節税対策

退職所得控除の改正でiDeCoはやめるべき?税理士が解説する損しない受け取り方

退職所得控除の改正でiDeCoはやめるべき?税理士が解説する損しない受け取り方
e_zeirishi

退職所得控除の縮小改正でiDeCoは損になる?受け取り方次第で税負担は大きく変わります。

iDeCoとは何か?NISAとの違いと基本的な特徴

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、よく話題になるNISAとは全く異なるものです。自営業者や学生は国民年金、会社員や会社経営者は厚生年金に加入していますが、iDeCoはそれらに上乗せする年金のオプションのようなものです。自ら投資する商品を選んで運用し、将来の年金の上乗せに充てていく仕組みです。

ただし、iDeCoには注意すべきデメリットもあります。

  • 毎月数百円のコストがかかる
  • 基本的に一度始めるとやめられない
  • 運用商品の選択を誤ると投資成績がマイナスになることもある

こうした理由から「やらない方がいいのでは?」と思う方も多いですが、所得水準が高い方強制的に年金を積み立てたい方にとっては、iDeCoを活用した方が良いケースがあります。

📝 このセクションのまとめ

  • iDeCoはNISAとは異なる「年金の上乗せ制度」
  • コスト・流動性の低さ・運用リスクというデメリットがある
  • 所得水準が高い人や強制貯蓄をしたい人には向いている

退職所得の税金の仕組みと現行の退職所得控除

会社の退職金、小規模企業共済の解約金、iDeCoの給付金(老齢給付金)は、いずれも一時金で受け取った場合は「退職所得」として扱われます。個人の所得税と住民税の課税対象になります。

退職所得の計算式は以下のとおりです。

ステップ内容
退職金の額面から「退職所得控除」を差し引く
①の金額を1/2する
②の金額に税率をかける(分離課税)

この1/2計算は給与所得や不動産所得などには適用されない、退職所得だけの特別な優遇です。さらに、退職所得は他の所得と合算せずに税率を計算する「分離課税」のため、税率が低くなりやすい構造になっています。

退職所得控除の金額は勤続年数によって決まります。

勤続年数退職所得控除額
20年以下の部分1年につき40万円
20年超の部分1年につき70万円

📌 ポイント

なお、退職金を一括ではなく年金形式で分割して受け取ることも可能ですが、その場合は「退職所得」ではなく通常の公的年金と同じく「雑所得」として計算されます。受け取り方によって課税の仕組みが変わる点に注意が必要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 退職金・小規模企業共済・iDeCoの給付金は一時金受け取りで「退職所得」になる
  • 退職所得は1/2計算+分離課税で税負担が低くなりやすい
  • 年金形式で受け取ると「雑所得」になり計算方法が変わる

退職所得控除の改正案とは?どれくらい増税になるのか

現在、退職所得控除の改正案が検討されています。まだ最終決定ではありませんが、勤続20年超の部分の控除額を「1年につき70万円」から「1年につき40万円」に縮小するという案が出ています。

これまでは1か所に長く勤めるほど退職所得の税負担が低くなる仕組みでしたが、改正後はその優遇が薄まります。言い換えれば、国が終身雇用制度を事実上解体するような方向性です。逆に言えば、勤続年数20年以下の方には今回の改正の影響は全くありません。

具体的にどれくらい税負担が増えるのか、試算で見てみましょう。前提条件は以下のとおりです。

  • 大阪在住・60歳以上・扶養家族0人
  • 社会保険料を考慮した住民税計算
  • 勤続年数30年・退職金3,000万円
区分改正前改正後
所得税約96万円約146万円
住民税約90万円約90万円
合計税負担約186万円約236万円
税負担率約6.2%約8%

改正によって約50万円の増税となります。税負担率としては6%台から8%程度への上昇で、他の所得と比べると依然として低水準ではあります。しかし老後生活の資金として退職金を当てにしている方にとって、50万円の負担増は非常に大きな影響です。

📌 ポイント:影響を受けるのは会社員だけではない

今回の改正は「サラリーマン増税」と言われていますが、個人事業主・会社経営者にも大きな影響があります。退職所得に該当するものは以下のとおりです。

  • 中小企業退職金共済・特定退職金共済に基づく退職金(会社員)
  • 個人型iDeCo・企業型DC(確定拠出年金)の給付金
  • 小規模企業共済の解約手当金(個人事業主・会社経営者)
  • 生命保険を活用した役員退職金(中小企業の会社経営者)

