健康保険の仕組みをわかりやすく解説|被保険者・給付・任意継続まで完全網羅

健康保険の仕組みをわかりやすく解説|被保険者・給付・任意継続まで完全網羅
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健康保険の仕組みを、被保険者の要件から給付・任意継続まで丸ごと解説します。

社会保険の全体像を把握しよう

社会保険の勉強が難しく感じる最大の原因は、個別の数字や単語を先に覚えようとするからです。まず「森全体」を見渡してから「木」「葉」の順で理解していくと、情報が自然につながります。

社会保険とは、対象者の加入が義務となる、国や自治体が実施する公的な保険制度のことです。広い意味での社会保険は「狭い意味での社会保険」と「労働保険」に分かれます。

大分類保険の種類主な対象者
社会保険(狭義)健康保険サラリーマン(会社員)
国民健康保険自営業者・学生・無職など
後期高齢者医療制度75歳以上(一部65歳以上)
社会保険(狭義)介護保険40歳以上全員
社会保険(狭義)厚生年金サラリーマン
国民年金自営業者・学生など
労働保険労災保険労働者全員
雇用保険一定要件を満たす労働者

重要なポイントは、サラリーマン向けか自営業者向けかによって加入する保険が異なるという点です。健康保険はサラリーマン向け、国民健康保険は自営業者・学生・無職向けと覚えておきましょう。

💡 補足:動画では触れていませんが…

健康保険と厚生年金はどちらもサラリーマン向けで、被保険者の範囲や保険料の計算方法がほぼ共通しています。片方を理解すればもう片方も理解しやすくなるため、セットで学ぶのが効率的です。

📝 このセクションのまとめ

  • 社会保険は「国民が義務で加入する公的保険」の総称
  • サラリーマン向け(健康保険・厚生年金)と自営業者向け(国民健康保険・国民年金)に分かれる
  • 労働保険(労災・雇用)も社会保険の広義に含まれる

公的医療保険と国民皆保険制度

日本では国民皆保険制度が採用されており、国民は全員いずれかの公的医療保険に加入しなければなりません。「保険料が高いから入らない」という選択は認められていません。

被用者保険(サラリーマン向け)の中には以下の種類があります。

  • 組合管掌健康保険(組合健保):主に大企業が自社で運営する健康保険
  • 全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ):中小企業の従業員が加入する健康保険
  • 共済組合:公務員・教職員などが加入する保険

サラリーマンの保険に入れない人(学生・自営業者・無職など)は国民健康保険に加入します。また、75歳以上(一部65歳以上)になると後期高齢者医療制度へ移行します。

📌 ポイント

人生のライフステージに応じて加入する医療保険は変わります。学生時代は家族の被扶養者→就職後は勤務先の健康保険→退職後は国民健康保険か任意継続→75歳以降は後期高齢者医療制度、という流れを押さえましょう。

💡 補足:動画では触れていませんが…

協会けんぽは都道府県ごとに保険料率が異なります。一方、組合健保は各組合が独自にルールを設定できるため、付加給付(法定給付に上乗せする独自給付)を設けている組合も多くあります。

📝 このセクションのまとめ

  • 日本は国民皆保険制度のため、全員がいずれかの医療保険に加入義務あり
  • サラリーマンは協会けんぽまたは組合健保に加入
  • 75歳以上は後期高齢者医療制度へ移行

健康保険の被保険者・被扶養者の要件

健康保険は、被保険者(保険料を払って万一の際に保険給付を受けられる人)と、その被保険者によって扶養されている被扶養者が対象です。

健康保険料は給与から天引き(源泉徴収)されているため、「払っている実感がない」という方も多いですが、病院で3割負担で済むのはこの仕組みのおかげです。残り7割は健康保険が負担しています。

被保険者の要件

区分要件
原則(正社員等)1週間および1ヶ月の労働時間が一般社員の3/4以上
短時間労働者(特例)20時間以上かつ2ヶ月を超える雇用見込みで、一定規模以上の事業所に勤務する場合

