税務調査

個人事業主の接待交際費は法人より税務調査が厳しい|現役税理士が解説

個人事業主の接待交際費は法人より税務調査が厳しい|現役税理士が解説
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飲食代の経費計上、個人事業主は法人より税務調査が厳しいことをご存じですか?

個人事業主の接待交際費、法人との決定的な違い

飲み代や食事代を経費に落とす際、実は法人よりも個人事業主の方が税務調査で厳しくチェックされます。個人事業主やフリーランスにとって、飲み代・食事代が経費に落とせるかどうかは気になるテーマですが、税務調査の実態はかなりシビアです。

通常、個人事業主や個人の大家さんに対して行われる税務調査は件数が少なくレアケースですが、実際に立ち会った調査では、飲み代・食事代、いわゆる接待交際費の中身に対する追求が非常に激しいものでした。個人事業主だからといって法人より甘く調査されるかというと、そんなことはありません。

📌 ポイント:法人 vs 個人事業主の接待交際費ルール

区分上限額のルール調査のシビアさ
法人(資本金1億円以下)年間800万円、または接待交際費全体の50%を超える部分は経費不可金額の上限で判断される
法人(資本金100億円超)全額経費不可さらに厳しい計算式が適用
個人事業主・個人大家上限なし事実関係・中身を徹底的に見られる

個人事業主には年間800万円のような上限がありません。では無制限に経費計上できるのかというと、そうではありません。上限がない分、接待をした事実・中身を徹底的に細かく見られることがあります。くれぐれも注意が必要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 法人には接待交際費の年間800万円などの上限がある
  • 個人事業主には上限がないが、その分事実関係を細かく調査される
  • 「個人だから甘い」は大きな誤解

確定申告における所得計算の基本構造

飲食代の取り扱いを理解するために、まず確定申告の税金計算の流れを確認しておきましょう。個人事業主・大家さんが確定申告で行っていることの大部分は、売上と必要経費の集計です。

計算ステップ内容
売上 ー 必要経費事業所得(大家さんの場合は不動産所得)
ー 青色申告特別控除など青色申告者はさらに控除あり
ー 所得控除医療費控除・基礎控除・配偶者控除など個人の生活的事情を考慮した控除
= 課税所得税率を掛ける対象となる金額
× 超過累進税率最低5%〜最高45%(所得税)
ー 税額控除住宅ローン控除など
+ 復興特別所得税所得税額の2.1%
+ 住民税一律10%
+ 事業税所得金額が290万円超の場合に課税

売上から事業所得までの計算は、青色申告の場合は青色申告決算書、白色申告の場合は収支内訳書で計算します。今回の飲食代の取り扱いは、この計算の中の「必要経費」に関するお話です。

所得税法第37条では、必要経費について次のように定められています。「売上原価(仕入れ原価)、プラス直接要した費用の額、及びその年における販売費・一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額」とされており、非常に曖昧な表現にとどまっています。だからこそ、判断に迷いやすいのです。

📝 このセクションのまとめ

  • 飲食代は「必要経費」の区分に関わる問題
  • 所得税法の必要経費の定義は曖昧で、判断が難しい
  • 青色申告者は決算書、白色申告者は収支内訳書で経費を集計する

飲食代の5つの区分と経費性の判断基準

会計データを入力する際には、飲食代を以下の5つにしっかり区分して経理処理することが必須です。全部を「接待交際費」に入れたり、全部を「会議費」に入れたりするのはやめましょう。

区分内容経費性注意点
①自分1人の食事代カフェでの作業、日常の食事❌ 原則アウト(家事費)日常の食事と変わらないと判断される。騒音・Wi-Fi故障などのレアケースは例外的に経費性あり
②福利厚生費従業員を雇用している場合の食事補助など✅ OK(条件あり)個人事業主自身の分は対象外
③会議費打ち合わせのためのカフェ・喫茶店利用(自分を含め2人以上)✅ OK議事録があれば理想。後で説明できるようにしておく
④接待交際費仕事上の関係者との飲食🔺 条件付きOK飲みに行った相手との仕事上の関連性が必須。個人は法人より範囲が狭い
⑤制作所経費(YouTuberなど)動画企画との関連性がある飲食🔺 企画次第動画のメイン企画として食事・店舗を紹介する場合はOK。一瞬映っただけはNG

