個人事業主・フリーランスが確定申告でやりがちなNG仕訳7選を税理士が解説

個人事業主・フリーランスが確定申告でやりがちなNG仕訳7選を税理士が解説
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経理ミスが税務調査を招く。申告前に必ず確認したいNG仕訳7選を解説します。

確定申告の全体像をおさらい

確定申告の全体像をざっくり復習しておきましょう。個人事業主・フリーランスにとって一番大事なのは売上です。そして売上を獲得するためにかかった支出を必要経費と言います。売上から必要経費を引いたものを事業所得と言います。不動産オーナーの方はこれが不動産所得、副業の場合は雑所得というものになりますが、考え方は同じです。収入から経費を引いた差額、つまり儲けのことを「何々所得」と言います。

そこから所得控除というものを引いて課税所得を算出します。この所得控除は必要経費とは違います。個人の生活的事情を考慮した控除制度であり、医療費控除・配偶者控除・扶養控除といったプライベート的なものが多いです。経理処理のミスが非常に多いところでもあります。

課税所得に対して所得税の税率をかけていきます。これを超過累進税率と言い、所得の金額が大きくなればなるほど税率も上がっていく構造です。

所得税の税率内容
最低税率5%
最高税率45%
復興特別所得税所得税額の2.1%を上乗せ
住民税10%
事業税5%前後(事業所得などに対して)

また、税額控除として住宅ローン控除や定額減税などがあります。これらを差し引いた後の所得税に対して復興特別所得税が上乗せされ、さらに住民税・事業税が発生するという流れになっています。

青色申告の方は売上から事業所得までの計算を青色申告決算書(4枚)に記載し、白色申告の方は収支内訳書(2枚)に記載します。事業所得以降は確定申告書に記載していきます。今回チェックするのはこの決算書の部分、特に必要経費の集計が重要なポイントです。

📝 このセクションのまとめ

  • 売上-必要経費=事業所得(儲け)
  • 所得控除は必要経費とは別物。医療費控除・配偶者控除などプライベート的なもの
  • 所得税は超過累進税率(最低5%〜最高45%)+復興特別所得税2.1%
  • 青色申告は決算書4枚、白色申告は収支内訳書2枚に記載

NG仕訳①:国民健康保険料・小規模企業共済を「保険料」として経費計上

まず1つ目のNGは、国民健康保険料(国保)や小規模企業共済の掛金を「保険料」などの勘定科目で必要経費に計上してしまうことです。

⚠️ 注意

国民健康保険料・国民年金・生命保険料・地震保険料・小規模企業共済の掛金は、必要経費ではなく「所得控除」です。決算書(青色申告決算書・収支内訳書)には一切載せません。

確かにこれらは節税効果があります。ただし、事業との直接的な関連性がないため、必要経費には入らないのです。「経費にならないなら節税にならないの?」と心配される方もいますが、ご安心ください。所得控除として申告書の別の場所に記載することで、しっかり節税効果を受けられます。

具体的には確定申告書第1表の左下「所得から差し引かれる金額」の欄に記載します。

種類申告書の記載欄
国民健康保険料・国民年金第1表 13番「社会保険料控除」
小規模企業共済の掛金第1表 14番「小規模企業共済等掛金控除」
生命保険料(限度額あり)第1表「生命保険料控除」
地震保険料第1表「地震保険料控除」

第2表にはこれらの明細を記載します。

では、事業用の口座から国保や小規模企業共済の掛金が引き落とされている場合、残高をどう合わせればいいのでしょうか?答えは「事業主貸」という勘定科目を使うことです。

📌 ポイント:「事業主貸」とは?

