高額療養費の自己負担上限が大幅引き上げ!2026年改正を税理士がわかりやすく解説

高額療養費の自己負担上限が大幅引き上げ!2026年改正を税理士がわかりやすく解説
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高額療養費制度の自己負担上限が段階的に引き上げられます。最大で月25万円から月44万円超へ。改正の内容と損しない方法を詳しく解説します。

高額療養費制度とは?まずはおさらい

高額療養費制度とは、1か月の医療費がその人の自己負担限度額を超えた場合に、その差額を健康保険組合などから支給される制度です。

たとえば、70歳未満の会社員で月給が28万円〜50万円の方が、ある月に医療費が100万円かかってしまったケースで考えてみましょう。

  • 公的保険の負担:医療費の7割(70万円)
  • 本来の自己負担(3割):30万円
  • 高額療養費制度による自己負担上限:約8万7,000円
  • 高額療養費として支給される額:約21万円

つまり、100万円の医療費がかかっても実費負担は約8万7,000円で済むというのがこの制度の仕組みです。わざわざ民間の医療保険に入らなくても、国のセーフティネットとして非常にありがたい制度といえます。

⚠️ 注意

高額療養費制度は保険適用外の費用は対象外です。以下のものは基本的に対象になりません。

  • 先進医療の費用
  • 差額ベッド代
  • 入院時の食事代
  • 歯の矯正
  • 美容整形

📝 このセクションのまとめ

  • 高額療養費制度は、月の医療費が自己負担限度額を超えた分を健保が支給する制度
  • 100万円の医療費でも実費は約8万7,000円で済む(所得区分による)
  • 保険適用外の費用は対象外

現行の自己負担限度額(70歳未満)

自己負担限度額は所得によって異なります。会社員は標準報酬月額、自営業者(国民健康保険加入者)は総所得金額から住民税の基礎控除を引いた額で区分が決まります。

区分おおよその年収標準報酬月額(会社員)所得(国保)自己負担上限額
約1,160万円超月83万円以上90万円超25万2,600円+医療費の1%
約770万〜1,160万円月53万〜79万円16万7,400円+医療費の1%
約370万〜770万円月28万〜50万円21万〜600万円8万100円+医療費の1%
約156万〜370万円月26万円以下5万7,600円
住民税非課税3万5,400円

最も働く人の数が多いボリュームゾーンである「ウ」の区分(年収約370万〜770万円)の場合、月の医療費が8万100円+医療費の1%を超えると高額療養費が発生します。

📝 このセクションのまとめ

  • 自己負担限度額は年収・所得によってア〜オの5段階に区分
  • 会社員は標準報酬月額、国保加入者は所得金額で区分を判定
  • ボリュームゾーン「ウ」の上限は月8万100円+医療費の1%

2025年8月〜2026年7月の改正内容(第1段階)

今回の改正は10年ぶりの見直しです。この10年間で給与水準が約10%上昇したことを踏まえ、自己負担上限額も引き上げられます。

まず2025年8月から2026年7月までの期間は以下のように上限が変わります。

区分現行の上限額2025年8月〜の上限額変化
25万2,600円+医療費の1%29万円+医療費の1%(目安)約4万円増
16万7,400円+医療費の1%18万1,800円+医療費の1%(目安)約2万円増
8万100円+医療費の1%8万8,000円+医療費の1%(目安)約8,000円増
5万7,600円6万600円(目安)約3,000円増
オ(住民税非課税)3万5,400円3万6,300円(目安)約900円増

📌 ポイント

所得が高い人ほど上限の引き上げ幅が大きくなっています。住民税非課税の方(オ区分)はわずか約900円の増加にとどまります。

📝 このセクションのまとめ

  • 2025年8月〜2026年7月は第1段階の引き上げ(10年ぶりの見直し)
  • 給与水準の約10%上昇に合わせた改定
  • 所得が高い区分ほど引き上げ幅が大きい

2026年・2027年の改正内容(第2・第3段階)

実はここからが本番です。2026年8月以降、区分が現行の5段階から13段階へ大幅に細分化されます。そして2027年8月にはさらに上限が引き上げられます。

現行の「ア」区分(年収約1,160万円超)に相当する層は、新たに第1〜第3区分に分かれます。最上位の第1区分(年収1,050万円超)の上限は以下のように変わります。

