相続税の脱税は必ずバレる|税務署の調査手口とペナルティを税理士が解説
相続税の脱税は税務署の高い調査能力によって必ず発覚します。どんな手口があり、なぜバレるのか、発覚した場合のペナルティと時効まで詳しく解説します。
相続税の税務調査はどのくらいの割合で行われているのか
相続税について申告漏れや脱税行為などが疑われると、税務署の調査が行われることになります。国税庁によれば、令和4年に亡くなった方は約156万2,000人で、そのうち相続税の申告が必要となる割合は約10%となっています。
一方、同じ年に国税庁が実施した相続税の過小申告や無申告と疑われた相続に対する調査件数は次のとおりです。
| 調査の種類 | 件数 |
|---|---|
| 実地調査(税務署員が直接訪問) | 8,195件 |
| 文書・電話・面接による簡易な調査 | 約15,000件 |
単純に計算すると、被相続人全体の約15%に対して相続税に関する調査が行われているということになります。この割合から考えると、該当する方は決して少なくないと言えるでしょう。
しかし、相続税対策をしたい方や遺産相続をした方なら、脱税が疑われるケースや、なぜバレるのかなどについては関心が高いことでしょう。今回は以下の内容について詳しく解説していきます。
- 相続税の脱税手口
- 相続税の脱税が税務署にバレる理由
- 相続税の脱税がバレた時のペナルティ
- 相続税の脱税にも時効があること
📝 このセクションのまとめ
- 令和4年の相続税申告対象者は被相続人全体の約10%
- 実地調査・簡易調査を合わせると被相続人全体の約15%に調査が実施されている
- 調査対象になる可能性は決して低くない
悪質・計画的な相続税の脱税手口
相続税の脱税手口は、意図的で悪質なものと、制度そのものがよくわからず「申告しなくても誰にも分からないだろう」と申告せずにいた結果脱税になってしまったもの、あるいは勘違いなど身近に存在するものに分けることができます。まず、意図して計画的に高額な脱税を試みた結果、悪質な大事件として扱われることになった手口について確認していきましょう。
①無記名債券への変換
現金を商品券・乗車券・劇場の入場券・割引債など、所持者の住所や氏名の記載がない無記名債券に変えておく方法があります。権利者の氏名が表示されていないため、権利を行使できるのは実際に所持していた方ということになります。
以前は証券会社や損保会社などから無記名で発行される割引債が発行されており、額面から利息分を差し引いた額で購入することが可能でした。金融機関に購入者の氏名などを伝える必要がない仕組みを悪用し、相続税の申告の際に遺産から外して課税を逃れようとした手口です。
②海外口座への資産隠蔽
マネーロンダリング問題でクローズアップされましたが、親族が被相続人の遺産を海外の金融機関に送金し隠蔽する手口です。架空名義や他人名義の金融機関口座などを利用して、あちこちに送金を繰り返して資金の出所を分からなくしようとする悪質な手口です。新聞報道などでシンガポールやスイスなどにある銀行口座が利用されていたことも記憶されている方は多いのではないでしょうか。
③預金口座の計画的な解約・現金化
親族による犯行で、被相続人の預金口座を数年間かけて解約して現金化し、相続税の申告ではこの現金を遺産から外すことを企んだ脱税の手口です。
⚠️ 注意
計画的な手口ではないものの、被相続人が病気などで亡くなる直前に親族が被相続人の預金口座から現金を引き出す手口も同様です。現金化した財産を相続財産から外す行為は脱税に該当します。
④寄付を装った資産隠し
一定の要件を満たす寄付であれば相続税の課税対象にならないことを悪用して、資産隠しによる脱税を試みた手口です。寄付と見せかけて実際は複数人が共謀して資産隠しを企んだもので、寄付行為を正当化するために遺言書の偽造まで実行した悪質な犯罪です。遺言書の偽造は私文書偽造の罪にも該当します。
📝 このセクションのまとめ
- 無記名債券・海外口座・預金解約・偽装寄付など悪質な手口が存在する
- 遺言書の偽造は私文書偽造罪にも該当する
- 計画的でなくても現金化した財産を遺産から外せば脱税になる
身近に存在する相続税の脱税・申告漏れの手口
新聞やニュースなどで取り上げられるような悪質で計画的な手口ではないものの、身近に存在する脱税とみなされる手口もあります。
①土地の評価額の過小申告
現金や預貯金であれば相続財産の金額を間違うことはないでしょう。しかし、特に土地については評価を行う必要があり、場合によってはかなり複雑な計算が必要なケースもあります。相続税の申告において専門家に依頼をせず自分で評価額を計算したような場合は、相続財産の価値を過小に見積もってしまった結果、過小申告が指摘されることもあります。このようなケースは脱税と呼ばないにしても、意図的に過小申告をしたのであれば脱税したとみなされることになります。
