相続税で後悔しない4つの対策を税理士が解説|落とし穴と正しい順番
相続税対策は順番が命。間違えると逆効果になる落とし穴を徹底解説します。
そもそも相続税とは?基礎知識を確認しよう
相続とは、人が亡くなった際にその方が持っていた遺産を相続人が引き継ぐことです。ただし、相続税は亡くなった人全員にかかるわけではありません。一定額以上の財産を残した人にだけかかる税金です。
その一定額のことを「基礎控除」といい、現在の計算式は以下のとおりです。
| 基礎控除の計算式 | 具体例(相続人3人の場合) |
|---|---|
| 3,000万円 + 600万円 × 相続人の人数 | 3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円 |
例えば、亡くなった方がお父さんで、相続人がお母さん・長男・次男の3人であれば、基礎控除は4,800万円となります。この金額を超えた部分に相続税がかかります。
📌 ポイント:相続税がかかる人は意外と少ない
日本国内で100人が亡くなった場合、相続税を実際に払っているのは約10人(10%)です。ただし地域差があり、東京近郊ではこの割合がかなり高くなります。
相続税がかかる方については、亡くなった日から10ヶ月以内に税務署へ相続税の申告書を提出し、相続税を納める必要があります。申告しないと税務署から連絡が来ることになります。
📝 このセクションのまとめ
- 相続税は全員にかかるわけではなく、基礎控除(3,000万円+600万円×相続人数)を超えた場合にかかる
- 相続税を払っているのは亡くなった方の約10%
- 申告期限は亡くなった日から10ヶ月以内
相続発生後にやらなければいけない3つのこと
相続が発生したら、やるべきことが非常にたくさんあります。特に重要な3つを順番に確認しましょう。
- 相続人が誰かを確認する
- 亡くなった方の財産(プラスとマイナス)を確認する
- 各種期限を守る
① 相続人の確認
亡くなった方の配偶者は必ず相続人になります。子どもがいれば子どもも相続人です。相続人という権利を持っている人だけが遺産を相続することができ、どんなに仲が良くても相続人でない人は遺産分割に参加できません。
② 財産の確認(プラスとマイナス両方)
預金・株式・投資信託・土地・家など、どういった財産があるかを確認します。特に重要なのが、亡くなった方が借金をしていなかったかどうかの確認です。知らないまま相続してしまうと、その借金も引き継いで自分が払わなければならなくなります。
⚠️ 注意:相続放棄はプラスもマイナスも両方放棄
マイナスの財産(借金)を相続したくない場合は、自分が相続人になったと知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ「相続放棄」の手続きをする必要があります。
ただし、「プラスの財産は相続するけれどマイナスは放棄したい」はできません。放棄する場合はプラスもマイナスも両方放棄しなければならず、一度放棄すると撤回もできません。3ヶ月以内にしっかり財産の全体像を把握することが必須です。
③ 各種期限を守る
相続後の主な期限は以下のとおりです。
| 期限 | 手続き内容 |
|---|---|
| 3ヶ月以内 | 相続放棄の手続き(家庭裁判所) |
| 4ヶ月以内 | 亡くなった方の所得税の確定申告(準確定申告) |
| 10ヶ月以内 | 相続税の申告・納付 |
例えば、亡くなった方が不動産賃貸業を営んでいてアパート収入があった場合は、1月1日から亡くなった日までの家賃収入について、4ヶ月以内に確定申告(準確定申告)が必要です。
📝 このセクションのまとめ
- まず相続人を確認し、プラス・マイナス両方の財産を把握する
- 借金を相続したくなければ3ヶ月以内に相続放棄の手続きが必要
- 準確定申告(4ヶ月)・相続税申告(10ヶ月)の期限を必ず守る
相続税対策の全体像:4つのステップと正しい順番
相続税対策にはさまざまな種類がありますが、行うべき順番があります。この順番を間違えると逆効果になったり、家族間のトラブル・争いに発展することもあります。
