相続・贈与

遺産相続 預貯金の使い込みへの対処法|弁護士が実務から解説

遺産相続 預貯金の使い込みへの対処法|弁護士が実務から解説
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相続発生後に預貯金の使い込みが疑われる場合の対処法を、弁護士の実務経験をもとに解説します。

遺産の使い込みトラブルはなぜ起きるのか

相続トラブルの原因として、遺産の使い込みが疑われるケースは非常に多く見られます。明確に「使い込み」と言い切れない場合でも、亡くなった方と同居していた相続人がいるケースでは、どうしてもお財布が一緒になってしまうことがあります。

お父さん・お母さんが亡くなった後に、「同居していた相続人が財産を使い込んでいたのではないか」と疑わざるを得ない状況が生まれることがあります。よくあるのは、遺産分割の話し合いの場で、預貯金の残高が極端に少ないと判明するケースです。

⚠️ 注意

「そんなはずがない」と感じたまま放置してしまうと、時効(不当利得返還請求権は原則5年〜10年)が成立してしまうリスクがあります。疑いがあれば早期に動くことが重要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 同居していた相続人が財産管理を担っていたケースで使い込みトラブルが起きやすい
  • 遺産分割の場で預貯金残高が極端に少ないと判明するパターンが多い
  • 疑いがある場合は時効に注意し、早期に行動することが大切

まず「銀行の取引履歴」を取り寄せる

預貯金の使い込みが疑われる場合、最初にすべき対応は銀行の取引履歴(入出金履歴)の取り寄せです。ここで多くの方が誤解しているポイントがあります。

📌 ポイント

取引履歴の取り寄せは、相続人1人の権限だけで請求できます。他の相続人の協力は一切不要です。「他の相続人が同意しないと取れない」と思い込んでいる方が多いですが、それは誤解です。

金融機関は基本的に過去10年分の入出金履歴を保存しています。内部資料としてはさらに長期間保存している場合もありますが、相続人からの請求に対して開示されるのは10年分が限界と考えておくとよいでしょう。

10年分すべてを取り寄せる必要はなく、たとえば「使い込みが疑われる相続人が預貯金の管理権限を得た時点」から取り寄せるといった形で、必要な期間を絞って請求することも可能です。

💡 補足:動画では触れていませんが…

取引履歴の請求には手数料がかかる場合があり、金融機関によって書式や必要書類(相続人であることを証明する戸籍謄本など)が異なります。事前に各金融機関の窓口に確認することをお勧めします。

📝 このセクションのまとめ

  • 取引履歴は相続人1人の権限で請求できる(他の相続人の同意不要)
  • 開示される期間は最大10年分が目安
  • 全期間を取る必要はなく、疑わしい時期を絞って請求できる

使い込みと判断できる典型的なケース

取引履歴を確認した際に、どのような状況が「使い込み」と判断されやすいのかを整理します。実務上、判断が難しいケースと明確なケースがあります。

ケース使い込みの判断立証の難易度
被相続人が施設入所中、子どもの1人が預貯金を管理し、施設費用以外に多額の引き出しがある使い込みと判断しやすい比較的容易
被相続人が重度の認知症で施設入所中、毎月50万円ずつ引き出されていた使い込みと判断しやすい比較的容易
被相続人と同居していた相続人が管理し、生活費として不自然な金額が出ているグレーゾーン(判断困難)難しい
100歳超で亡くなった方の最後の10年間に、約2億円が引き出されていた使い込みと判断しやすい金額規模から追求可能

実際の事例として、100歳を超えて亡くなった方の最後の10年間(90歳以上の期間)に、約2億円が引き出されていたケースがありました。子どもの1人が預貯金の管理権限を持っており、その年齢の方が自分のためにそれだけの金額を使うとは考えにくく、使い込みとして追求した事例です。

一方で、「月々の生活費として20万円あれば十分なはずなのに、毎月50万円ずつ減っている」といったケースでは、差額の30万円がおかしいと主張できても、もともとの20万円という基準が正しいかどうかの立証が難しく、判断が難しくなります。

💡 補足:動画では触れていませんが…

被相続人が認知症だった場合、診断書や介護記録(ケアプランなど)を取り寄せることで、「本人が自らお金を使える状態ではなかった」ことを裏付ける証拠になります。医療・介護記録は使い込み立証の重要な補強材料です。

📝 このセクションのまとめ

  • 施設入所中・認知症で本人が使えない状況での多額引き出しは使い込みと判断しやすい
  • 同居ケースはブラックボックスになりやすく、立証が難しい
  • 金額規模が非常に大きい場合は追求しやすくなる

使い込みへの法的な請求方法は2つある

取引履歴から明らかに不適切な引き出しが確認できた場合、その引き出しを行った相続人に対して法的に請求していくことになります。請求の法的構成は主に2つです。

  • 不当利得返還請求:正当な理由なく預貯金を引き出して利益を得たとして、その金額の返還を求める請求
  • 不法行為に基づく損害賠償請求:無断で預貯金を引き出した行為を不法行為として、損害賠償を求める請求
請求の種類法的根拠時効期間
不当利得返還請求民法703条・704条権利を行使できると知った時から5年(主観的起算点)、権利発生から10年(客観的起算点)
不法行為に基づく損害賠償請求民法709条損害および加害者を知った時から3年、行為から20年

