合同会社のデメリット3選を税理士が解説|株式会社との違いも比較
合同会社は設立コストが安い反面、知られていないデメリットが3つあります。これから起業・法人化を検討している方は必ずチェックしてください。
株式会社と合同会社、どちらを選ぶべきか?まず結論から
これから起業する方、あるいは個人事業主から法人成りを検討している方にとって、「株式会社と合同会社のどちらがいいのか」は非常によく聞かれる疑問です。まずは結論をお伝えします。
📌 ポイント:選び方の基本方針
- コストを抑えてサクッと作りたい → 合同会社一択
- 信用力を重視したい・無難に行きたい → 株式会社一択
ただし、合同会社には大きなデメリットが3つあります。これを把握した上で判断しましょう。
なお、合同会社は英語で「リミテッド・ライアビリティ・カンパニー」といい、略称としてLLCと呼ばれることもあります。法人の種類としては他に合名会社・合資会社もありますが、これらは倒産時の責任範囲に限度がない「無限責任」のため設立は非常に稀です。実務上は株式会社と合同会社の2択で考えて問題ありません。
📝 このセクションのまとめ
- コスト重視なら合同会社、信用力重視なら株式会社
- 合同会社(LLC)には3つの重要なデメリットがある
- 合名会社・合資会社は無限責任のため実務上ほぼ選ばれない
株式会社vs合同会社:主な違いを一覧で比較
株式会社と合同会社の主な違いを以下の表にまとめました。設立コストから信用力まで、各項目を確認してください。
| 比較項目 | 株式会社 | 合同会社(LLC) |
|---|---|---|
| 定款認証(公証人役場) | 必要(最低3万円〜最大5万円) | 不要 |
| 登録免許税(最低額) | 15万円 | 6万円 |
| 出資と経営の関係 | 所有と経営の分離(原則) | 出資者=役員が必須 |
| 意思決定方式 | 出資割合に応じた議決権 | 1人1票の完全合議制 |
| 代表者の名称 | 代表取締役 | 代表社員 |
| 役員の任期 | 最長10年(更新手続きあり) | 任期なし |
| 株式の公開・上場 | 可能 | 不可 |
| 信用力 | 高め | やや低め |
| 決算公告義務 | あり | なし |
コスト面では合同会社が圧倒的に有利です。定款認証費用(最低3万円〜最大5万円)が不要で、登録免許税も株式会社の15万円に対して合同会社は6万円と大幅に安くなります。
また、役員の任期がない点も合同会社のメリットです。株式会社では最長10年ごとに役員の重任登記が必要となり、その都度、登記費用や司法書士への手数料が発生します。合同会社にはこのコストがかかりません。
一方、信用力については株式会社の方が高い傾向があります。合同会社はまだ認知度が低く、「合同会社って何?」と知らない方も一定数いらっしゃいます。B to Bビジネスや上場企業との取引が多い場合は株式会社の方が無難でしょう。
📌 設立コストをさらに半額にする特例制度
特定創業支援等事業の支援を受けた創業5年未満の個人に限り、株式会社・合同会社等を設立する際の登録免許税を1/2に軽減できる特例があります。
- 株式会社:15万円 → 7万5千円
- 合同会社:6万円 → 3万円
認定を受けている市区町村で4回程度の研修(費用は1〜2万円程度)を受け、その市区町村で会社を設立することが条件です。これからじっくり創業を考えている方はぜひ活用を検討してください。
📝 このセクションのまとめ
- 合同会社の設立コストは最安3万円(特例利用時)と圧倒的に安い
- 役員任期なしで更新コストも不要
- 信用力・上場可能性は株式会社が上
- 特定創業支援等事業の特例で登録免許税を半額にできる
【デメリット①】1人1票の完全合議制で意思決定が困難になるリスク
合同会社の最大のデメリットの一つが、出資割合に関わらず1人1票の完全合議制であることです。
株式会社の場合、意思決定は出資割合(株式の保有数)に応じた議決権によって行われます。たとえば出資比率が99%と1%であれば、99%を持つ人に圧倒的な権限が集中します。ところが合同会社では、出資比率がどれだけ偏っていても、意思決定は完全に1対1です。
一人会社として運用する場合や、ご夫婦で設立する場合はほとんど問題になりません。問題が生じるのは、友人・知人と複数人で会社を設立するケースです。
| 設立パターン | 株式会社の場合 | 合同会社の場合 |
|---|---|---|
| 2人(出資比率99%:1%) | 99%保有者が実質支配 | 完全に1対1(出資比率無関係) |
| 3人で設立・2人が結託 | 出資比率次第で対抗可能 | 2対1で実質乗っ取り状態 |
⚠️ 注意