被扶養者の要件

被扶養者とは「被保険者に養われている人」のことです。以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • 生計を維持されている配偶者・直系尊属(親・祖父母)・子・孫・兄弟姉妹、または3親等内の親族(同居が必要)
  • 年収が130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満
  • 同居の場合は被保険者の収入の1/2未満
  • 国内に居住していること

⚠️ 注意

税金の扶養控除では「年収103万円」が基準ですが、社会保険(健康保険)の被扶養者の基準は年収130万円です。税金と社会保険はルールが別々に設定されているため、混同しないよう注意してください。

💡 補足:動画では触れていませんが…

配偶者の親(義父母)は被保険者本人の「直系尊属」ではなく「3親等内の親族」に該当するため、被扶養者に入れるには同居が必須です。別居の義父母を被扶養者にすることはできません。

📝 このセクションのまとめ

  • 被保険者は原則として一般社員の労働時間の3/4以上働く人
  • 被扶養者の年収基準は130万円未満(60歳以上・障害者は180万円未満)
  • 税金の扶養(103万円)と社会保険の扶養(130万円)は別ルール

健康保険の保険料の計算と負担のしくみ

健康保険の保険料は以下の計算式で求められます。

📌 ポイント:保険料の計算式

保険料 =(標準報酬月額 × 保険料率)+(標準賞与額 × 保険料率)

標準報酬月額は4〜6月の平均給与を等級に当てはめた金額(下限:5万8,000円、上限:139万円)。標準賞与額はボーナスの千円未満を切り捨てた金額です。

「3月〜5月は残業しない方がいい」というアドバイスを聞いたことがある方も多いと思います。3〜5月に残業が多いと4〜6月の給与が上がり、標準報酬月額が高く判定されて社会保険料が増えるからです。

保険料に関する項目内容
負担割合被保険者(本人)と事業主(会社)が折半(労使折半)
協会けんぽの保険料率都道府県ごとに異なる
介護保険料率全国一律(40歳以上65歳未満の第2号被保険者は健康保険料に上乗せ)
産前産後休業・育児休業期間被保険者分・事業主分ともに免除

⚠️ 注意:都道府県と全国一律の逆を問う問題に注意

「協会けんぽの一般保険料率は都道府県ごとに異なる」「介護保険料率は全国一律」という組み合わせは、試験や実務の確認でも逆に出てきやすいポイントです。都道府県によって平均寿命や医療費に差があるため、健康保険料率は都道府県別に設定されています。

💡 補足:動画では触れていませんが…

育児休業中の保険料免除は、月末時点で育児休業中であれば月額保険料が免除されます。また2022年10月以降は、同月内に14日以上の育児休業を取得した場合も賞与にかかる保険料が免除される仕組みが追加されました。

📝 このセクションのまとめ

  • 保険料は標準報酬月額・標準賞与額に保険料率をかけて計算
  • 被保険者と会社が労使折半で負担
  • 協会けんぽの保険料率は都道府県ごと、介護保険料率は全国一律
  • 産前産後・育児休業中は被保険者分・事業主分ともに免除

健康保険の給付内容(療養の給付・高額療養費)

健康保険に加入していると、万一の際にさまざまな給付を受けられます。主な給付は以下の6種類です。

  • 療養の給付(3割負担)
  • 高額療養費
  • 傷病手当金
  • 出産手当金
  • 出産育児一時金・家族出産育児一時金
  • 埋葬料・家族埋葬料

療養の給付(自己負担割合)

業務外の病気・怪我による診察・薬・手術・入院などの医療費の一部を保険が負担する給付です。業務上・通勤途中の怪我は労災保険の対象となり、健康保険の対象外です。

年齢自己負担割合備考
0歳〜小学校入学前2割
小学校入学〜69歳3割一般的な現役世代
70歳〜74歳2割(一定以上所得者は3割)健康保険の対象
75歳以上1割(現役並所得者は3割)後期高齢者医療制度へ移行