②名義預金・名義保険
子・孫名義で預金をして相続財産を過小に見せかける手口です。以前は本人確認書類がなくても口座を開設することが可能だった時期があり、子や孫のために積み立てるケースも少なくありませんでした。しかし、これが高じて相続財産隠しの手口として利用されるケースも多く、税務調査で指摘される代表格ともなっています。脱税に当たることを知らなかったとしても、結果的には脱税とみなされることになります。
⚠️ 注意
子・孫名義の保険契約についても名義預金と同様に相続財産に該当します。このような保険契約があるにも関わらず相続財産から外してしまう場合は、脱税とみなされることになります。
③タンス預金などの現金の無申告
いわゆるタンス預金など、相続した現金も相続財産としての課税の対象となります。相続税の申告が必要となる金額であるにも関わらず申告を怠った場合や、相続財産から外して申告をした場合は脱税行為に該当します。現金だけ相続して証拠が残らないと思う場合でも、申告が必要な場合に無申告ならば脱税調査の対象になる可能性が低くはありません。
④生前の預金引き出しの勘違い
被相続人の生前に親族が被相続人の預金口座から現金を引き出し、相続財産から外す手口も脱税になることを紹介しました。ただし、亡くなった方の病院代の支払いや葬儀費用に充当することもよくあることで、相続税の申告を適正に行えば脱税になることはありません。
しかし、生前の預金の払い戻しや解約などによって得られた現金が相続税の課税対象ではなくなると勘違いしている方もいるようです。相続の発生時点で存在している遺産も課税対象になることは変わりありません。もし遺産隠しを目的で行ったということになれば、脱税行為とみなされてしまいます。
📝 このセクションのまとめ
- 土地評価の誤りによる過小申告も意図的であれば脱税とみなされる
- 名義預金・名義保険は知らなくても相続財産に含まれる
- タンス預金も現金である以上、課税対象から外れることはない
- 生前の預金引き出しで課税対象外になるという勘違いは危険
税務署が相続税の脱税をバレる仕組み
税務署が個々の財産を把握していなければ、脱税の疑いをかけられることもないはずです。誰にも知られるはずのないタンス預金や子・孫名義の預金、亡くなる直前の預金引き出しなどの財産について、税務署はどのように把握していくのでしょうか。
KSKシステムによる情報の一元管理
国税庁と国税局・税務署では、個々の納税者についての申告や納税などの個人情報をネットワークで一元管理しています。申告書類には事業所得・給与所得・譲渡所得・雑所得などの所得のほか、社会保険料や各種控除など納税に関する情報が満載に含まれています。
さらにマイナンバーに紐付けされ、金融機関や企業などとの取引・不動産取引・保険金の受け取り履歴なども記録される仕組みが出来上がっています。つまり税務署は、納税者ごとの所得や控除に関する情報のほか、大きな資金の移動などが把握できるシステムを管理・運用しているのです。
面接調査による情報収集
税務調査はまず面接によって、被相続人についての経歴・交友関係・趣味・貯蓄の方法などが調べ上げられます。また相続人についても職業・経歴・現在の収入などが調べられることになります。面接の調査ではタンス預金や名義預金など隠し財産の存在も、さりげないやり取りの中でバレてしまうケースも多いと言われています。
実地調査による過去10年分の預貯金追跡
面接調査で生じた疑問や疑惑については、自宅や金融機関などへの実地調査も含めて事実を確かめることになります。実地調査では最低でも過去10年分に遡って預貯金などが調べられるため、多額の引き出しがあれば使途が追求されます。合理的な出費がなければ、タンス預金などの財産隠しが疑われることになるでしょう。
反面調査による周辺情報の収集
調査官は強力な権限を持って調べることができ、金融機関といえども正式な情報開示を拒むことはできません。さらに調査が必要な場合、反面調査が行われます。調査官は被相続人が生前に取引をしていた銀行、交流があった個人などを訪問して、個人の財産について事実を確認していくこととなります。
📌 ポイント
税務署の調査は「面接→実地調査(過去10年分の預貯金追跡)→反面調査」という多段階のプロセスで行われます。マイナンバー制度の普及により、資金の流れはますます把握されやすくなっています。
📝 このセクションのまとめ
- 税務署はKSKシステムとマイナンバーで資金の流れを一元管理している
- 面接調査でさりげないやり取りの中から隠し財産が発覚するケースが多い
- 実地調査では過去最低10年分の預貯金が遡って調べられる
- 反面調査では金融機関や交友関係者にも直接確認が行われる
相続税の脱税がバレた時のペナルティ
