相続・贈与

親の介護と相続問題|寄与分の認定ハードルと対策を税理士が解説

親の介護と相続問題|寄与分の認定ハードルと対策を税理士が解説
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介護の苦労が報われない?寄与分の実態と相続トラブルを防ぐ3つの対策を解説します。

相続トラブルで最も揉める原因:親の介護と相続問題

相続トラブルのうち、おそらく最も揉める原因となるのが、この「親の介護と相続の問題」です。今回は、どういうメカニズムで問題が起きてしまうのかというところと、その対策について詳しく解説していきます。

まず、よくいただくご相談をご紹介します。「私は認知症の母の介護を一人でしてきました。それなのに兄から、遺産は法定相続分通りに相続すると言われています。絶対に納得いきません。」これは大変多くの方からいただくご相談です。親の介護をずっと一人でやってきたのに、遺産は半分ずつに分けると言われる。絶対に納得いかない。これが法律的にはどうなるのか、というお話です。

寄与分とは何か:民法上の制度と基本的な考え方

まず皆さんに知っていただきたいキーワードが「寄与分」です。寄与分とは何かというと、相続人の中に、被相続人(亡くなった方)の財産の維持または増加に特別の寄与をした者がある時は、その者の相続分に寄与分を加算するという民法の取り扱いがあります。

つまり、生前中に亡くなった親の介護を一生懸命やっていた人は、他の相続人よりも多く遺産を相続することができる。これを「寄与分」と呼びます。

「ああよかった、こういう法律があるんだったら、私の介護の苦労も報われる!」と思った方もいらっしゃると思います。しかし実は、この寄与分という制度は法律上あるのですが、認めてもらうためのハードルが非常に高く、なかなかこれが実現しないというのが実際の世界なのです。

寄与分が認められるための厳しい要件

東京家庭裁判所から出ている資料によると、寄与分が認められるためには以下の要件を満たしていることが必要とされています。

まず、その寄与行為が被相続人にとって必要不可欠であったこと特別な貢献であること被相続人から対価を得ていないこと寄与行為が一定の期間あること片手間でなくかなりの負担を要していること、そして寄与行為と被相続人の財産の維持または増加に因果関係が認められることなどです。その要件が一つでも欠けると、認めることが難しくなります。

さらに、客観的な裏付け資料が提出されていることも求められます。寄与分を主張するには、誰が見ても最もだとわかる資料を提出する必要があります。資料の裏付けなしに主張するだけでは、解決を長引かせてしまうだけとされています。

療養看護型の寄与分:具体的な認定ポイント

寄与分にはいろんな形がありますが、最も多い形が「療養看護型」です。相続人が病気療養中の被相続人の療養・介護に従事していた場合がこれにあたります。いくつか重要な条件があります。

まず、入院・施設へ入所していた期間は、原則として寄与分は認められません。例えば施設に入っている場合や入院している期間中は、その施設のヘルパーや病院の看護師がいるので、あなたが直接介護したわけではないという考え方から、その期間中の寄与分は原則として認められないのです。たくさん通っていても、たくさんお見舞いに行っていても、残念ながらそうなってしまいます。

次に、特別な貢献であることが必要です。被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を超える貢献、つまり「特別の寄与」であることが必要です。同居やそれに伴う家事分担だけでは特別の寄与とは言えません。

また、無報酬であることも条件です。対価をもらっていてはダメで、その期間無償で奉仕していたことが条件になります。

さらに、継続性として、少なくとも1年以上必要としている場合が多いとされています。

そして特に厳しいのが専従性の要件です。仕事の傍ら通って介護をした場合などは、親族としての協力の範囲であって特別の寄与とは言えません。介護に専念していたと言えることが必要とされています。

寄与分が認められても相続割合は変わらない?認められた場合の計算方法

寄与分が認められた場合、どれくらい多く相続できるのかについても、ぜひ知っておいていただきたいことがあります。

例えば、相続人がA子・B子・C子の3人だったとして、A子さんが一生懸命介護をして寄与分が認められたとします。多くの方は、本来は法定相続分3分の1ずつのところが、例えば「私は2分の1で、この人たちは4分の1ずつ」というように割合が変化すると思われがちです。

