相続開始前5年以内のマンションが狙い撃ち!購入価格評価で相続税節税が終了?税理士が解説
マンション投資による相続税節税が、税制改正で封じ込められようとしています。
相続税の仕組みと「評価を下げる」節税の基本
相続税を計算するには、まず個人版のバランスシートを作ります。プラスの財産からマイナスの財産(負債)を引いた差額が「純財産」となり、この純財産の金額が大きければ大きいほど相続税の負担が重くなります。所得税や法人税とは異なり、相続時点に残された財産に課税される「財産課税」が相続税の本質です。
では、相続税を節税するにはどうすればよいのでしょうか。純財産を減らすことができれば相続税の負担が下がります。具体的には次の3つのアプローチがあります。
- 財産そのものを減らす
- 財産の評価額を下げる
- 負債を増やす
今回のテーマは、このうち「評価を下げる」というアプローチです。
📌 ポイント
現金1億円をそのまま相続すると、まるまる1億円に対して相続税が課税されます。一方、同じ1億円で不動産を購入すると、相続税評価額が7,000万円、場合によっては2,000万円程度まで下がることがあります。この大幅な圧縮効果こそが、相続税対策に不動産が大人気な理由です。
📝 このセクションのまとめ
- 相続税は純財産(プラス財産-負債)に課税される財産課税
- 節税の方法は「財産を減らす」「評価を下げる」「負債を増やす」の3つ
- 不動産は路線価等で評価するため、現金より大幅に評価額を圧縮できる
問題となった最高裁判決(令和4年4月19日)
相続税対策としての不動産活用は、財産評価基本通達という法律に基づく合法的な手法でした。しかし、あまりにも節税効果が大きすぎるとして、ついに国税当局が動き出しました。その契機となったのが、令和4年4月19日の最高裁判所判決です。
問題となった事例では、ある方(当時94歳)が区分所有マンション2棟を購入しました。それぞれの購入価格・ローン・路線価評価額は以下の通りです。
| 物件 | 購入価格 | 借入金額 | 路線価評価額 | 不動産鑑定評価額 |
|---|---|---|---|---|
| マンションA(杉並区等) | 8.3億円 | 6.3億円 | 2億円 | 7.5億円 |
| マンションB(川崎市等) | 5.5億円 | 3.8億円 | 1.3億円 | 5.1億円 |
購入時期はそれぞれ亡くなられる3年4ヶ月前と2年5ヶ月前。死期が迫っていることを悟った上での購入と見られても仕方のないタイミングです。
路線価評価を使うと、合計13.8億円の財産がわずか3.3億円に圧縮され、10億円以上もの圧縮効果が生まれました。さらに合計10億円の借入金が負債として純財産からマイナスされるため、本来2.4億円かかるはずだった相続税がなんとゼロになったのです。
⚠️ 注意
この手法自体は脱税ではなく、財産評価基本通達に沿った合法的な申告でした。しかし税務当局は、財産評価基本通達の第6項(評価が妥当でない場合は国税庁が評価額を定めることができる)という規定を根拠に不動産鑑定士による評価額での申告を要求。追徴課税を求めました。この曖昧な規定が争点となり、最高裁まで争われた事案です。
なお、杉並区や川崎市といった一等地の物件ですので、相続税申告・納税が終わった後に売却すれば購入時と同等かそれ以上の価格で売れてしまいます。これにより節税が完成するという構造でした。
📝 このセクションのまとめ
- 8.3億円+5.5億円のマンションが路線価評価で合計3.3億円に圧縮された
- 相続税2.4億円がゼロになるという極端な節税効果が問題視された
- 財産評価基本通達第6項を根拠に追徴課税が行われ、最高裁まで争われた
税制改正の方向性:購入価格ベースの評価へ
最高裁判決を受け、国税当局はそもそもの評価方法(通達)を変えるという動きに出始めました。最終確定ではありませんが、来月(12月)の税制改正大綱で確定する見込みです。改正の主なポイントは以下の通りです。
- 対象:マンション・オフィスビル(一戸建てはとりあえず対象外の見込み)
- 評価方法:従来の路線価等による評価から、購入価格をベースとした評価へ変更
- 計算方法:購入価格 × 地価変動率 × 0.8(2割引き)
- 対象期間:相続開始前5年以内に購入した物件
📌 ポイント
相続税法の原則は「亡くなった時点の時価で評価する」というものです。株式なども時価評価が基本です。「なぜ不動産だけ購入価格なのか」という疑問は残りますが、さすがにそのままでは酷ということで2割引きが適用される見込みです。
また、不動産小口化商品(信託を活用したもの)を使った生前贈与については、取得時期に関わらず完全に封じ込めになるとのことです。
📝 このセクションのまとめ
- マンション・オフィスビルは購入価格×地価変動率×0.8で評価される方向
- 相続開始前5年以内の購入物件が対象
- 不動産小口化商品を使った生前贈与は取得時期を問わず封じ込め
今後の対策①:相続対策を早めに始める
