親と相続の話をする方法|税理士が解説する成功事例3ステップ
親と相続の話はなぜ難しいのか。成功事例から学ぶ3ステップを解説します。
相続の事前準備がなぜ重要なのか
相続は、事前の準備がどれだけできているかによって、相続発生後の遺族の苦労が大きく変わります。「生前にもっと準備をしておけばよかった」「なんで何も書き残さずに亡くなってしまったんだ」——相続人となった方からこのようなお話を頻繁にお聞きします。
遺言書が残されているかどうか、資産状況が明確にされているかなど、準備状況によって相続にかかる時間と労力は格段に変わります。相続が発生してしまった後では、手続きなどで本人しか把握していないことが出てきても、故人に確認することはできません。
📌 ポイント
一番身近であろう親の相続について準備をしたくても、親御さんに相続の話を切り出すのは正直ちょっと気まずいものです。ただでさえ話しにくい「お金の話」と「親の死後の話」、この両方を合わせたものが相続の話なのです。
📝 このセクションのまとめ
- 準備の有無で相続後の遺族の負担が大きく変わる
- 遺言書・資産状況の明確化が特に重要
- 故人への確認は相続発生後にはできない
なぜ家族で相続の話をするのが難しいのか
親としては「遺言書なんて大げさだ」「うちは遺産で揉めるなんてことはありえない」と考えており、相続に関する話を振られると気分を害してしまうということが多いようです。
子どもの立場からすると、「死んだ後の話なんて縁起でもない」「遺産を多く欲しいからそういう話をするのかと言われないか」という不安もあります。
⚠️ 注意
このように話し合いをしなかった結果、多くの家庭で遺産分割が相続争いに発展し、兄弟姉妹の間で音信不通になるなどのトラブルが後を絶ちません。「うちはそんなにお金持ちじゃないし、争うほど遺産なんてないから大丈夫」とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、それは誤解です。
| 遺産額 | 相続争い全体に占める割合 |
|---|---|
| 2,350万円以下 | 約8割 |
| 2,350万円超 | 約2割 |
相続争いは資産家だけの問題ではなく、日本中どこの家庭でも起こりうることです。
📝 このセクションのまとめ
- 親は「大げさ」「うちは揉めない」と思いがち
- 子どもは「縁起でもない」「欲しいと思われないか」と不安を抱えがち
- 相続争いの約8割は遺産2,350万円以下の家庭で発生している
成功事例に共通する「3ステップ」の全体像
実際にお手伝いしてきた相続案件で、うまく親子の話し合いが進んだケースに共通しているのは、いきなり財産の話をしないことです。焦らずに時間をかけて話を進めているケースが多く、大きく3つのステップに分けられます。
- ステップ1:昔の思い出話を聞き、これからの話をする
- ステップ2:財産以外の相続の話をする
- ステップ3:財産の話をする
以下でステップごとに詳しく解説します。
ステップ1:昔の思い出話を聞き、これからの話をする
親子で相続の話し合いがうまく進んでいたのは、雑談からスタートしたというケースが大半でした。中でも多くのご家庭でスタートのきっかけとしてお話をされていたのが、昔の思い出話です。
- 家族旅行の楽しかった話
- 叱られた思い出
- 入学や卒業などの節目の話
- 家族で共有した喜怒哀楽のエピソード
あるお客様は、お子さんの中学受験の話をきっかけにうまく話を進めることができたそうです。ご自身のお子さんが中学受験を控えていた時、ご両親に「自分が中学受験の時はどうだったか」と当時の話を聞いてみたそうです。受験生の親という立場になった今、経験者であるご両親にお話を聞いてみたくなったのです。
ご両親も当時のことを思い出し、役に立つアドバイスを語ってくれました。このお客様はご両親がご自身の受験の時も今の自分と同じように苦悩していたことを知り、改めてご両親に感謝したそうです。ご両親も、子どもが人の親になり自分たちと同じ悩みを持っていることに頼もしさを感じたのと同時に、相談してくれたことに嬉しさがあったようです。
この受験の話をきっかけに自然と孫の将来の話につながっていき、孫のためにも遺言書を作ることになりました。
📌 ポイント:話しやすい空気を作るための話題例
- 仕事で行き詰まりを感じることはなかったか
- どうやって趣味を見つけたのか
- 転職・早期退職を考えているがどう思うか
- 自分と同じ年代以降、健康にどのように気をつけていたか
- 今から行っておきたい旅行先はあるか
📝 このセクションのまとめ
- いきなり財産の話をせず、思い出話や日常の雑談からスタートする
