食料品の消費税が0%になると飲食店が大損する?税理士が仕組みを完全解説
食料品の消費税軽減税率を0%にする案が話題ですが、飲食店にとっては必ずしも朗報ではないかもしれません。売上・仕入れ・キャッシュフローの数字で、そのからくりを徹底解説します。
消費税の軽減税率0%案とは?背景を整理する
食料品の消費税を0%にしようという案が、とある政党から提案されています。そもそも消費税は一律10%ですが、例外として8%の軽減税率が設けられています。
今回の0%案が出てきた背景には、物価高・エネルギー価格の高騰・円安の継続など、国民の生活が厳しくなっている現状があります。毎日の生活に必要な食料品に8%の消費税がかかり続けることへの批判が強まり、物価対策・生活支援を目的としてこの0%課税が議論されるようになりました。
📌 ポイント
軽減税率0%案は、物価高・エネルギー高騰・円安という経済環境の悪化を受けた生活支援策として提案されています。一般消費者にとっては家計費の負担が抑えられる可能性がありますが、飲食店などの事業者側から見ると話はそう単純ではありません。
📝 このセクションのまとめ
- 消費税は原則10%、食料品等には例外的に8%の軽減税率が適用されている
- 物価高・生活支援を目的に、軽減税率を8%から0%にする案が浮上している
- 一般消費者には恩恵がある一方、飲食店などの事業者には複雑な影響が生じる可能性がある
消費税の軽減税率:現行制度の対象範囲をおさらい
国税庁の資料によると、消費税の軽減税率(8%)が適用される品目と、適用されない品目は以下のように整理されています。
| 区分 | 主な対象品目 | 消費税率 |
|---|---|---|
| 軽減税率(8%)対象 | スーパーで買う野菜・魚・肉・米など食料品全般、テイクアウト・宅配(Uber等)の食料品 | 8% |
| 軽減税率(8%)対象 | 新聞(定期購読) | 8% |
| 標準税率(10%)対象 | 外食(お店での飲食)、ケータリング | 10% |
| 標準税率(10%)対象 | アルコール飲料 | 10% |
| 標準税率(10%)対象 | 医薬品・医薬部外品 | 10% |
| 条件による | おまけ付きお菓子などの一体資産 | 条件次第 |
なお、食料品であっても全てが8%というわけではなく、例外があります。例えば食用の塩であれば軽減税率8%が適用されますが、工業用の塩は標準税率10%となります。用途によって税率が変わる点は注意が必要です。
また、外食(お店の中で食べる飲食)は軽減税率の対象外で10%となっている点も重要です。これが今回の議論の核心に関わってきます。
📝 このセクションのまとめ
- 食料品の多くは8%の軽減税率対象だが、外食・アルコール・医薬品等は10%
- テイクアウトや宅配は8%、お店での飲食は10%という違いがある
- 同じ食料品でも用途(食用か工業用か等)によって税率が変わる場合がある
消費税の基本的な計算の仕組み:仕入税額控除とは
消費税の計算の原則は、販売時に受け取った消費税から、仕入れや経費を支払った際に負担した消費税を差し引き、その差額をお国に納めるというルールです。この「支払った消費税を差し引く」仕組みを仕入税額控除と言います。
なお、この仕入税額控除を受けるためには、相手方のインボイス(適格請求書)が必要です。インボイス番号等が記載された請求書や領収書がなければ、実際に消費税を支払っていても控除が認められないという厳しいルールになっています。飲食店の経理処理が複雑になっている一因です。
⚠️ 注意
仕入税額控除を受けるには、仕入れ先からインボイス(適格請求書)を受け取ることが必須です。インボイスがない場合、消費税を支払っていても控除が認められません。
📝 このセクションのまとめ
- 消費税の納付額=受け取った消費税-支払った消費税(仕入税額控除)
- 仕入税額控除にはインボイス(適格請求書)の受け取りが必須
- インボイスがなければ、実際に支払った消費税でも控除できない
数字で検証:現状・理想・現実の3パターンシミュレーション
