2026年10月インボイス増税で負担2.5倍|経過措置・2割特例廃止を税理士が解説

2026年10月インボイス増税で負担2.5倍|経過措置・2割特例廃止を税理士が解説
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2026年10月、インボイス制度の大改正で事業者負担が2.5倍になります。経過措置の変更・2割特例の廃止・インボイス廃止論の行方まで詳しく解説します。

収録日は2025年2月ですが、約1年半後の2026年10月にはインボイスの変更に伴う増税が予定されています。それは一体どういう内容なのか、それによって社会がどう変わりそうなのか、そして今ネット上では「インボイス廃止」という声も見受けられますが、それは今後どうなりそうなのかについてもお話ししてまいります。

消費税の基本的な仕組みをおさらい

2026年10月からのインボイス増税を説明するために、まず消費税の仕組みについて簡単におさらいします。消費税の計算は、年間でもらった消費税(課税売上にかかる消費税額)から、払った消費税(仕入税額控除)を引いた額を納めるという仕組みです。

具体的な例で見ていきましょう。

取引の流れ金額(税抜)消費税10%合計
顧客へ商品を販売(売上)30,000円3,000円33,000円
仕入先から商品を購入(仕入)10,000円1,000円11,000円
納める消費税(差額)2,000円

インボイス登録済みの課税事業者であれば、もらった消費税3,000円から払った消費税1,000円を差し引いた2,000円を納めます。これが消費税の基本的な計算方法(本則課税)です。

なお、皆さんのレシートにも、インボイスの証拠として「T」から始まる13桁の登録番号が記載されているはずです。

免税事業者との取引で生じる「二重払い」問題

インボイス制度のややこしいところは、インボイス発行事業者になるかどうかが任意で選択できる点にあります。取引先の個人事業主がインボイス未登録(年間売上1,000万円以下の免税事業者)だった場合、インボイスが手に入らないため、その支払いは「払った消費税」として認められません。

⚠️ 注意

免税事業者に1,000円の消費税を払っているのに、インボイスがないためその1,000円が仕入税額控除として認められず、さらに1,000円分の消費税を別途納めなければならない「二重払い」が発生します。

具体的に数字で比較すると、以下のようになります。

取引先の状況もらった消費税控除できる消費税納める消費税
インボイス登録済み3,000円1,000円2,000円
インボイス未登録(免税事業者)3,000円0円3,000円

インボイスがもらえない場合、1,000円分余計に消費税を納めることになってしまいます。

📝 このセクションのまとめ

  • 消費税は「もらった消費税-払った消費税」を納める仕組み(本則課税)
  • インボイスがないと仕入税額控除が認められず、実質的な二重払いが発生する
  • インボイス発行事業者への登録は任意だが、未登録だと取引先に負担が生じる

現行の経過措置「80%控除」とは何か

二重払いの問題があるため、インボイス導入の2023年10月から3年間限定で「経過措置(80%控除)」という制度が設けられました。

📌 ポイント:経過措置80%控除の内容

免税事業者に支払ってインボイスがもらえなかった場合でも、支払った消費税の80%は仕入税額控除として認めるという特例です。1,000円の消費税を払った場合、800円は控除でき、残り200円だけ余分に納めればよい、という仕組みです。

この経過措置のもとでは、免税事業者との取引で生じる会社側の余分な負担は200円で済んでいます。しかし実際には、この負担の扱い方によって3つのパターンが生じています。

パターン負担の構造会社の余分な負担
①会社が全額負担免税事業者に消費税1,000円を全額支払い、差額200円は会社が納税200円
②免税事業者に負担させる免税事業者への支払いを800円に減額し、会社が200円を納税実質0円(免税事業者が400円損)
③消費税を一切払わない(不当)免税事業者に消費税分を支払わず、200円だけ納税差額800円を会社が利得

⚠️ 注意

③のように免税事業者に消費税を一切払わないケースは、本来は公正取引委員会が規制するはずですが、実際にはあまり指摘されていないのが現状です。会社側は消費税分を払わず、かつ200円を納めるだけで済むため、差額の800円を不当に利得する構造になっています。

📝 このセクションのまとめ

  • 2023年10月〜2026年9月は「経過措置80%控除」が適用される
  • 免税事業者との取引でも、払った消費税の80%は仕入税額控除として認められる
  • 会社側の余分な負担は200円で済んでいるが、負担の押し付けや不当な取引も発生している

