合同会社は相続できない?代表者死亡で所得税・相続税ダブル課税の落とし穴を税理士が解説

合同会社は相続できない?代表者死亡で所得税・相続税ダブル課税の落とし穴を税理士が解説
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合同会社には株式会社にはない「相続できない」という重大な落とし穴があります。

起業や法人化を検討している方から「株式会社と合同会社、どちらがいいですか?」という質問は非常によく寄せられます。今回は、合同会社を選ぶ際に絶対に知っておかなければならない、代表者が亡くなった際の相続問題と税務上のリスクについて詳しく解説します。

株式会社と合同会社、どちらを選ぶべきか?

結論から言うと、「絶対に株式会社でなければならない」というわけではありません。ケースバイケースです。まず大前提として、税金の計算自体は株式会社も合同会社も変わりません。お金をかけずにサクッと会社を作りたいのであれば、合同会社には大きなメリットがあります。ただし、デメリットをしっかり把握しておかないと後で大変なことになります。

以下に株式会社と合同会社の主な特徴を比較してまとめます。

比較項目株式会社合同会社
信用力・知名度高い低い
設立時の定款認証必要(最低3万円)不要
登録免許税最低15万円最低6万円
役員の任期あり(最長10年)なし
代表者住所の非表示選択可能(2023年10月〜)非表示措置なし(開示必須)
株主総会・取締役会必要不要
決算公告(官報掲載)義務あり義務なし
議決権の仕組み株式数に比例頭数による完全合議制
所有と経営の関係分離(株主≠役員が原則)一致(出資者=社員=役員)
非常勤役員の設定可能原則不可
代表者死亡時の相続株式をそのまま相続可能自動的な相続は不可

📌 設立コストの特例:特定創業支援等事業

自治体によっては、経営相談やセミナーを受講することで「特定創業支援等事業」の認定を受けられます。この認定を取得すると、登録免許税が1/2に軽減されます。株式会社なら15万円→7万5,000円、合同会社なら6万円→3万円になります。数ヶ月後に起業を予定している方は、ぜひ活用を検討してください。

📝 このセクションのまとめ

  • 税金計算は株式会社も合同会社も同じ
  • 設立コストは合同会社が圧倒的に安い
  • 合同会社は運営が簡素だが、信用力や相続面でデメリットがある
  • 特定創業支援等事業を活用すれば登録免許税が半額になる

合同会社特有の注意点①:完全合議制と非常勤役員の問題

合同会社には「一社員一票の完全合議制」という仕組みがあります。株式会社では株式をたくさん持っている人に権限が集まりますが、合同会社では出資比率に関係なく、社員(役員)の頭数で意思決定が行われます。

たとえば友人と2人で合同会社を立ち上げる場合、揉めた時のために次のような対策を講じておくことが重要です。

  • 社員の数を奇数にする
  • 定款で社員ごとの議決権の割合を変える

また、合同会社では所有と経営が一致しているため、出資者全員が業務執行権を持ちます。そのため、株式会社でよく使われる「非常勤役員に配偶者を入れて役員報酬を支払い節税する」という手法が、合同会社では原則として使えません。

⚠️ 注意:合同会社の社会保険加入義務

合同会社では役員(社員)である以上、常勤・非常勤の概念がありません。役員報酬を受け取っている場合は、原則として社会保険への加入義務があります。これを知らずに未加入のままにしているケースが意外と多いので注意が必要です。

どうしても非常勤役員として役員報酬を活用したい場合は、定款で「業務執行社員以外の社員」として記載し、法人税法上の「みなし役員」の考え方を活用するという対策があります。ただし複雑な対応が必要になるため、専門家への相談を強くおすすめします。

📝 このセクションのまとめ

  • 合同会社は出資比率に関係なく頭数で議決が決まる完全合議制
  • 所有と経営が一致しているため非常勤役員の概念が原則ない
  • 役員報酬を受け取る社員は社会保険加入が必要

合同会社最大の落とし穴:代表者が亡くなると会社が解散する

ここからが今回の本題です。合同会社では、社員(役員)の死亡は法定退社事由となります。つまり、代表者が亡くなった場合、その方は会社を退社しなければならない扱いになります。

