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食料品消費税0%は免税と非課税で大違い!税理士が解説する落とし穴

食料品消費税0%は免税と非課税で大違い!税理士が解説する落とし穴
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食料品消費税0%の議論が盛り上がっていますが、「免税」と「非課税」では店舗への影響がまったく異なります。やり方を間違えると、食料品の価格は下がらず、お店は潰れ、現場は大混乱になりかねません。

消費税の基本:仮消費税と仕入税額控除のしくみ

一般消費者は買い物をするとき、消費税8%あるいは10%を上乗せして支払うのが一般的です。では、お店が国に納める消費税はどのように計算されるのでしょうか?

消費税の計算は、売上とともに受け取る「仮受消費税」から、自社が支払った「仮払消費税」を差し引いた差額をお国に納める仕組みになっています。

項目金額消費税(10%)
売上(仮受消費税)200万円20万円
仕入れ(仮払消費税)100万円10万円
納税額(差額)10万円

この「一度受け取った仮受消費税から仮払消費税を引く」仕組みを仕入税額控除と言います。これが今回の超重要ポイントです。

📌 ポイント:仕入税額控除とは

売上に含まれる消費税(仮受消費税)から、仕入れや経費に含まれる消費税(仮払消費税)を差し引いて、その差額だけを納税する仕組みです。この控除が使えるかどうかが、今回の議論の核心になります。

📝 このセクションのまとめ

  • 消費税は「仮受消費税 − 仮払消費税 = 納税額」で計算する
  • この差し引きを「仕入税額控除」という
  • 仕入税額控除が使えるかどうかが、免税・非課税の最大の違いになる

消費税の種類:課税・非課税・免税・不課税の違い

お店の商売すべてに消費税がかかるわけではありません。消費税には以下の4種類があります。

  • 課税:原則10%。事業者が国内で行った資産の譲渡等に課税される。
  • 不課税(課税対象外):そもそも消費税の対象にならないもの。お祝い・寄付・補助金の受け取りなど、対価性がないもの。
  • 非課税:本来は課税対象だが、政策的な理由から消費税をかけないとされているもの。例:社会保険診療報酬、住居用賃貸物件など。
  • 免税:原理原則では課税対象だが、消費税を免除するもの。例:輸出取引(消費税0%)。

📌 ポイント:非課税と免税は似て非なるもの

「非課税」と「免税」はどちらも消費税がかからないように見えますが、仕入税額控除が使えるかどうかという点で決定的に異なります。免税は仕入税額控除が使えますが、非課税は使えません。これがお店の経営に大きな影響を与えます。

また、現行制度では「軽減税率」というルールもあります。飲食料品のうちテイクアウトや宅配は生活必需品に近いとして消費税が8%に軽減されています。一方、外食(お店で食べる場合)やケータリングは10%です。

区分消費税率
テイクアウト・宅配(飲食料品)8%
外食(店内飲食)・ケータリング10%
酒類(テイクアウト含む)10%
定期購読の新聞8%
住居用賃貸物件非課税
社会保険診療報酬非課税
輸出取引免税(0%)

今回議論されている「食料品消費税0%」とは、この8%部分をゼロにするという話です。外食の飲食代が0%になるわけではありません。

📝 このセクションのまとめ

  • 消費税には「課税・不課税・非課税・免税」の4種類がある
  • 現行の軽減税率はテイクアウト等の食料品を8%に軽減するもの
  • 今回の「食料品0%」はこの8%をゼロにする話であり、外食の10%をゼロにするわけではない

飲食店への影響:食料品消費税0%でどうなるか

話を分かりやすくするため、金額の単位を小さくして考えます。飲食店で100円で仕入れたものを料理して200円で提供したとしましょう。

現行制度では、外食なので売上に消費税10%がかかり、食料品の仕入れには消費税8%がかかります。

項目現行(改正前)食料品0%(改正後・理論値)
売上(税込)220円(消費税20円)220円(消費税20円)
仕入れ(税込)108円(消費税8円)100円(消費税0円)
納税額20円 − 8円 = 12円20円 − 0円 = 20円
手元キャッシュフロー220 − 108 − 12 = 100円220 − 100 − 20 = 100円

税法理論上で考えると、仕入れの消費税が0になる分、納税額は増えますが、仕入れ価格そのものも下がるため、手元のキャッシュフローは改正前後で変わらないという結果になります。

