収益物件 借金して買う理由|社長がレバレッジ投資をする財務戦略を専門家が解説
借金してまで収益物件を買う社長たちが狙うのは、キャッシュフローではなくバランスシートの変化です。
なぜ社長たちはわざわざ借金して不動産を買うのか?
皆さんの周りにも、収益物件(投資用不動産)を購入している経営者の方がいらっしゃるのではないでしょうか。収益物件とは、自社では使わずに第三者に賃貸し、家賃収入を得るための不動産のことです。
財務の勉強をされている方であれば、「借金が増えると自己資本比率が下がり、銀行評価が落ちるのでは?」「不動産は価値が下落するリスクもあるのに、投資すべきではないのでは?」と感じるかもしれません。それなのに、なぜ多くの経営者が収益物件を購入しているのでしょうか。
今回は、収益物件を購入している社長たちが何を狙っているのか、その財務戦略を詳しく解説します。
💡 補足:動画では触れていませんが…
収益物件投資は「節税」目的で語られることも多いですが、この記事で解説する「バランスシート戦略」はそれとは別の観点です。節税効果と資産形成効果を混同しないよう整理して理解することが重要です。
📝 このセクションのまとめ
- 収益物件=自社使用せず第三者に賃貸して家賃収入を得る投資用不動産
- 「借金が増える=悪いこと」という固定観念が、投資に踏み出せない原因になりがち
- 経営者が狙っているのはキャッシュフローではなく、バランスシートの変化
業績が良い時ほど有利な条件で借りられる「属性」の重要性
不動産投資のローン(借入れ)を組む際、個人の場合は「属性」が非常に重要になります。属性とは、一言で言えば源泉徴収票の内容のことです。
| 属性の高い個人 | 属性の低い個人 |
|---|---|
| 上場企業勤務・勤続年数が長い・年収800万〜1,000万超 | 非上場・勤続年数が短い・年収が低い |
| どの銀行でも良い条件でローンが組みやすい | 断られるか、条件が悪い(短期・高金利) |
| 返済期間が長く、金利も低い | 返済期間が短く、金利が高い |
これは法人でも同じです。損益計算書(PL)の業績が良い時ほど、銀行から良い条件でお金を借りやすくなります。
収益物件を購入している社長たちは、まさにここに注目しています。「PLが良い時=属性が良い時」こそ、バランスシート上で資産を形成しやすいタイミングだと理解しているのです。
📌 ポイント
PLが良いうちにバランスシートの資産を増やしておき、PLが悪化した時にその資産を活用して立て直す時間を稼ぐ。例えば、不動産を担保に運転資金を借りて、売上を回復させる時間を確保するといった戦略です。
💡 補足:動画では触れていませんが…
銀行融資の審査では、個人・法人ともに「今の業績」だけでなく「直近3期分の決算書の推移」も重視されます。業績が右肩上がりのタイミングが最も有利な条件を引き出せる時期です。
📝 このセクションのまとめ
- 個人・法人ともに「属性(業績)が良い時」ほど有利な条件でローンが組める
- 業績好調なうちに資産を形成し、業績悪化時の備えとするのが基本戦略
- 不動産を担保に運転資金を調達するという選択肢も生まれる
「お金が全然増えない」のになぜ投資するのか?インカムゲインではない目的
実際に不動産投資を検討すると、多くの方がこんな疑問を持ちます。
- 家賃収入から返済額を引くと、ほとんどお金が残らない
- 空室期間があればマイナスになることもある
- キャッシュフローが増えないのに、なぜ借金してまで投資するのか
不動産投資の収益には、大きく2種類あります。
| 種類 | 内容 | 株式で言うと |
|---|---|---|
| インカムゲイン | 毎年入ってくる家賃収入(利回り) | 配当金 |
| キャピタルゲイン | 資産価値の増加による売却益 | 株価の値上がり益 |
実は、収益物件を購入している社長たちの多くは、インカムゲイン(家賃収入)でお金を増やすことを主目的としていません。また、不動産の価値そのものが値上がりするキャピタルゲインも主目的ではありません。
では、何を狙っているのでしょうか。それが、「借入れをレバレッジ(テコ)として活用した効率的な資産形成」です。
