iDeCo受取時の5年ルールが10年に延長!2026年税制改正で出口戦略はどう変わる?
iDeCoの5年ルールが2026年から10年に延長。退職金との受取タイミング戦略を今すぐ見直そう。
今回の大改悪とは何か?背景を整理する
税制改正で財務省の罠が発動しました。iDeCoの受け取り時に大きく関わる「5年ルール」が10年に延長され、実質的な大増税となります。
少し前にiDeCoの掛金が大幅増額されるという良いニュースをお伝えしたばかりですが、今回はその直後に出てきた大改悪の話です。これだけ見ると情緒不安定に見えるかもしれませんが、理由があります。前回の掛金大増額のニュースは与党の税制改正大綱の発表前の話で、今回はその税制改正大綱の中で、ほぼ予想されていなかったネガティブサプライズとして出てきた情報です。
⚠️ 注意
本記事の情報は2024年12月24日時点の税制改正大綱に基づいています。施行は2026年(令和8年)からの予定です。
📝 このセクションのまとめ
- iDeCoの掛金増額(良いニュース)と5年ルール延長(悪いニュース)は別々のタイミングで発表された
- 5年ルールの10年延長は、税制改正大綱で出てきたネガティブサプライズ
- 施行は2026年(令和8年)から
iDeCoの基本的な仕組みとメリット・デメリット
まずiDeCoの基本的な流れとメリットを整理します。
- 毎月掛金を積み立てる:積立NISAと同様の仕組みで、掛金は小規模企業共済等掛金控除として所得から差し引かれ、所得税・住民税が軽減されます。税率は人によって15%〜55%の幅があります。
- 投資信託ファンドで運用する:運用中の利益には税金がかかりません。
- 60歳以降に受け取る:一時金(一括)または年金(5年・10年・20年などの分割)で受け取れます。一時金は退職金扱いで税金が非常に安くなります。分割の場合は公的年金と同じ扱いで税優遇があります。
一方、デメリットも存在します。
- 60歳まで引き出せない:加入できるのは20歳〜64歳、受け取り開始は60歳〜75歳のため、若い方は長期間待つ必要があります。
- 手数料がかかる:どんなに安いところでも月々171円の手数料が発生します。
- 働き方によって掛金上限が異なる:月2万円〜6万1,800円と職種によって差があり、制度がやや複雑です。
📝 このセクションのまとめ
- iDeCoは積立時の所得控除・運用益非課税・受取時の退職金優遇の3つが主なメリット
- 60歳まで引き出せない・手数料・掛金上限の差がデメリット
- 受取時は一時金(退職金扱い)の方が税金が安いケースが多く、多くの人が一時金を選ぶ
2026年からのiDeCo掛金上限の改正内容
今回の改正では、掛金上限も大幅に見直されます。職種別の変更内容をまとめると以下のとおりです。
| 対象者 | 改正前の上限(月額) | 改正後の上限(月額) |
|---|---|---|
| 自営業・フリーランス | 6万8,000円 | 7万5,000円(7,000円アップ) |
| DBや企業型DCがある大企業の会社員 | 月2万円(または企業掛金との合算上限) | 企業型DC掛金を引いた額(月2万円の下限撤廃でシンプル化) |
| DBや企業型DCがない中小企業の会社員 | 2万3,000円 | 6万2,000円 |
| 専業主婦(夫) | 2万3,000円 | 変更なし(現状維持) |
特に影響が大きいのはDBや企業型DCがない中小企業の会社員です。月額が2万3,000円から6万2,000円へと大幅に引き上げられます。これによる節税効果の変化を見てみましょう。
| 項目 | 改正前(月2万3,000円) | 改正後(月6万2,000円) |
|---|---|---|
| 年間拠出金 | 27万6,000円 | 74万4,000円 |
| 年間減税額(税率30%の場合) | 約8万2,800円 | 約22万3,200円 |
| 減税効果の倍率 | 約2.7倍に拡大 | |
📌 ポイント
iDeCoの減税効果は株価の上下とは関係なく確実に発生します。掛金を拠出した分だけ所得が減り、税金が安くなるのがiDeCoの最大の強みです。
📝 このセクションのまとめ
- 中小企業の会社員はiDeCo掛金上限が月2万3,000円→6万2,000円に大幅アップ
- 税率30%の人なら年間減税額が約8万円→約22万円と2.7倍に拡大
- 自営業・フリーランスも月6万8,000円→7万5,000円にアップ
退職金の税金計算の仕組み(基礎知識)
iDeCoの出口戦略を理解するには、退職金の税金計算の仕組みを知っておく必要があります。
給与所得は他の所得と合算して総合課税となり、所得税+住民税で15%〜55%の税率がかかります。一方、退職金は「退職金だけで計算する」分離課税が適用されます。
退職所得控除の計算方法は以下のとおりです。
| 勤務期間 | 退職所得控除額の計算式 |
|---|---|
| 20年以下 | 勤務年数 × 40万円 |