友人3人で合同会社を設立した場合、2人が結託すれば残りの1人は会社の意思決定に全く影響を与えられなくなります。実質的な会社の乗っ取りに近い状態が生じるため、赤の他人と一緒に会社運営をする場合は、合同会社ではなく株式会社を強くおすすめします。
なお、定款によって社員ごとの議決権の割合を変えることは一応できます。ただし、合同会社は所有と経営が完全に一致している構造上、出資割合よりも社員同士の人間関係が最も重視される形態です。また、株式会社と異なり役員の任期がないため、気まずくなっても他の役員に辞めてもらうことが難しいという問題もあります。
📝 このセクションのまとめ
- 合同会社の意思決定は出資比率に関わらず1人1票
- 複数人で設立すると揉めた際に会社経営が停止するリスクがある
- 第三者と共同設立する場合は株式会社を選ぶべき
【デメリット②】非常勤役員の概念がなく、配偶者の社会保険加入が必須になる
合同会社の2つ目のデメリットは、非常勤役員という概念が存在しないことです。これが節税戦略に大きな影響を与えます。
法人を設立した場合、配偶者が経営に関与しているのであれば、役員報酬を支給することが可能です。自分一人で役員報酬を受け取るより、配偶者にも役員報酬を支給することで所得を分散でき、節税効果が生まれます。
📌 株式会社の場合の節税スキーム(配偶者を非常勤役員にする)
- 配偶者を「非常勤役員」として役員報酬を年間130万円未満に設定
- 社会保険の加入対象外となり、扶養のままでいられる
- 所得分散による節税効果が得られる
※配偶者が実際に経営に関与していることが前提です。関与していないのに役員報酬を支給することは脱税になります。
ところが合同会社では、この「非常勤役員」というスキームが基本的に使えません。なぜなら、合同会社の社員(役員)は所有と経営が完全に一致しており、出資者全員が業務執行権を持つのが前提だからです。常勤・非常勤の区別は登記事項でもなく、そもそも合同会社に非常勤役員は存在しないという立法趣旨があります。
では対策はないのでしょうか。以下の3つの方法が考えられますが、それぞれ課題があります。
| 対策方法 | 内容 | 現実性 |
|---|---|---|
| ①株式会社へ組織変更 | 合同会社から株式会社へ変更する | △ 手続きが煩雑 |
| ②使用人(従業員)として雇用 | 役員でなく一般社員として雇用。週20時間未満・年収106万円または130万円未満等の条件を満たせば社保回避可能 | △ 出勤簿の作成など管理が煩雑 |
| ③業務執行社員以外の社員にする | 定款変更により「出資のみ行う社員」とし、みなし役員規定を活用して非常勤に近い形で役員報酬を支給 | ○ 可能だが手続きが複雑 |
③の方法について補足します。通常、合同会社の役員は業務執行社員として登記されますが、定款変更によって「業務執行社員以外の社員」(出資のみを行う社員)とすることができます。単なる出資者だけでは役員報酬の支給はできませんが、法人税法にはみなし役員という規定があります。
みなし役員の条件は以下の通りです。
- 実際に経営に関与している
- 多くの出資を所有している
- 主要な出資者グループに所属している
業務執行社員以外の社員として定款変更しつつ、実際には一部非常勤のような形で経営に関与しているという事実関係を整えることで、合同会社でも非常勤役員として役員報酬の支給が可能かつ社会保険への加入が不要という状態にできます。
⚠️ 注意
③の方法は手続きが非常に複雑です。手間を避けたい場合は、素直に株式会社を選ぶか、他の方法を検討することをおすすめします。また、配偶者が実際に経営に関与していない状態で役員報酬を支給することは脱税になるため絶対にやってはいけません。
📝 このセクションのまとめ
- 合同会社には非常勤役員の概念がなく、配偶者を役員にすると社会保険加入が必須になる
- 配偶者の所得分散節税スキームが使いにくい
- 対策として定款変更+みなし役員規定の活用が可能だが手続きが複雑
- シンプルに解決したいなら株式会社を選ぶべき
【デメリット③】社員(役員)が死亡すると退社扱い・一人会社は解散リスクあり
合同会社の3つ目のデメリットは、最も知られていない重大なリスクです。合同会社では社員(役員)が死亡した場合、退社扱いになります。つまり、何も対策をしていなければ、一人会社の代表者が亡くなった時点で会社が解散してしまいます。
株式会社であれば、代表者が亡くなった場合、相続人(配偶者・子供など)がその株式を引き継ぎ、会社の経営権を承継することができます。ところが合同会社では、社員の死亡は法定退社事由とされており、亡くなった時点で社員としての地位を失います。
| 会社の種類 | 代表者死亡時の相続人の権利 | 会社への影響 |