📝 このセクションのまとめ

  • 改正案は勤続20年超の控除を70万円→40万円に縮小するもの
  • 勤続30年の場合、約50万円の増税になる試算
  • 会社員だけでなく個人事業主・会社経営者にも影響大

iDeCoの3つの税制優遇と「受け取り方」で損するリスク

iDeCoには3つのフェーズで税制優遇があります。

フェーズ税制優遇の内容
①積立時(掛け金を払っている間)掛け金が全額所得控除になり、所得税・住民税が節税できる
②運用中含み益が発生しても課税されない(通常は利益確定時に約20%課税)
③受給時一括受け取りは退職所得、年金受け取りは雑所得として税制優遇あり

これら3つをトータルで考えると、他の年金制度よりも有利に老後資金を確保できます。しかし、受け取り方を誤ると税制優遇が全く受けられないケースもあります。

⚠️ 注意

金融機関や証券会社のiDeCo広告では、このような「受け取り時のリスク」についてあまり説明されていません。将来の不確定要素が多すぎて明示しにくいという事情もありますが、知らないまま受け取ると思わぬ税負担が発生することがあります。

【具体的な事例】退職金とiDeCoを同時に受け取ると税負担はどうなる?

具体的な事例で税負担の違いを見ていきましょう。前提条件は40年勤務・65歳退職です。

【事例1】退職金2,000万円のみを受け取った場合(改正前)

項目金額
退職金2,000万円
退職所得控除(40年勤続)2,200万円
退職所得0円(控除額が退職金を上回る)
税負担0円

退職金だけであれば税負担はゼロです。ただし、退職所得控除の改正が実施された場合、この方の税負担は約30万円になります。

【事例2】退職金2,000万円+iDeCo給付金500万円を同時に受け取った場合(改正前)

項目金額
退職金+iDeCo給付金の合計2,500万円
退職所得控除2,200万円
控除からはみ出た金額300万円
退職所得(1/2計算後)150万円
所得税約7万7,000円
住民税約15万円
合計税負担約23万円

事例1では退職所得控除が退職金の総額を上回っていたため税負担ゼロでしたが、事例2ではiDeCoの給付金を加えることで控除からはみ出た金額に課税が発生しました。

⚠️ 注意:改正後はさらに大きな影響が

事例2のケースで退職所得控除の改正が実施された場合、税負担は約23万円から約90万円にまで膨らみます。これは非常に大きな差です。iDeCoと退職金の受け取り方の工夫が、老後資金に直結します。

📝 このセクションのまとめ

  • 退職金とiDeCoを同時に受け取ると、退職所得控除を超えた分に課税される
  • 事例2では改正前でも約23万円、改正後は約90万円の税負担が発生
  • 受け取りタイミングを工夫することが非常に重要

「別の年に受け取ればOK」は間違い?調整計算の落とし穴

「退職金とiDeCoを別の年に受け取れば税負担を回避できるのでは?」と考える方が多いですが、残念ながら単純に年をずらすだけでは意味がありません。

具体的には、勤続期間とiDeCoの掛け金期間が重複している場合、その重複部分の退職所得控除が除外されて計算されるというルールがあります。

例えば、昨年退職金を受給し、1年ずらして今年iDeCoを受け取ったとします。

項目内容
勤続年数40年
iDeCo掛け金期間20年
重複期間20年(勤続40年の後半20年とiDeCoの20年が重複)
iDeCo受け取り時の退職所得控除計算の基礎0年(重複20年が全て除外される)
最低保証勤続年数が短くても最低80万円の控除はあるが、ほぼ課税される

⚠️ 注意

退職金とiDeCoの受け取りを1年ずらすだけでは全く意味がありません。重複期間の調整計算が行われるため、実質的に退職所得控除をほぼ使えない状態になります。

【対策編】退職所得控除をフル活用できる2つの受け取り方

ではどうすれば退職所得控除を調整計算なしにフル活用できるのでしょうか。2つのパターンがあります。

【パターン1】先に退職金を受け取り、20年以上開けてからiDeCoを受け取る

iDeCoを受け取る時点で、直近20年以内に他の退職金受給がない場合は、調整計算が不要になります。退職金は勤続年数に基づいて退職所得控除を計算でき、iDeCoも掛け金期間に基づいて退職所得控除を計算できます。

ただし、20年以上空けるというのは現実的ではないケースがほとんどです。今流行りのFIRE(早期退職)を若くして達成した方には可能かもしれませんが、一般的には難しいでしょう。

【パターン2】先にiDeCoを受け取り、5年以上開けてから退職金を受け取る

退職金を後で受け取る場合は、5年以上間隔を空ければ調整計算が不要になります。イメージとしては、55歳でiDeCoを解約・受給し、60歳に退職金を受け取って会社を辞めるというパターンです。