2026年10月から「50%控除」へ変更|負担は2.5倍に

この経過措置80%控除は2026年9月までの制度です。2026年10月以降、控除割合が50%に変わります。この50%控除は2029年9月までの3年間の予定で、その後は経過措置自体がなくなる予定です。

期間控除割合会社の余分な負担(消費税1,000円の場合)
〜2026年9月(現行)80%控除200円
2026年10月〜2029年9月50%控除500円(2.5倍に増加)
2029年10月以降控除なし1,000円(現行の5倍)

80%から50%への変化は一見小さく見えますが、会社の負担は200円から500円へと2.5倍に増えます。これは決して小さな変化ではありません。

免税事業者(個人事業主)側から見ると、これまで1万円に対して800円もらっていたのが500円に減る(約4割減)という影響も生じます。

📌 ポイント:社会的に予想される変化

現状、会社負担のケースでは余分な負担が200円だったため、免税事業者との取引を継続している会社も多くありました。しかし500円に増えるとなると、以下のような動きが加速すると予想されます。

  • 会社負担から個人事業主(免税事業者)負担へ切り替える
  • インボイス未登録の個人事業主との取引を打ち切る(ステルス取引停止)

実際、「インボイス未登録の個人事業主は、50%控除になるタイミングで取引を切った方がいいか」という相談が実務の現場でも増えています。インボイス導入時よりも、この50%控除への変更タイミングの方が社会への影響は大きいと考えられます。

📝 このセクションのまとめ

  • 2026年10月から経過措置の控除割合が80%→50%に変更される
  • 会社側の余分な負担は200円→500円と2.5倍に増加する
  • 免税事業者が受け取れる消費税相当額も約4割減少する
  • インボイス導入時以上に、取引停止や負担転嫁が加速する可能性がある

2割特例も2026年9月末で廃止予定

2026年10月に変わるのは経過措置だけではありません。「2割特例」も2026年9月末で廃止される予定です。

2割特例とは、元々は年間売上1,000万円以下の免税事業者だったにもかかわらず、インボイス登録のために課税事業者になった方が使える特例です。インボイス登録によって消費税を納めなければならなくなった負担を緩和するために設けられた制度です。

📌 ポイント:2割特例の計算方法

消費税の納税額を「売上にかかる消費税額の2割(20%)」でよいとする特例です。

例:売上1万1,000円の場合

  • 本来の消費税額:1,000円
  • 2割特例適用後:200円(1,000円×20%)

2割特例が使えるのは、以下の条件に当てはまる方です。

  • 年間売上が1,000万円以下なのに免税事業者から課税事業者になった方
  • 新規に開業した方
  • 適用期間:2026年9月まで

個人事業主の方は、2025年・2026年の確定申告(あと2年間)で2割特例を使える状況です。

2割特例のメリットは大きく2点あります。

メリット内容
① 納税額が少ない売上にかかる消費税の2割だけ納めればよい
② 手間が少ない売上の数字に掛け算するだけ。仕入・経費のインボイスを管理する必要がなく、会計ソフトへの入力も1手間減る

2割特例は非常に便利な制度ですが、2026年9月末で廃止されます。2027年以降は、簡易課税(選択できる方のみ)か、従来の本則課税(もらった消費税から払った消費税を差し引いて納める)のいずれかになります。これは金額的にも手間的にも負担が重くなります。

📝 このセクションのまとめ

  • 2割特例は「売上にかかる消費税の2割だけ納めればよい」非常に有利な特例
  • 仕入・経費のインボイス管理が不要で、事務負担も大幅に軽減される
  • 個人事業主は2025年・2026年の確定申告(あと2年)しか使えない
  • 2027年以降は簡易課税または本則課税への移行が必要になる

