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iDeCo改正の落とし穴を税理士が解説|掛金上限引上げと退職所得控除改悪の影響

iDeCo改正の落とし穴を税理士が解説|掛金上限引上げと退職所得控除改悪の影響
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iDeCoの掛金上限引上げは節税メリット増加の朗報だが、退職所得控除の改悪が同時に進行。個人事業主・フリーランスが知っておくべき対策を徹底解説します。

今日の結論:個人事業主はそこまで慌てなくていい理由

iDeCoの出口課税の落とし穴と言われているものは、実は個人事業主の方は会社員の方ほどあまり帯びなくていいというのが結論です。自営業なので、正直いろいろとコントロールが可能だからです。よほどiDeCoや小規模企業共済の掛金が大きい方以外は、気にせんでもええよというのが今日の結論です。

ただし、令和7年度税制改正大綱に盛り込まれているiDeCoの掛金増額と合わせて、ほぼほぼ確定というところですが、出口側の退職所得控除改悪も同時に進んでいます。現時点では最終確定ではありませんが、個人事業主・フリーランスへの影響について解説します。

📌 今回の記事で解説すること

  • iDeCoと小規模企業共済、どちらがおすすめか・どんな違いがあるか
  • iDeCo掛金増額(プラスの改正)の内容と節税効果
  • 出口課税強化(マイナスの改正)の内容と個人事業主目線での影響
  • 個人事業主・フリーランスが取るべき具体的対策

📝 このセクションのまとめ

  • 個人事業主は受け取りタイミングを自由にコントロールできるため、会社員ほど深刻ではない
  • ただしiDeCo・小規模企業共済両方フルでかけている人は要注意

iDeCoと小規模企業共済の基本比較

iDeCoも小規模企業共済も、どちらも退職金制度です。将来もらうべき退職金を増やすための制度として位置付けられています。

項目iDeCo小規模企業共済
対象者20歳以上60歳未満の個人事業主・会社員など個人事業主・中小企業役員
掛金上限(月額)個人事業主:6万8,000円(年間81万6,000円)7万円(年間84万円)
掛金の税制優遇所得控除(全額)所得控除(全額)
運用益非課税非課税
一括受取時の課税退職所得退職所得
分割受取時の課税雑所得(公的年金等)雑所得(公的年金等)
途中解約不可可能(ただし元本割れリスクあり)

iDeCoは自ら投資商品を選ぶ確定拠出年金で、スイッチング(商品の変更)が可能です。一方、小規模企業共済の運用対象は大部分が国債で、利回りはそれほど高くありませんが安全運用されています。

両者に共通する大きなメリットとして、破産した時に差し押さえされないという点があります。何かがあったとしても、この財産は手元に残すことができます。

iDeCoのメリット・デメリット

  • メリット①:障害給付・死亡保険がある
  • メリット②:スイッチング(投資商品の変更)が可能
  • メリット③:破産時に差し押さえされない
  • デメリット①:60歳まで引き出しができない
  • デメリット②:掛金の停止もできない
  • デメリット③:投資要素が強く、運用失敗のリスクがある
  • デメリット④:維持コストとして月数百円かかる
  • デメリット⑤:特別法人税が凍結中(廃止ではないため復活の可能性がゼロではない)

小規模企業共済のメリット・デメリット

  • メリット①:廃業・高齢化した時以外にも死亡時に給付がある
  • メリット②:低金利(1.5%程度)の貸し付け機能がある(積み立てた分を担保に借入可能)
  • メリット③:破産時に差し押さえされない
  • デメリット①:運用益が小さめ
  • デメリット②:掛金納付が15年未満だと受給権がない
  • デメリット③:廃業等の事情なく20年以内に任意解約すると元本割れする

⚠️ 注意

小規模企業共済に加入する場合は、必ず15年以上かける覚悟で始めてください。15年未満では受給権がなく、20年以内の任意解約では元本割れします。

どちらを優先すべきか?

