを取得しなければならない方には、この消費税免税の話は関係ありません。BtoCのビジネス(飲食業・美容業など、お客様が不特定多数の場合)はインボイスを取得しなくても影響が少ないため、免税制度を活用できるケースがあります。
コツ③〜⑥:繁忙期・節税・資金繰り・得意先・会計事務所を考慮する
残りの4つのコツについても、それぞれ重要な視点があります。
| コツ | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| ③ 自社の繁忙期を避ける | 繁忙期と決算作業が重なると、通常業務に加えて棚卸しや書類準備など手間が増える | 3月が繁忙期なら、3月決算は避ける |
| ④ 繁忙期が期首になるよう逆算する | 最も忙しい月を期首に持ってくると、売上の動向を踏まえた節税対策・納税予測がしやすくなる | 3月が繁忙期なら2月決算にして3月を期首に |
| ⑤ 決算から2ヶ月後が資金繰りに余裕のある月になるよう逆算する | 法人税の確定申告期限は決算日から2ヶ月以内。その時期に資金繰りが悪いと納税できない事態になりかねない | 5月末の資金繰りが最悪なら3月決算は避ける |
| ⑥ メインの得意先の決算月を外す | 得意先と決算月が同じだと、期末に無理な納品依頼や請求書だけ発行してほしいといった要求に振り回されやすい | 得意先が3月決算なら自社は別の月にする |
特に⑥について補足します。皆さんの会社と得意先の決算月が同じ場合、上場企業であれば予算消化のため、中小企業であれば節税のために「3月中に急いで納品してほしい」「請求書だけ3月に発行してもらえないか」といった要求が来ることがあります。
⚠️ 注意
商品の引き渡しや役務の提供が完了していないにもかかわらず請求書だけ発行するのは、税務上は経費として認められません。得意先に振り回されないためにも、メインの得意先と決算月をずらしておくことが望ましいです。
3月・6月・9月・12月決算を外すべき理由(会計事務所の繁忙期問題)
3月決算を外すだけでなく、6月・9月・12月決算も外すことをおすすめします。その理由は会計事務所の繁忙期にあります。
中小企業でも3月決算は非常に多く、次いで6月・9月・12月決算に人気が集中しています。人気の高い決算月には、当然ながら会計事務所もその月に仕事が集中して忙しくなります。
📌 会計事務所の実態
- 会計事務所は基本的に中小零細企業がほとんどで、4人以下規模の事務所が大多数
- 業界では1人の担当者が約20社のお客様を担当するのが一般的
- 決算が集中する月は、1社あたりの申告書作成にかけられる時間が物理的に減る
近年、「AIで税理士の仕事が消滅する」とメディアが煽りすぎた結果、逆に税理士を目指す人が減り、現役税理士の数が減少しています。将来的に「税理士難民」が増えてもおかしくない状況です。そういったことを考えると、不人気な決算月を選んで会計事務所に余裕を持って対応してもらえる環境を作ることも、決算月選びの重要なポイントです。
📝 決算月を決める6つのコツ まとめ
- 設立1期目はできるだけ長くする(約1年後を決算日に)
- 消費税免税期間をフルに活用するため、第1期を短くしない
- 自社の繁忙期と決算作業が重ならないようにする
- 最も忙しい月が期首になるよう逆算して節税対策を立てやすくする
- 決算から2ヶ月後(申告・納税期限)が資金繰りに余裕のある月になるよう逆算する
- メインの得意先の決算月を外す
- 3月・6月・9月・12月は会計事務所の繁忙期と重なるため避けることも検討する
決算日の変更は可能!その手続き方法
すでに設立済みの会社でも、決算日を変更することができます。例えば期末に大きな利益が見込まれる場合などは、決算を変更することで余裕を持った節税対策が可能になります。
📌 決算日変更に必要な3つの手続き
- 株主総会の特別決議・議事録の作成・保存
- 定款の変更
- 税務の異動届の作成・提出(税務署・都道府県・市区町村)
なお、登記は不要です。自社でやれば費用は無料で対応できます。
特別決議とは、発行済み株式総数の過半数を持つ株主が出席して、その議決権の3分の2以上の賛成が必要なものです。オーナー社長1人の会社であれば誰でも対応できます。
議事録の内容としては、例えば「○月○日決算を△月△日決算に変更する」という内容の臨時株主総会議事録を作成し、保存しておく必要があります。