⚠️ 注意:自分1人の食事代について

「カフェでバリバリ仕事しているんだから経費に落ちるでしょ」とよく聞かれますが、税務当局側の考えはそう甘くありません。日常の食事と何ら変わりないという判断をされ、家事費扱いとして経費否認されてしまいます。

例外的に経費性が認められる可能性があるのは以下のようなレアケースです。

  • 自宅近くで工事中のため騒音を避けてカフェに行った
  • 自宅のWi-Fiが使えなくなり外出せざるを得なかった
  • 移動中にZoom会議が予定されていたためネットカフェに一時的に入った

あくまでも「日常めったに起こらないレアケース」に限られます。

青色申告決算書では11番の欄に「接待交際費」19番の欄に「福利厚生費」があります。会議費・打ち合わせ費は決算書に専用欄がないため、空欄を利用して「会議費」「打ち合わせ費」などの名称で記載してください。白色申告の収支内訳書でも同様に空欄を活用します。

📝 このセクションのまとめ

  • 飲食代は5つの区分(自分1人・福利厚生費・会議費・接待交際費・制作所経費)に正しく分類する
  • 自分1人の食事代は原則として家事費扱いで経費にならない
  • 接待交際費は相手との仕事上の関連性が必須
  • 会議費は決算書の空欄を使って記載する

実際の税務調査事例:個人事業主・大家・副業サラリーマン

実際に立ち会った税務調査の事例をご紹介します。対象は個人事業主(士業)・大家業・副業のサラリーマン大家の3名で、共通するポイントがありました。

個人事業主には法人と違って年間800万円の上限がない分、税務調査はよりシビアです。特に接待交際費をたくさん計上している方は要注意です。

📌 接待交際費の売上比率の目安(個人的な感覚値)

業種・状況接待交際費の傾向リスク感
不動産業・建築業金額が大きくなりやすい高め
士業・製造業そこまで大きくない低め
売上の5%以下ほぼ問題なく調査が進む可能性あり(目安)低め
売上の50%近く今回の調査対象者のひどいケース非常に高い・指摘確実
筆者の会計事務所売上に対して約0.5%ほぼなし

※これは絶対的な基準ではなく、あくまで個人的な感覚値です。

今回の調査では、接待交際費があまりにも多すぎるとして「プライベートのものが一部含まれているんじゃないですか」という指摘がありました。

法人のように800万円という明確な基準がないため、調査官は何をしてきたかというと、同じ税務署管轄の同業他社の売上に対する接待交際費の比率を調べて持ってきたのです。「他社はこうなっている、これに比べるとあなたのところは高すぎますよ」という理屈で指摘してきました。

📌 ポイント:指摘に応じるかどうかの判断基準

多額であったとしても、本当に接待の事実があるなら、仮に税務調査官が修正をしろと言っても、その要請に応じる必要はありません。同業他社の平均値をもとに「これを超える部分は否認してください」という指摘に対しては、事実があるなら徹底的に反論してください。

  • 友達との飲み会など、プライベートが混ざっていると自覚があるなら→修正申告に応じる
  • 本当にお客様・見込み客・営業協力先との接待であり、事実関係が全部言えるなら→徹底的に反論する

📝 このセクションのまとめ

  • 接待交際費が売上の50%近くになると指摘は確実
  • 調査官は同業他社の比率データを持参して指摘してくる
  • 事実があれば修正申告に応じる必要はなく、反論できる

領収書へのメモ書きが税務調査を乗り越える最大の武器

今回の調査でなぜこれほど追及されたのか。金額が大きかったこともありますが、もう一つの大きな理由があります。接待交際費の領収書は捨てずにちゃんと保存していたものの、領収書に何もメモ書きがなかったのです。

⚠️ 注意:領収書だけでは不十分

飲みに行った事実は過去のことなので、後から調べようがありません。証拠は領収書しかないのですが、領収書だけでは通じません。何も書いていなければ「プライベートで行ったのでは」と疑われても仕方がないのです。