優先順位をつけるなら、小規模企業共済を先に、そしてiDeCoを後にというのがおすすめです。iDeCoはハイリスク・ハイリターンな商品を選んで失敗するリスクがある一方、小規模企業共済は安定運用で確実に積み立てられるからです。余力があればiDeCoもダブルでかけるというスタンスが良いでしょう。

小規模企業共済のシミュレーション事例

45歳から65歳までの20年間、月額マックス7万円(年間84万円、総額1,680万円)を積み立てた場合、風所得500万円の方でのシミュレーションは以下の通りです。

項目金額・数値
年間節税効果(所得500万円の場合)約26万円
共済金A(廃業・65歳以上解約)約1,959万8,600円/実質利回り約167%
共済金B(低度障害・低収入解約等)約1,869万7,000円/実質利回り約160%

地味ではありますが、ほぼ確実にこれだけの利回りを手に入れられる可能性があります。また一括ではなく分割で受け取ることも可能で、分割受け取りをすると残額がさらに運用されるため、受け取り総額がさらに増えるというメリットもあります。

📝 このセクションのまとめ

  • iDeCoも小規模企業共済も退職金を増やすための制度で、掛金は全額所得控除
  • 安定運用・確実な積み立てを重視するなら小規模企業共済を優先
  • 余力があればiDeCoも併用するのがベスト
  • 小規模企業共済は15年以上・20年以上かける前提で加入すること

令和7年度改正:iDeCo掛金上限の大幅増額(プラスの改正)

令和7年度税制改正では、iDeCoの掛金上限が大幅に増額されることがほぼほぼ確定しています。個人事業主と会社員それぞれの変更内容を見ていきましょう。

区分改正前(月額)改正後(月額)変化
個人事業主・自営業者6万8,000円7万5,000円+7,000円
会社員(企業年金なし等)2万3,000円6万2,000円(カテゴリによる)大幅アップ

個人事業主の増額幅は月7,000円と会社員ほど大きくはありませんが、それでもありがたい改正です。従来マックスの月6万8,000円をかけていた方も、月7万5,000円まで掛けられるようになります。

改正後の年間節税効果(個人事業主・満額拠出の場合)

適用税率改正前(月6万8,000円)の年間節税効果改正後(月7万5,000円)の年間節税効果
最低税率 15%約12万2,400円約13万5,000円
税率 20%約16万円台約18万円台
税率 30%約24万円台約27万円台
最高税率 43%約35万円約38万7,000円(約40万円近く)

※復興特別所得税は含んでいません。税率が高ければ高いほど節税効果は大きくなります。また長期運用すればするほど、よほどの投資損失がなければメリットは大きくなります。

iDeCoの3つの税制優遇

  1. 拠出時:掛金が全額所得控除となり、所得税・住民税が節税できる
  2. 運用時:運用益が非課税(通常の株式投資では利確時に約20%の税負担がかかる)
  3. 受給時:一時金は退職所得、分割は雑所得(公的年金等)として税制優遇を受けられる

📌 ポイント

iDeCoは入り口(掛金支払い時)で節税できますが、出口(解約・受け取り時)に税金がポーンとかかる場合があります。この「出口の落とし穴」が今回の改悪の核心です。

📝 このセクションのまとめ

  • 個人事業主のiDeCo掛金上限は月6万8,000円→月7万5,000円に増額
  • 税率43%の方なら年間約40万円近くの節税効果
  • iDeCoには拠出・運用・受給の3段階で税制優遇がある

退職所得控除の仕組みと3つの大きなメリット

個人事業主の場合、iDeCoと小規模企業共済のやめ方・受け取り方を考えなければなりません。会社員にとっての退職金と同じ位置付けに、個人事業主にとっての小規模企業共済があるというイメージです。

退職金(退職所得)の税金は、以下の計算式で決まります。

📌 退職所得の計算式

退職所得 =(退職金の額 ー 退職所得控除額)× 1/2

この退職所得に税率をかけて税額を計算します(最低15%〜最高55%の分離課税)。

退職所得控除額の計算

勤続(運営)年数退職所得控除額
20年以下の部分1年につき 40万円
20年超の部分1年につき 70万円

長く運営(勤続)すればするほど控除額が大きくなります。例えば40年運営した場合の退職所得控除額は、20年×40万円+20年×70万円=2,200万円となります。

退職所得の3つの大きなメリットをまとめると以下の通りです。

  • ①退職所得控除が非常に大きい(勤続年数に応じて最大数千万円)
  • ②1/2課税(控除後の金額をさらに半分にしてから税率をかける)
  • ③分離課税(他の所得に影響されず、低い税率を適用できる)

⚠️ 注意

退職所得の受給に関する申告書を作成・提出しなければ、一律20%の課税になります。必ず申告書を作成してください。

📝 このセクションのまとめ

  • 退職所得控除は勤続(運営)年数に応じて最大数千万円
  • 控除後の金額をさらに1/2してから税率をかける
  • 分離課税なので他の所得に影響されない
  • 申告書の提出を忘れずに