📌 ポイント:70歳〜74歳は「まだ1割になれない」

75歳以降は後期高齢者医療制度で1割負担になりますが、70〜74歳はまだ健康保険の対象で2割負担です。「まだ1割になれない=70歳で2割」と覚えましょう。

高額療養費制度

3割負担でも医療費が高額になった場合に、月間の自己負担額が一定額(自己負担限度額)を超えた分を支給する制度です。

項目内容
計算単位同一月内(複数の医療機関を合算可)
自己負担限度額年齢・所得区分に応じて異なる
高額療養費の支給額窓口で支払った自己負担額 − 自己負担限度額
所得が高い場合自己負担限度額も高くなる

例えば、総医療費が100万円かかった場合、療養の給付で30万円(3割)の自己負担となります。しかし自己負担限度額が9万円の場合、差額の21万円が高額療養費として支給されるため、実質的な自己負担は9万円で済みます。

💡 補足:動画では触れていませんが…

高額療養費は原則として後から払い戻しを受ける仕組みですが、「限度額適用認定証」を事前に取得して医療機関に提示すると、窓口での支払い自体を限度額にとどめることができます。入院や高額な手術が予定される場合は事前申請が便利です。

📝 このセクションのまとめ

  • 現役世代(小学校入学〜69歳)の自己負担は3割
  • 70〜74歳は2割(一定以上所得者は3割)、75歳以上は後期高齢者医療制度で1割
  • 高額療養費は月間自己負担が限度額を超えた分を支給
  • 業務上・通勤中の怪我は労災保険の対象で健康保険は使えない

傷病手当金・出産手当金・出産育児一時金

傷病手当金

業務外の病気・怪我の療養のために仕事ができず休業した場合に支給される給付です。医療費そのものではなく、休業中に給与が受け取れないことを補填するための手当です。

項目内容
支給額(1日あたり)標準報酬日額(直近12ヶ月の平均月額 ÷ 30)の2/3
支給開始日連続して3日間休業した後、4日目以降の休業日
支給期間通算して最長1年6ヶ月
退職後の継続受給退職時点で被保険者期間が1年以上あれば、退職後も本来の期間満了まで受給可能

「連続3日休業」の考え方を具体例で確認しましょう。初診日に出勤し、翌日休み、その翌日出勤してしまうと連続3日が成立しません。連続して3日休業してはじめて「待期完成」となり、4日目以降の休業日から支給対象になります。

📌 ポイント:標準報酬日額の2/3

例えば普段1日あたり9,000円相当の給与を受け取っていた場合、傷病手当金は9,000円 × 2/3 = 6,000円/日が支給されます。全額ではありませんが、一定の生活保障として機能します。

出産手当金

出産のために休業し、給与を受け取れない期間に支給される給付です。被保険者本人(出産する女性)のみが対象で、専業主婦の配偶者には支給されません。

項目内容
支給額(1日あたり)標準報酬日額の2/3
支給期間(出産前)出産日以前42日(多胎妊娠は98日)
支給期間(出産後)出産日後56日

出産前42日・出産後56日という日数は、労働基準法で定められた「産前6週間・産後8週間は働かせてはいけない」という母体保護のルールに対応しています。法律で就業が禁止されているため給与が出ない→健康保険から補填するという仕組みです。

出産育児一時金・家族出産育児一時金

出産した際に1児につき一時金として50万円が支給されます(双子の場合は100万円)。

種類対象支給額
出産育児一時金被保険者本人が出産した場合1児につき50万円
家族出産育児一時金被扶養者(専業主婦など)が出産した場合1児につき50万円

⚠️ 注意:夫婦ともにサラリーマンの場合は重複受給不可

夫婦がそれぞれ健康保険に加入している場合、出産育児一時金と家族出産育児一時金の両方を受け取ることはできません。妻が自分の健康保険から出産育児一時金50万円を受け取るのみとなります。

埋葬料・家族埋葬料

業務外・通勤外の原因で死亡した場合に、健康保険からお見舞い金的な位置づけで5万円が支給されます。業務上・通勤中の死亡は労災保険の対象です。

💡 補足:動画では触れていませんが…

傷病手当金と出産手当金が重複する場合(出産前に傷病手当金を受給中に出産が重なった場合など)は、出産手当金が優先されます。ただし出産手当金の額が傷病手当金の額を下回る場合は、差額分が傷病手当金として支給されます。

