所得税の総合課税と分離課税の違いを専門家がわかりやすく解説

所得税の総合課税と分離課税の違いを専門家がわかりやすく解説
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所得税の「総合課税」と「分離課税」、その違いを正確に理解していますか?仕組みを理解すると、確定申告や税金計算の疑問がスッキリ解消できます。

所得税とは何か?基本の仕組みをおさえよう

所得税とは、個人(法人ではなく、生きている人間)が1年間で得た所得に対して課される税金です。ここでいう「1年間」とは、1月1日から12月31日までの暦年(れきねん)を指します。これを「暦年課税」といいます。

よく混同されがちですが、「4月1日から3月31日」のような年度ベースは個人の所得税には適用されません。個人の所得税は必ず1月1日始まり・12月31日終わりです。

📌 ポイント:所得と収入の違い

「収入」と「所得」は日常会話では同じように使われますが、税務上は明確に異なります。

  • 収入:その所得によって入ってきた金額そのもの(例:手元に1,000万円入ってきた)
  • 所得:収入から必要経費を差し引いた金額

収入が高くても、必要経費が多ければ所得は低くなります。

また、収入金額にはまだ手元に入ってきていなくても、入ってくることが確定した金額(未収金)も含めるという点が重要です。

たとえば、アパートオーナーが「12月分の家賃は11月末までに振り込んでください」という契約をしていた場合、12月末時点でまだ振り込まれていなくても、その金額はその年の収入として計上しなければなりません。不動産所得における未払い賃料や、事業所得における売掛金も同様です。

💡 補足:動画では触れていませんが…

この「権利確定主義」は所得税の大原則です。現金の受け取りタイミングではなく、権利が確定した時点で収入を認識するため、年末の売掛金・未収賃料の計上漏れは税務調査でも指摘されやすいポイントです。

所得の種類は全部で10種類あり、それぞれの種類ごとに定められた計算方法で所得金額を求めます。原則は「収入-必要経費」ですが、必要経費を引かないものや、必要経費以外にも差し引ける金額があるものもあります。

📝 このセクションのまとめ

  • 所得税は個人が1月1日〜12月31日に得た所得にかかる税金
  • 所得=収入-必要経費(収入と所得は別物)
  • 未収金(まだ受け取っていないが確定した金額)も収入に含める
  • 所得の種類は全部で10種類

非課税所得とは?税金がかからない所得の一覧

所得があっても、すべてに税金がかかるわけではありません。所得税が課されない「非課税所得」というものがあります。

カテゴリ非課税所得の具体例理由・ポイント
資産運用関連投資信託の元本払戻金元本が戻ってきただけなので利益ではない
資産運用関連NISA口座内の配当・譲渡益NISAは制度上、非課税口座として設計されている
生活用動産の譲渡生活に使っていた車・家具などの売却益1個あたり30万円以下のものは非課税
給付・年金関連雇用保険の基本手当・高年齢雇用継続給付失業・給与減少という不利益を補填するため
給付・年金関連健康保険の傷病手当金病気・怪我で働けない人への補填
給付・年金関連公的年金の障害給付・遺族給付障害・遺族という不利益を補填するため
給与関連通勤手当(月15万円まで)定期券購入に充てるため手元に所得として残らない
給与関連転勤・出張の旅費実費補填のため
その他宝くじの当選金法律上、非課税と規定されている
その他慰謝料・見舞金損害・精神的苦痛の補填のため
その他損害保険の保険金・給付金(個人受取)損害を補填するためのお金であり利益ではない

⚠️ 注意:老齢年金は非課税ではありません

老齢基礎年金・老齢厚生年金は課税対象です。障害給付・遺族給付は非課税ですが、老齢給付は「かわいそうな状況への補填」ではなく通常の所得として扱われます。「公的年金=非課税」と誤解しないよう注意してください。これは非常によく出る引っかけポイントです。

💡 補足:動画では触れていませんが…

生命保険の死亡保険金は、契約者・被保険者・受取人の関係によって所得税・相続税・贈与税のいずれかが課税されます。「保険金だから非課税」と一律に考えるのは危険です。損害保険の補填目的の保険金とは区別して理解しておきましょう。

📝 このセクションのまとめ

  • 非課税所得とは所得税が課されない所得のこと
  • 雇用保険給付・傷病手当金・障害・遺族給付は非課税(かわいそうな状況への補填)
  • 老齢基礎年金・老齢厚生年金は課税対象(非課税ではない)
  • 通勤手当は月15万円まで非課税
  • 損害保険の保険金・給付金は個人受取の場合、原則非課税