📌 ポイント:消費税納税のタイミング

消費税の納税は基本的に決算終了後2ヶ月以内です。それまでの間は売上の消費税をずっと受け取り続けますから、一時的に手元にプールできます。ただし、納税時にまとめてキャッシュが出ていくため、資金管理に注意が必要です。

最悪のリスク:仕入れ価格据え置きリスク

上記はあくまでも税法理論上の話です。最悪のケースとして、仕入れ先が税抜きベースで従来どおりの108円を請求してくる可能性があります。

項目金額
売上(税込)220円
仕入れ(据え置き)108円
納税額20円
手元キャッシュフロー220 − 108 − 20 = 92円

⚠️ 注意:仕入れ価格据え置きリスク

仕入れ先が消費税0%になっても価格を下げなかった場合、飲食店の手取りは100円→92円に減少します。通常は仕入れる側(飲食店)の方が力関係で強いため、このケースはあまり起こらないとは思われますが、可能性がゼロではない点は覚えておきましょう。

飲食店が受ける売上面でのダメージ

また、食料品のテイクアウト販売が消費税0%になると、消費者は外食より割安なテイクアウトを選ぶ傾向が強まります。そのため、飲食店はそもそもの売上が減少するリスクがあります。食料品だけを0%にするのではなく、例えば期間限定で全品目を5%にするなどの措置がなければ、飲食店への打撃は避けられないでしょう。

飲食店の対策:簡易課税の活用

こうした状況への対策として、簡易課税制度の活用が挙げられます。簡易課税とは、実際の仕入れに関わらず、受け取った消費税の一定割合だけを納めればよいという制度です。

  • 飲食店(第4種事業)の場合、受け取った消費税の40%を納めればよい
  • 受け取った消費税20円のうち40%=8円だけ納税すればよい
  • 手元のキャッシュフローは220 − 100 − 8 = 112円となり、改正前より12円お得
  • ただし、適用できるのは年間売上5,000万円以下の中小事業者のみ

📝 このセクションのまとめ

  • 理論上、飲食店の手取りキャッシュフローは改正前後で変わらない
  • ただし「仕入れ価格据え置きリスク」があり、最悪手取りが減る可能性がある
  • テイクアウトへの需要シフトで売上自体が落ちるリスクもある
  • 年間売上5,000万円以下の飲食店は簡易課税を活用することで有利になれる

スーパー・食料品店への影響:免税と非課税で天国と地獄

次に、スーパーや食料品店(魚屋・パン屋など)への影響を見ていきましょう。飲食店より少し複雑で、消費税0%を「免税」にするか「非課税」にするかによって結果がまったく変わります。

前提条件として、100円で仕入れたものを200円で販売し、家賃などの固定費が50円かかるとします。

現行制度(軽減税率8%)でのキャッシュフロー

項目税抜金額消費税税込金額
売上200円8%=16円216円
仕入れ100円8%=8円108円
家賃等固定費50円10%=5円55円
納税額16 − 8 − 5 = 3円
手元キャッシュフロー216 − 108 − 55 − 3 = 50円

【理想】食料品を「免税」にした場合

免税とは、原則として課税対象ではあるものの消費税を免除するもので、輸出取引と同じ扱いになります。売上の消費税は0%になりますが、仕入税額控除は引き続き使えます

項目税抜金額消費税税込金額
売上200円免税=0円200円
仕入れ100円免税=0円100円
家賃等固定費50円10%=5円55円
消費税精算0 − 0 − 5 = −5円(還付)
手元キャッシュフロー200 − 100 − 55 + 5 = 50円

免税の場合、売上に消費税をもらえない代わりに、仕入れや家賃に支払った消費税を国から還付してもらえます。結果として手元のキャッシュフローは現行と同じ50円を維持できます。

📌 ポイント:輸出還付金と同じ仕組み

輸出産業が免税(消費税0%)でも仕入れに払った消費税を還付してもらえるのと同じ仕組みです。資金繰りが苦しい場合は、輸出事業者が行うように毎月消費税の申告をして毎月還付を受けることも可能ですが、申告手続きが毎月発生するため、店舗側も会計事務所側も負担が大きくなります。

【最悪】食料品を「非課税」にした場合

ここが今回の動画で最も重要な警告ポイントです。食料品の売上が「非課税」になると、消費税法の課税売上割合というルールが適用されます。

課税売上割合とは、「自社が支払った消費税(仕入税額控除)は、課税売上の割合に応じてしか引けない」というルールです。食料品の売上がすべて非課税になると、課税売上割合が大幅に下がり、仕入れに払った消費税を控除できなくなります

項目税抜金額消費税税込金額
売上200円非課税=0円200円
仕入れ100円8%=8円(控除不可)108円
家賃等固定費50円10%=5円(控除不可)55円
納税額0円(控除できないが売上も0)
手元キャッシュフロー200 − 108 − 55 = 37円

※動画内では家賃の消費税分も含め計算すると45円という数字が示されています。いずれにせよ現行の50円を大きく下回ります。

⚠️ 注意:非課税にすると仕入税額控除が使えなくなる!