| 20年超 | 800万円 +(勤務年数 − 20年)× 70万円 |
そして退職所得の計算式は次のとおりです。
📌 退職所得の計算式
(退職金 − 退職所得控除額)× 1/2 = 退職所得
退職所得に対して所得税+住民税(15%〜55%)を掛けて納税額を算出します。控除後にさらに1/2をかけるため、通常の給与所得と比べて税負担が大幅に軽くなります。
具体例で確認してみましょう。35年勤務・退職金2,200万円の場合の計算です。
| 計算ステップ | 金額 |
|---|---|
| 退職金 | 2,200万円 |
| 退職所得控除(20年×40万+15年×70万) | 1,850万円 |
| 控除後の金額(2,200万−1,850万) | 350万円 |
| 退職所得(350万×1/2) | 175万円 |
| 納税額 | 約26万円(実質税率約1%) |
2,200万円の退職金に対して税金はわずか約26万円。これほど優遇されているからこそ、iDeCoの受け取りも一時金(退職金扱い)を選ぶ方が多いのです。
📝 このセクションのまとめ
- 退職金は分離課税で、控除後にさらに1/2をかけるため税負担が非常に軽い
- 35年勤務・退職金2,200万円でも納税額は約26万円(実質税率約1%)
- iDeCoの一時金受取も退職金と同じ退職所得課税が適用される
退職金とiDeCoを同時受取するとどうなる?19年ルールと5年ルールの解説
問題は、会社の退職金とiDeCoを両方受け取る場合です。退職所得控除は原則として重複して使えません。
具体例で見てみましょう。会社員で60歳まで勤務(35年)・退職金2,200万円、iDeCo20年加入・600万円積立のケースです(個人事業主の方は「退職金」を「小規模企業共済」と読み替えてください。税務上は同じ扱いです)。
| 受取パターン | 納税額 |
|---|---|
| 退職金とiDeCoを60歳に同時受取 | 100万円 |
| 退職金を60歳に受取、iDeCoを65歳(5年後)に受取 | 57万円 |
| iDeCoを60歳に受取、退職金を65歳(5年後)に受取 | 0円(改正前) |
なぜこのような差が生まれるのか、2つのルールを理解する必要があります。
【19年ルール】:確定拠出年金・企業型DC・iDeCoの受け取りに関するルールです。先に退職金をもらった後でiDeCoをもらう場合、退職所得控除の二重利用を防止するため、19年以内は重複期間の控除が使えません。20年以上開ければOKです。
【5年ルール(4年ルールとも呼ばれる)】:こちらはiDeCoに限らず、退職金を2回もらう場合全般に適用されるルールです。先にiDeCoをもらった後で退職金をもらう場合、5年開ければ控除の二重利用がOKとされていました。iDeCoは自分で受取タイミングを選べますが、退職金は基本的に退職時にしかもらえないため、「iDeCo先・退職金後」のパターンでは柔軟な操作が難しいことから、比較的短い5年での緩和が認められていました。
📌 5年ルール活用の仕組み(改正前)
iDeCoを60歳で受取 → 退職金を65歳で受取(5年後)とすれば、iDeCoの20年分の控除と退職金の40年分の控除をそれぞれ別々に使えるため、納税額ゼロが実現できていました。
📝 このセクションのまとめ
- 退職金とiDeCoを同時受取すると控除が重複して使えず、納税額が増える
- 19年ルール:退職金を先にもらった後、iDeCoは20年以上開けないと控除が重複NG
- 5年ルール:iDeCoを先にもらった後、退職金を5年後に受け取れば控除を別々に使えた(改正前)
2026年からの大改悪:5年ルールが10年ルールに延長
ここが今回の最大の問題点です。令和8年(2026年)から、確定拠出年金・企業型DC・iDeCoに限っては、この5年ルールが10年ルールに変更されます。
先ほどの具体例(iDeCoを60歳受取・退職金を65歳受取)で影響を見てみましょう。
| 受取パターン | 改正前(5年ルール) | 改正後(10年ルール) |
|---|---|---|
| iDeCoを60歳受取、退職金を65歳(5年後)受取 | 納税額0円 | 納税額50万円 |
| iDeCoを60歳受取、退職金を70歳(10年後)受取 | 納税額0円 | 納税額0円(維持) |
10年ルールに変わった後は、iDeCoを60歳で受け取った場合、会社の退職金を受け取る際に10年以内だと控除の重複が認められません。
例えば60歳でiDeCoの一時金を受け取り、65歳で退職金をもらうと、iDeCoの20年分の控除はすでに使用済みのため、退職金側では「iDeCo加入前の15年分+iDeCo受取後の5年分=20年分」しか控除が使えなくなり、納税が発生してしまいます。
⚠️ 注意
2026年以降は、iDeCoを60歳で受け取った場合、会社の退職金を受け取るまで最低10年(70歳まで)待たないと退職所得控除をフル活用できません。5年待てばOKだった従来の戦略は使えなくなります。