- 親が話しやすい空気を作ることが最初の一歩
- 共通の体験・共感できるエピソードが話のきっかけになる
ステップ2:財産以外の相続の話をする
ステップ1で親子で話をするベースができれば、ゆっくりと相続の話へ移行します。ただし、相続の話を始めるにしても、遺産分割の話題から入るべきではありません。どうしても年配の方には「お金の話=いやらしい話」という思いがあります。親からすれば、お金の話よりもっと先に話しておきたいことがあるはずです。
あるお客様は、お墓の話がご両親へ相続の話をするきっかけになったそうです。このお客様のお家のお墓は現住所から離れた山間部にあり、現在は過疎地となっています。お客様は「今後も先祖代々のお墓を守りたい、そのためにはお墓を引っ越しておくことが必要だ」と誠意を持って伝えた結果、ご両親は「全て任せるよ」と言ってくれたそうです。
ご両親は、子どもからお墓を守りたいという話を出してくれたことを喜び、「相続についても話をしていくべき時が来たんだな」と感じたようです。お墓の話から自然と財産の話へと発展し、スムーズな流れで遺産分割の話ができたということでした。
📌 ポイント:お金以外の相続にまつわる話題の例
- お墓の管理・引っ越し(改葬)について
- 仏壇・位牌の継承について
- 形見分けしたいものがあるか
- 葬儀の希望(規模・形式など)
- エンディングノートへの記入
📝 このセクションのまとめ
- お金の話の前に、お墓・葬儀など「お金以外の相続の話」から入る
- 誠意を持って伝えることで、親が「話すべき時が来た」と感じやすくなる
- 非金銭的な話題が自然と財産の話への橋渡しになる
ステップ3:財産の話をする(3つの重要ポイント)
相続の話も佳境に入り、いよいよ財産の話に移ります。財産の話を上手に進めた家族に共通するポイントは以下の3点です。
ポイント①:大事なものの保管場所を明確に教えてもらう
通帳や証券会社の口座情報など、大事なものを保管している場所を明確に教えてもらうことは非常に大切です。
⚠️ 注意:口座情報が不明な場合のリスク
- 依頼案件の実に約3割で通帳の保管場所や口座情報がわからず、財産の全容が見えずに困るという事案が発生している
- 銀行や証券の口座情報がわからないと、最悪の場合申告漏れになってしまうケースがある
- 誰にも知られずに作られた口座は財産調査でも発見されない可能性がある
- 税務署は個人の財産をある程度把握しており、相続税申告の内容と財産状況があまりにもかけ離れていると税務調査の対象となる可能性が高い
- 銀行口座や証券口座が申告から漏れていて、税務調査で追徴課税が発生するケースは実際によくある
ポイント②:税務署を共通の敵にして遺産分割の話をする
具体的にお金の話をするときは、税務署を共通の敵にして話を進めるとうまくいくケースが多いようです。
あるお客様のご両親は家族を大事にする考えが強く、仲が良いことに自信を持っていました。そのため、最初に遺産分割・遺言書の話をした時には「家族だから揉めるはずがない」と取り合ってくれませんでした。しかしお客様は、兄弟の配偶者が相続の話に入ってきたり兄弟に入れ知恵をしてきたりすると遺産分割トラブルもありえると心配していました。また、せっかく親が残してくれた財産を相続税としてたくさん取られることも納得いきませんでした。
そこでお客様は、以下の内容を誠意を持ってご両親に伝えたそうです。
- 父母が贅沢もせずに残してくれた財産を相続税として取られたくない、孫のために使いたい
- 普段兄弟同士はもめることはないが、お互い家庭があり配偶者がいる
- 万が一にも揉めたくない
- 円満に相続を終え、家族みんなで父母に感謝をしたい
ご両親も税務署という共通の敵がいることを認識し、その上で孫の将来のために自分たちの財産を残してあげたいと思い、作らないつもりでいた遺言書を作ることに賛同しました。
📌 ポイント
遺産分割を決めることは「自分の取り分を増やすこと」ではなく、「兄弟同士が今後も仲良く過ごしていきたいため」だと、しっかりと誠意を持って伝えることが重要です。遺産分割の話をする際に相続税や税務署を「敵」として話すことで、ご両親と同じ立場で話し合いがしやすくなります。
ポイント③:エンディングノートを活用する
大事なものの保管場所の話をするときに最適なツールがエンディングノートです。通帳・口座情報・保険証券などの保管場所を一元管理するツールとして、相続準備の入り口に活用できます。
📝 このセクションのまとめ
- 通帳・口座情報の保管場所を明確に把握しておく(約3割の案件で不明なケースが発生)
- 口座情報の漏れは申告漏れ・税務調査・追徴課税につながる
