外国人オーナーの家賃に源泉徴収義務!知らないと追徴課税250万円【税理士が解説】
外国人オーナーの物件に住むだけで追徴課税250万円。知らないでは済まされない源泉徴収義務の落とし穴を解説します。
家賃を払っただけで追徴課税250万円――実際に起きたトラブル事例
最近、非常によく起きているトラブルについて、まず具体的な事例から見ていきましょう。
あるフリーランス(個人事業主)の方が、一人で仕事をされていて誰も雇っていない状態で、とても儲かったため家賃30万円の物件を借りることになりました。フリーランスなので、自分が働いている仕事部屋の面積分――この場合は30%を経費計上することにしました。節税対策も兼ねて、高い家賃の物件に住み始めたわけです。
この方は直接オーナーに家賃を支払うのではなく、よくあるパターンとして間に管理会社が入り、毎月口座から引き落とす形で家賃を払い続けていました。特に変なことはしておらず、確定申告もきちんとこなしていたため、ある日税務調査が入ることになっても「特に心配はない」と思っていたそうです。
⚠️ 注意
ところが税務調査の結果、追徴課税250万円を納めなさいと言われてしまいます。内訳は源泉所得税+不納付加算税10%+延滞税を全部ひっくるめた金額です。
なぜこんなことになったのか。それは、この賃貸物件が途中でオーナーチェンジしており、元々は日本人オーナーだったのが途中で外国人オーナーに変わっていたからです。確かに言われてみると、途中で「オーナーが変わります」という契約書は新しいオーナーと結んでいました。ただ、忙しかったため「あ、外国人だな」と思っただけで特に何もしなかった。実はここにミスがあったのです。
📝 このセクションのまとめ
- フリーランス1人でも、家賃を経費計上していれば源泉徴収義務が発生する
- 途中のオーナーチェンジで外国人オーナーになった場合も義務が生じる
- 管理会社が間に入っていても、最終的な支払先が外国人なら源泉徴収が必要
源泉徴収・源泉所得税とは何か
ここで、そもそも「源泉所得税」とは何かを整理しておきましょう。
源泉徴収とは、支払う側が税金を天引きして、本来納税すべき人の代わりに所得税を納付することです。
例えば、会社が社員に給料を払う場合を考えてみます。
| 給与総額 | 源泉所得税(例) | 手取り(概算) |
|---|---|---|
| 30万円 | 約6,000円 | 約24万円(社会保険・住民税等控除後) |
本来、国民は1年間働いてその結果の所得に対して所得税をかけるべきです。しかし税務署的には「1年も待ってられない、早く税金が欲しい」ということで、会社に源泉徴収の義務を課すことで早期に徴収できる仕組みになっています。
同様に、会社がクリエイター・専門家・芸能関係など一部の業種の方に報酬を払う場合も、会社に源泉徴収の義務があります。
| 報酬総額 | 源泉徴収税率 | 源泉所得税額 | 支払額 |
|---|---|---|---|
| 30万円 | 10.21% | 約3万円 | 約27万円 |
支払いのタイミングで言うと、クリエイターに払った翌月10日までに税務署へ3万円を納める流れになります。
📝 このセクションのまとめ
- 源泉徴収とは「支払う側が税金を天引きして代わりに納税する」制度
- 給与・一部報酬には国内でも源泉徴収義務がある
- 国内クリエイター等への報酬は10.21%を翌月10日までに納付
海外・非居住者への支払いには20.42%の源泉徴収が必要
相手が非居住者(海外在住の人のこと)であったり、外国法人に対して何かを払う場合も、源泉徴収が必要になります。
📌 ポイント
海外の人や会社に対して報酬を払う際の源泉徴収税率は、大体の場合20.42%です。日本で稼いだ分は日本で納めてもらうという考え方に基づいています。
| 報酬総額 | 源泉徴収税率 | 源泉所得税額 | 海外への送金額 |
|---|---|---|---|
| 30万円 | 20.42% | 約6万円 | 約24万円 |
これは基本的に、海外の権利を日本で使う場合や、海外の人が日本にやってきて何かした場合の報酬にかかってきます。そしてこの「報酬」の中に、不動産の賃貸料も含まれます。まさに今回のフリーランスの方が経験した事例です。
日本の物件を外国人オーナーが持っていた場合、その家賃に対しても源泉徴収が必要になります。また、この海外への支払いに関しては日本に1年以上住んでいない人が対象なので、海外赴任で外国に住んでいる日本人の方も対象です。
よくあるケースとしては、日本で家を買って、そのまま海外赴任になったため、その間人に貸すというパターンです。海外赴任の人が元々住んでいた部屋を借りる場合も、その家賃に対して源泉徴収をしなければいけません。
⚠️ 注意
振り込み先が管理会社(国内企業)の口座であっても関係ありません。最終的に家賃が渡っているのが外国人オーナーであれば、非居住者に対する源泉徴収が必要です。
今回のフリーランスの方が正解だった対応は次の通りです。
- オーナーが外国人に変わった時点で、家賃30万円に20.42%をかけた約6万円を税務署に納める
- 残りの約24万円を管理会社に支払う