相続税を脱税していることが明らかになれば、追徴課税のペナルティはもちろんのこと、最悪の場合は刑事罰が課されることもあります。相続税の税務調査で申告漏れの指摘を受けた場合でも、すぐにペナルティの内容が決まるのではなく、状況や事情などを踏まえて税務署が判断することになります。納税者が納得いかない場合には、裁判での争いになることもあります。
相続税の脱税や申告漏れによる追徴課税は次のとおりです。
| ペナルティの種類 | 発生するケース | 概要 |
|---|---|---|
| 無申告加算税 | 正当な理由がなく申告期限までに申告しなかった場合 | 申告しなかったことに対するペナルティ |
| 過少申告加算税 | 期限内に相続税の申告をしているが、その額が過小である場合 | 申告額が少なかったことに対するペナルティ |
| 重加算税 | 相続財産を意図的に隠蔽、あるいは事実を仮装するなど悪質な脱税の場合 | 最も重いペナルティ。通常の加算税より税率が高い |
| 延滞税 | 申告・納付の期限を過ぎた場合 | 遅れた期間に応じて加算される |
隠蔽や仮装による脱税に対しては重加算税が課されます。期限を過ぎた場合は延滞税のペナルティが発生します。実際に納めることになる税金は、不足する相続税に加え、遅れた期間に応じて延滞税が加算されることになります。
⚠️ 注意
悪質な脱税の場合は重加算税・延滞税に加え、刑事罰(懲役・罰金)が課されることもあります。脱税は必ずバレてしまいますので、絶対に行わないでください。
📝 このセクションのまとめ
- 申告漏れには無申告加算税・過少申告加算税、悪質な脱税には重加算税が課される
- 納付が遅れた期間に応じて延滞税も加算される
- 最悪の場合は刑事罰(懲役・罰金)が科されることもある
相続税の脱税における時効(除斥期間)
相続税の脱税にも時効があり、5年もしくは7年とされています。ただし、税務署の高い調査能力や強大な調査権限があるため、脱税が見逃されることはありません。
基本的に相続開始から10ヶ月以内が相続税の申告期限となっています。この期間内に未申告の相続財産がある場合や申告に計算間違いがあった場合などは、税務署による課税処分を受ける可能性があります。しかしながら、課税処分にも期限があり、申告期限から一定年数が経過すると時効となり、税務署は課税できなくなります。
この期間は除斥期間と呼ばれ、原則として相続税の申告期限の翌日から5年とされています。ただし、偽りや不正行為によって税額を免れた場合や還付を受けた場合は、除斥期間が7年に伸びます。
| ケース | 除斥期間(時効) |
|---|---|
| 通常の申告漏れ・過少申告 | 5年(申告期限の翌日から) |
| 偽り・不正行為による脱税、不正な還付 | 7年(申告期限の翌日から) |
税務調査に対する回答に虚偽がある場合や相続財産を隠蔽した場合など、脱税行為があるケースには7年の除斥期間が適用されます。つまり、相続税の脱税に対する時効は、悪意を持って行われた場合には7年まで延長されるということになります。
📌 ポイント
「時効まで逃げ切れる」と考えることは非常に危険です。税務署の強大な調査権限の前では、時効を迎える前に脱税が発覚するケースがほとんどです。脱税は必ずバレると考えてください。
📝 このセクションのまとめ
- 相続税の除斥期間(時効)は原則5年、悪質な脱税は7年
- 起算点は相続税の申告期限の翌日
- 税務署の調査能力が高く、時効を迎える前に発覚するケースがほとんど
節税と脱税の違いを正しく理解して適切に対策を
相続税の節税も行き過ぎてしまって脱税とみなされてしまうようなら、節税の意味がありません。せっかく蓄えた貴重な財産ですから、ペナルティなどで損失を被ることなく有効に利用できることが望まれます。
相続税対策をしたい方や資産相続をした方も、あらかじめ節税と脱税の違いを把握していれば、安心して対策を考えることができるでしょう。自分だけでは不安な場合は、相続税に詳しい税理士などの専門家に相談をすることがお勧めです。
📌 ポイント
節税は合法的な税負担の軽減であり、脱税とは全く異なります。名義預金や生前の預金引き出しなど「グレーゾーン」と思われがちな行為も、申告を適正に行えば問題ありません。不安な点は専門家に確認しましょう。
📝 このセクションのまとめ
- 節税と脱税の違いを正しく理解することが重要
- 適正な申告を行えば、生前の預金引き出しなども問題にならない
- 不安な場合は相続税に詳しい税理士への相談が最善策
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル VSG相続専門税理士ch の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。 本サイトは VSG相続専門税理士chを応援しています!
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