住宅取得等資金贈与の非課税を税理士が徹底解説【令和8年まで延長】
住宅取得等資金贈与の非課税制度は最大1,000万円が非課税になる魅力的な制度ですが、失敗例が多い落とし穴だらけの制度でもあります。
住宅取得等資金贈与の非課税制度とは
住宅取得等資金贈与の非課税制度とは、一言で言うと子供やお孫さんが家を買うための資金援助であれば最大1,000万円まで非課税にできるという制度です。
この特例制度は非常に良い制度なので、条件が合う方はどんどん積極的に使っていただきたいのですが、一方で注意点がたくさんある制度でもあります。この特例制度が使えると思って贈与したのに、蓋を開けてみたら結局使えないという方も世の中にはたくさんいらっしゃいます。そんな怖い制度になっていますので、今回は注意点を中心にお話をしていきます。
制度の基本内容と延長決定について
住宅取得等資金贈与の非課税制度は、自宅の購入資金に当てるための贈与は最大1,000万円まで贈与税が非課税になるシンプルな制度です。親から子供、あるいはお孫さんへの家を買うための資金援助が対象になります。
この1,000万円の非課税とは別に、年間110万円までの基礎控除枠も併用することが可能ですので、最大1,110万円まで無税で移すことができます。
具体的には、省エネ等住宅に該当するものは1,000万円まで、それ以外のものは500万円まで非課税にすることができます。
この制度は本来、令和5年の12月31日までで終わるはずだったのですが、今回税制改正が行われまして、3年間の延長が決まりました。結果として令和8年の12月31日までこの制度を使うことができます。条件が合う方はどんどん活用していきましょう。
なお、省エネ等住宅に該当するかどうかの判断は非常に難しいため、販売元の業者さんに確認するようにしてください。
この制度の最大のメリット:7年内加算の対象外
この制度の最大のメリットは、7年内加算の対象外になるという点です。本来、贈与というのは贈与をしてから7年以内に相続が発生してしまうと、その贈与で渡している財産も相続税の対象にされてしまいます。ですが、この特例制度を使っていれば、そういった7年内加算の対象にもなりませんので、結果として高い節税効果を得ることができます。そういった意味でも非常におすすめの制度です。
ただし、冒頭でも繰り返しになりますが、この制度はメリットが大きい反面、条件が非常に細かいため、少しでも間違えてしまうとこの特例を受けられなくなってしまいます。次からはその注意点を紹介していきます。
失敗例その1:直系尊属からの贈与であること
この特例が使えるのは、あくまで直系尊属、つまり自分から見たときに父親・母親・祖父・祖母など、自分と血の繋がりのある親からの贈与が対象になります。
よくある失敗例として、お婿さんやお嫁さん(子供の配偶者)に対する贈与があります。お婿さんやお嫁さんは直系ではありませんので、非課税の特例は受けられません。お婿さんやお嫁さんへの贈与は対象外になりますのでご注意ください。
失敗例その2:贈与年の翌年3月15日までに引き渡しを受けること
実はここが最もトラブルが起こりやすい部分です。この特例を使うための条件として、贈与を受けた次の年の3月15日までにその住宅の引き渡しを受けていることが条件になっています。
これを2つに分けて考えていきます。まず注文住宅の新築の場合には、屋根・骨組みなどを含む骨格があり、土地に定着した建造物として認められる状態であればOKとされています。つまり、3月15日までにそういった状態まで達していれば条件を満たします。
一方で厳しいのがマンションや建売住宅の場合です。この場合は、贈与年の翌年3月15日までに引き渡しを受けていなければダメなのです。
最もトラブルになりやすいのが新築マンションを購入するときです。新築マンションの場合、売買契約をしてから実際に引き渡しが行われるまでの期間が非常に長く、1年以上経過することも珍しくありません。お金の贈与を受けて頭金などの支払いに充てても、実際に引き渡しを受けるのが1年後といったケースでは、贈与を受けた次の年の3月15日までに引き渡しが間に合わないため、この特例は受けられなくなります。
ですので、新築マンションでこの特例を受けようとする方は、贈与のお金を最後の支払い(引き渡し直前の支払い)に充てられるよう、贈与を受けるタイミングを調整することをおすすめします。スケジュールを間違えないように注意しましょう。
失敗例その3:贈与年の合計所得金額が2,000万円以下であること
いわゆる所得制限です。贈与を受ける年に、受けた人の合計所得金額が2,000万円を超えてしまうとこの特例は受けられません。
「2,000万円なんて超えないから大丈夫」と思われる方が非常に多いのですが、実は結構気をつけないといけないケースがあります。
例えば、年収600万円のサラリーマンが今の自宅を売却したお金と父から贈与を受けて新しい家を買う予定だとします。今の自宅を売却したところ、売却益が1,600万ほど出たため確定申告をする予定というケースです。このケースでは、合計所得金額が2,000万円を超えるため、住宅取得等資金贈与の非課税は使えません。
毎年の収入が給与だけであれば2,000万円は全然超えないのですが、今住んでいる自宅を売却して売却益(譲渡所得)が出た場合、この2,000万円の判定は譲渡所得の金額と給与所得の金額を合算した形で行います。給与所得だけで見ると2,000万円を超えなくても、合算すると超えてしまう方が結構いらっしゃいます。