総合課税と分離課税の違い|2つの課税方法を理解する

所得税には、大きく分けて2つの課税方法があります。原則は「総合課税」ですが、一部の所得は「分離課税」として別扱いになります。この違いを理解しておくことは、税金の計算を正しく行うために非常に重要です。

課税方法概要主な対象所得確定申告
総合課税各種所得を合算して税額を計算する(原則)給与所得・事業所得・不動産所得など原則必要
申告分離課税他の所得と合算せず、分けて確定申告する退職所得・土地建物の譲渡所得・株式の譲渡所得必要
源泉分離課税支払い時点で税金を天引きして課税完了預貯金の利子・金融類似商品の収益不要(完結)

なぜ退職金や不動産売却益は「申告分離課税」なのか

所得税は基本的に「たくさん稼ぐほど税率が高くなる」累進課税の仕組みをとっています。最高税率は45%です。芸能人やスポーツ選手が「稼いでも半分は税金で持っていかれる」というのは、住民税(約10%)と合わせると最大55%になるためです。

この仕組みの中で問題になるのが、「ある年だけ突出して収入が増える」ケースです。

  • 退職金:何十年も働いた対価として退職する年に一度にまとめて受け取る
  • 土地・建物の譲渡益:売却した年だけ大きな金額が入ってくる
  • 株式の譲渡益:売却タイミングによって特定の年に集中する

これらを他の所得と合算してしまうと、「その年だけ高収入に見えて」高い税率が適用されてしまいます。たとえば退職金について「今までお疲れ様でした」とドンとお金が出たのに「あなたは今年めちゃくちゃ稼いでいるので半分持っていきます」となるのは、明らかに不合理です。

📌 ポイント:申告分離課税の意義

退職所得・土地建物の譲渡所得・株式の譲渡所得が申告分離課税になっているのは、「1年間の所得を合算して課税する」という総合課税の考え方が馴染まないためです。確定申告によって、これらの所得だけを切り離して税額を計算します。

💡 補足:動画では触れていませんが…

土地・建物の譲渡所得は、所有期間が5年以下(短期)か5年超(長期)かによって税率が異なります。短期は約39%、長期は約20%と大きく差があるため、売却タイミングの検討は非常に重要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 退職所得・土地建物の譲渡所得・株式の譲渡所得は申告分離課税
  • 「ある年だけ突出して収入が増える」所得は、総合課税と合算すると不合理になるため分離する
  • 申告分離課税でも確定申告は必要

源泉分離課税とは?預金利子を確定申告しなくていい理由

「源泉分離課税」は、お金が支払われる時点で税金が天引きされ、それで課税が完結する仕組みです。受け取る側は確定申告をする必要がありません。

最もわかりやすい例が預貯金の利子です。銀行の普通預金の金利は現在非常に低く、利子が数円・数十円という方がほとんどです。しかし金額の大小にかかわらず、「利子所得として確定申告する」という手続きをした経験はないはずです。

それは、銀行が利子を支払う段階で税金を差し引いてから振り込んでいるからです。つまり、皆さんが受け取る利子は、すでに税金が引かれた後の金額なのです。課税はすでに完結しているため、確定申告は不要となります。

源泉分離課税の対象税金の徴収タイミング確定申告
預貯金の利子銀行が利子支払い時に天引き不要
金融類似商品の収益(一時払い養老保険など)支払い機関が支払い時に天引き不要

⚠️ 注意:源泉分離課税と確定申告

「源泉分離課税の対象となる所得は確定申告が必要」という記述は誤りです。源泉分離課税はすでに支払い時点で課税が完結しているため、確定申告は不要です。混同しないようにしましょう。

💡 補足:動画では触れていませんが…

上場株式の配当所得は「源泉徴収あり特定口座」を選択すれば源泉徴収で課税が完結しますが、確定申告を選択することもできます。確定申告することで損益通算や配当控除を活用できる場合があるため、状況に応じた判断が重要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 源泉分離課税は支払い時点で税金が天引きされ、課税が完結する
  • 預貯金の利子・金融類似商品の収益が対象
  • 確定申告は不要(すでに課税完結済み)

所得税の計算ステップ|稼いでから納税までの全体の流れ

所得税の計算は、いくつかのステップを順番に踏んで最終的な納付税額が決まります。全体の流れを把握しておくことで、個々の控除や計算方法の「どこの話をしているのか」が明確になります。