|---|---|---|
| 株式会社 | 株式を相続し経営権を承継できる | 会社は存続する |
| 合同会社(一人会社) | 出資金の払い戻し請求のみ可能(経営権なし) | 会社が解散する |
| 合同会社(複数社員) | 出資金の払い戻し請求のみ可能(経営権なし) | 残った社員の会社になる |
たとえば友人2人で合同会社を設立していた場合、自分が亡くなることで実質的にその合同会社は友人のものになってしまいます。遺族は出資したお金の払い戻しを請求できるだけで、会社に関する権限は一切持てないのです。
⚠️ 注意:一人会社の場合は特に要注意
一人会社の場合、社員が1人しかいないため、その社員が亡くなると合同会社の法定解散事由に該当し、会社はそこで終わりになります。事業を後継者に引き継がせたい場合は、必ず事前に対策が必要です。
解散リスクを防ぐ対策:定款に一文を加えるだけ
この問題には、シンプルかつ有効な対策があります。定款に相続に関する条項を記載しておくことです。
📌 定款への記載例
「社員が死亡した場合は、当該社員の相続人が当該社員の持分を承継して社員となることができる」
この一文を定款に入れておくことで、亡くなった社員の持分を相続人が承継し、相続人が社員(役員)として合同会社の経営に参画することが可能になります。
この条項を入れておくことで、
- 一人会社の方:会社の解散を防ぐことができる
- 複数人で運営している方:他の社員による実質的な乗っ取りを防ぐことができる
なお、定款にこの条項を入れただけでは、「誰が」持分を引き継ぐかは決まりません。配偶者・子供など複数の相続人がいる場合は、遺産分割協議(相続人同士の話し合い)によって決めることになります。
「話し合いでは不安」という方は、遺言書を作成しておくことをおすすめします。遺言書に「合同会社の持分は〇〇(特定の相続人)に相続させる」と明記しておけば、スムーズな承継が可能です。
⚠️ 既に合同会社を設立している方へ
合同会社を設立済みの方は、今すぐ定款を確認してください。設立を依頼した司法書士が配慮してくれている場合もありますが、相続に関する条項が入っているかどうか必ず確認することを強くおすすめします。入っていない場合は定款変更の手続きを行いましょう。
📝 このセクションのまとめ
- 合同会社の社員(役員)が死亡すると退社扱いとなり、一人会社は解散する
- 相続人は出資金の払い戻し請求しかできず、経営権を引き継げない
- 対策は定款に「相続人が持分を承継して社員になれる」旨の条項を記載すること
- 誰に引き継がせるかは遺言書で明確にしておくとさらに安心
合同会社のデメリット3選まとめ:株式会社と合同会社の選び方
ここまで解説してきた合同会社のデメリット3つを改めて整理します。
| デメリット | 内容 | 対策 |
|---|---|---|
| ①完全合議制(1人1票) | 出資比率に関わらず意思決定が1人1票。複数人での設立時に紛争リスクがある | 一人会社・夫婦設立なら問題なし。第三者との共同設立は株式会社を選ぶ |
| ②非常勤役員の概念なし | 配偶者を非常勤役員にして社会保険を回避する節税スキームが使いにくい | 定款変更+みなし役員規定の活用(複雑)または株式会社へ変更 |
| ③社員死亡=退社・解散リスク | 一人会社の代表者が亡くなると会社が解散。相続人は経営権を引き継げない | 定款に相続条項を記載+遺言書の作成 |
合同会社は最安3万円(特例利用時)から設立できる非常にお手軽な選択肢です。B to Cのビジネスで上場企業との取引もないという方であれば、コスト面から合同会社を選ぶメリットは大きいです。
ただし、上記3つのデメリットを把握した上で、「それでもカバーできる」と判断できる場合に限り合同会社を選びましょう。複数人での経営、配偶者への役員報酬を活用した節税、事業承継を重視するなら、最初から株式会社を選ぶ方がシンプルで安心です。
📌 合同会社が向いているケース
- 一人会社として運営する
- ご夫婦2人で設立する
- B to Cビジネスで上場企業との取引がない
- 将来的に上場を考えていない
- 設立コストをできるだけ抑えたい
📌 株式会社が向いているケース
- 友人・知人など第三者と共同で設立する
- 将来的に上場(IPO)を視野に入れている
- 上場企業・大手企業との取引が多い
- 配偶者を非常勤役員にした節税スキームを活用したい
- 信用力を重視したい
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!
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