また、税制改正大綱では、iDeCoを含めた年金関係の課税のあり方についても言及されています。そもそも一時金受取か分割年金受取かで税金が変わるのはおかしいのではないかという問題意識から、「各種的年金の共通の非課税拠出枠を作って管理する」「個人退職年金勘定を創設する」といったアイデアが示されています。つまり、会社の退職金の枠と個人の年金の枠を別々に管理する方向性です。ただし、具体的にどのような形になるかはまだ明らかではありません。
📌 財務省と厚生労働省の対立構造
厚生労働省はiDeCoを積極的に推進していますが、財務省は「積立時に減税しているのだから、受取時には課税するのが原則」という立場で、退職金課税・年金課税の優遇見直しにブレーキをかけるどころか強化しようとしています。この対立が今回の改悪につながっています。
📝 このセクションのまとめ
- 2026年からiDeCo・企業型DC・確定拠出年金に限り、5年ルールが10年ルールに延長
- iDeCoを60歳受取・退職金を65歳受取というこれまでの節税パターンが使えなくなる
- 控除をフル活用するには、iDeCo受取から10年後(70歳)まで退職金受取を延ばす必要がある
- 将来的に「個人退職年金勘定」創設などの制度見直しも検討中
iDeCoの減税効果がある人・少ない人
今回の改悪を踏まえ、iDeCoの恩恵を受けやすい人・受けにくい人を整理しておきましょう。
| 区分 | 対象者の例 | iDeCo減税効果 |
|---|---|---|
| 減税効果が大きい人 | 退職金制度がない・少ない中小企業の会社員、個人事業主 | 大きい:退職所得控除の余裕があり、受取時の税負担が軽い |
| 減税効果が小さい人 | 退職金が多い大企業の会社員、小規模企業共済に多額加入している人、退職を10年ずらせない人 | 限定的:控除が退職金で使い切られ、iDeCo分の優遇が薄れる |
ただし、減税効果が小さい人でも、一時金受取時の1/2課税という優遇は残りますので、全くメリットがないわけではありません。
📝 このセクションのまとめ
- 中小企業の会社員・個人事業主はiDeCoの減税効果が大きい
- 退職金が多い大企業の会社員・小規模企業共済に多額加入している人は減税効果が限定的
- それでも一時金受取の1/2課税優遇は残るため、ゼロではない
2026年以降のiDeCo出口戦略:今後どうすればいいか
では、2026年以降にiDeCoをやっている私たちはどう対応すればよいのでしょうか。主な選択肢を整理します。
【戦略①】退職金の受取を70歳まで延ばす
iDeCoを60歳で受け取り、会社の退職金の受取を70歳まで(10年後)延ばすことで、退職所得控除をフル活用できます。ただし、これには70歳まで働き続ける、または退職金の受取を遅らせられる環境が必要です。
【戦略②】一時金と年金の併用
70歳まで退職を延ばすことが難しい場合は、一時金(退職金扱い・1/2課税)と分割年金(公的年金等控除適用)を組み合わせて受け取る方法も有効です。現役時代に高い税率(例:30%)で節税し、年金受取時に低い税率(例:15%)で課税されるなら、差額分の節税効果は残ります。
【戦略③】年金受取に切り替える
年金額がそれほど多くない方は、iDeCoを5年・10年・20年の分割年金として受け取る方法も検討に値します。退職所得控除の問題を回避しつつ、公的年金等控除の恩恵を受けられます。
【戦略④】新ルールを待つ
財務省が検討している「個人退職年金勘定」のような新しい仕組みが導入されれば、現在のような複雑な調整が不要になる可能性があります。ただし、いつどのような形で実現するかは現時点では全く不明です。
📌 出口戦略の選択フロー
- 70歳まで働ける・退職金を遅らせられる → 戦略①(70歳受取)が最も有利
- 65歳前後で退職予定 → 戦略②(一時金+年金の併用)で税負担を分散
- 退職金が少ない・iDeCoの積立額が小さい → 戦略③(分割年金受取)も選択肢
- 制度改正の行方を見守りたい → 戦略④(新ルール待ち)
⚠️ 注意
iDeCoに関しては今後も新しい仕組みが出てくる可能性が高い状況です。現時点の税制だけで長期的な戦略を固め過ぎず、最新情報を継続的にチェックすることが重要です。
📝 このセクションのまとめ
- 2026年以降は退職金受取を70歳まで延ばすのが最も控除をフル活用できる方法
- それが難しい場合は一時金と分割年金の併用で税負担を分散させる
- 年金額が少ない方は分割年金受取のみという選択肢もある
- 「個人退職年金勘定」など新制度の動向も注視が必要
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル オタク会計士ch【山田真哉】 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは オタク会計士ch【山田真哉】を応援しています!
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