さらに重要なのは、株式会社とは異なり、遺族(相続人)が自動的に出資持分を相続することができないという点です。株式会社であれば、オーナーが亡くなった場合、保有していた株式はそのまま相続人に引き継がれます。しかし合同会社ではこれが認められていません。

社長一人だけの合同会社であれば、代表者が亡くなった時点で会社は解散となってしまいます。これが合同会社の最大の落とし穴です。

⚠️ 注意:みなし配当課税が発生するケース

代表者が亡くなった際、みなし配当課税が発生するのは以下のような場面です。

  • 会社の合併・会社分割
  • 自社株の買い取り(会社がオーナーから株を買い取る場合)
  • 会社の解散による残余財産の分配(今回のケース)

利益剰余金がほとんど溜まっていない(債務超過など)会社ではみなし配当は発生しません。しかし順調に経営が進んでいる会社ほどリスクが高いため、注意が必要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 合同会社の社員(役員)の死亡は法定退社事由となる
  • 遺族は自動的に出資持分を相続できない
  • 社長一人の合同会社は代表者死亡で解散扱いになる
  • 株式会社ではこのような問題は起こらない

所得税・住民税のリスク:みなし配当課税の仕組みを理解する

合同会社の代表者が亡くなった際に発生する課税の1つ目が、みなし配当として所得税・住民税が課税される問題です。これを理解するために、会社の貸借対照表(バランスシート)の構造から説明します。

会社の純資産(自己資本)は大きく分けると「資本金」と「剰余金(利益剰余金など)」に分かれます。会社設立時に出資したお金が資本金となり、その後の経営活動で生まれた利益から法人税等を引いた残り(内部留保)が剰余金として積み上がっていきます。

代表者が亡くなった瞬間、払い戻し請求権は一旦その被相続人(亡くなった社長)本人に帰属します。そして元々入れた出資金よりも増えている部分、すなわち利益剰余金に相当する部分は「配当」と同じ扱いで課税されてしまいます。これが「みなし配当」です。

📌 みなし配当の具体的な計算例

元々の出資金:100万円
長年の経営を経て純資産:1,000万円
みなし配当となる金額:900万円(差額=利益剰余金相当)

この900万円に対して、総合課税(超過累進税率)が適用されます。上場会社の株の配当は約20%の税率で済みますが、非上場会社のみなし配当は総合課税のため、所得が大きくなるほど税率が上がります。

税目税額(配当控除前)税額(配当控除後)
所得税146万円56万円
住民税90万円65万円
合計236万円121万円

※みなし配当900万円・他の所得なしの場合の試算。配当控除(二重課税調整)を考慮しても、約121万円の税負担が発生します。

⚠️ 注意:源泉徴収義務を忘れずに

会社は配当金を支払う際に約20%の源泉徴収義務があります。これを忘れると会社の責任となり、ペナルティが課される可能性があります。代表者はすでに亡くなっているため、会社が配当から20%を天引きして税務署に納付し、遺族が準確定申告を行う際に前払い分として精算する流れになります。

📝 このセクションのまとめ

  • 代表者死亡時、出資金を超えて増えた利益剰余金相当分は「みなし配当」として課税される
  • みなし配当は総合課税(超過累進税率)が適用され、税負担が非常に重い
  • 上場株の配当(約20%)と異なり、非上場会社のみなし配当は最高税率になりうる
  • 配当控除を考慮しても大きな税負担が残る
  • 会社には源泉徴収義務があり、忘れるとペナルティが発生する

相続税のリスク:払い戻し請求権として高額評価されやすい

2つ目のリスクが相続税の負担が重くなりやすいという問題です。

代表者が亡くなった際、それまで保有していた出資持分は「払い戻し請求権」に変わります。この払い戻し請求権は、被相続人の財産として相続税の対象になります。

ここで問題になるのが評価方法の違いです。株式会社の場合、非上場株式の評価は以下の方法で計算されます。

  • 純資産価額方式:貸借対照表の自己資本をベースに、土地・建物などを評価替えして計算する方法
  • 類似業種比準価額方式:同業種の上場会社の利益・配当・純資産を元に比較計算する方法(比較的株価が低くなりやすい)