「もらったものだ」という反論への対処

使い込みを追求すると、引き出しを行った相続人から「それは被相続人からもらったものだ」という反論が来ることがあります。この場合には、特別受益(被相続人から生前に受けた贈与)として構成し、最終的な遺産分割の際にその金額を差し引くという主張をすることができます。

📌 ポイント:特別受益とは

特別受益とは、相続人が被相続人から生前に受けた贈与や遺贈のことです。遺産分割の際に、特別受益を受けた相続人の取り分からその金額を差し引く(持ち戻し)ことで、相続人間の公平を図る制度です。

💡 補足:動画では触れていませんが…

特別受益の持ち戻しには原則10年の除斥期間(相続開始前10年以内の贈与が対象)が民法改正(2023年4月施行)により設けられています。10年より前の贈与は原則として特別受益として主張できなくなった点に注意が必要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 請求方法は「不当利得返還請求」と「不法行為に基づく損害賠償請求」の2つ
  • 「もらったものだ」という反論には特別受益として構成し差し引く方法がある
  • それぞれ時効期間が異なるため、早期の対応が重要

使い込みの立証が難しい理由と証拠収集のポイント

使い込みの問題は、法的な請求の構成自体はできても、立証が非常に難しいのが現実です。

請求を受けた側からは、次のような反論が返ってくることが多くあります。

  • 「私は引き出していない。知らない」
  • 「亡くなった方のために使ったものだ」
  • 「こういう用途に使った」と領収書なしで口頭で反論してくる

特に、被相続人が施設に入っておらず、最後まで同居していたケースでは、何にお金を使ったのかがブラックボックスになりやすく、本当に不法に引き出したものなのか、被相続人のために使ったものなのかが非常に分かりにくくなります。

📌 ポイント:証拠収集の考え方

使い込み事案のポイントは、「第三者(裁判所)が見て理解できる証拠」をどれだけ集められるかです。裁判所が納得できる客観的な証拠がなければ、請求が認められないリスクがあります。

立証しやすいケース立証しにくいケース
被相続人が施設入所中で、施設費以外の引き出しが多額被相続人と同居していて、生活費が混在している
被相続人が重度の認知症で自分ではお金を使えない状態被相続人がある程度自分でお金を使える状態だった
引き出し金額が被相続人の生活水準から見て明らかに過大引き出し金額が生活費の範囲内とも解釈できる
預貯金管理者が特定の相続人1人に限定されていた複数の家族が財布を共有していた

💡 補足:動画では触れていませんが…

ATMの引き出し記録には、時刻・場所(ATMの設置場所)が記録されていることがあります。被相続人が入院中・施設入所中の日時に引き出しが行われていた場合、「本人が引き出せない状況だった」という証拠になり得ます。

📝 このセクションのまとめ

  • 「知らない」「本人のために使った」などの反論が来ることが多い
  • 同居ケースはブラックボックスになりやすく立証が難しい
  • 裁判所が理解できる客観的な証拠の収集が最重要

逆に「使い込んだ」と疑われた場合の対処法

使い込みを疑う側だけでなく、疑われる側からの相談も多くあります。同居していれば、ある程度お財布が一緒になることは当然あります。食事を一緒に食べていれば食費の負担が混在しますし、生活用品を買ってあげる・買ってもらうということも当然あります。

疑われている場合には、もちろん適切に反論していくことになりますが、そもそも疑われないための事前準備が最も大切です。

📌 ポイント:疑われないための事前対策

被相続人が生前のうちから、何にいくら使ったかの記録・証拠資料を残しておくことが重要です。特にある程度まとまった金額を使う際には、後で説明できるように領収書・レシート・メモ等の証拠を準備しておきましょう。

  • 介護・医療費の領収書・レシートを保管しておく
  • 大きな支出は目的・金額・日付をメモに残す
  • 家計簿・支出記録をつけておく
  • 被相続人本人からの指示があった場合はその記録を残す
  • できれば銀行振込など記録が残る方法で支払いを行う

💡 補足:動画では触れていませんが…

被相続人が認知症になる前に、財産管理の方法について公正証書による任意後見契約を結んでおくことで、透明性のある財産管理が可能になります。後々の使い込み疑惑を防ぐ有効な手段の一つです。

📝 このセクションのまとめ

  • 同居による財布の混在は自然なことだが、記録を残すことが大切
  • 生前から支出の証拠資料を残しておくことで疑われるリスクを減らせる
  • 大きな支出ほど、後で説明できる証拠の準備が必要

📋 この記事を読んだら次にやること

  1. 被相続人の取引があった金融機関を全て洗い出し、相続人として取引履歴の請求手続きを確認する
  2. 取り寄せた取引履歴を確認し、不自然な引き出し(時期・金額・頻度)がないかをチェックする
  3. 使い込みが疑われる具体的な証拠(金額・時期・状況)を整理し、相続専門の弁護士に相談する
  4. 疑われる立場の場合は、支出の領収書・記録を今すぐ整理・保管する

🔄 最新アップデート

2023年4月施行の改正民法により、特別受益の持ち戻し免除の意思表示がなくても、相続開始前10年以内の贈与のみが特別受益として考慮されることになりました(民法904条の3)。使い込みを「もらったものだ」と反論された場合に特別受益として主張する際は、この10年ルールを念頭に置く必要があります。

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 弁護士 髙橋賢司の遺産相続専門チャンネル の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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