管理会社がこのルール自体を知らなかったというケースも非常によくあります。このフリーランスの方は毎月6万円を納めなければいけなかったのに、それを怠ったために追徴課税を受けたというわけです。
このようなトラブルは昔はあまり見られませんでしたが、最近は円安の影響で都市部のマンションを外国人富豪が投資目的で大量に購入し、それを日本人に貸し出しているケースが増えています。今後もますます増えると思われます。
また、前回の動画で紹介した「社宅スキーム(会社が社会保険料や税金の節約のために社宅を活用する方法)」についても、大家さんが外国人オーナーだった場合は会社がこの家賃に対して20.42%の源泉徴収をしなければなりません。手間が非常にかかるため、大企業の中には「外国人オーナーの物件での借り上げ社宅はやらない」というルールを設けているところもあるくらいです。
📌 ポイント
源泉徴収された外国人オーナーは、日本で不動産所得の確定申告をすることで税金を多少取り戻せます。ただし、それを実際にやっている外国人オーナーがどれだけいるかは疑問です。日本の税務署が海外に住む外国人オーナーに確定申告を求めるのは手間がかかるため、日本に住んでいる借主側に税務調査を入れて源泉所得税を徴収するというのが、今まさに行われていることです。
📝 このセクションのまとめ
- 非居住者・外国法人への支払いには20.42%の源泉徴収が必要
- 不動産賃貸料も「報酬」として源泉徴収の対象になる
- 振込先が国内管理会社でも、オーナーが外国人なら源泉徴収義務あり
- 海外赴任中の日本人オーナーの物件も同様に対象
個人事業主(人を雇っていない)でも源泉徴収義務はあるのか
ここで「個人事業主は源泉徴収義務がそもそもあったっけ?」と疑問に思った方もいるでしょう。特に人を雇っていない場合は源泉徴収義務なんてないんじゃないか、と。実はこれ、半分正解で半分間違いです。
源泉徴収をしなければならない人のことを「源泉徴収義務者」と言いますが、そこには条件があります。一般に生活している人全員に課されるわけではありません。
| 支払いの種類 | 人を雇っていない個人事業主 | 人を雇っている個人事業主 | 法人 |
|---|---|---|---|
| 国内給与・特定業種への報酬(ホステス除く) | 義務なし | 義務あり | 義務あり |
| ホステス・ホストへの支払い | 義務あり | 義務あり | 義務あり |
| 日本在住者・日本企業所有不動産の家賃 | 義務なし | 義務なし | 義務なし |
| 海外在住者・外国法人所有不動産の家賃 | 義務あり | 義務あり | 義務あり |
つまり、人を雇っているかどうかはあくまで国内給与や国内報酬の話であって、海外に関しては何が何でも源泉徴収しなければいけないのです。日本の税務署が取りっぱぐれないようにするためです。外国人が日本で確定申告をするとは限らないからですね。
⚠️ 注意
「自分は個人事業主だけど人を雇っていないから源泉徴収は関係ない」と思っていた人でも、ある日突然賃貸物件のオーナーが外国人に変わっていたら、源泉徴収義務が発生する可能性が高いです。
なお、例外として以下のケースでは借主の源泉徴収義務がなくなります。
- 個人で100%居住用として使っている場合
- 管理会社がサブリース(物件のリスクを一手に引き受ける形態)をしている場合
ここで重要なのが「100%居住用」というポイントです。今回のケースでは、借主が家賃の30%を経費計上していたため源泉徴収義務が発生しました。仮に家賃を経費に入れなかったら源泉徴収義務はなかったことになります。ただ、個人事業主で自分の家の家賃を経費に入れない人はほとんどいませんから、ここがトラップになっているわけです。
📝 このセクションのまとめ
- 人を雇っていない個人事業主でも、外国人オーナーへの家賃には源泉徴収義務がある
- 家賃を1円でも経費計上していれば「事業用」とみなされ義務が発生する
- 100%居住用またはサブリース契約なら義務なし
源泉徴収の実務手続きと免除される条件
具体的な手続きとしては、所得税徴収高計算書(納付書)を書いて税務署に提出し、翌月10日までに家賃の20.42%を税務署に納付する必要があります。これを毎月やらなければいけないので、かなり面倒です。
さらに1年が経過した後、翌年1月などに支払調書と法定調書合計表を作成して税務署に提出しなければなりません。手間が非常にかかります。
「源泉徴収を免れる方法はないのか」という点についても触れておきます。
- 源泉徴収免除証明書の交付:外国人オーナー側が国内にも活動拠点を持っており、この証明書を交付してくれれば源泉徴収は不要になります。ただし、昨今の円安で都市部のマンションを買い漁っている方々は単純に海外から投資目的で物件を買っているだけで、日本国内に活動拠点がない方がほとんどです。現実的にはほぼ使えません。
- 租税条約に関する届出書:海外への支払いでは、租税条約の届出書を提出すれば源泉徴収が免除されるケースが結構あります。例えば芸能界専門の会計事務所では、海外からタレントや歌手を招く際のギャラについて、事前に租税条約に関する届出書を提出することで源泉徴収なしで済ませています。ただし、不動産賃貸に関してはこの租税条約が対象外の国がほとんどで、あまり使えないと思われます。