しかし実はそうではないのです。寄与分が認められた場合であったとしても、多く相続できる分というのは、「プロのヘルパーに依頼していたとしたらこのくらいのコストがかかりましたよね、あなたが介護をしたからその費用が浮きましたよね、だからその分の金額を多く相続できます」という、いわゆる実費精算的な形での価格しか認められてこないのです。

ですから、この割合分を多く相続できるかというとそういうわけではありません。寄与分という制度はそもそも認められるかどうかというハードルがあり、認められたとしても自分の希望に見合った額に届かないということがあります。この寄与分という制度に過度な期待を置いてしまうのは危険で、あまりここに軸足を置いて考えない方がよいかと思います。

2019年新設「特別の寄与」制度:相続人以外の介護貢献も対象に

また、2019年7月1日に「特別の寄与」という新しい制度が始まっています。これは、相続人ではない方、例えば子供の配偶者(相続人ではありません)が献身的に介護を行っていたとしても、相続人ではないので遺産を相続することができなかった、そういった立場の方が寄与料として請求できるという制度です。

まだこの制度が始まったばかりで、裁判例などの蓄積はまだ多くない状態ですが、おそらく認められる金額や要件の考え方については、先ほどご紹介した寄与分と同じような考え方になっていくと思いますので、ご参考にしていただければと思います。

寄与分に頼らない!介護した人が多く相続するための3つの対策

では、寄与分に期待できないとしたら、両親の介護を一生懸命やっているのに他の相続人と比べて多く相続できないのか、それは悔しいという方向けに、対策をご紹介していきます。

対策①:生前贈与+特別受益の持ち戻し免除

一つ目はシンプルに生前贈与です。お母さんが元気なうちに「介護よろしくね」ということで、介護を献身的にやってくれるなら先に生前贈与で渡しておくという方法で、遺産を前渡しすることができます。

ただし、贈与というのは遺産の前渡し=「特別受益」という制度があります。いくら生前贈与したとしても、結果的に多く相続できるかどうかはまだわかりません。そこで、「持ち戻さなくていいわよ」という「特別受益の持ち戻し免除の意思表示」という制度とセットで行うことによって、結果としてその方に多くの財産を残すことができます。

ただし、この方法には一つ懸念点があります。先に贈与してしまったら、その後に介護をしてくれなくなるのではないか、という懸念がお母さん側には残ります。財産を先に渡してしまうと、もう貰ったからいいわということで、その後介護しなくなってしまうリスクがずっと付きまとうことになってしまいます。

対策②:遺言書を使った対策

二つ目の対策が遺言書を使った方法です。介護を献身的にやってくれるなら、あなたに多くの遺産を残す内容の遺言書を書く、という約束のもと遺言書を書くのです。自分が亡くなった時に、介護をしっかりやってくれた方に遺産を多く残すという遺言書があれば、結果としてその方に多くの財産を残し、そうでない方には少なめに残すことができます。

ただし、この対策にも一つ懸念点があります。遺言書は何度でも書き換えられてしまうのです。本当に約束は守られるのだろうか、ということを今度は子供側が心配することになります。口約束では「遺言書しっかり書くからね」と言われていても、遺言書は1回書いてもその後に撤回することは容易にできますし、何度でも書き換えることができてしまいます。本当に約束を守ってくれるのかな、という心配事がずっと残ってしまうのです。

対策③:負担付死因贈与契約

では、法律的にしっかりとした形で残したいというのであれば、この方法がおすすめです。それが「負担付死因贈与契約」です。聞きなれない方が非常に多いと思いますが、贈与契約の一種です。

具体的に言うと、「介護を献身的にやってくれるんだったら、私が死んでしまった時に金1,000万円をあげると約束する」という形で契約を結びます。一見遺言書に非常に似ていますが、これはあくまで遺言ではなく贈与契約という契約の一種です。

遺言書との最大の違いは、遺言書は何度でも書き直しができ、撤回もいつでもできますが、この負担付死因贈与契約は、一度契約を締結した後にある程度介護などがすでに行われている状況下になれば、片方の意見で撤回することができない契約なのです。ある程度介護をやった状態であれば、お母さんが「やっぱり贈与契約は無効にするわ」と一方的には言えない契約です。2人の約束がしっかり守られるという意味では、負担付死因贈与契約という方法もある意味おすすめになります。

ただし、「ある程度献身的にやっていた」のある程度ってどんなものなのか、最後までちゃんとやっていたかどうかの監督は誰がするのか、という点が実際問題になります。もしこれをやるとしたら、トラブルを防止するために弁護士などの専門家に契約書の作成を依頼し、契約が履行されているかどうかのチェックなどもお願いするといいでしょう。