「100円で仕入れた食材を加工して200円で販売する飲食店」を例に、消費税の負担とキャッシュフローを3つのパターンで比較します。
| 項目 | 現状(8%軽減税率) | 理想(0%軽減税率) | 現実・最悪ケース(0%だが仕入れ価格据え置き) |
|---|---|---|---|
| 売上(税抜き) | 200円 | 200円 | 200円 |
| 売上(税込み) | 220円(10%) | 220円(10%) | 220円(10%) |
| 仕入れ(税抜き) | 100円 | 100円 | 108円(据え置き) |
| 仕入れ(税込み) | 108円(8%) | 100円(0%) | 108円(消費税0%) |
| 受け取った消費税 | 20円 | 20円 | 20円 |
| 支払った消費税 | 8円 | 0円 | 0円 |
| 消費税納付額 | 12円 | 20円 | 20円 |
| 手元キャッシュフロー | 100円 | 100円 | 92円(最悪) |
まず現状(8%軽減税率)を見てみましょう。売上220円が入り、仕入れ108円を支払い、消費税12円を納付すると、手元には100円が残ります。
次に理想(0%軽減税率)の場合です。売上220円は同じ。仕入れは消費税0%なので100円のみ。消費税の納付額は受け取った20円から支払い0円を引いた20円となります。現状より8円多く納付することになりますが、仕入れ時に8円分の消費税を払わなくて済むため、手元キャッシュフローはやはり100円で変わりません。
📌 ポイント
税法の理論上、軽減税率が0%になっても飲食店のキャッシュフローはプラスマイナスゼロです。消費税の納付額は増えますが、仕入れ時の消費税負担がなくなる分が相殺されるからです。
問題は現実・最悪ケースです。軽減税率が0%になっても、仕入れ先が税抜き本体価格を108円に据え置いた場合(または消費税分を本体価格に上乗せした場合)、どうなるでしょうか。
この場合、仕入れに対する消費税は0%なので仕入税額控除できるものはゼロ。消費税納付額は20円のまま。しかも仕入れを108円払っているため、手元キャッシュフローは220円-108円-20円=92円となり、現状の100円より8円も悪化します。
⚠️ 注意
軽減税率が0%になっても、仕入れ先が税抜き価格を据え置いたまま(消費税分を本体価格に組み込んだまま)にすると、飲食店のキャッシュフローは現状よりも悪化します。これが「飲食店が大損するかもしれないからくり」です。
📝 このセクションのまとめ
- 税法理論上は軽減税率0%でもキャッシュフローはプラスマイナスゼロ
- 仕入れ先が税抜き価格を据え置いた場合、飲食店のキャッシュフローは現状より悪化する
- 仕入れ先の経営戦略・業績・力関係によって、どのパターンになるかは変わる
仕入れ価格「据え置きリスク」とは何か
税法の理論としては、軽減税率0%が実現すれば飲食店のキャッシュフローはプラスマイナスゼロです。しかし、経済が理論通りに動くかどうかは別問題です。
果たして仕入れ先が「軽減税率が0%になったから消費税を取りません」というスタンスで対応してくれるかどうか。これが最大のポイントです。仕入れ先がシレッと税抜き本体価格を据え置いたまま(あるいは値上げして)対応した場合、飲食店が負担する実質的なコストは変わらないか、むしろ悪化します。
この仕入れ価格の据え置きリスクは、各飲食店の仕入れ先との力関係・仕入れ先の経営戦略・業績などによって大きく異なります。確実にこうなるとも言えませんし、理想通りになるとも言えません。
📌 ポイント
法改正があって軽減税率が変わったからといって、すぐに喜ぶのではなく、仕入れ価格がどう変動するかを注視する危機感を持っておくことが重要です。一般消費者についても同様で、スーパーが価格を据え置いたままにすれば、消費者への恩恵は限定的になります。
📝 このセクションのまとめ
- 税法理論と経済の実態は必ずしも一致しない
- 仕入れ先が価格を据え置けば、飲食店は実質的に損をする可能性がある
- 仕入れ先との力関係・経営戦略によって結果は大きく変わる