時期自己負担上限額
現行(〜2025年7月)25万2,600円+医療費の1%
2026年8月〜36万7,200円+医療費の1%
2027年8月〜44万円+医療費の1%

現行の25万円から2027年には最低44万円を超えないと高額療養費が使えない状態になります。これは現行の約2倍の水準です。

また、現行の「ウ」区分(年収約370万〜770万円)は、新たに第7〜第9区分に分かれます。たとえば第7区分(年収650万〜770万円)の場合はこうなります。

時期自己負担上限額
現行(〜2025年7月)8万100円+医療費の1%
2026年8月〜13万3,400円+医療費の1%
2027年8月〜13万1,861円+医療費の1%(目安)

現行の8万円台から約5万円もラインが上がることになります。一方、住民税非課税の方(最低所得層)の上限は2026年も2027年も3万6,000円のまま変わりません

70歳以上の方については元々別の表が設けられていましたが、改正後は「住民税非課税でない方(一般・現役並み所得者)はほぼ70歳未満と同じ区分・上限が適用される」形になります。つまり、70歳を超えていても年金収入が多かったり現役並みに働いている場合は、現役世代と同じ高い上限が課されることになります。

📌 ポイント

区分が5段階から13段階に細分化されるのは、現行の5段階では「給料が少し上がっただけで一気に区分が上がり自己負担が急増する」という不公平が生じていたためです。13段階にすることで、より収入に応じた細かい負担設計が実現します。

📝 このセクションのまとめ

  • 2026年8月から区分が5段階→13段階に細分化
  • 最高所得区分(第1区分)は2027年に上限が現行の約2倍(月44万円超)に
  • 住民税非課税の方の上限は変わらず3万6,000円
  • 70歳以上でも所得が高ければ現役世代と同水準の上限が適用される

高額療養費で損しない8つの方法

改正後はなかなか使いにくくなる高額療養費制度ですが、できる限り活用するための方法を8つ紹介します。

① 家族の医療費を合算する

基本的には「自分がその月にその病院でいくら払ったか」が計算の基準になります。ただし、扶養家族や同じ国保に加入している家族が1人あたり2万1,000円以上の自己負担をしていれば、それを合算できるルールがあります。家族全員の医療費を積み上げて上限を超えると有利になります。

② 年収の壁ギリギリのパート・アルバイトは社会保険加入を検討

たとえば夫が高収入の会社員で妻がパートの場合、妻が病気がちで高額療養費をよく使うケースでは、夫の扶養のままだと自己負担の基準が夫の所得(高い区分)で決まってしまいます。妻が自分で社会保険に加入すれば、妻自身の給与をベースにラインが設定されるため、上限が大幅に下がり高額療養費が使いやすくなります。社会保険料の負担は増えますが、医療費の節約効果と比較検討する価値があります。

③ 月給よりも賞与(ボーナス)を多めにする

実際にあったケースを紹介します。ある従業員の方は月給48万円・交通費2万円の計50万円でした。頑張りを認めて月給を50万円・交通費2万円の計52万円に昇給したところ、その従業員から「給料を下げてくれ」と言われてしまいました。

理由は、月給が2万円上がったことで標準報酬月額の区分が「ウ」から「イ」に上がり、高額療養費の上限ラインが8万円台から約17万円台に跳ね上がったからです。毎月の医療費が17万円を超えないと高額療養費が使えなくなり、給料アップ分より医療費の自己負担増の方が大きくなってしまったのです。

📌 ポイント

会社員の高額療養費の区分は月給(標準報酬月額)をベースに決まります。賞与(ボーナス)は区分の判定に無関係です。そのため、給与を上げるなら月給より賞与で増やす方が、高額療養費を活用している従業員にとって有利になります。これが5段階から13段階へ細分化された理由の一つでもあります。

④ 治療日が月をまたがないようにする

高額療養費は月単位(1日〜末日)の計算です。月をまたいでしまうと、本来10万円かかる医療費が5万円・5万円に分散され、高額療養費が使えないケースが発生します。入院や手術の時期は月内で完結するよう調整できる場合は検討してみましょう。

