相続税の税務調査で最も危険な「名義預金」とは?税理士が解説する完全対策マニュアル
相続税の税務調査で問題になる8〜9割は「名義預金」。その実態と完全対策を解説します。
相続税の税務調査で最も多い指摘事項とは
相続税の税務調査で問題になることの、大体8割から9割というのはこの名義預金の問題です。亡くなった方の財産がどれだけあるかではなく、ご家族の名義でなぜこれだけの財産があるのかといったことが、相続税の税務調査では最も問題になっていきます。
贈与するなら真実の所有者まで変えなければいけない。名前だけを変えても所有者が変わっていないとみなされてしまうのです。今回の動画では、相続税の税務調査で最も指摘事項が多い名義預金について、どのようなことをしてしまうと問題になるのか、その対策を一挙大公開していきます。
名義預金とは何か?ある家族の物語で理解する
まず、名義預金がどのようなものかを理解するために、1つの物語をご紹介します。これで相続の税務調査の流れを見ていきましょう。
とあるところにお父さん、お母さん、そして子供、そして孫、このようなご家族がいたとします。お父さんは子供や孫の将来のために110万円の生前贈与を毎年行っていました。銀行に子供・孫名義の預金口座を開設し、通帳などは金庫に保管をしていました。子供・孫は預金の存在を知らず、110万円以下のため贈与税の申告はしていませんでした。
お父さんからするとですね、子供たちや孫たちに贈与はしていきたいんだけれども、無駄遣いをされても困るよね、金銭感覚も狂ってしまうし、ということで、この子供たちの通帳・お孫さんの通帳を作ってそこにお金を入金し、その通帳・キャッシュカードはお父さんが自分の金庫の中で保管をしていた。このようなシチュエーションです。子供たち・孫たちはこういったことが行われていることは知りません。
税務調査当日に何が起きるか
このような前提のもと、時は経ちまして、お父さんに相続が発生してしまいます。ご家族は悲しみに暮れる中、相続税の申告書を税務署に提出していきます。相続税の申告と納税を適切に済ませます。
それから2年後の夏です。自宅に1本の電話がかかってきました。誰かと思って電話に出ると、税務署の人からの電話でした。「亡くなったご主人の相続税の税務調査を行います」というわけです。
調査当日になりますと、調査官は2人で自宅にやってきて、亡くなったお父さんのことを根掘り葉掘り質問していきます。ですが途中からですね、これ亡くなったお父さんの相続税の調査のはずなのに、このようなことを聞かれるんです。「お子さんとお孫さんの預金はどのように貯めましたか?」と。例のお父さんの110万円の贈与で積み立てていた例の預金口座について質問されます。
この質問に対してお母さんが「主人が秘密の生前贈与で110万円ずつ積み立てをしていましたよ。110万円以下だから特に問題ないんじゃないですか」と言った場合、どのようになってしまうかというと、こう言われます。「子供・孫名義の預金は実質的に亡くなった方の財産なので、相続税を追加課税します」ということです。
通帳の名義は子供名義であったり、お孫さん名義であったりして、このご主人ではないんですけれども、その通帳の中に入っているお金というのは実質的にはなくなったお父さんのものでしょうということで、これは相続税の計算に含めていかなければいけない。そのような指摘が入ってしまうことがあるんです。
「名義預金」の定義と生前贈与が認められない理由
このような、通帳の名義人と真実の所有者が異なる通帳・預金のことを「名義預金」と呼びます。子供の名前、そしてお孫さんの名前なんだけど、実質的にはお父さんのものでしょ、というものです。
これがなぜこのようなことを言われてしまうのかというと、生前贈与というのは名義を変えただけでは認めてもらえないんです。贈与するなら真実の所有者まで変えなければいけないということなんですね。ですので、名前だけ変えていてもそれは所有者が変わっていないということになってしまいますので、このような問題が生じてしまうんです。
これまで10年以上相続専門税理士として活動していますが、これまで非常にたくさんの調査に立ち会ってきました。相続税の税務調査で問題になることの大体8割から9割というのはこの名義預金の問題です。ですので、調査官が家の中に来てやれ畳を引っぺがして現金がないかなという調査というのは、まあ、あることはあるんですけど、実はそこまで多くはなくて、それよりも見られるのは、亡くなった方の財産がどれだけあるかではなく、ご家族の名義でなぜこれだけの財産があるのかといったことが相続税の税務調査では最も問題になっていくんです。
なぜこのような名義預金が生まれてしまうのかというと、それは適切な生前贈与ができていないので、このような現象が起きてしまいます。