対策①:仕入れ価格交渉と販売価格への転嫁
仕入れ価格の据え置きリスクが現実化した場合の対策として、まず考えられるのは以下の2つです。
- 仕入れ先とのシビアな価格交渉:軽減税率0%になった分を本体価格に反映させるよう交渉する
- 販売価格への上乗せ:コスト増加分を販売価格に転嫁する
ただし、数字の上では単純でも、現実にこの通りに進めることは非常に難しいのが実情です。
対策②:簡易課税制度の活用
現行の消費税法の範囲内で活用できる有効な対策として、簡易課税制度があります。
簡易課税とは、年間売上が5,000万円以下の課税事業者が利用できる特例で、売上に対して受け取った消費税に対し、業種ごとに定められた「みなし仕入れ率」を掛けた金額を仕入れ税額控除として計算できる制度です。実際の仕入れ金額に関係なく、一定割合だけ納めれば済むという仕組みです。
| 項目 | 現状(8%軽減税率) | 理想(0%軽減税率) | 簡易課税適用時 |
|---|---|---|---|
| 売上(税込み) | 220円 | 220円 | 220円 |
| 仕入れ(税込み) | 108円 | 100円 | 100円 |
| 消費税納付額 | 12円 | 20円 | 8円(20円×40%) |
| 手元キャッシュフロー | 100円 | 100円 | 112円(最良) |
飲食店は現状、消費税の業種区分で第4種事業に該当します。第4種事業のみなし仕入れ率は60%ですが、受け取った消費税20円に対して納付するのは40%分の8円のみで済みます(第4種のみなし仕入れ率60%=控除率60%、納付率40%)。
この結果、手元キャッシュフローは220円-100円-8円=112円となり、現状の100円より12円多く手元に残ります。この節税効果のことを益税と言います。
📌 ポイント
簡易課税を選択することで、実際の仕入れ消費税より多くの控除が受けられる「益税」が発生します。現時点では、軽減税率0%が実現した場合の最も有効な対策の一つです。ただし、この12円の益税部分には法人税や所得税がかかる点にも注意が必要です。
⚠️ 注意
簡易課税制度には以下の制約があります。
- 適用できるのは年間売上5,000万円以下の事業者のみ
- 食料品の消費税率が0%になった場合、飲食店の業種区分(みなし仕入れ率)が変更される可能性が高い(第4種の40%納付から50%・60%納付に変更されるかもしれない)
- 政府も益税問題を前々から問題視しており、制度の見直しが行われる可能性がある
📝 このセクションのまとめ
- 簡易課税は売上5,000万円以下の事業者が使える消費税の特例制度
- 飲食店(第4種事業)では、受け取った消費税の40%のみ納付すればよく、益税が生じる
- 軽減税率0%が実現した場合、業種区分の変更や制度見直しが行われる可能性がある
本質的な解決策は「一律減税」か
軽減税率を8%から0%にする案は、食料品だけを対象にした部分的な対策です。しかし税率が10%・8%・0%と混在することで、税務処理は一層複雑になります。
税理士の立場からすると、0%は難しくても、せめて消費税を一律5%に戻す(例えば3年間の時限措置でも)だけで、経済はかなり刺激され活性化されるはずだという意見もあります。
食料品の軽減税率0%は確定したわけでも何でもありませんが、飲食店を経営する方・これから開業を考えている方は、税法上の理論だけでなく、仕入れ価格の動向・簡易課税の適用可否・業種区分の変更リスクなど、多角的な視点で影響を把握しておくことが重要です。
📝 このセクションのまとめ
- 軽減税率の多段階化は税務処理をさらに複雑にする
- 一律減税(例:消費税5%への引き下げ)の方が公平でシンプルという考え方もある
- 法改正の動向を注視しつつ、仕入れ価格・簡易課税・業種区分の変更リスクを多角的に把握しておくことが重要
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!
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