税務調査で狙われる人の特徴とは?AI導入で相続税の課税リスクが高まる理由を税理士が解説
2026年9月からAIを活用した税務調査が始まります。相続税の追徴課税率は驚きの82%。狙われる人の特徴と仕組みを詳しく解説します。
2026年9月から始まるAI税務調査とは?
風の噂で聞いたという方も多いかもしれませんが、2026年9月から相続税の税務調査にAIが導入される予定です。これは国税庁が肝入りで進めているプロジェクトで、すでに大々的に発表されています。
「AI導入で追徴課税される可能性が高くなるのでは?」という不安の声もありますが、答えはシンプルで、より可能性は高くなります。なかなか大変なことが始まろうとしています。
📌 ポイント
2026年9月のAI導入は国税庁が公式に発表しているもので、相続税の税務調査の「先定(調査対象の選定)」にAIを活用していく方針です。これにより、これまで人間の目では拾えなかった情報も検知されるようになります。
📝 このセクションのまとめ
- 2026年9月からAIを使った税務調査が始まる予定
- 国税庁が公式に発表している大規模なシステム刷新
- 相続税の調査対象選定(先定)にAIが活用される
相続税の税務調査はどのように行われるのか
そもそも相続税の税務調査とはどういうものでしょうか。「財産を隠しているのではないか」「本当に税金を払っているのか」「お金持ちなのではないか」といった疑いがある人に対して、税務調査が行われます。
調査の結果、追加で財産が見つかれば、追加で相続税を払ってもらうというのが基本的な流れです。そして、誰を調査対象にするかという「先定」のプロセスに、これからAIが本格的に活用されていきます。
ただし、AIより前に、すでにIT技術はバリバリに使われています。その中心にあるのがKSKシステム(国税総合管理システム)という超巨大なデータベースです。
📌 KSKシステムとは
国税庁が保有する超巨大なデータベースで、日本国民1人1人がどれくらいの財産を持っているかという金額が登録されています。国税庁の職員は、見ようと思えばあなたの財産額を確認できます。
KSKシステムには以下のような情報が蓄積されています。
- 会社員であれば毎年の給与の源泉徴収票
- 自営業者であれば個人の確定申告書(収入の推計が可能)
- 不動産を購入した場合の法務局への登記情報
- 住宅ローンの抵当権情報(いくら借入しているかまで把握)
- 年齢別の平均的な生活費の推計データ
これらのデータが蓄積された結果、相続税の申告書が提出されると、KSKシステムに登録されている財産額と申告書に記載された財産額が自動的に照合されます。
⚠️ 注意
例えばKSKシステム上では2億円の財産を持っているとされているのに、相続税の申告書には5,000万円しか記載されていない場合、差額の1億5,000万円はどこに行ったのかという「ブラックリスト」に自動的に入ります。こうした差異がある人が調査対象の候補として浮かび上がってきます。
このリストが自動で生成された後、実際に調査に行くかどうかを判断する「申告審理」の担当者が手動で振り分けを行います。「ここは怪しい、調査決定」「ここはまあいいかな」という形で選別していくのが現在の仕組みです。そして、この振り分けプロセスにも、2026年9月からAIが導入されていきます。
📝 このセクションのまとめ
- KSKシステムで国民一人ひとりの財産額が管理されている
- 給与・不動産・ローン情報などが自動的に蓄積される
- KSKの財産額と申告額に差があると調査候補リストに入る
- 最終的な調査対象の選定は人間が行っているが、AIが加わる
相続税の税務調査の実態:驚きの数字
相続税の税務調査がどれくらいの頻度で行われるか、ご存知でしょうか。
| 調査の種類 | 内容 | 発生頻度 |
|---|---|---|
| 税務調査(実地調査) | 調査官が自宅に来て行う本格的な調査 | 10件中約2件 |
| 簡易な接触(行政指導) | 電話で「申告が間違っているので修正してください」と連絡 | |
| 合計 | 実地調査+簡易な接触 | 約20%(10件中2件) |
相続税の申告をした場合、10件中約2件で何らかの調査または行政指導が行われています。これは所得税の確定申告や法人税の調査と比べて非常に高い割合です。
なぜ相続税はこれほど調査率が高いのでしょうか。所得税の確定申告は毎年行われるため、「今年ダメでも来年また見られる」という側面があります。しかし、相続税の申告は一生に1回です。このタイミングを逃したらもう確認できないため、国税庁としても力を入れて調査しているのです。
⚠️ 注意
一度調査に選ばれた場合、追加で税金を払うことになる確率はなんと82%です。「半々くらいでは?」と思う方も多いですが、実際にはほぼ8割の確率で追徴課税が発生します。調査の連絡が来た時点で、すでに相当な裏付けが取られていると考えるべきです。
なぜ調査前から勝負がついているかというと、調査官は「調査しますよ」という電話をかける前に、すでに以下の情報を調べ終えているからです。
- 亡くなった方の銀行口座の過去10年分の取引履歴
- ご家族の通帳(過去10年分)
- 家族への送金履歴(贈与税の申告漏れがないか)
- 亡くなる前の多額のATM現金引き出し履歴(相続税の申告書に現金として記載されているか)
これだけの裏を取ってから「調査に伺います」と電話してくるわけですから、追徴課税率が82%になるのも納得です。
📝 このセクションのまとめ
- 相続税は10件中約2件が調査または行政指導の対象になる
- 一度調査が入ると82%の確率で追徴課税が発生する
- 調査官は電話前に過去10年分の銀行口座を確認済み
- 相続税は一生に1回のため、所得税より調査に力が入っている
税務調査の連絡が最も多い時期:7月に注意
税務調査の連絡は特定の時期に集中します。特に7月は最も気合が入っている時期です。