💡 補足:動画では触れていませんが…
インカムゲイン(家賃収入)は、物件の「表面利回り」ではなく管理費・固定資産税・ローン利息などを差し引いた「実質利回り」で判断することが重要です。都市部の優良物件では実質利回り3〜4%程度が現実的な水準です。
📝 このセクションのまとめ
- 収益物件の家賃収入と返済額がほぼ同額でも、それは「失敗」ではない
- 社長たちが狙うのはインカムゲインでも不動産値上がりでもない
- レバレッジ(借入れをテコとした資産形成)が本質的な目的
具体的な数字で見る「レバレッジ効果」の仕組み
では、実際にどのような仕組みで資産が増えるのか、具体的な数字で見ていきましょう。
以下の条件を前提とします。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 収益物件の購入価格 | 1億円 |
| 自己資金(頭金) | 3,000万円 |
| 銀行ローン | 7,000万円 |
| 年間家賃収入(経費・利息等控除後) | 350万円 |
| 年間ローン返済額(元金) | 350万円 |
| ローン返済期間 | 20年(7,000万円 ÷ 350万円) |
この条件では、毎年350万円の家賃収入が入り、350万円を返済するため、手元の現金は1円も増えません。「それでは意味がないのでは?」と思われるかもしれませんが、バランスシートで見ると全く異なる景色が見えてきます。
5年後・10年後のバランスシートはどう変わるか
バランスシート(貸借対照表)の視点で時系列を追ってみましょう。
| 時点 | 不動産資産(時価) | ローン残高 | 純資産(自己資本) | 当初出資額との比較 |
|---|---|---|---|---|
| 購入時 | 1億円 | 7,000万円 | 3,000万円 | 基準 |
| 5年後 | 1億円(価値維持) | 5,250万円 | 4,750万円 | 約1.5倍 |
| 10年後 | 1億円(価値維持) | 3,500万円 | 6,500万円 | 約2.1倍 |
不動産の価値は1億円のまま変わっていません。しかし、毎年350万円の元金返済が積み重なることで、ローン残高が着実に減少し、純資産(自己資本)が増加していきます。
これが、社長たちが狙っている「キャピタルゲイン」の正体です。不動産の価値が上がったわけではなく、借金が減ることで当初の自己資金が実質的に膨れ上がるという仕組みです。
📌 ポイント:レバレッジ効果とは
自己資金3,000万円を銀行預金に置いておいても10年後も3,000万円のまま(ほぼ増えない)。しかし、この3,000万円をレバレッジ(テコ)として活用し、1億円の不動産を購入すると、10年後には純資産が6,500万円に倍増する可能性があります。家賃収入が自動的にローンを返済し続けてくれるため、経営者が別途社員を充てる必要もありません。
この構造の優れた点は、物件の管理を管理会社に委託すれば(家賃の約5%の手数料)、経営者は本業に専念できることです。人件費は不要で、かかるコストは固定資産税・銀行利息・管理会社手数料のみです。
💡 補足:動画では触れていませんが…
管理会社への委託手数料は一般的に家賃収入の5〜10%が相場です。また、大規模修繕費用(築10〜15年で外壁・屋根等)も長期的なコストとして事前に試算しておくことが重要です。修繕積立金を毎月計上しておく経営者も多くいます。
📝 このセクションのまとめ
- 家賃収入と返済が同額でも、ローン残高は毎年着実に減少する
- 5年後に純資産約4,750万円(約1.5倍)、10年後に約6,500万円(約2倍)になる
- これが「不動産の価値が上がらなくても生まれるキャピタルゲイン」の正体
- 管理会社委託(家賃の約5%)で、経営者は本業に専念できる
不動産価値が下落しても「耐えられる」理由
「都心の物件でも10年間、価値が維持されるとは限らないのでは?」という疑問はもっともです。では、仮に価値が下落した場合はどうなるでしょうか。
| 10年後の不動産価値 | ローン残高 | 純資産 | 当初出資額(3,000万円)との比較 |
|---|---|---|---|