「事業主貸」「事業主借」などは、残高合わせをするためだけの仮の勘定科目です。深い意味はなく、個人事業主の確定申告において預金残高を合わせるために使います。青色申告で55万円・65万円の特別控除を受けるにはBS(貸借対照表)も作成する必要があるため、残高を正確に合わせることが必要です。

なお、法人の場合は役員貸付金・役員借入金として処理してその残高がずっと残りますが、個人の場合はこの仮科目を設定して確定申告し、年度が変わったら利益などと相殺されます。本当に残高合わせのための科目としてご利用ください。

📝 このセクションのまとめ

  • 国保・国民年金・生命保険料・小規模企業共済は必要経費ではなく所得控除
  • 決算書には一切記載しない。確定申告書第1表の所得控除欄に記載する
  • 事業用口座から支払っている場合は「事業主貸」で残高合わせをする

NG仕訳②:所得税・住民税を「租税公課」として経費計上

2つ目のNGは、所得税や住民税を「租税公課」などの勘定科目で経費計上してしまうことです。「ちゃんと納税しているのに経費にならないの?」と感じる方も多いですが、これは単純に経費にならないのです。

その理由を理解するために、事業所得(儲け)から実際に払うべきものを整理しておきましょう。

  • 所得税・住民税
  • 国民健康保険料・国民年金
  • 自分の生活費(給与)
  • 借入金の返済元本部分

これらはすべて事業所得(儲け)から支払うべきものです。つまり、節税をやりすぎて事業所得が小さくなりすぎると、所得税・住民税は低くなる一方で、自分の生活費が足りなくなったり、借金の返済ができなくなったりするという節税の弊害が起こりえます。

⚠️ 注意:経費になる税金とならない税金

所得税・住民税は経費になりません。ただし、個人事業主が支払う「事業税」は租税公課として経費に計上できます。事業税の支払いは8月と11月の2回で、基本的に所得が290万円を超える人に課されます(対象外の業種もあり)。逆にこの事業税の経費計上は忘れやすいので、くれぐれもご注意ください。

📝 このセクションのまとめ

  • 所得税・住民税は経費にならない。税は所得が決まってから払うもの
  • 事業税(8月・11月の2回払い)は租税公課として経費計上できる。忘れずに
  • 節税のやりすぎは生活費・借入返済に支障をきたすリスクがある

NG仕訳③:預金の利息を「受取利息」として収益計上

3つ目のNGは、事業用口座に入金された預金の利息を「受取利息」や「雑収入」として決算書に収益計上してしまうことです。これは計上しなくてよい、という話です。

個人には10種類の所得区分があります。事業用の口座の利子であったとしても、これは利子所得という区分になります。

📌 ポイント:源泉分離課税とは

預金の利息は源泉分離課税といって、すでに税金が差し引かれた後の手取り額が口座に入金されています。つまり、その時点で課税関係は完結しており、確定申告で改めて申告する必要はありません。わざわざ受取利息や雑収入として決算書に計上するのは誤りです。

金額は小さいことが多いですが、事業所得以外のものを青色申告決算書に載せてはいけないというルールがあります。利子所得は事業所得ではないので、決算書には一切載せないようにしてください。

📝 このセクションのまとめ

  • 預金利息は利子所得であり、源泉分離課税で課税関係は完結している
  • 決算書に受取利息・雑収入として計上するのは誤り
  • 事業所得以外のものは青色申告決算書に載せてはいけない

NG仕訳④:車両売却損・売却益を決算書に計上

4つ目のNGは、車両の売却損や売却益を青色申告決算書の経費・収益として計上してしまうことです。簿記3級で習うような処理ですが、個人の場合は法人とは異なります。

法人の場合は車両売却損・売却益の計上がOKですが、個人の場合は譲渡所得という別の所得区分になるため、決算書に載せてはいけません。青色申告決算書はあくまで事業所得に関する収益・経費を記載するものです。事業所得以外のものをここに載せると、事業所得が不当に小さく(または大きく)なってしまいます。