大きく分けると以下の4つのステップがあります。
| 順番 | 対策の種類 | 内容 |
|---|---|---|
| ① | 現状分析 | 今亡くなった場合の相続税額・遺産分割の見通しを把握する |
| ② | 遺産分割対策 | 遺産をどのように分けるかを決める(最も重要) |
| ③ | 評価の引き下げ対策 | 財産の種類を変えて相続税評価額を下げる |
| ④ | 生前贈与対策 | 年間110万円などを先に渡していく |
📌 ポイント:相続税対策で最も重要なのは「遺産分割対策」
生前贈与や評価引き下げは分かりやすくてすぐ始めたくなりますが、遺産分割対策(②)が固まる前に進めると本当に大変なことになります。まず遺産の分け方を決めてから、その後の対策に進むことが鉄則です。
📝 このセクションのまとめ
- 相続税対策は「現状分析→遺産分割→評価引き下げ→生前贈与」の順番で行う
- 順番を間違えると逆効果になる可能性がある
- 遺産分割対策が全体の中で最も重要
【ステップ②】遺産分割対策の4つの具体策
遺産をどのように分けるかによって、相続税は大きく変わります。ここでは特に重要な4つの対策を解説します。
① 小規模宅地等の特例(最大80%引き)
亡くなった方が住んでいた自宅について、配偶者か同居している親族が相続すると、相続税の評価額を80%引きで計算できる特例です。仮に評価額が1億円の自宅でも2,000万円として計算できるため、減額の幅が非常に大きい制度です。
例えば、夫婦2人暮らしであれば、夫が亡くなった際に自宅をお母さん(配偶者)が相続することで80%引きが適用されます。その後、お母さんが亡くなる際(2次相続)に同居している子どもがいれば、その子どもが相続することでもう一度この特例を使えます。うまく活用することで、全体の相続税負担を大きく抑えることができます。
② 配偶者の税額軽減(配偶者控除)
夫婦間の相続であれば、最低でも1億6,000万円まで相続税が課税されない制度があります。夫婦が協力して築いた財産に税金をかけるのはかわいそうだという考え方から設けられた制度です。
⚠️ 注意:配偶者控除の使いすぎは2次相続で逆効果になる
配偶者控除は一見お得に見えますが、使いすぎると2次相続(配偶者が亡くなる際の相続)で税金が跳ね上がる可能性があります。相続税は相続人が多いほど税金が少なくなる性質があります。1次相続では相続人が複数いても、2次相続では子どもだけになり相続人が減るため、税負担が大きく増えることがあります。配偶者にいくら渡すかは慎重に検討する必要があります。
なお、相続税が0円になる場合でも相続税の申告は必要ですのでご注意ください。
③ 配偶者居住権(2020年スタートの新制度)
2020年に始まった新しい制度で、自宅の権利を「住む権利(配偶者居住権)」と「それ以外の権利(所有権)」に分けて相続させることができます。例えば、住む権利はお母さん、所有権は子どもに相続させる形です。不動産の所有権は子どもが取得しますが、お母さんが亡くなるまでずっとそこに住み続けられる強力な権利が保障されます。この制度を活用すると相続税の負担を抑えられる場合があります。
④ 土地の分筆
元々大きめの土地を持っている方向けの対策です。例えば、十字路の角に大きめの土地があるとします。2つの道路に接している土地は日当たりや使い勝手が良く、評価が高くなります。
そこでこの土地を分筆(A土地・B土地に分ける)します。A土地は長男、B土地は次男が相続する形にすると、B土地は1つの道路にしか接しなくなるため、B土地の評価額が下がります。分筆によって評価を引き下げることができる対策です。
📝 このセクションのまとめ
- 小規模宅地等の特例で自宅の評価を最大80%引きにできる
- 配偶者控除(1億6,000万円まで無税)は使いすぎると2次相続で逆効果になる
- 配偶者居住権を活用すると相続税負担を抑えられる場合がある
- 大きな土地は分筆することで評価を引き下げられる
【ステップ③】評価の引き下げ対策:財産の種類を変えて節税する