- 「税務署という共通の敵」を意識させることで親子が同じ立場になれる
- 遺産分割は「自分の取り分のため」ではなく「家族の仲を守るため」と誠意を持って伝える
- エンディングノートを保管場所の整理ツールとして活用する
相続の話をするタイミング|認知症リスクと成功事例
相続の話をするにはもう一つ重要な問題があります。それはタイミングの問題です。いつ、どのタイミングで相続の話を切り出すか——これは多くの方が悩むポイントです。
相続対策の重要性を理解している方でも、「まだまだ自分は元気だから」と後回しにしがちです。しかし、相続の話は少しでも早くスタートするべきです。なぜなら、予想外のタイミングでご両親が亡くなってしまったり、寝たきりになってしまうということがよくあるからです。
⚠️ 注意:認知症が発症すると全てが手遅れになる
通常の傷病以上にタイミングがつかめず問題になるのが、認知症の発症です。親御さんが認知症になると、以下の法律行為がほとんどできなくなります。
- 遺言書の作成
- 生命保険の加入
- 不動産の売却
- 財産の運用
また、医師による認知症の診断が下りないうちに遺言書を作成したとしても、家族や介護施設の看護師の証言があればその遺言書が無効になる可能性もあります。認知症が発症してしまうと、相続対策は全てが手遅れになってしまうのです。
では、うまく相続の話を進めたケースではどのようなタイミングで話を切り出したのでしょうか。多くの場合、以下のようなタイミングが相続の話をしやすいようです。
| タイミングの種類 | 具体例 |
|---|---|
| 家族が集まる時 | お正月・お盆・法事・誕生日・記念日 |
| 環境が変わる時 | 退職・引っ越し・子どもの独立・孫の誕生 |
| 旅行・お祝いの席 | 還暦・古希・喜寿などの長寿祝い旅行 |
| 健康に関する出来事 | 健康診断・入院・知人の訃報 |
実際に、家族旅行がきっかけで遺言書作成に至ったお客様の事例をご紹介します。このお客様はご両親と相続の大まかな方向性の話はしていたのですが、遺言書などの正式な書類は作られていませんでした。
そんな中、ご両親の長寿のお祝いにお孫さんを連れて家族全員で旅行に行くことになりました。旅行の日にお酒を酌み交わしながらお互いに本音で話をしたところ、「遺産分割を決めたら自分が大事にされなくなるのではないか」という不安を親御さんが持っていることがわかりました。もちろんこのお客様にはそんなつもりは毛頭なく、「遺言書は兄弟が揉めないために作ってほしいと思っているだけだ」という気持ちを伝えました。
旅行の夜にお互いの気持ちを知ることができ、遺言書作成に向かって動き出すことができました。旅行から戻ってこのお客様はご両親と一緒に遺言書作成の依頼をしていらっしゃいました。遺言書では、具体的な遺産分割の内容はもちろん、なぜこの遺産分割にしたのかという親御さんの思いも文書にして残し、非常にご満足いただけたということでした。
📝 このセクションのまとめ
- 相続の話は「まだ早い」と後回しにせず、できるだけ早くスタートする
- 認知症が発症すると遺言書作成・保険加入・不動産売却など全ての法律行為が困難になる
- 家族が集まる時・環境が変わる時・旅行・長寿祝いなどがタイミングとして有効
- 遺言書には遺産分割の内容だけでなく「なぜそうしたか」という思いも残せる
親と相続の話をすることは、親の人生を教わること
親と相続の話をしにくいとおっしゃる方は非常に多いです。今までお金の話をする機会が少なく、相続の話がしにくいのも当然かもしれません。しかし相続の話は避けて通れません。
相続のお手伝いをしていると、「もっと親のことを知りたかった」というお声が必ず出てきます。もう親から教わることはないと思っていても、必ず教わることが残っているものです。
📌 ポイント
覚悟を決めて「親の人生をまるごと教えてもらう」というくらいの気持ちで、財産のことだけでなく人生のことをたくさん聞いてみてください。そして相続は自分もいずれ行く道です。今の親の姿は将来の自分の姿であり、30年後の自分なのです。この大事なお話の機会を逃さず、「聞いておけばよかった」と後悔することがないよう、今こそ親と向き合ってお話いただければと思います。
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル VSG相続専門税理士ch の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。 本サイトは VSG相続専門税理士chを応援しています!
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