パターン方法必要な間隔現実的かどうか
パターン1先に退職金→後でiDeCo20年以上△ 現実的でないケースが多い
パターン2先にiDeCo→後で退職金5年以上○ 比較的現実的

パターン2の方が現実味は高いですが、注意点もあります。

  • 会社の退職金は60歳固定のことが多く、受け取り時期をずらすのが難しい場合がある
  • iDeCoを早めに解約するとその分の運用益が得られなくなる
  • 運用成績は不確定要素が大きく、長く続ければ必ず有利とは言い切れない

【事例3】パターン2を実践した場合の税負担

40年勤務・65歳退職・退職金2,000万円、その5年前(60歳時点)にiDeCo給付金500万円を受け取ったケースです。

受け取り計算内容税負担
iDeCo給付金(60歳時)掛け金期間35年分の退職所得控除=約1,850万円。給付金500万円は控除内に収まる0円
退職金(65歳時)5年以上経過しているため調整計算不要。勤続40年分の退職所得控除をフルで適用。退職金2,000万円は控除内に収まる0円
合計税負担0円

受け取りのタイミングを5年以上ずらすだけで、合計2,500万円の給付を税負担ゼロで受け取れることになります。

📌 ポイント:改正後はどうなるか(事例3の場合)

退職所得控除の改正が実施された場合でも、iDeCo給付金(60歳時)は退職所得ゼロのままセーフです。ただし退職金(65歳時)については、改正後の控除額で計算すると約30万円の税負担が発生します。それでも、タイミングをずらさない場合の約90万円と比べると大幅に有利です。

📝 このセクションのまとめ

  • 単純に受け取り年をずらすだけでは効果なし。重複期間の調整計算が行われる
  • 先にiDeCoを受け取り、5年以上開けて退職金を受け取る方法が現実的
  • タイミングを工夫するだけで税負担を大幅に削減(場合によってはゼロ)にできる
  • 改正後でも、タイミングを工夫した方が税負担は有利

結論:退職所得控除の改正でもiDeCoをやめるべきとは言えない理由

退職所得控除の改正が行われたとしても、即座にiDeCoが不要になるわけではありません。iDeCoを続けるべきかどうかは、以下の要素によって大きく変わります。

  • 将来の退職金の額
  • 勤続年数
  • 自営業の方は小規模企業共済の解約手当金の見込み額
  • 会社経営者の方はiDeCoの老齢給付金の見込み額
  • iDeCoの運用状況

また、iDeCoには税制優遇以外にもメリットがあります。

  • 差し押さえの対象にならない
  • 死亡時に給付金が支払われる
  • 運用商品の選択を誤ってもスイッチング(商品変更)が可能

一方で手数料コストや流動性の低さというデメリットも存在します。これらを総合的に判断して、iDeCoを続けるかどうかを検討することが重要です。

📌 最終ポイント

退職所得控除の改正があったとしても、iDeCoと退職金の受け取りタイミングを工夫することで税負担を大幅に抑えることができます。今の段階から「いつ・どの順番で受け取るか」を意識しておくだけで、将来の老後資金の節税に大きく役立ちます。

📝 記事全体のまとめ

  • 退職所得控除の改正案は勤続20年超の控除を縮小するもので、勤続30年の場合約50万円の増税
  • 退職金とiDeCoを同時に受け取ると退職所得控除を超えた分に課税が発生する
  • 単純に受け取り年をずらすだけでは効果なし(重複期間の調整計算あり)
  • 先にiDeCoを受け取り、5年以上開けて退職金を受け取ることで税負担を大幅削減できる
  • iDeCoをやめるべきかどうかはケースバイケース。総合的な判断が必要

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!

関連記事

中小企業の法人保険で失敗しない!よくある失敗事例3選と正しい活用法を税理士が解説
iDeCo掛金上限が過去最大の引き上げ!節税効果と出口課税の罠を税理士が解説
iDeCo上限引上げと退職所得控除改悪を税理士が解説|5年ルールが10年に延長
     

東京エリア

千代田・中央・港区から副都心各区まで、東京の優良税理士法人ランキング

関西エリア

大阪・京都・兵庫・岡山など関西圏の信頼できる税理士法人ランキング

関東エリア

首都圏の神奈川・埼玉・千葉・北関東で実績のある税理士法人ランキング

中部エリア

製造業の集積地、中部・北陸圏で企業支援に強い税理士法人ランキング

九州・沖縄

九州・沖縄地域で地域密着型サービスに定評のある税理士法人ランキング

その他地域

北海道・東北・中国・四国地方の地域に根ざした税理士法人ランキング

記事URLをコピーしました
税理士紹介はこちら
税理士紹介はこちら