具体的な事例で見る:iDeCoと小規模企業共済の受け取り時の税負担

40年間個人商店を運営し、65歳で廃業するというケースで税額計算を見ていきましょう。

【事例1】小規模企業共済のみ:共済金2,000万円

40年運営(25歳〜65歳)で廃業し、小規模企業共済の解約共済金が2,000万円あった場合。

退職所得控除額は2,200万円(20年×40万円+20年×70万円)となり、受取額2,000万円を完全に控除しきれます。

所得ゼロ、課税なし。税負担ゼロ。

【事例2】小規模企業共済2,000万円+iDeCo500万円を同時受け取り

同じ廃業時に、iDeCoの解約給付金500万円も同時に受け取った場合。

項目金額
収入合計2,500万円
退職所得控除額2,200万円
控除後の超過額300万円
退職所得(1/2)150万円
税負担(所得税+住民税)約23万円

共済金単独であれば税負担ゼロだったのに、iDeCoが加わって退職所得控除を超えてしまうと、超えた部分の1/2が課税対象になります。

【事例3】受け取りを別の年に分散したらどうなる?

「共済金とiDeCoを別の年に受け取れば節税できるのでは?」と思われるかもしれませんが、そんなに甘くはありません。運営期間とiDeCoをかけていた期間が重複している場合、その重複部分を除外して退職所得控除を計算するというルールがあります。

例えば40年間お店を運営し、39年間iDeCoをかけていた場合、共済金受け取り時の退職所得控除は40年から39年を差し引いた1年分しか使えなくなります。

📌 救済措置(特例)

ただし、あまりにも不利になる場合の救済措置があります。iDeCo受け取り時に退職所得控除に大きな余りがある場合、その余り額に応じて重複期間を短く計算できる特例があります。具体的には、iDeCo受取額500万円を退職所得控除額(40年分)で割ると約12年分に相当するため、39年重複ではなく12年重複として計算できます。

この特例を使った場合の税負担は約21万円(事例2の23万円より若干低い)となります。ただし、ケースバイケースで税負担が増えることもあります。

⚠️ 注意

iDeCoの残高が多くて退職所得控除を使い切ってしまった場合、共済金受け取り時に退職所得控除がほとんど残らず、税負担が大きく跳ね上がることがあります。受け取り順序と残高のバランスには十分注意してください。

📝 このセクションのまとめ

  • 小規模企業共済単独なら退職所得控除に収まり税負担ゼロになるケースも多い
  • iDeCoが加わって控除額を超えると、超過分の1/2が課税対象になる
  • 受け取りを別の年に分散しても、運営期間と重複する部分は控除が削られる
  • 救済特例はあるが、ケースバイケースで税負担が増えることもある

退職所得控除をフル活用する2つの方法と令和7年改正の影響

退職所得控除の調整が入らず、控除をフル活用できる方法が2つあります。

パターン受け取り順序必要な間隔改正後の間隔
パターンA小規模企業共済を先に受け取り → iDeCoを後で受け取り20年以上開ける変更なし(20年以上のまま)
パターンBiDeCoを先に受け取り → 共済金を後で受け取り5年以上開ける10年以上に延長(改悪)

令和7年度税制改正大綱が国会を通れば、令和8年(2026年)1月1日からパターンBの5年ルールが10年ルールに変わります。

【事例4】パターンBを活用した場合(改正前の5年ルール)

iDeCoを60歳で先に受け取り(35年分の退職所得控除を使用)、その5年後の65歳で廃業して共済金2,000万円を受け取るケース。

  • iDeCo受け取り時:35年分の退職所得控除を使用 → 所得ゼロ、税負担ゼロ
  • 共済金受け取り時:5年以上開けているため退職所得控除をフルで使用 → 税負担ゼロ
  • 合計税負担:ゼロ

受け取りタイミングをうまくずらすことで、税負担を完全にゼロにできる画期的な節税策です。しかし、この5年ルールが改正によって10年ルールになります。

個人事業主なら対処できる理由

会社員の場合、退職金の受け取りタイミングは会社都合で決まるため自由にコントロールできません。しかし個人事業主であれば、以下のような対応が可能です。

パターンA(20年以上開ける)の活用例:
55歳で廃業して共済金を受け取り、その後もiDeCoを75歳まで運用してから受け取る。廃業後もiDeCoはMAX75歳まで運用継続できます。さらに廃業時の給付金は老齢給付よりも大きくなるため有利です。