| 1億円(価値維持) | 3,500万円 | 6,500万円 | プラス3,500万円 |
| 9,000万円(1割下落) | 3,500万円 | 5,500万円 | プラス2,500万円 |
| 8,000万円(2割下落) | 3,500万円 | 4,500万円 | プラス1,500万円 |
仮に不動産価値が1割(1,000万円)下落しても、純資産は5,500万円となり、当初の出資額3,000万円を大きく上回ります。2割下落しても4,500万円となり、元本割れは起きません。
📌 ポイント
都市部の物件であれば価値の下落リスクを抑えやすいため、1〜2割程度の下落であれば十分に耐えられる構造になっています。リスクの低い物件を選んで投資することが前提条件です。
⚠️ 注意
地方の物件や築年数の古い物件は、価値の下落幅が都市部より大きくなるリスクがあります。また、空室率が高い地域では家賃収入が想定を大きく下回ることも。物件選びの段階でしっかりとリスク評価を行うことが不可欠です。
📝 このセクションのまとめ
- 10年後に不動産価値が1割下落しても、純資産は5,500万円(当初の約1.8倍)
- 2割下落でも4,500万円(当初の約1.5倍)で元本割れしない
- 都市部の物件を選ぶことが、価値下落リスクを抑える基本
帳簿(簿価)ではなく「時価」でバランスシートを見ることの重要性
ここで重要なのが、バランスシートの見方です。多くの経営者は貸借対照表を簿価(帳簿金額)で見てしまいます。しかし不動産の場合、建物部分は減価償却によって帳簿上の金額が毎年減少していきます。
例えば、1億円で購入した不動産の帳簿価額が減価償却によって7,000万円になったとします。ローン残高が3,500万円であれば、帳簿上の純資産は3,500万円です。「あれ、500万円しか増えていない」と感じるかもしれません。
しかし、帳簿価額が7,000万円でも、時価が1億円であれば、実質的な純資産は6,500万円です。この差を見落とすと、正しい経営判断ができなくなります。
📌 ポイント:時価ベースでバランスシートを管理する
収益物件を活用している社長たちは、不動産会社から定期的に時価評価を取得し、自分で時価ベースのバランスシートを作成・管理しています。帳簿上の数字だけに惑わされず、時価で判断することが冷静な経営判断につながります。
💡 補足:動画では触れていませんが…
不動産の時価評価は、不動産鑑定士による「不動産鑑定評価書」のほか、不動産会社による「査定書」でも確認できます。金融機関への融資相談時には、より信頼性の高い鑑定評価書が求められるケースもあります。年に1回程度、時価を確認する習慣をつけることをお勧めします。
📝 このセクションのまとめ
- 建物の減価償却で帳簿価額は下がるが、時価は別物
- 帳簿ベースで見ると純資産の増加を過小評価してしまう
- 不動産会社から定期的に時価評価を取得し、時価ベースで管理することが重要
ホールディングスを使った収益物件投資という最新トレンド
収益物件への投資が進むと、課題が生じることがあります。物件を複数購入すると、事業会社のバランスシートに不動産ローンが積み上がり、財務に詳しくない取引先や関係者から「経営が悪化したのでは」と誤解される可能性があります。
こうした課題を解決するために、最近ではホールディングス(持株会社)を設立し、ホールディングスで収益物件を購入するという手法が増えています。
| 項目 | 事業会社で購入 | ホールディングスで購入 |
|---|---|---|
| 借金が増える先 | 事業会社のB/S | ホールディングスのB/S |
| 事業会社の財務への影響 | 直接影響する | 影響しない |
| 銀行ローンの審査 | 事業会社のPLが基準 | 子会社(事業会社)のPLが基準 |
| 取引先への見え方 | 借金増加が見られる | 事業会社は借金増加なし |
ホールディングスで不動産を購入しても、銀行は子会社(事業会社)の業績(PL)を基準にローンを組んでくれます。つまり、事業会社のPLが良い時に、ホールディングスで不動産を購入するという戦略が成立します。