📝 このセクションのまとめ

  • 傷病手当金:連続3日休業後の4日目以降、標準報酬日額の2/3、最長通算1年6ヶ月
  • 出産手当金:被保険者本人のみ、産前42日・産後56日、標準報酬日額の2/3
  • 出産育児一時金:1児につき50万円(夫婦ともに加入でも重複受給不可)
  • 埋葬料:業務外死亡で5万円

退職後の選択肢と任意継続被保険者制度

日本は国民皆保険制度のため、退職して会社の健康保険を脱退した後も、必ず何らかの医療保険に加入し続けなければなりません。退職後の選択肢は大きく3つあります。

  1. 健康保険の任意継続被保険者として、退職前の健康保険に引き続き加入する
  2. 国民健康保険に加入する(資格取得後14日以内に手続き)
  3. 家族の健康保険の被扶養者になる(配偶者が会社員で収入要件を満たす場合)

任意継続被保険者の要件と注意点

任意継続被保険者(略称:任継)とは、退職後も退職前の会社の健康保険に任意で継続加入できる制度です。

項目内容
加入要件退職日までに継続して2ヶ月以上の被保険者期間があること
申請期限資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内
加入期間最長2年間
保険料負担全額自己負担(在職中の労使折半はなくなる)
傷病手当金・出産手当金支給されない
その他の給付(3割負担・高額療養費等)在職中と同様に受けられる

📌 ポイント:任意継続は「2」が目印

任意継続に関する数字はすべて「2」に関連しています。2ヶ月以上の被保険者期間・20日以内の申請・最長2年間の加入、と覚えると混乱しにくくなります。

⚠️ 注意:申請期限の混同に注意

国民健康保険への加入手続きは資格取得後14日以内ですが、健康保険の任意継続申請は20日以内です。「2週間以内」と「20日以内」を混同しないよう注意してください。

傷病手当金・出産手当金が任意継続では支給されない理由は明確です。これらの手当金は「会社員として働いていて給与が発生する状態で休業したため収入が途絶えた」ことへの補填です。任意継続中はすでに退職しており給与という概念がないため、支給の前提が成立しません。

💡 補足:動画では触れていませんが…

任意継続と国民健康保険のどちらが保険料的に有利かは、退職前の収入水準によって異なります。一般的に収入が高かった人は任意継続の保険料に上限があるため任意継続が有利になるケースがあります。一方、収入が低かった人は国民健康保険の方が安くなる場合もあるため、退職前に両者を比較することをおすすめします。

📝 このセクションのまとめ

  • 退職後は①任意継続②国民健康保険③被扶養者のいずれかに加入する必要がある
  • 任意継続の要件:退職前に2ヶ月以上の被保険者期間、20日以内に申請、最長2年間
  • 任意継続中は保険料全額自己負担、傷病手当金・出産手当金は支給されない
  • 国民健康保険への加入手続きは資格取得後14日以内(任意継続の20日以内と混同注意)

📋 この記事を読んだら次にやること

  1. 自分の給与明細を確認し、健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料がそれぞれいくら天引きされているか把握する
  2. 家族に被扶養者がいる場合、年収130万円の基準を超えていないか確認する(社会保険の扶養と税金の扶養は基準が異なる点に注意)
  3. 退職・転職を検討している場合、任意継続と国民健康保険の保険料を事前に試算し、どちらが有利か比較する
  4. 高額な医療費が発生した際は、高額療養費制度の申請忘れがないよう加入している健康保険組合・協会けんぽに問い合わせる

🔄 最新アップデート

出産育児一時金は2023年4月より42万円から50万円に引き上げられました。また、2022年10月からは短時間労働者(週20時間以上・2ヶ月超の雇用見込み)への社会保険適用が従業員101人以上の事業所に拡大され、2024年10月からは51人以上の事業所にさらに拡大されています。パートタイムで働く方は自身が被保険者に該当するかどうか確認することをおすすめします。

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル ほんださん / 東大式FPチャンネル の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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