名義預金判定のポイント①:両者の認識の合致(上げた・もらったの約束)
それでは、適切な生前贈与とは何か?ポイントは2つだけありますので、1つずつ紹介していきます。まず名義預金判定のポイントの1つ目。これは両者の認識の合致というポイントです。
そもそも生前贈与は民法第549条に定義があります。「贈与は当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾することによってその効力を生ずる」と言っています。わかりやすく言うと、生前贈与というのは上げる人が「上げますよ」という意思表示を示して、そしてもらう人が「もらいますよ」という意思表示を示して初めて成立する契約行為なんです。
ですので、税務署の調査官が何をチェックするのかというと、「上げた・もらったの約束はきちんとできていましたか」ということがまず第1チェックポイントに挙げられます。その観点から見ていくと、先ほどの前提で「子供・孫は預金の存在を知らず」とお伝えしました。子供たち・孫たちは預金の存在すら知らなかったんですね。ということは、当然この贈与の時に「もらいますよ」という意思表示はなかったということになります。ですので、お父さんは「あげますよ」という意思は示していたかもしれませんが、「もらいますよ」がありませんでしたので、これは贈与契約としては不適切ということになってしまうんです。
ですので、まず第1チェックポイントが「上げた・もらったの約束ができていたか」という点でした。
名義預金判定のポイント②:管理処分権限の移行(お金を自由に使えたか)
続けて名義預金判定のポイントの2つ目を紹介していきます。それが管理処分権限の移行です。これは一言で言うと、贈与でお金をもらった人が自分で自由にそのお金を使える状況にあったのかどうかがチェックされていきます。
なぜこのようなことをチェックするのかというと、税務署の意見としては「贈与でもらったというなら自分で自由に使えて当然ですよね。自分では使えない状況だったのなら、それは贈与とは言えません」ということです。そもそも贈与というのはプレゼントすることを言います。プレゼントを受け取ったけど自分じゃ使うことができないんですよね、というのはやはり物の考え方としておかしい。「そんなのもらったうちには入らない」と言われてしまうわけです。
ですので税務調査に選ばれると必ずチェックされるのは「贈与でお金をもらった人がそのお金を自由に使うことができたのかどうか」ということなんです。その点、こちらのご家族については先ほどの背景で「銀行に子供・孫名義の預金口座を開設し、通帳などは金庫に保管をしていた」ということで、子供の通帳・孫の通帳・キャッシュカードなどはお父さんが自分の金庫の中にしまっていたんです。ですので子供たちがもし贈与でお金をもらっていることを知っていたとしても、これ金庫の中に入っていますので引き出せる状況にはなかった。このようなことが調査官に知られると「それはもらったうちには入りません。名義だけ変わっている状態なんですね」ということを言われてしまうんです。
ということで名義預金判定のポイントの2つ目は管理処分権限の移行ということで、通帳・キャッシュカードを誰が持っていたのか、これは子供たちだったのか、またはお父さんだったのかということが調べられていくんですね。
この名義預金判定のポイントの1つ目は「両者の認識の合致・上げた・もらったの約束ができていたのかどうか」、そして2つ目が「管理処分権限の移行・そのお金を自由に使える状況にあったのか」です。この2つの要素、両方とも満たしていないと適切な贈与とは認めてもらえません。どちらか片方が落ちてしまうとこれは名義預金と認定されてしまいますので、是非ともしっかりと注意をしていきたいと思います。
名義預金を作らないための具体的な対策2つ
ここからは名義預金を作らないために必要な対策を紹介していきます。
対策①:贈与契約書の作成
まず1つ目は、両者の認識「上げた・もらったの約束」がきちんとできていたかという点については、贈与する際に「あげますよ」「そしてもらいますよ」この約束が大事になってくるんでしたね。そこで、贈与するなら贈与契約書を作成していきましょう。署名は直筆でないと意味がありませんということで、上げます・もらいますの約束を贈与契約書という紙に残しておく方法を強くお勧めしています。
この点、よく質問を受けるのは「契約書にサインできない小さい子供に対する贈与の場合どうなるんだ」という点です。例えば赤ちゃんに贈与するとか、そういった場合どうなるのかというと、この場合は親権者が代署してもらって構いませんので、こういったものを1枚残しておきましょう。贈与契約書のポイントとしては、贈与者(上げる人)と受贈者(もらう人)の両者の連名でしっかりサインをして、そして上げた日の日付もしっかり忘れないようにしましょう。