インボイス廃止論の現状と政府・財務省の立場

現状、中小事業者や野党の多くは「インボイス廃止」を訴えており、2024年12月には埼玉県議会で自民党がインボイス廃止の意見書を可決したことが話題になりました。

しかし、これでインボイス廃止の流れが一気に加速しているかというと、与党・政府の側では廃止に向けた動きは全く出てきていないのが実情です。

財務省がインボイス廃止に強く反対すると考えられる理由は主に3つあります。

  1. ステルス増税:インボイス制度によって、これまで免税事業者が実質的に手元に残していた消費税相当額が課税されるようになる
  2. 税務調査の簡便化:従来の税務調査は帳簿を見て「これは経費かどうか」を判断する必要があり、優秀な調査官でないと難しかった。インボイス制度によって「インボイスがあればOK、なければNG」と非常に簡単に判断できるようになる
  3. デジタルインボイスへの対応(世界的な潮流):後述するPeppol(ペポル)という国際規格への対応

📌 ポイント:デジタルインボイス「Peppol(ペポル)」とは

Peppolとは、全世界でインボイスをデータとして送受信しようという国際規格です。請求書をPDFやCSVにするのではなく、データとして直接やり取りすることで、以下が自動的に連携できるようになります。

  • 会計ソフトへの自動取り込み
  • 銀行振り込みや入金消込の自動化
  • 消費税の自動計算・納税

財務省としては、このデジタル化を推進したいため、IT導入補助金を活用して電子化を促進しています(ただし補助金の不正利用も増加傾向にあり、受給が厳しくなっています)。

インボイスを気軽に廃止すべきと考える方も多いと思いますが、廃止するとデジタル化や世界の潮流から遅れを取ってしまうという側面もあります。

また、2025年7月には参議院選挙が予定されており、その結果次第ではインボイスの流れに変更が生じる可能性もあります。ただし、野党が「廃止・廃止」と主張するだけでは0か100かの議論になり、結局何も変わらないという状況にもなりかねません。

📝 このセクションのまとめ

  • 埼玉県議会でインボイス廃止の意見書が可決されたが、与党・政府レベルでの廃止の動きはない
  • 財務省がインボイスを廃止しない理由は「ステルス増税」「税務調査の簡便化」「デジタル化推進」の3点
  • 世界的なデジタルインボイス規格「Peppol」への対応という観点から、単純な廃止には問題がある
  • 2025年7月の参議院選挙の結果が今後の方向性に影響する可能性がある

廃止より現実的な「インボイス自由化」という提案

実務家の立場から考えると、インボイス廃止より簡単に問題を解決できる方法があります。それは以下の2点をセットで実施することです。

提案内容現行提案後効果
経過措置の控除割合80%控除(〜2026年9月)100%控除(恒久化)インボイス未登録でも会社側の余分な負担がゼロに
免税事業者の消費税納税2割特例(〜2026年9月)0割特例(納税不要)インボイス登録しても消費税を納めなくてよい

この2つをセットにすることで、以下のような状況が実現できます。

  • インボイスをやりたい人はやればよい
  • やらなくても取引先に実質的なデメリットが生じない
  • インボイス登録しても消費税の負担が増えない

つまり、インボイスの「反強制的な状態」を解消した自由化が実現できるわけです。今は「インボイスを登録しないと取引から外されるかもしれない」というペナルティ付きの任意制度、言い換えれば「任意だけど任意ではない」半強制的な状況になっています。

将来的にデジタルインボイスがどんどん普及して「デジタルインボイスの方が便利だ」となった時点でインボイス登録すればよいのであって、現在の半強制的なやり方には問題があると言えます。一方で「廃止」はデジタル化への逆行という問題も解決できません。

⚠️ 注意:最低限必要な対応

選挙を考えると「廃止」という言葉の方がわかりやすくインパクトが強いため、野党は廃止を訴え続けるでしょう。しかし少なくとも、現行の経過措置80%控除と2割特例は延長しないと、2026年10月にインボイス導入時以上の混乱が起きると予想されます。現状でも会計の現場では手間暇が相当増えて混乱しているのが実情です。

📝 このセクションのまとめ

  • 「経過措置100%控除+0割特例」のセット導入で、廃止より簡単にインボイスの自由化が実現できる
  • 現在のインボイスは「任意だが実質半強制」という問題を抱えている
  • 単純な廃止はデジタル化への逆行という別の問題を生む
  • 少なくとも現行の経過措置80%控除・2割特例の延長は最低限必要な対応と言える

※本記事の内容は2025年2月16日時点の情報に基づいています。今後の税制改正によって内容が変わる可能性があります。最新情報は税務署や税理士にご確認ください。

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル オタク会計士ch【山田真哉】 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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