では、どこに記載するかというと、確定申告書第1表の収入金額「総合譲渡(短期・長期)」と、所得金額の「総合譲渡・一時」の欄です。さらに第2表の「総合課税の譲渡所得・一時所得に関する事項」に詳細を記載します。

記載項目内容
収入金額車などを売却した金額
必要経費など購入金額から減価償却費を差し引いた残り(帳簿価額)

📌 ポイント:総合譲渡には特別控除と1/2計算がある

総合譲渡に該当するものは、不動産以外の資産(事業で使っている備品・車など)の売却です。この総合譲渡所得には50万円の特別控除があります。さらに、所有期間5年超のものについては所得を1/2にしてくれるという税制上の特典があります。

車両売却損益を誤って決算書に計上してしまうと、この50万円控除や1/2計算が受けられなくなり、結果的に損をしてしまいます。

⚠️ 注意:消費税の申告をしている方は要注意

インボイス登録をしている方や、基準期間の課税売上が1,000万円を超えて消費税申告をしている方は、車の売却収入に対する消費税も計上しなければなりません。これを忘れると消費税の追徴課税を受ける可能性があります。実務上もミスが多い箇所なので特に注意してください。

なお、不動産や株式の譲渡は分離課税となるため、この総合譲渡には含まれません。50万円控除や1/2計算の特典もありませんのでご注意ください。

📝 このセクションのまとめ

  • 車両売却損益は決算書ではなく確定申告書の「総合譲渡」欄に記載する
  • 総合譲渡には50万円の特別控除+所有期間5年超なら1/2計算の特典がある
  • 消費税申告者は車両売却収入に対する消費税の計上も忘れずに
  • 不動産・株式は分離課税のため総合譲渡には含まれない

NG仕訳⑤:事業主自身の給与を「給与」や「役員報酬」として経費計上

5つ目のNGは、個人事業主が自分自身への給与を「給与」や「役員報酬」という勘定科目で経費計上してしまうことです。残念ながら、これは経費に落ちません。

定額で口座から給与として引き出している方もいらっしゃいますが、それ自体は問題ありません。ただし、先ほどの国民健康保険料と同様に「事業主貸」として残高合わせの処理だけをしてください。

📌 ポイント:個人事業と法人では「利益」の概念が全く違う

区分利益の意味
個人事業自分の生活費・借入返済元本・税金など全てを含めた金額が事業所得。ここから生活費も払う
法人役員報酬(生活費)はすでに経費として引かれており、それを除いた純粋な事業の利益

個人事業の方で赤字決算がずっと続いているという場合、「生活費はどうしているのか」という観点から税務当局に疑いをかけられる可能性が非常に高いです。自分への給与を誤って経費計上することで事業所得が過小になり、税務調査を招くリスクがあります。

📝 このセクションのまとめ

  • 個人事業主が自分に払う給与は経費にならない
  • 口座から引き出す場合は「事業主貸」で残高合わせのみ行う
  • 個人事業の利益は生活費・税金・借入返済を全て含む概念。法人の利益とは別物
  • 赤字決算が続くと税務調査のターゲットになりやすい

NG仕訳⑥:家事按分せずに経費100%計上

6つ目のNGは、仕事とプライベートで共用している支出を、按分せずに全額経費として計上してしまうことです。所得税法上の正式な言葉では「家事関連費」と呼びます。

仕事とプライベートにまたがって使っている支出の例としては、次のようなものがあります。

  • 携帯電話代
  • 自宅で仕事をしている場合の賃貸家賃
  • プライベートと仕事で併用している車の減価償却費・ガソリン代・税金・保険料

これらは客観的に説明できる割合で按分し、仕事で使っている部分だけを経費として計上することが必要です。その割合を継続して経理処理することで、経費性が認められます。

📌 ポイント:地代家賃の内訳書の書き方

青色申告決算書の地代家賃の内訳欄には「本年中の賃借料」と「そのうち必要経費算入額」を記載します。例えば、年間24万円の家賃を支払っていて仕事での使用割合が50%なら、必要経費算入額は12万円と記載します。