  1. 各種所得の計算:給与所得・事業所得・不動産所得など、10種類の所得をそれぞれの計算方法で算出する
  2. 損益通算:プラスの所得とマイナスの所得(赤字)を合算・相殺する
  3. 合計所得金額の算出:損益通算後の各所得を合計する
  4. 繰越控除:前年以前からの赤字(損失)を今年の所得から差し引く
  5. 総所得金額の算出:繰越控除後の全所得の合計(総合課税分)
  6. 所得控除の適用:配偶者控除・医療費控除・扶養控除など、所得から差し引く控除を適用する
  7. 課税総所得金額の算出:総所得金額から所得控除を引いた、実際に税金がかかる金額
  8. 税率を乗じて所得税額を算出:課税総所得金額に税率をかけ、控除額を引く
  9. 税額控除の適用:住宅ローン控除など、税額そのものから差し引く控除を適用する
  10. 納付すべき税額の確定:最終的な納税額が決まる

📌 ポイント:所得控除と税額控除の違い

  • 所得控除(配偶者控除・医療費控除など):所得金額から差し引く → 税率をかける前に引く
  • 税額控除(住宅ローン控除など):税額から直接差し引く → 税率をかけた後に引く

税額控除の方が、同じ金額でも節税効果が大きくなります。

💡 補足:動画では触れていませんが…

損益通算ができる所得の種類には制限があります。不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の赤字のみが他の所得と通算できる(いわゆる「ふさわしい損失」)のが原則で、給与所得や一時所得の赤字は通算できません。

📝 このセクションのまとめ

  • 所得税の計算は「所得の計算→損益通算→所得控除→税率適用→税額控除→納付税額」の順で進む
  • 所得控除は「所得から引く」、税額控除は「税額から引く」と区別して覚える
  • 全体の流れを把握しておくと、個々の控除の意味が理解しやすくなる

累進課税の税率と「段差がない」仕組みの正しい理解

所得税の税率は超過累進税率が採用されています。これは、課税所得金額が上がるほど税率が段階的に高くなる仕組みです。

課税所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円超〜330万円以下10%97,500円
330万円超〜695万円以下20%427,500円
695万円超〜900万円以下23%636,000円
900万円超〜1,800万円以下33%1,536,000円
1,800万円超〜4,000万円以下40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円

税率は7段階に区分されており、最低が5%、最高が45%です。これに住民税(約10%)が加わると、最高で55%の負担率になります。

⚠️ よくある誤解:「900万円を超えたら全額に33%がかかる」は間違い

「899万円の人は23%で、900万円になった瞬間に全額に33%がかかる」という誤解がありますが、これは正しくありません

超過累進課税では、900万円を超えた部分だけに高い税率が適用されます。表の右側にある「控除額」がその調整をしているため、899万円の人と901万円の人で税額が急激に跳ね上がることはありません。税額は所得の増加に応じて滑らかに増えていく設計になっています。

税額の計算式は以下のとおりです:

📌 所得税額の計算式

所得税額 = 課税総所得金額 × 税率 - 控除額(右側の数字)

この計算式を使うことで、超過累進税率の仕組みを反映した正確な税額が求められます。

💡 補足:動画では触れていませんが…

2013年から2037年までの間は、所得税額に対して復興特別所得税(2.1%)が上乗せされます。正確な税額計算では「所得税額×102.1%」が実際の納付額となる点も覚えておきましょう。

📝 このセクションのまとめ

  • 所得税は超過累進税率(7段階:5%〜45%)を採用
  • 住民税と合わせると最高55%の負担率になる
  • 「一定額を超えたら全額に高い税率」という誤解に注意。超えた部分だけに高い税率が適用される
  • 税額計算:課税総所得金額×税率-控除額

📋 この記事を読んだら次にやること

  1. 自分が受け取っている所得(給与・不動産・配当など)が総合課税・申告分離課税・源泉分離課税のどれに当たるか確認する
  2. 自分が受け取っている給付金・保険金・年金が非課税かどうか一覧と照らし合わせて確認する
  3. 確定申告の際に、所得控除(配偶者控除・医療費控除など)と税額控除(住宅ローン控除など)の適用漏れがないか見直す
  4. 退職金・不動産売却を予定している場合は、申告分離課税の計算方法と特例を事前に調べておく

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル ほんださん / 東大式FPチャンネル の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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