また、「譲渡所得には3,000万円の特別控除という特例があるから、それを使えば下回るのでは?」と思われた方もご注意ください。この3,000万円の特別控除を使う前の金額で判定しますので、やはり超えてしまうケースが多いです。
では、どうすればいいか。売却する年と贈与を受ける年をずらせばOKです。1,600万円の所得が出た年の翌年に贈与を受けるのであれば、この1,600万円分は判定から外されます。スケジュールの立て方が大切になってきます。
失敗例その4:贈与税の申告を期限内に行うこと
贈与税の申告は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日の期間内に行わなければなりません。
よくあるのが、「贈与された金額が非課税金額の範囲内だったので申告しなくてもいいと思いました」という方が毎年たくさんいらっしゃいます。住宅の購入に充てるためのお金は1,000万円まで非課税になりますので、例えばもらった金額が500万円であれば1,000万円以下に収まるため、申告しなくていいと思ってしまう方が非常に多いのです。
ですが、この特例は申告しないとダメです。1,000万円を超えていなかったとしても、必ず申告をすることが条件となっています。そして厳しいのが、3月15日までに申告しなければならず、1日でも遅れてしまうとこの特例は使えません。
さらに怖いのが、特例が使えないだけでは済まない点です。例えば1,000万円の贈与を受けて特例が使えなくなった場合、贈与された事実1,000万円の贈与された事実自体は残ります。ですので通常の贈与税の計算に従って贈与税を納めなければなりません。1,000万円の贈与を受けた場合は177万円の贈与税を払わなければならず、この分までなかったことにしてもらえません。思わぬ税負担が生じてしまいますので、必ず贈与税の申告をすることを忘れないようにしてください。
失敗例その5:住宅購入資金の贈与は将来の相続トラブルの種になる
これは税金の話ではないのですが、住宅の購入資金の贈与というのは将来の相続トラブルの種になる可能性があります。生前贈与は遺産の前渡し、つまり特別受益という民法上の取り扱いがあります。
例えば、お母さんが1億円の財産を持っていて、娘さんに1,000万円の住宅購入資金を贈与したとします。すると財産は9,000万円に減ります。その後お母さんが亡くなり、遺産9,000万円に対して娘さんが「法定相続分通り4,500万円ずつ分けましょう」と言ったとします。これに対して息子さんが「生前贈与で先にもらった分をちゃんと加味してくれ。姉ちゃんが1,000万円先にもらっているんだから、4,500万円ずつ分けたら不公平じゃないか」と反論します。
この2人の主張はどちらが法律的に正しいのか。正解は息子さんの意見が正しいのです。この場合の遺産の分け方は、娘さんが先にもらっている1,000万円を遺産の前渡しとして考えなければなりません。娘さん4,000万円・息子さん5,000万円という分け方が正しくなります。この遺産の前渡しのことを特別受益と呼びます。
住宅購入資金の贈与は特別受益に該当します。住宅取得等資金贈与の非課税制度はあくまで税制上の優遇制度であり、この特別受益という民法上の取り扱いとは全くの別物です。ですので、贈与税をいくら非課税にしたところで、住宅購入資金が特別受益に該当するという点は変えることができません。将来の相続トラブルの種にならないよう、十分注意をしていきましょう。
税理士のワンポイントアドバイス:親子で共同購入するテクニック
ここでは、通常の方法とは異なる活用テクニックをご紹介します。通常の場合は「親が子供に金銭を贈与し、子供が家を購入する」という流れですが、別の方法として「親と子供が連名で家を購入し、親が子供に無償で貸してあげる」という方法があります。
これは、親と子供が一緒に家を買うということです。お金を出して物件を購入し、親が買った部分を子供にただで貸してあげます。この方法であれば、1,000万円に限らず、例えば2,000万円・3,000万円お金を出しても特段贈与税がかかることはありません。
ただし、親はその家の持分を所有することになりますので、親が亡くなったときはその持分に対して相続税がかかります。ですので完全に無税にしているわけではありません。
しかしながら、例えば3,000万円で家を買った場合、キャッシュは3,000万円分減りますが、家の評価額は固定資産税評価額で計算することが許されていますので非常に割安になります。もしかすると1,500万円程度で評価されるかもしれません。そして家は長く使っていけば当然価値が低減(減価)していきますので、その分相続発生時の評価額を低く抑えることが可能です。
さらに、親が子供に家を貸してあげるという行為は、原則として特別受益に当たらないという解釈もありますので、特別受益対策としても一つ有効な方法と考えられます。
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 円満相続ちゃんねる の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 円満相続ちゃんねるを応援しています!
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