もし24万円をそのまま全額経費計上していると、自宅住所と地代家賃の明細の住所が同じ場合に「プライベート利用分はないのか」と疑われます。家事按分は地味ですが、やっていなければすぐ分かる項目なので、しっかり自己否認(一部を経費から取り消す処理)を行ってください。

📝 このセクションのまとめ

  • 家事関連費は仕事で使っている割合だけを経費計上する(家事按分)
  • 客観的に説明できる割合を継続して使うことが重要
  • 決算書の地代家賃内訳に「賃借料」と「必要経費算入額」を正確に記載する
  • 全額計上していると自宅住所との照合で疑いをかけられる

NG仕訳⑦:未入金の売上を計上していない(売上計上漏れ)

7つ目、最後のNGはまだ入金されていない売上を計上していないことです。これは確定申告初心者にとって非常に分かりにくいポイントです。

⚠️ 注意:売上計上のタイミングは「入金日」ではない

売上の計上基準は「お金をもらったかどうか」ではありません。

  • 物販(ECや卸売など):商品の引き渡しが完了した段階で売上計上
  • 役務提供(サービス業など):サービスの提供が完了した段階で売上計上

入金が1月や2月になるものであっても、引き渡し・提供完了が12月中であれば、その期の売上として計上しなければなりません。これを怠ると申告漏れになります。

なお、小規模な事業者には現金主義の特例があり、入出金があった段階で売上・経費を認識する方法も認められています。ただし、これはあくまで特例です。基本的には売上も経費も発生主義で処理します。

意図的な申告漏れでなく、知識不足による場合であっても、延滞税や過少申告加算税といったペナルティが課せられます。確定申告の作業をする際は、「入金はまだだが、役務の提供や物の引き渡しが完了している売上はないか」を必ず確認してください。

📝 このセクションのまとめ

  • 売上計上のタイミングは入金日ではなく、引き渡し完了日・役務提供完了日
  • 未入金でも引き渡し・提供完了なら当期の売上として計上が必要
  • 知らなかったとしても延滞税・過少申告加算税のペナルティが課せられる
  • 小規模事業者には現金主義の特例あり(あくまで特例)

NG仕訳7選まとめ:申告前に必ずチェックを

今回解説した7つのNG仕訳を一覧でまとめます。確定申告の提出前に必ずチェックしてください。

No.NG内容正しい処理
国保・小規模企業共済を「保険料」として経費計上所得控除として確定申告書第1表に記載。口座引落は「事業主貸」で処理
所得税・住民税を「租税公課」として経費計上経費にならない。事業税は経費計上OK(8月・11月払い)
預金利息を「受取利息」として収益計上源泉分離課税で完結。決算書への計上不要
車両売却損益を決算書に計上確定申告書の「総合譲渡」欄に記載。50万控除・1/2計算の特典あり
自分への給与を「給与」「役員報酬」として経費計上経費にならない。引出しは「事業主貸」で残高合わせのみ
家事按分せずに経費100%計上仕事使用割合で按分し、経費算入額を決算書内訳に明記
未入金の売上を計上していない引き渡し・役務提供完了日基準で計上(発生主義)

今回の7つ以外にも、例えば借入金の返済を全額「支払利息」として経費計上してしまう(元本返済部分は経費にならない)、あるいは減価償却の方法で個人の場合は定額法がメインなのに定率法を使ってしまうといったミスのパターンも存在します。

📌 ポイント:税務調査を誘発しないために

近年は調査先の選定にAIが導入されており、売上・収益の不自然な増減、赤字決算の継続、丸い数字ばかりの記載などがターゲットになりやすい要因とされています。それ以前の問題として、今回紹介したような経理処理のミスが税務調査を誘発するケースも多くあります。申告書の提出前に必ず決算書のチェックを行いましょう。

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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