評価の引き下げ対策とは、現金・預金をより相続税評価額が低い財産に組み換えることで、課税対象額を下げる方法です。例えば、定期預金5,000万円はそのまま5,000万円として評価されますが、財産の種類を変えることで評価額を下げることができます。
① 生命保険の活用
生命保険の死亡保険金には非課税枠があります。計算式は「500万円 × 法定相続人の人数」です。
| 相続人の人数 | 生命保険の非課税枠 |
|---|---|
| 1人 | 500万円 |
| 2人 | 1,000万円 |
| 3人 | 1,500万円 |
| 4人 | 2,000万円 |
例えば相続人が3人の場合、1,500万円分の預金を生命保険に変えると、その1,500万円分の相続税が0円になります。この非課税枠を使い切っていない方は、ぜひ生命保険への加入を検討してください。
② 土地の評価にこだわる
不動産は預金と比べて相続税評価額が割安になります。例えば5,000万円で購入した土地の相続税評価額は約4,000万円程度になることが多いです。具体的には「路線価(道路1本1本に設定された価格)× 土地の面積」で評価額が計算されます。
さらに、土地の形状によって減額が認められています。正方形でなく変形した土地や、お墓の隣の土地(約10%減額)など、さまざまな減額要素があります。税理士が現地を確認して減額要素を洗い出すことで、適正かつより低い評価額を税務署に認めてもらうことができます。
③ 不動産(マンション)の購入
まとまった現金(例:1億円)を文筆マンションに変えると、相続税の評価額は約6,000万円(約60%)になります。現金のまま持っているより評価を大きく下げられます。なお、マンションの評価方法は近年改められ、現在は概ね60%程度になるよう見直されています。
④ 資産管理会社(法人)の活用
これはやや高度な相続税対策ですが、地主さんなどで行われる方法です。アパートを複数お持ちの方が個人のままでいると、家賃収入が毎月入ってきて財産がどんどん増えていき、将来の相続税もどんどん増えていきます。
そこで会社(資産管理法人)を設立し、個人が持っているアパートを会社に売却します。そうすると個人への家賃収入が止まり、代わりに法人に蓄積されていきます。個人の財産の増加をストップさせることができるため、時間が経てば経つほど効果がじわじわと出てくる対策です。
⑤ 相続税の非課税財産を活用する
相続税がかからない財産を生前に購入しておくことで、課税対象額を減らす方法です。代表的なものはお墓です。生前にお墓を購入しておくと、その分の預金が減り、相続税の課税対象額が小さくなります。
⚠️ 注意:お墓のローンは相続税計算から控除できない
お墓は生前に購入した方が税金上お得ですが、お墓にかかるローンは相続税の計算からマイナスできません。基本的にキャッシュ(現金一括)で購入することが条件となります。
⚠️ 注意:評価引き下げに集中しすぎると遺産分割でもめる原因に
現金・預金は評価が高いため相続税上は不利ですが、最も分けやすい財産でもあります。家族仲が悪くてもキャッシュがあれば調整しやすいです。一方、相続税評価が割安になるからといって不動産に一極集中させてしまうと、分けづらくなって争いが収まらなくなることもあります。評価引き下げはバランスを考えて行うことが重要です。
また、遺産分割対策が固まる前に評価引き下げを進めるのは危険です。必ず遺産の分け方を決めてから取り組んでください。
📝 このセクションのまとめ
- 生命保険で「500万円×相続人数」の非課税枠を活用する
- 土地は税理士が現地調査して減額要素を洗い出すと評価を下げられる
- 現金をマンションに変えると評価額が約60%程度に下がる
- 資産管理法人を活用すると個人の財産増加を止められる
- お墓などの非課税財産を生前購入するのも有効(ローンは控除不可)
- 評価引き下げは遺産分割対策が固まってから行うこと
【ステップ④】生前贈与対策:コツコツ渡して相続財産を減らす