この点についてですね、贈与契約書というのはこれを作っておけば絶対に名義預金にならないかというと、実はそうとも言い切れません。というのも、贈与契約書はいわゆるバックデート(遡って)契約書を作ってしまう方も世の中にはいまして、それは偽装行為なので絶対やってはいけないことなんですけれども、そういったことがあるので調査官としても「贈与契約書があるからといってこれが昔からちゃんと作っていたとは限らないよね、調査直前になって慌てて作ったんじゃないの」と疑いを向けられることもあります。
ですので最も確実な方法としては、贈与契約書を作った上で公証役場に行って確定日付というものをもらっておくと、これはその時からあるものだということの証明になりますので、それが1つの方法です。また贈与契約書は名義預金対策としては100%とは言えないんですけれども、紛争を防止するという意味合いでは非常に効力を発揮します。例えば長男にだけ贈与をして次男にはしていなかった、そのようなケースがあった時に「この長男に対する送金というのは贈与ではなくて貸し付けだったんじゃないか」と次男さんが主張することもあり得ますので、これはちゃんともらったものだということを証明するためにも贈与契約書の作成はお勧めでございます。
対策②:管理処分権限の移行(通帳・キャッシュカードの自己管理)
名義預金対策の2つ目は管理処分権限の移行です。これはもらった人がそのお金を自由に使うことができたかどうかという点でしたね。この点についての対策は、贈与するなら通帳・キャッシュカードは贈与した相手にしっかりと自分で管理をさせる。これが非常に大切になっていきます。
ここも同じようによく質問を受けるのは「通帳の管理ができない小さい子供に対する贈与はどうなるんだ」という点です。この場合には親権者が通帳を管理して問題ありません。ただ今現在は成人が18歳になっていますので、18歳になったらもう成人ですから、そこから先はご自身にしっかりと管理をさせてあげてください。
そのお金を自由に使うことができたかということで、かなりアナログな対策にはなってしまうんですけれども、最も確実な対策としては、贈与でもらったお金というのは実際に使っていく。これが最も確実な名義預金対策です。自分でもしっかり使っているわけなので、「自分で自由に使うことができたか」の証明についてはこれが1番強いです。ですので子供たち・孫たちの普段使いの通帳にお金を送金してあげるというのが実は最も確実な名義預金対策なんです。
ですが残念ながら、この世の中には贈与をする際に子供の通帳・孫の通帳をまた別で作って、その贈与として管理したいという方もたくさんいらっしゃいます。その心情というのはこれは親心でもありまして、毎年100万・200万という金額をどんどん渡していってしまうと子供たちの金銭感覚がおかしくなってしまったり、勤労意欲が低下してしまったりすることもあるので、親心としてそのように分けてね、困った時のために使って欲しいなというのがあるんですけれども、それをやってしまうと税務署の人から「それは贈与したとは言えないよ」というそんな事態になります。
ですので、もらったお金を自由に使う。ただ自由に使うと言っても、これは浪費をすることではなくて、例えばNISAに投資するでもいいですし、将来増えて帰ってくる生命保険に加入するでもいいですし、いろんな方法がありますので、そこはまた専門家と一緒に話していただければと思います。
税務調査に選ばれないための申告書とは
私たちは相続税専門の税理士法人として、税務調査に選ばれない申告書を作るということに非常に重きを置いています。書面添付制度と言って、税理士が税務署の代わりに納税者をチェックしましたよというカルテのようなものをつけて税務署に提出するということを全ての申告に行っております。これをしておくと相続税の税務調査に選ばれる可能性というのを非常に低くすることができます。
また現在、国税OBの税理士も在籍していますので、税務調査にどういった人が選ばれやすいのか、どういった申告書を提出すれば税務署にも「ちゃんと調べているんだぞ」ということを見てくれるのかといったことも常に研究をしています。
今回のまとめとして、名義預金本当に指摘が非常に多いので、子供ですとかお孫さんへの秘密の生前贈与というのは非常に危険なんだということを是非押さえておいていただければと思います。
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 円満相続ちゃんねる の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 円満相続ちゃんねるを応援しています!
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