⑤ 多数回該当(4回目以降)を活用する

過去12か月以内に高額療養費の支給を受けた月が3回あった場合、4回目以降は「多数回該当」としてラインが大幅に下がります

区分通常の上限多数回該当(4回目以降)の上限
ウ(年収370万〜770万円)8万100円+医療費の1%4万4,400円

過去12か月を確認して「今入院すると4回目になる」という状況であれば、早めに入院するといった工夫も可能です。

⑥ 消滅時効は2年

高額療養費は基本的に後から申請する制度です(先に病院で全額払い、後で超過分が戻ってくる仕組み)。申請を忘れていても2年以内であれば請求できます。申請し忘れている方は早めに確認しましょう。

⑦ 限度額適用認定証を事前に入手する

限度額適用認定証を事前に入手しておけば、窓口での支払いが自己負担上限額のみで済みます。100万円の医療費のケースでも、窓口で8万円を払えば終わり、超過分の21万円は後から申請する必要がありません。

マイナンバーカードを健康保険証として利用している方(マイナ保険証)は、限度額適用認定証の機能がすでに組み込まれているため、原則として別途入手の手続きが不要です。毎年更新が必要だった限度額適用認定証の手間がなくなるだけでも、マイナ保険証を利用する大きなメリットといえます。

⑧ 確定申告で医療費控除を活用する

自己負担分については、確定申告で医療費控除として申告することで税金が戻ってきます。高額療養費を受け取った場合はその金額を差し引いた上での申告になりますが、自己負担額が大きい方は必ず活用しましょう。

📝 このセクションのまとめ

  • ① 家族の医療費を合算して上限超えを目指す
  • ② パート・アルバイトは社会保険加入で自分の収入ベースの上限に
  • ③ 給与を上げるなら月給より賞与で(区分変更を避ける)
  • ④ 治療は月内で完結するよう調整する
  • ⑤ 4回目以降の多数回該当でラインが大幅に下がる
  • ⑥ 申請を忘れていても2年以内なら請求できる
  • ⑦ 限度額適用認定証(またはマイナ保険証)で窓口負担を最小化
  • ⑧ 自己負担分は確定申告で医療費控除を申告する

なぜ自己負担が増えるのか?改正の背景

今回の改正の背景には、高額療養費の支給金額・支給件数が年々急増しているという現実があります。国民の医療費全体の伸びよりも、高額療養費の伸びの方がはるかに大きくなっているのです。

特に医療費の高額化が顕著です。

年度医療費上位100位の平均最高金額
平成26年(2014年)1,861万円3,000万円
令和5年(2023年)5,586万円1億7,800万円

医療費の額が桁違いに増えています。たとえば脊髄性筋萎縮症に使われる「ゾルゲンスマ」という薬は1億6,000万円以上するとされており、こうした高額薬剤の普及が医療費を押し上げています。

また、年齢別の医療費と実際の負担額を見ると、現役世代はたくさん保険料を払っているにもかかわらず、高齢になるほど医療費が急増するという構造があります。高齢者の医療費を現役世代が支える形になっており、現役世代の負担が重くなっています。

そこで今回の改正では、70歳以上でも現役並みに働いていたり、年金収入が多い高所得の高齢者には現役世代と同じ水準の上限を適用する方針が採られました。年齢ではなく所得・収入で区別するという考え方です。

📌 ポイント

今回の改正の狙いは主に「高所得の高齢者により多く負担してもらうこと」でしたが、結果として70歳未満の現役世代の上限も同時に引き上げられました。高所得者全般に負担を求めることで制度の赤字を減らすという改正になっています。

📝 このセクションのまとめ

  • 高額療養費の支給額・件数が医療費全体の伸びを大幅に上回って増加
  • 高額薬剤(1億円超)の普及も医療費急増の一因
  • 現役世代の負担軽減を目的に、高所得の高齢者への負担増を設計
  • 結果として70歳未満の高所得者の上限も引き上げられる形に

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル オタク会計士ch【山田真哉】 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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