これらの方法を組み合わせて計算するため、場合によっては株価を低く抑えられることもあります。

一方、払い戻し請求権は額面通り(債権と同様)に評価されます。通常の株式評価よりも高額になりやすく、その結果として相続税の負担がドカンと重くなる可能性があります。

⚠️ ダブル課税の恐ろしさ

整理すると、合同会社の代表者が亡くなった場合、次の2つの課税が同時に発生します。

  1. みなし配当として所得税・住民税(利益剰余金相当分に対して総合課税)
  2. 払い戻し請求権として相続税(額面評価で高額になりやすい)

株式会社であればこのようなことは一切起こりません。順調に経営が進んでいる会社ほど、このリスクは大きくなります。

📝 このセクションのまとめ

  • 払い戻し請求権は額面通りに評価されるため、相続税が高くなりやすい
  • 株式会社の非上場株式評価(純資産価額方式・類似業種比準価額方式)と比べて不利
  • みなし配当(所得税・住民税)と相続税のダブル課税が発生する
  • 会社経営が順調なほどリスクが大きくなる

対策①:定款に一文を加えるだけで相続を可能にする

では、合同会社を選んでしまった場合はどうすればよいのでしょうか。実は非常にシンプルな対策があります。定款に以下のような記載を加えるだけで、相続人が持分を引き継ぐことができるようになります。

📌 定款記載例

「社員が死亡した場合は、当該社員の相続人が当該社員の持分を承継して社員となることができる。」

ただし、定款の記載だけでは実際の相続を確実にするには不十分な場合もあります。遺言書にも「合同会社の持分を誰々(息子・娘など)に引き継がせる」という旨を明記しておくことで、定款の文言と遺言書の記載が合わさり、株式会社と同様に確実に承継してもらうことができます。

⚠️ 注意:持分を継承した人は経営に関与する必要がある

合同会社では出資者=経営者です。持分を継承した相続人は、経営に関与しなければなりません。出資だけして経営には関わらないというのはNGです。この点は株式会社と大きく異なりますので、ご注意ください。

もしすでに合同会社を設立済みで、この定款の記載がない場合でも、今からでも定款の修正は可能です。早めに対応することをおすすめします。

📝 このセクションのまとめ

  • 定款に「相続人が持分を承継できる」旨を記載するだけで対策できる
  • 遺言書にも引き継ぎ先を明記することで確実性が増す
  • 持分を継承した相続人は経営への関与が必要(出資のみはNG)
  • すでに設立済みの合同会社でも定款修正は可能

対策②:最初から株式会社にする・組織変更も選択肢

「こんな煩わしいことは嫌だ」という方には、最初から株式会社で起業するという選択肢が最もシンプルな解決策です。株式会社であれば、代表者が亡くなっても株式はそのまま相続人に引き継がれ、みなし配当課税や払い戻し請求権による高額評価の問題は一切発生しません。

また、すでに合同会社を設立している方でも、合同会社から株式会社への組織変更が可能です。コストはかかりますが、将来の相続リスクを考えると十分に検討に値する選択肢です。

📌 合同会社に関するリスクは税理士法人にも当てはまる

実は、今回解説した合同会社の相続問題は、税理士法人にも同様に適用されます。しかも税理士法人の場合は定款での対策すら難しいケースがあり、合同会社よりもさらに大変な状況になることがあります。法人形態を選ぶ際には、長期的な視点でのリスク管理が非常に重要です。

会社設立の際には、司法書士や税理士などの専門家にしっかり相談することが大切です。税務面(所得税・相続税)と法務面(定款の記載内容)の両方を同時にアドバイスしてもらえる体制を整えることで、後で大きな損をしないような会社作りができます。

📝 このセクションのまとめ

  • 相続リスクを避けたいなら最初から株式会社を選ぶのがシンプル
  • 合同会社から株式会社への組織変更も可能(コストはかかる)
  • 合同会社の相続問題は税理士法人にも同様に当てはまる
  • 会社設立時は司法書士・税理士に相談し、定款の記載を適切に行うことが重要

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!

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