遺産分割対策と評価引き下げ対策が整った後に検討するのが生前贈与対策です。残っている財産に対して、さらに相続税の負担を抑えていきたい方に有効な手段です。
① 年間110万円の贈与(相続時精算課税制度の活用)
別の動画でも解説していますが、相続時精算課税制度を選択すると、年間110万円までは完全に非課税で贈与することができます。贈与した翌日に亡くなってしまったとしても、相続税も贈与税もかかってこない完全な非課税枠です。コツコツと贈与していきたい方には、この制度の選択をお勧めします。
② アパートの贈与(不動産収入をお持ちの方向け)
賃貸不動産をたくさんお持ちの方は、家賃収入が毎月入ってくるため財産が増え続け、将来の相続税もどんどん増えていきます。そこでアパート部分だけを先に子どもに贈与してしまうという方法があります。贈与後に発生する家賃は子どものものになるため、時間が経てば経つほど効果がじわじわと出てきます。検討の価値がある対策です。
③ 贈与の特例制度の活用
贈与税にはさまざまな特例制度があります。特例の条件を満たす方は積極的に活用することをお勧めします。具体的な特例制度については別の動画でも詳しく解説しています。
📝 このセクションのまとめ
- 相続時精算課税制度を選択すると年間110万円まで完全非課税で贈与できる
- 不動産収入がある方はアパートを先に贈与することで財産の増加を止められる
- 贈与税の各種特例制度も条件を満たせば積極的に活用する
- 生前贈与は遺産分割対策・評価引き下げ対策の後に検討するのが鉄則
最も効果的な相続税対策は「家族の仲を良くすること」
ここまでさまざまな相続税対策を紹介してきましたが、最も相続税の負担を抑える対策は何かというと、答えはシンプルです。
📌 最大の相続税対策:円満な家族関係を築いておくこと
今まで紹介してきた対策は、基本的に家族仲が良くなければ実行できません。遺産の分け方をどうするか、配偶者にどれくらい相続させるか、これらを自由に決められるのは相続人全員が同意している場合だけです。家族仲が悪いと、相続税が少なくなる最適な分け方を選べなくなります。
ご家族の仲が円満であれば、最適な分け方をみんなで決めていけるため、円満相続が1番の税金対策と言えます。
相続税対策にはさまざまなメニューがあり、1つ1つにメリットとデメリットがあります。繰り返しになりますが、評価の引き下げ対策と生前贈与対策は分かりやすいのですぐ始めたくなりますが、まず遺産分割対策をしっかり固めることが最重要です。全体を俯瞰してから取り組むことをお勧めします。
📝 相続税対策 全体まとめ
- 相続税対策は「現状分析→遺産分割→評価引き下げ→生前贈与」の順番で行う
- 遺産分割対策が最重要:小規模宅地等の特例(80%引き)と配偶者控除の使い方がカギ
- 評価引き下げ:生命保険・不動産・資産管理法人・非課税財産を活用する
- 生前贈与:相続時精算課税制度で年間110万円を非課税で渡せる
- 最大の対策は家族の仲を良くしておくこと
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 円満相続ちゃんねる の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 円満相続ちゃんねるを応援しています!
関連記事
相続税で後悔しない4つの対策を税理士が解説!順番を間違えると逆効果
賃貸物件(アパート)の贈与は相続税対策になる?メリット・デメリットを税理士が解説
土地の相続税評価額の計算方法を税理士が徹底解説!路線価方式・倍率方式の違いとは
東京エリア
千代田・中央・港区から副都心各区まで、東京の優良税理士法人ランキング
関西エリア
大阪・京都・兵庫・岡山など関西圏の信頼できる税理士法人ランキング
関東エリア
首都圏の神奈川・埼玉・千葉・北関東で実績のある税理士法人ランキング
中部エリア
製造業の集積地、中部・北陸圏で企業支援に強い税理士法人ランキング
九州・沖縄
九州・沖縄地域で地域密着型サービスに定評のある税理士法人ランキング
その他地域
北海道・東北・中国・四国地方の地域に根ざした税理士法人ランキング