さらに、ホールディングスを活用することで、銀行との長期的な関係強化にもつながります。運転資金のローンは通常5〜7年程度ですが、不動産ローンは20年以上のお付き合いになります。銀行との深い関係性を構築できるメリットもあります。
事業承継にも効果的|株価を下げる副次的メリット
ホールディングスで収益物件を購入するもう一つの大きなメリットが、事業承継時の株価引き下げ効果です。
どの経営者も、いずれは事業を承継するタイミングが来ます。その際、できるだけ低い株価で後継者に株式を譲りたいという思いがあるでしょう。ホールディングスで不動産を購入することで、事業会社の株価を引き下げる効果が生まれます。
⚠️ 注意:3年ルール
不動産を購入してから3年が経過しないと株価引き下げ効果が生まれないというルールがあります。事業承継を検討している場合は、少なくとも3年前から計画的に取り組む必要があります。税理士・会計士と早めに相談することをお勧めします。
💡 補足:動画では触れていませんが…
不動産購入による株価引き下げ効果は、税務上の「取引相場のない株式の評価」(相続税法上の評価)に関係します。具体的には純資産価額方式での評価額に影響します。ただし、過度な節税スキームとして税務調査で否認されるリスクもあるため、専門家への相談が必須です。
📝 このセクションのまとめ
- ホールディングスで購入すると事業会社の財務への影響を分離できる
- 銀行との20年以上の長期的な関係構築にもつながる
- 事業承継時の株価引き下げ効果もある(購入から3年後以降)
- 複合的なメリットを計画的に活用するには、税理士・会計士との連携が不可欠
家賃収入を「本業の下支え」にする経営の安定化戦略
不動産収入には、景気変動の影響を受けにくいという特性があります。賃貸借契約には契約期間があるため、景気が悪化しても不動産収入への影響は遅れて現れます。比較的安定した収入源として機能するのです。
よく「家賃収入を本業の下支えにする」という表現が使われます。有名な例では、新聞社が実は不動産業が主要収益源になっているというケースもあります。不動産収益が会社全体の安定度を高めているというのは、現実的に多くの企業で見られる現象です。
📌 ポイント:収益物件投資が持つ複合的な効果
- 資産形成効果:自己資金がレバレッジにより10年で約2倍に
- 安定収入効果:景気変動に強い家賃収入が本業を下支え
- 担保価値効果:業績悪化時に担保として運転資金を調達できる
- 銀行関係強化効果:20年以上の長期融資で銀行との関係が深まる
- 事業承継効果:ホールディングス活用で株価を引き下げられる(3年後以降)
これらの効果を理解した上で、優秀な税理士・会計士のアドバイスを受けながら、計画的に収益物件投資を進めている経営者が、皆さんの周りにいらっしゃるということです。
重要なのは、PLやキャッシュフローの視点だけでなく、バランスシートを長期的な視点で考えることです。「350万円入って350万円出ていく、何の旨味があるのか」というPL的・キャッシュフロー的な見方では、この戦略の本質は見えてきません。
📝 このセクションのまとめ
- 不動産収入は景気変動の影響を受けにくく、本業の下支えになる
- 収益物件投資には資産形成・安定収入・担保・銀行関係・事業承継と複合的なメリットがある
- PLやキャッシュフローではなく、長期的なバランスシートの視点で判断することが本質
📋 この記事を読んだら次にやること
- 自社の現在のバランスシートを確認し、自己資本比率と借入余力を把握する
- 顧問税理士・会計士に「収益物件投資の財務的メリット・デメリット」について相談する
- 検討中の物件について不動産会社から時価評価を取得し、実質利回りを試算する
- ホールディングス設立の要否を専門家と検討する(特に事業承継を意識している場合)
- 購入後10年のバランスシート変化を数値でシミュレーションしてみる
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 中小企業の財務チャンネル の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 中小企業の財務チャンネルを応援しています!