全ての飲食代の領収書にメモ書きをすることが最低限の対策です。書いておくべき内容は以下の通りです。

  • どこの会社の誰と行ったか
  • 参加者の人数
  • (できれば)何のために行ったか

こういったことを書いておけば最低限の証拠になります。逆に書かなければ「プライベートで行っているのでは」と思われても仕方がありません。

実際の調査結果はどうなったかというと、時間をかけて領収書に再度メモ書きをしてもらいました。当時の手帳やスケジュール管理表から記憶を引っ張り出して書いてもらい、それにより大部分が明らかになりました。ただし、それでもプライベートのものが一部混ざっていたため、それらについては自己否認して修正申告に応じて対処しました。

⚠️ 注意:副業サラリーマン大家の場合の追加チェック項目

副業で大家業をしているサラリーマンの場合、勤務先で精算した経費と重複していないかも確認されます。会社の方で精算されているのに、その領収書を副業の経費として計上するのは絶対にNGです。

きっちり管理したい方向けに、エクセルで管理表を作成する方法もあります。管理表には以下の項目を記録しておくと便利です。

記録項目記載例
日付2024年2月1日
相手先(会社名・氏名)〇〇株式会社 △△様
参加人数3名
金額15,000円
目的・内容新規案件の打ち合わせ後の会食
備考法人の場合は1人当たり5,000円基準で接待交際費に含めるか確認

法人の場合、1人当たり5,000円の基準で接待交際費に含めるかどうかが変わるため、この管理表が特に活用しやすくなっています。非常に面倒ではありますが、税務調査に備えるためにも活用をお勧めします。

📝 このセクションのまとめ

  • 領収書には必ず「誰と・何人で・どんな目的で」をメモ書きする
  • メモがないだけで「プライベートでは」と疑われる原因になる
  • 副業大家は勤務先との経費の二重計上に注意
  • エクセルの管理表を活用するとより確実

不動産所得(大家業)は接待交際費の範囲がさらに狭い

個人事業主の中でも、事業所得よりも不動産所得(大家業)の方が接待交際費の範囲がさらに狭くなります。これは税務当局の考え方に基づいています。

⚠️ 注意:税務当局の考え方

税務当局は「不動産所得者にとってのお客様、接待すべき相手は入居者しかいないでしょ」という考え方を持っています。そのため、それ以外の人との飲食は全部ダメですよ、という非常に厳しい見方がされます。

当然ながら、良い物件を購入して満足な賃料収入を得ようとしたら、物件を紹介してくれる営業マンとの関係も非常に大事です。そういった細かいところまで指摘されるのが煩わしいという方には、法人化をお勧めします。

📌 法人化のメリット

法人として法人化して、そこで様々なビジネスを展開していけば、自然と経費の幅が広がります。接待交際費の範囲も個人より広くなるため、大家業など不動産所得で悩んでいる方は法人化を検討する価値があります。

区分接待交際費の範囲
法人広い(年800万円などの上限あり)
個人事業主(事業所得)法人より狭い(事実関係を厳しく見られる)
個人大家(不動産所得)最も狭い(接待相手は入居者のみとみなされる)

📝 このセクションのまとめ

  • 不動産所得の大家は接待交際費の範囲が事業所得よりさらに狭い
  • 税務当局は「接待すべき相手は入居者のみ」という考え方を持つ
  • 経費の範囲を広げたいなら法人化が有効な選択肢

まとめ:個人事業主が接待交際費で税務調査を乗り越えるために

今回の内容を整理すると、法人には年間800万円などの接待交際費の上限がある一方、個人事業主にはその上限がありません。しかし上限がないからといって無制限に計上できるわけではなく、その分、事実関係を細かく見られます。これが最も伝えたいポイントです。

📌 個人事業主が今すぐできる対策チェックリスト

  • 飲食代を5つの区分(自分1人・福利厚生費・会議費・接待交際費・制作所経費)に正しく分類する
  • 全ての飲食代の領収書に「誰と・何人で・どんな目的で」をメモ書きする
  • 接待交際費の売上比率が異常に高くなっていないか定期的に確認する
  • 不動産所得(大家業)の場合は特に接待交際費の範囲に注意する
  • 副業大家は勤務先との経費の二重計上をしない
  • 経費の幅を広げたい場合は法人化を検討する

日々忙しい中で領収書へのメモ書きを習慣にするのは大変ですが、税務調査の際に最大の武器になります。後から手帳やスケジュール管理表で記憶を辿るのは非常に大変な作業になりますので、その場でメモする習慣をぜひ身につけてください。

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!

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