パターンB(10年以上開ける)の活用例:
60歳でiDeCoを解約して受け取り、その後10年間事業を続けて70歳で廃業・共済金を受け取る。体力が続く限りという前提はありますが、個人事業主なら何とでもなります。ただしこのケースでは、iDeCoを60歳で解約することで運用益が減るというデメリットがあります。

📌 ポイント:個人事業主は受け取りタイミングを自分でコントロールできる

会社員の退職金と違い、小規模企業共済の解約共済金は自分でコントロールできます。廃業のタイミング、iDeCoの受け取りタイミングを戦略的に設計できるのが個人事業主の最大の強みです。

📝 このセクションのまとめ

  • 退職所得控除をフル活用するには、受け取り順序と間隔が重要
  • 「iDeCoを先→共済金を後」のパターンは、5年ルールが10年ルールに改悪
  • 「共済金を先→iDeCoを後」の20年ルールは変更なし
  • 個人事業主は廃業・解約タイミングを自由に設計できるため、会社員より対処しやすい

分割受け取りの活用と総合的な出口戦略

一時金(一括)受け取り以外に、分割受け取りという選択肢もあります。分割受け取りをすると雑所得(公的年金等)という扱いになります。

公的年金等控除の活用

公的年金等には最低60万円〜110万円の公的年金等控除があります。将来受け取る国民年金などと、小規模企業共済・iDeCoの分割受け取り金を合算して、この控除額に収まっているかどうかを確認することがポイントになります。

一時金と分割の併用戦略

  1. 60歳または65歳時点で退職所得控除額を試算する
  2. 退職所得控除の範囲内に収まる金額を一時金(退職所得)として受け取る
  3. 残額は分割払いで年金扱い(雑所得)として受け取る
  4. 国民年金の繰り下げ給付なども組み合わせてシミュレーションする

小規模企業共済の共済金ABはそれぞれ10年分割・15年分割が選べます。分割で受け取ると残額がさらに運用されるため、受け取り総額がさらに増えるというメリットもあります。

📌 死亡時はどうなる?

受け取る前に亡くなってしまった場合でも、iDeCoや小規模企業共済の積立金はみなし相続財産として扱われます。相続人1人あたり500万円の非課税枠もあるため、無駄になることはありません。

現時点では将来のことは何も分からないため、シミュレーションが難しい部分もあります。ただし、将来の税制改正で状況が変わる可能性もあることを念頭に置きながら、色々と作戦を立てておくことが重要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 分割受け取りは雑所得(公的年金等)として扱われ、公的年金等控除が使える
  • 一時金と分割の併用で、退職所得控除と公的年金等控除を両方活用できる
  • 国民年金の繰り下げ給付との組み合わせも検討する価値がある
  • 死亡時はみなし相続財産として扱われ、相続人1人あたり500万円の非課税枠がある

まとめ:個人事業主・フリーランスが今すぐ取るべき対策

今回の令和7年度税制改正で影響が出る方は非常に少ないと思われますが、iDeCoと小規模企業共済の両方をフルでマックスでかけている方は、退職所得控除をはみ出て課税されるケースもあります。対策をしておくべきです。

個人事業主・フリーランスが取るべき対策チェックリスト

  • 小規模企業共済とiDeCoの現在の積立残高を把握する
  • 将来の退職所得控除額を試算する(運営年数×控除額)
  • 両方の受け取り見込み額が退職所得控除を超えるかどうかを確認する
  • 超える場合は受け取り順序・タイミングの戦略を立てる(パターンAまたはB)
  • 一時金と分割受け取りの併用も検討する
  • 改正後(令和8年1月1日以降)の10年ルールを前提に計画を見直す

📌 最終まとめ:個人事業主はコントロールできる強みを活かせ

会社員と違い、個人事業主は廃業のタイミングもiDeCoの受け取りタイミングも自分で決められます。令和7年度改正で5年ルールが10年ルールに変わっても、事業を10年長く続けるか、あるいは20年ルールのパターンAを選ぶかなど、柔軟に対応できます。iDeCoと小規模企業共済の両方をフルでかけている方は早めに試算・相談することをおすすめします。

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!

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