相続・贈与

相続 財産を渡したくない相続人がいる場合の4つの対策を専門家が解説

相続 財産を渡したくない相続人がいる場合の4つの対策を専門家が解説
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特定の相続人に財産を渡したくない——その願いを叶える4つの方法を、具体的な事例とともに解説します。

「財産を渡したくない相続人がいる」とはどんな状況?

相続の相談をしていると、「相続人の中にどうしても財産を渡したくない人がいる」というケースが一定数あります。感情的な話に聞こえるかもしれませんが、実際にはさまざまな家庭事情が絡んでいます。ここでは代表的な2つの具体例を見てみましょう。

具体例①:前妻の子に財産を渡したくないケース

離婚歴のある夫と結婚した妻のケースです。夫婦仲は非常に良く、子供も生まれて幸せに暮らしていました。ある程度の年齢になり「そろそろ相続について考えないと」となったとき、頭に浮かぶのが前妻との間の子供の存在です。

夫には前妻との間に息子がいました。後妻からすると、その子が「ちょっと素行に問題がある」と感じており、どうしても気に食わない。「あの子に財産が渡るなんて許せない。私の子供たちだけに全部財産を渡したい」という気持ちが生まれ、税理士に相談するケースです。

💡 補足:動画では触れていませんが…

前妻の子は法律上「嫡出子」として後妻の子と同等の法定相続分を持ちます。たとえ長年交流がなくても相続権は消えません。この点を知らずに何も対策しないまま亡くなると、前妻の子が遺産分割協議に参加することになります。

📝 このセクションのまとめ

  • 前妻の子は現在の家族と同等の法定相続権を持つ
  • 感情的に「渡したくない」と思っても、法律上は当然の相続人
  • 何も対策しなければ前妻の子も遺産分割協議に参加する

具体例②:引きこもりの息子に財産を渡したくないケース

もう一つは、普通の家族として仲良く4人で暮らしていた家庭のケースです。子供が成長するにつれて息子が引きこもり状態(いわゆる「子供部屋おじさん」)になってしまいました。親としても手がつけられない状態です。

一方、娘は非常にしっかり育ち、父親の体調が悪化して動けなくなってきたときに献身的に介護をしてくれました。そうなると、親としては「兄弟に平等に財産が行くのではなく、娘に全部あげたい」という気持ちが生まれます。

📌 ポイント

介護など特別な貢献をした相続人には「寄与分」という制度があります。ただし寄与分は相続人間の協議で認められる必要があり、争いになることも多いです。遺言で財産配分を明確にしておくことが、最も確実な対策です。

📝 このセクションのまとめ

  • 介護貢献があっても法定相続分は原則として均等
  • 「娘に全部あげたい」という親心は法律的には自動では実現しない
  • 生前に何らかの対策を講じておく必要がある

絶対に渡さないことはできない——「遺留分」という壁

「財産を渡したくない」という気持ちがあっても、相続人には遺留分という権利があります。これはどうやっても潰すことができない、法律で保障された最低限の取り分です。

したがって、「1円も渡したくない」という願いを完全に叶えることは法律上できません。ただし、遺留分をできる限り減らすことはある程度可能です。以下では、その4つの方法を詳しく見ていきましょう。

相続人の種類遺留分の割合(法定相続分に対して)
配偶者・子法定相続分の1/2
直系尊属のみ(父母など)法定相続分の1/3
兄弟姉妹遺留分なし

💡 補足:動画では触れていませんが…

遺留分は2019年の民法改正により「遺留分減殺請求」から「遺留分侵害額請求」に変わりました。現在は現物返還ではなく金銭での請求が原則となっています。不動産などの現物を取り戻されるリスクは減りましたが、金銭負担が生じる点は変わりません。

🔄 最新アップデート

2019年7月施行の改正民法により、遺留分に関する権利は「遺留分侵害額請求権」として金銭債権化されました。従来の現物返還請求(遺留分減殺請求)から大きく変わっています。生命保険を活用した対策においても、この改正を踏まえた設計が必要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 相続人には「遺留分」という最低限の取り分が法律で保障されている
  • 完全に財産を渡さないことは法律上できない
  • できることは「遺留分を減らす」方向での対策

対策①:養子縁組で遺留分を減らす

まず考えられる方法が養子縁組です。孫を養子にする、あるいは子供の配偶者(婿・嫁)を養子にするといった方法が代表的です。

養子縁組をすることで法定相続人の人数が増えます。法定相続人が増えれば1人当たりの法定相続分は減り、それに連動して遺留分も減ります。その結果、気に食わない相続人に渡ってしまう財産の額を少なく抑えることができます。

法定相続人の数前妻の子1人の法定相続分前妻の子1人の遺留分(1/2)
子2人(前妻の子+後妻の子1人)1/21/4
子3人(前妻の子+後妻の子2人)1/31/6
子4人(前妻の子+後妻の子2人+孫養子1人)1/41/8

このように、養子縁組によって相続人の数を増やすことで、渡したくない相続人への遺留分を段階的に減らすことが可能です。

💡 補足:動画では触れていませんが…

税法上、養子として認められる人数には上限があります。相続税の基礎控除や非課税枠の計算に使える養子の数は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までです(相続税法第15条)。節税目的の養子縁組は税務署に否認されるリスクもあるため、慎重な判断が必要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 養子縁組で相続人を増やすと、1人当たりの遺留分が減る
  • 孫や子の配偶者を養子にする方法が代表的
  • 相続税計算上の養子カウントには人数制限あり