食料品を「非課税」にしてしまうと、スーパーや食料品店は仕入れや家賃に払った消費税を控除できなくなります。消費者は消費税0%で喜べますが、店舗のキャッシュフローはどんどん苦しくなるため、値上げせざるを得なくなります。結果として消費税0%にした意味がなくなってしまいます。

3パターンの比較まとめ

制度消費者の負担仕入税額控除店舗キャッシュフロー評価
現行(軽減税率8%)8%使える50円基準
食料品免税(0%)0%使える(還付あり)50円✅ 理想
食料品非課税(0%)0%使えない大幅減少❌ 最悪

📝 このセクションのまとめ

  • 食料品を「免税」にすれば、仕入税額控除(還付)が使えるため店舗のキャッシュフローは維持できる
  • 食料品を「非課税」にすると、仕入税額控除が使えなくなり店舗の手取りが激減する
  • 非課税になると、店舗は値上げせざるを得ず、消費税0%にした恩恵が消費者に届かない
  • スーパーのような大規模事業者は売上5,000万円超のため、簡易課税も使えない

食料品消費税0%が実施されると社会はどう変わるか

仮に食料品消費税0%が実施された場合、世の中ではどのような動きが広がるでしょうか。

  • テイクアウトや路上飲食が増える(テイクアウトは0%、外食は10%のため)
  • 外食産業の売上が落ちる(コロナ禍のような状況が再来する恐れ)
  • お酒はテイクアウトで購入しても消費税10%のため、影響は限定的
  • レジシステムの変更、会計ソフトの対応、申告書様式の変更など現場が大混乱する

また、この税法の変更は社会全体に非常に大きなインパクトを与えます。レジを変えなければならない、会計ソフトはどうする、申告書の様式はどうする、といった実務上の大混乱が避けられません。

📌 ポイント:2年限定実施の場合の問題

仮に2年限定で食料品免税を実施した場合、景気刺激効果は期待できます。ただし、2年後に元に戻した際の反動(需要の落ち込み・価格の再上昇)も懸念されます。経済政策としての設計が非常に重要です。

また、消費税の理屈上こうなるとはいえ、経済は自由競争です。価格設定や値引きに関してはそれぞれの事業者が独自の動きをするため、必ずしも消費者がお得になるとは限りません

📝 このセクションのまとめ

  • 食料品0%実施でテイクアウト需要が増え、外食産業の売上が落ちる恐れがある
  • レジ・会計ソフト・申告書の変更など実務上の混乱が大きい
  • 2年限定実施の場合は終了後の反動リスクもある
  • 自由競争の中で必ずしも消費者が得をするとは限らない

税理士としての提言:免税で実施すべき、そして社会保険料の引き下げを

食料品消費税0%を実施するのであれば、必ず「免税」という形で旗を切ってほしいと強く思います。「非課税」になると最悪の結果を招きます。

現在多くの政党が食料品消費税0%を訴えていますが、消費税法の法的な仕組み(免税と非課税の違い)を正確に理解したうえで語っている政治家は少ないのではないかと感じます。

また、個人的な意見として、今中小企業が最も苦しんでいるのは社会保険料の負担です。食料品消費税0%の議論と並行して、社会保険料の引き下げについても真剣に議論してほしいと思います。

📌 まとめ:食料品消費税0%の正しい実施方法

  • 「免税」で実施 → 仕入税額控除が使え、店舗のキャッシュフローを守れる ✅
  • 「非課税」で実施 → 仕入税額控除が使えず、店舗が値上げを余儀なくされる ❌
  • 食料品だけでなく、全品目を一定期間5%にするなどの総合的な対策も検討すべき
  • 中小事業者(売上5,000万円以下)は簡易課税の活用で対応できる場合がある

📝 このセクションのまとめ

  • 食料品消費税0%は「免税」で実施することが絶対条件
  • 政治家には消費税法の仕組みを正確に理解したうえで議論してほしい
  • 中小企業の社会保険料負担の引き下げも並行して検討すべき課題

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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