定款については、事業年度は「任意的記載事項」であり必ず記載しなければならないわけではありませんが、大半の会社は定款に事業年度を記載しています。先ほどの臨時株主総会の議事録の中で定款の変更を決議することで、定款の作成し直しは不要です。つまり、議事録が定款変更を代用するという扱いになります。
税務の異動届は、税務署・都道府県・市区町村に「決算日をいついつからいついつに変更しました」という届出を提出するだけです。顧問税理士がいる方は、毎月の顧問報酬の範囲でサポートしてもらえることがほとんどです。顧問税理士がいない方でも、自分で十分対応できる手続きです。
⚠️ 注意:毎年の決算変更はNG
租税回避目的とならないよう、変更には正当な経営上の理由を明確にしなければなりません。毎年毎年決算日を変えるのはNGです。変更は慎重に、正当な理由がある場合にのみ行ってください。
📝 このセクションのまとめ
- 決算日の変更は可能で、登記不要・自社対応で費用ゼロ
- 必要な手続きは①特別決議・議事録、②定款変更(議事録で代用可)、③税務の異動届の3つ
- 毎年の変更は租税回避とみなされるためNG
決算月ランキングベスト12(中小企業の実態)
以下は、ある税理士事務所のお客様データをもとにした決算月ランキングです。中小企業の傾向の参考としてご覧ください。
| 順位 | 決算月 | 該当社数(目安) | 申告期限 | おすすめ度・コメント |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | 3月 | 約25社 | 5月末 | △ 最多だが会計事務所の繁忙期と完全に重なる。中小企業には不向き。 |
| 2位 | 9月 | 約24社 | 11月末 | ○ 半期の折り返しとして人気。会計事務所の繁忙期でもないためまあまあおすすめ。 |
| 3位 | 6月 | 約20社 | 8月末 | ○ 会計事務所の繁忙期と重ならない。まあまあおすすめ。 |
| 4位(同率) | 2月 | 約13社 | 4月末 | ○ 会計事務所が落ち着いた時期でまあまあおすすめ。 |
| 4位(同率) | 12月 | 約13社 | 2月末 | △ キリはよいが申告期限が2月末で会計事務所の中繁忙期。 |
| 6位(同率) | 7月 | 約14社 | 9月末 | ◎ 会計事務所の繁忙期ではなくおすすめ。 |
| 6位(同率) | 8月 | 約14社 | 10月末 | ◎ 会計事務所の繁忙期ではなくおすすめ。 |
| 8位 | 4月 | 約12社 | 6月末 | ○ まあまあおすすめ。 |
| 9位 | 5月 | 約数社 | 7月末 | ○ 会計事務所全体では閑散期に近い時期。中小企業にはおすすめ。ただし税理士試験(8月上旬)直前のため担当者が有給を取りにくい面も。 |
| 10位(同率) | 1月 | 少数 | 3月末 | ✕ 申告期限が3月末で確定申告繁忙期と完全に重なる。 |
| 10位(同率) | 11月 | 少数 | 1月末 | △ 申告作業が1月末で年をまたぐ点が気になる方も。 |
| 12位 | 10月 | 約5社 | 12月末 | ✕ 申告期限が年末。かつ12月中の決算作業が年末調整シーズンと重なり会計事務所の繁忙期(年間3番目)。あまりおすすめしない。 |
ランキングを見ると、7月・8月決算は会計事務所の繁忙期とも重ならず、申告期限も過ごしやすい時期になるため、特におすすめと言えます。また5月決算も、会計事務所全体では閑散期に近い時期で中小企業にはおすすめです。
一方、最もおすすめしない3月決算がやはり1位という結果になっています。「上場企業みたいでかっこいい」「なんとなくスタンダードに見える」という理由だけで選ぶのは避け、自社の状況に合った決算月を選ぶことが大切です。
📝 決算月ランキング まとめ
- 最多は3月決算だが、中小企業には最もおすすめしない
- 7月・8月決算は会計事務所の繁忙期と重ならずおすすめ
- 5月決算も会計事務所が比較的余裕のある時期でおすすめ
- 10月・1月決算は申告期限が繁忙期と重なるためおすすめしない
- 全ての要素を総合的に判断して決算月を選ぶことが重要
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!
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