対策②:生前贈与で財産自体を減らす

次の方法は、財産自体を減らすことで遺留分の計算ベースを小さくするというアプローチです。生前に積極的に贈与を行い、相続財産そのものを少なくします。

ただし、ここには重要な注意点があります。

⚠️ 注意

遺留分を侵害することを知りながら(=損害を与えると知っていながら)行った贈与は、「持ち戻し」の対象となります。つまり、相続時に分ける財産に含めて計算し直さなければなりません。あまりにも贈与しすぎて遺留分侵害が明らかな場合、裁判になると負けるリスクがあります。

生前贈与は有効な手段ですが、「やりすぎ」は逆効果になることを理解した上で計画的に行う必要があります。

💡 補足:動画では触れていませんが…

2024年1月以降、相続開始前の生前贈与の持ち戻し期間が3年から7年に延長されました(経過措置あり)。早めに計画的な贈与を始めることがより重要になっています。年間110万円の基礎控除を活用した暦年贈与も、長期的に継続することで大きな効果を生みます。

📝 このセクションのまとめ

  • 生前贈与で相続財産を減らすことで遺留分の計算ベースを小さくできる
  • 遺留分侵害を知りながらの贈与は「持ち戻し」対象となり裁判で負けるリスクあり
  • 計画的・長期的な贈与が有効。やりすぎは禁物

対策③:生命保険を活用して特定の人に財産を渡す

生命保険の死亡保険金は、受取人固有の財産となります。これは遺産分割協議の対象にならず、他の相続人が口出しできない財産です。

そのため、渡したい相続人を受取人として生命保険を組んでおけば、その人には確実に財産を届けることができます。逆に、渡したくない相続人を受取人に設定しなければ、その人には保険金が渡りません。

⚠️ 注意

ただし、全ての財産を生命保険に変えて特定の1人だけに渡るようにした場合、裁判になると負けてしまうことがあります。「特別受益」や遺留分侵害として争われるリスクがあるため、全額を生命保険に充てることは現実的ではありません。あくまで一部の財産を確実に渡す手段として活用するのが現実的です。

📌 ポイント

生命保険の非課税枠(500万円 × 法定相続人の数)も活用できます。例えば法定相続人が3人いれば1,500万円まで相続税が非課税になります。節税と財産配分の最適化を同時に実現できる点が生命保険活用の大きなメリットです。

📝 このセクションのまとめ

  • 生命保険の死亡保険金は受取人固有の財産で遺産分割の対象外
  • 渡したい人を受取人に設定することで確実に財産を届けられる
  • 全財産を生命保険に変えるのはやりすぎで裁判リスクあり

対策④:遺言書で遺留分ギリギリの配分を指定する

最後の方法は遺言書を書くことです。「1円も渡したくない」という気持ちを完全に叶えることはできませんが、「どうしても避けられない最低限の額だけを渡し、残りは絶対に渡さない」という意思表示を遺言で明確にすることができます。

具体的には2つのアプローチがあります。

  • 遺留分ギリギリの額を相続させる遺言:法律上の最低限の額だけを記載し、残りは他の相続人・受遺者に渡す
  • 遺留分を下回る額で書く遺言:あえて遺留分を割った金額で記載し、相手方が遺留分侵害額請求(裁判)を起こすかどうかの心理的ハードルを利用する

日本人はアメリカ人と異なり、裁判を起こすことを嫌う傾向があります。遺留分を割った内容で遺言を書いておくことで、相手方が「裁判まではしたくない」と判断して請求を諦めるケースもあります。この心理的な抑止効果を狙った方法です。

💡 補足:動画では触れていませんが…

遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。相続対策として確実性を求めるなら公正証書遺言が最も安全です。自筆証書遺言は法務局の保管制度(2020年開始)を利用すれば検認不要になりましたが、内容の有効性は保証されません。

📝 このセクションのまとめ

  • 遺言で遺留分ギリギリの配分を指定することが最も直接的な意思表示
  • 遺留分を下回る内容で書くことで、相手方の心理的ハードルを利用する方法もある
  • 確実性を求めるなら公正証書遺言が最善

4つの対策の比較まとめ

ここまで紹介した4つの対策を、効果・リスク・実行しやすさの観点から整理します。

対策主な効果注意点・リスク実行タイミング
①養子縁組相続人を増やして1人当たりの遺留分を減らす税法上の養子カウント制限あり生前(早めに)
②生前贈与相続財産自体を減らして遺留分の計算ベースを縮小やりすぎると持ち戻しで無効化。裁判リスクあり生前(長期的に)
③生命保険特定の人に確実に財産を渡せる(分割協議対象外)全額充てると裁判で負けるリスクあり生前(早めに)
④遺言書遺留分ギリギリ・または心理的抑止で渡す額を最小化遺留分請求自体は防げない生前(いつでも)

📌 ポイント

これらの対策は単独よりも組み合わせて使うことで効果が高まります。例えば「養子縁組で遺留分を減らしつつ、生命保険で渡したい人への財産を確保し、遺言で意思を明確にする」という複合的なアプローチが実務では有効です。ただし、どれも「やりすぎ」は禁物であり、専門家と相談しながら時間をかけて取り組むことが大切です。

📋 この記事を読んだら次にやること

  1. 自分の家族構成と法定相続人を確認し、渡したくない相続人が誰かを整理する
  2. 現在の財産総額を把握し、遺留分がいくらになるかを試算する
  3. 養子縁組・生前贈与・生命保険・遺言のどの組み合わせが自分の状況に合うか、相続専門の税理士または弁護士に相談する
  4. 対策は時間がかかるため、なるべく早く着手する(特に生前贈与は長期戦が有効)

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル ベンチャーサポート相続税理士法人チャンネル の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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