⚠️ 注意
これらの免除手続きはお金を払う前に事前に届け出る必要があります。すでに外国人オーナーとの賃貸が始まってしまった場合には、遡って適用することはできません。
📝 このセクションのまとめ
- 源泉徴収は毎月翌月10日までに納付+年1回の支払調書提出が必要
- 源泉徴収免除証明書や租税条約の届出書で免除できる場合もあるが、不動産賃貸では現実的にほぼ使えない
- 免除手続きは支払い開始前に事前申請が必要
すでに外国人オーナーの物件を借りてしまっている場合の対処法
「この話を初めて聞いた。よく考えたら今のオーナーが外国人なんだけど、どうすればいいの?」という方向けに解説します。
まず確認ポイントとして、外国人オーナーでも日本に住所があれば国内扱いになる可能性が高く、源泉徴収義務はありません。問題は賃貸契約書のオーナーの住所が海外だった場合です。この場合は非居住者の可能性が高く、源泉徴収義務が発生します。
知らずに家賃30万円を払い続けてしまった場合の解決策は次の2つです。
| 解決策 | 内容 | デメリット |
|---|---|---|
| ①源泉所得税を遅れて納付する | 今からでも源泉所得税を税務署に納付し、管理会社・オーナーに6万円分の返還交渉をする | 不納付加算税(税務調査前なら5%、調査後は10%)+延滞税が加算される。管理会社・オーナーとのトラブルになる可能性あり |
| ②経費計上をやめて修正申告する | 過去に遡って家賃の経費計上をやめ、修正申告する | 過去分の税金が増える。手間と費用がかかる |
📌 ポイント:不納付加算税の違い
- 税務調査が来る前に自主的に納付した場合:不納付加算税は5%
- 税務調査が来てから納付した場合:不納付加算税は10%
気づいた時点で早めに動くことが重要です。
解決策①の場合、管理会社に「6万円分を税務署に納めたから返してほしい」と交渉し、管理会社がオーナーと交渉して6万円を返してもらうという流れになります。ここでトラブルになると弁護士が入って「返せ・返さない」という話になるため、かなり面倒です。
解決策②も過去に遡って修正申告しなければならないため、税金的にも痛く、手間もかかります。
どちらの解決策も簡単ではありませんが、この2つしか解決策はありません。「放置する」という選択肢も理論上はありますが、現在源泉所得税の税務調査には非常に力が入っています。源泉所得税だけを対象にした税務調査も存在するくらいです。
⚠️ 注意:源泉所得税の税務調査は「白黒はっきり」している
通常の所得税や法人税の税務調査では「これは経費か経費じゃないか」というグレーゾーンがあります。しかし源泉所得税の場合は、オーナーが非居住者かどうかという事実の問題なので、問答無用で「払ってください」となります。税務署も入りやすく、現在外国人オーナーの物件を狙い撃ちで税務調査に入るケースが増えています。
📝 このセクションのまとめ
- オーナーの住所が海外なら非居住者として源泉徴収義務が発生する
- 対処法は「遅れて納付する(加算税5〜10%)」か「経費計上をやめて修正申告する」の2択
- 税務調査前の自主納付なら加算税5%、調査後は10%
- 源泉所得税は白黒はっきりしているため税務署が入りやすく、現在調査が増加中
外国人オーナーの物件は最初から借りないのが賢明
結論として、外国人オーナーの物件はもはや最初から借りないのが賢明です。もちろん毎月きちんと源泉徴収を頑張るという方は問題ありませんが、個人でやるには大変ですし、税理士に頼めばそれはそれで毎月何万円かのコストがかかります。普通よりも明らかにコストが高くなってしまいます。
今回取り上げたようなオーナーチェンジのケースは、もう仕方がないとも言えますが、嫌であればオーナーが変わった時点で引っ越しを考えた方がいいかもしれません。それくらい、外国人オーナーの物件は手間と時間がかかります。
これから賃貸物件を探すという方は、ぜひ契約前にオーナーの住所を確認してください。
📌 賃貸物件を借りる前のチェックリスト
- 賃貸契約書のオーナー住所を確認する(海外住所なら要注意)
- 管理会社がサブリース契約かどうか確認する
- 家賃を経費計上する予定があるなら、外国人オーナー物件は避ける
- オーナーチェンジがあった際は、新オーナーの住所を必ず確認する
- 外国人オーナーになっていた場合は、税理士に相談して対応を検討する
📝 このセクションのまとめ
- 外国人オーナー物件は毎月の源泉徴収手続きが必要で、個人には負担が大きい
- オーナーチェンジで外国人になった場合は、引っ越しも選択肢に入れる
- これから借りる場合は事前にオーナーの住所確認が必須
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル オタク会計士ch【山田真哉】 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。 本サイトは オタク会計士ch【山田真哉】を応援しています!
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