認知症の親の通帳から現金を引き出している疑い:調べる方法はあるか

ここで、もう一つよくいただくご相談をご紹介します。「認知症の母と暮らしていた妹が、母の通帳から多額の現金を引き出して隠している疑いがあります。通帳を見せてくれと言っても応じてもらえません。」というものです。

先ほどは認知症の母と一緒に暮らしている方からのご相談を紹介しましたが、その相手方、つまりそうではない側の方からのご相談もよく受けます。一緒に暮らしているご家族が、認知症になってしまったお母さんの通帳からお金をどんどん引き出して、現金で隠してしまうということが実際にあります。

このようなシチュエーションにおいて、妹側が通帳を見せてくれない場合、これを解決する方法はあるのでしょうか。お母様が亡くなった後、その通帳の履歴を調べることはできるのでしょうか。

答えは「できます」相続発生後であれば、相続人は単独で被相続人の銀行の取引履歴を取得することが可能です。どの銀行かということさえわかれば、亡くなった方の預金通帳の履歴を取り寄せることができます。そこでお金の使い込みなどを調べる方法は実際にあります。ですので、通帳を見せてくれないという場合でも、そういった方法で調べることができるのです。

なぜ使い込みが起きるのか:問題の背景と予防策

ここで、なぜこういうことになってしまうのかという問題の背景についても改めてお伝えします。やはり両親の介護というのはすごく大変です。先ほど生前贈与・遺言書・負担付死因贈与契約という方法をお話しましたが、これらは全てお母さんが元気なうちでないとできないのです。

すでに寝たきりの状態になってしまった、認知症の状態になってしまったという場合、今から遺言書を書いてもらうことはできませんし、生前贈与もできません。そうなってしまってかつ、寄与分という法律があるもののあまり機能しないとなると、正直介護をした方が泣き寝入りになってしまうということが世の中的には多いのです。

そういった状況がわかると、自分としてはすごく苦しいので、生活費として引き出す金額の中からちょっとずつ自分の口座や現金で隠したくなるという気持ちも、人間ですからわかる部分はあります。しかしやはり、亡くなった方のお金は横領扱いになってしまいます。お互いの意思確認なしに隠したりすると、それは「不当利得」として戻さなければいけないことになってしまいます。ですので、こういったところはその問題の背景にあるものもしっかり考えて、ご家族で協力していくことがすごく大事になります。

また、「現金で引き出してしまえばわからないや」と思われる方も結構多いのですが、先ほどご紹介した方法などによって、過去の引き出しは相続発生後に明るみになることが非常に多くあります。現金にしてしまえばわからないでしょという考えも、大きなトラブルの原因になりますので、そこは控えた方がいいです。

法律の改正で、寄与分がもっと柔軟に認められる制度が導入されたらいいなと、専門家としては思っております。

使い込みを疑われないための実践的な予防策:介護日誌・領収書の記録

「私は本当に使い込みなんてしていない」のに疑われてしまう人も結構多いのです。そういったトラブルにならないようにするために、私がいつもおすすめしているのがこちらです。

ノートを用意して、ご両親の口座からお金を現金として引き出すのであれば、何月何日・食費としていくら引き出しました、というメモと、その領収書を貼り付けていくという方法です。

「1円単位で合わせなくてはいけないですか?」という質問もよく受けますが、そんなことはありません。こういったものをしっかり作っているんだという姿勢がご家族内で共有されれば、疑心暗鬼にもなりませんし、結果として「こういうふうにしっかりやってくれてありがとう」ということにもなります。きっちりしたものでなくてもいいと思います。こういったノートでメモ書きを残しておくだけでも全然変わってきますので、ぜひやってみていただければと思います。

まとめ:ご家族みんなで協力しながら専門家も活用を

親の介護をしていた方が多くの財産を相続したいという気持ちは大変よくわかります。理想としては、遠隔地に住んでいるなどの事情はあるものの、ご家族みんなでご両親のサポートをしていくことが理想かなと思います。

みんなで協力しつつ、法律でしっかり守るところは守りつつ、明確にすべきところは明確にしつつ、専門家に相談すべきところは専門家に相談しながら、皆さんやっていただければと思います。

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 円満相続ちゃんねる の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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