理由は、税務署の職員にとって7月1日が1年の始まりだからです。一般企業では4月が年度始まりですが、税務署は7月1日スタートです。この時期に配属換えや転勤があり、新しい職場で「悪い納税者をなんとかするぞ」という気持ちで仕事を始めます。
📌 ポイント
税務調査の連絡が来やすいのは7月10日前後です。税理士事務所では毎年この時期になると「どこどこ税務署から電話が来ました」という連絡が相次ぎ、ピリッとした雰囲気になります。7月に税務署からの電話が来たら、税務調査の可能性を念頭に置いて対応しましょう。
📝 このセクションのまとめ
- 税務署の年度始まりは7月1日
- 7月10日前後に税務調査の電話連絡が来ることが多い
- 7月の調査は特に気合が入っている
KSK2とは何か:新システムの4つのコンセプト
2026年の夏から始まる新システムは「KSK2」と呼ばれており、AIが内蔵されます。国税庁が公表しているシステム高度化のコンセプトは以下の4点です。
| コンセプト | 内容 |
|---|---|
| ① 書面中心からデータ中心へ | 紙ベースの事務処理をデータ処理に移行。ペーパーレス化が進む |
| ② 縦割りシステムの解消 | 所得税・法人税・相続税・消費税など税目別に分かれていたシステムを統合し、納税者別に横断的にデータを確認できるようにする |
| ③ メインフレームからオープンなシステムへ | 大型コンピューターからの脱却。ノートパソコンなどでもKSKシステムが使えるようになる可能性がある |
| ④ AIの内蔵 | 調査対象の先定(選定)にAIを活用し、より精度の高い調査対象の絞り込みを行う |
特に注目すべきは②の縦割り解消です。これまでは所得税の情報、法人税の情報、相続税の情報がそれぞれ別々のシステムで管理されていました。それが統合されることで、ある納税者についてあらゆる税目の情報を横断的に確認できるようになります。
また③のオープンシステム化により、調査官が調査先(自宅など)でリアルタイムにKSKシステムにアクセスできるようになる可能性があります。調査を受けている最中に、調査官がその場でシステムを使って申告内容の真偽を確認できるという、非常に高度な調査が実現するかもしれません。
📝 このセクションのまとめ
- KSK2はペーパーレス化・縦割り解消・オープン化・AI内蔵の4つを柱とする
- 税目をまたいだ横断的なデータ確認が可能になる
- 調査官が出先でリアルタイムにシステムを使える可能性がある
AIより怖い?ベテラン調査官の「勘」という最強の武器
KSKシステムやAIの話をしてきましたが、実は1番すごいのは人間のベテラン調査官の「勘」かもしれません。
税務署の申告審理担当者の中には、キャリア30年・40年というベテランがいます。そういった人たちは、申告書を見ただけで「怪しい」と分かるそうです。税理士として10年以上この仕事をしていると、他の人が作った申告書をパッと見ただけで何かがおかしいと分かることがあります。計算間違いなどもパッと見て分かってくるものです。
30年・40年のキャリアを持つ調査官であれば、その感覚はさらに研ぎ澄まされています。何万件もの申告書を見てきた経験から生まれる「嗅覚」は、AIにはなかなか代替できない部分かもしれません。
📌 ポイント
KSKシステムやAIが調査対象の候補を絞り込み、最終的な判断をベテラン調査官の「勘」が行うという二段構えの仕組みです。AIの精度が上がっても、人間の経験知という部分はしばらく残り続けるでしょう。逆に言えば、「AIだけ気をつければいい」という発想は危険です。
📝 このセクションのまとめ
- キャリア30〜40年のベテラン調査官は申告書を見ただけで異常を察知できる
- AIと人間の「勘」の組み合わせが最も強力な調査体制となる
- AIだけを意識した対策では不十分
税務調査を恐れないための正しい対策
ここまで怖い話が続きましたが、正しく理解すれば必要以上に怖がる必要はありません。重要なポイントを整理します。
税務調査に選ばれるのは「お金持ちだけ」と思われがちですが、実際はそうではありません。KSKシステムに登録されている金額と申告書の金額に開きがあれば、誰でも選ばれる可能性があります。
逆に言えば、たくさんの財産を持っていたとしても、KSKシステムに登録されている金額と申告する金額が大体同じであれば、「適正な申告をしているのではないか」という目線で見てもらえます。
📌 ポイント:調査を恐れないための3原則
- 誠実な申告をする:KSKシステムの数字と申告額の差を作らないことが最大の防御
- 合法的な節税対策を活用する:国が認めている合法的な相続税対策は多数あり、それを使って税額を減らすことは問題ない
- 隠すのではなく減らす:財産を隠すのではなく、適切な方法で財産を減らしていくことが正しい対策
相続税対策として国が認めている合法的な手法はたくさんあります。生前贈与、生命保険の活用、小規模宅地等の特例など、正しい方法で税額を減らしていくことは何も問題ありません。大切なのは、「隠す」のではなく「減らす」という発想で取り組むことです。
📝 このセクションのまとめ
- 調査に選ばれるのはお金持ちだけではなく、申告額とKSKの差がある人
- 誠実な申告をしていれば、財産が多くても調査を恐れる必要はない
- 合法的な相続税対策を活用して「隠す」ではなく「減らす」ことが正解
- 2026年9月以降はAIによって調査精度がさらに上がるため、誠実な申告がより重要になる
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 円満相続ちゃんねる の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。 本サイトは 円満相続ちゃんねるを応援しています!
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