今回問題となった事例は、94歳の方が亡くなる直前にマンションを購入したケースでした。明らかに相続税対策と見られても仕方のない状況です。
今回の改正で評価が取れなくなるのは購入から5年以内の物件です。つまり、不動産を使った相続税対策を7〜8年前、あるいは10年前から始めておけば、従来通りの評価が適用されるということになります。
📌 ポイント
相続税対策は「早く始めるほど有利」というのが大原則です。今回の改正でも、5年という時間軸が設けられていることからも、早期着手の重要性が改めて確認できます。
📝 このセクションのまとめ
- 相続開始前5年超の物件は従来通りの評価が適用される見込み
- 7〜10年前から計画的に不動産を取得することで節税効果を維持できる
今後の対策②:債務控除の活用
相続税は「財産から負債を引いた純財産」に課税されます。不動産購入時に借入を行えば、その借入金が負債として純財産から差し引かれます。
購入価格ベースの評価になったとしても、2割引き(×0.8)は適用されます。さらに借入金の返済スピードをゆっくりにしておけば、相続時点でも債務が残り、債務控除を活用できます。
| 評価方法 | 評価額のイメージ | 債務控除 | 節税効果 |
|---|---|---|---|
| 改正前(路線価) | 購入価格の20〜30%程度 | あり | 大きい |
| 改正後(購入価格×0.8) | 購入価格の80% | あり | 現金相続よりは有利 |
現金1億円をそのまま相続すると、まるまる1億円に相続税がかかります。一方、不動産に換えれば購入価格の80%での評価となり、さらに残債があれば債務控除も取れます。改正後も、現金相続と比べれば不動産を活用した相続税対策は依然として有効です。
📝 このセクションのまとめ
- 購入価格ベースでも2割引き(×0.8)は適用される見込み
- 借入金の返済をゆっくり進めることで債務控除を活用できる
- 現金相続と比べれば不動産活用の節税効果は改正後も残る
今後の対策③:マンション・オフィスビル以外の不動産
今回の改正で対象となるのは「マンション」「オフィスビル」という名称が挙がっています。逆に言えば、それ以外の不動産は対象外となる可能性があります。
具体的に対象外となりそうなものとして、以下のような不動産が考えられます。
- 一戸建て(小規模宅地の特例との兼ね合いも含め、現時点では対象外の見込み)
- ガレージハウスなどの特殊用途不動産
- その他、マンション・オフィスビル以外に分類される不動産
ただし、これらについては今後の税制改正大綱の内容次第で変わる可能性があります。詳細が明らかになり次第、改めて確認が必要です。
⚠️ 注意
現時点ではまだ最終確定ではありません。12月の税制改正大綱で正式に決定される見込みです。対策を検討する際は、必ず最新情報を確認した上で税理士に相談することをお勧めします。
📝 このセクションのまとめ
- 改正対象はマンション・オフィスビルであり、一戸建てなどは現時点では対象外の見込み
- ガレージハウス等の特殊用途不動産も対象外となる可能性がある
- 12月の税制改正大綱で正式決定されるため、最新情報の確認が必須
この改正をどう見るか:国税の主張と納税者の主張
国税の主張を踏まえれば、不動産の相続税評価額の計算がおかしいというのはある程度理解できます。不動産の実際の売買価格(時価)は、その物件の人気度合い・収益力・立地といった要素で決まります。ところが相続税の評価においては、こうした要素が基本的にあまり加味されていません。
特に最近の都心のマンション価格高騰を踏まえると、相続税評価額と実際の売買価格の乖離が大きくなっており、現実と帰離していると言わざるを得ない面もあります。
一方、納税者側の立場からすれば、「国が作った法律・通達に従って申告しているのに、何がいけないのか」という主張も理解できます。法律の範囲内で合法的に節税していたにもかかわらず、後から評価方法を変えられることへの不満は当然でしょう。
📌 ポイント
この改正には副次的な影響もあります。マンション投資による相続税節税の需要が落ちれば、マンション価格の高騰が落ち着く可能性があります。一方で、外国人投資家への売却が増えるのではないかという懸念もあります。不動産市場全体への影響にも注目が必要です。
📝 このセクションのまとめ
- 都心マンションの価格高騰により、相続税評価額と実際の売買価格の乖離が拡大していた
- 合法的な節税を後から変更されることへの納税者の不満も理解できる
- マンション需要の減少・不動産市場への影響も懸念される
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。 本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!
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