インボイス登録者必見・初の消費税確定申告前に今すぐやるべき3つのこと【税理士が解説】

インボイス登録者必見・初の消費税確定申告前に今すぐやるべき3つのこと【税理士が解説】
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インボイス番号を取得した個人事業主・フリーランスは、次の確定申告から消費税の申告が加わります。今すぐ始めるべき準備を解説します。

インボイス制度で消費税課税事業者デビュー:今回の3つのテーマ

インボイス制度によって泣く泣く消費税課税事業者としてデビューされた方向けに、初の消費税確定申告までに今から絶対にすぐやっておくべきことを3つ紹介します。

  1. 会計ソフトの導入、あるいは税理士の選定・依頼
  2. 月次決算
  3. 消費税の節税対策(計算方法の選択)

前向きな話ではありませんが、これらを早めに対応しておくことが非常に重要です。

📝 このセクションのまとめ

  • インボイス番号取得者は次の確定申告から消費税申告が必要
  • やるべきことは「会計ソフト導入・税理士選定」「月次決算」「消費税の計算方法選択」の3つ

個人事業主にかかる税金の全体像と消費税の位置づけ

個人事業主・フリーランスにかかる主な税金を整理しましょう。

税金の種類課税対象申告・納税期限
所得税所得(儲け)に対してかかる翌年3月15日まで
住民税・事業税所得税の計算に連動所得税申告と連動
消費税課税取引の消費税(黒字・赤字問わず)翌年3月31日まで
国民健康保険住民税の計算と連動

消費税は事業所が黒字であろうが赤字であろうが関係なく、課税取引があり受け取っている消費税があればかかるものです。申告納税方式をとっており、申告期限は翌年3月31日です。所得税の期限(3月15日)よりも少し後になっていますが、実務上はほぼ同じタイミングで申告・納税を行います。

📌 ポイント

振替納税(自動引き落とし)の手続きをしていれば、税金の引き落としはそれぞれ4月下旬まで引き伸ばされます。資金繰りの観点からも活用を検討しましょう。

なお、法人の場合は所得税が「法人税」に読み替えられ、住民税・事業税も「法人住民税・法人事業税」となります。確定申告のタイミングも個人事業主と異なり、決算日から2ヶ月以内が原則です。

📝 このセクションのまとめ

  • 消費税は黒字・赤字に関係なく、課税取引があればかかる
  • 申告期限は翌年3月31日(実務上は所得税と同タイミング)
  • 振替納税を使えば4月下旬まで納付を延ばせる

インボイス制度で増える事務負担と消費税計算の仕組み

インボイス制度によって増える負担は大きく4つあります。

  • 適格請求書発行のためのシステム導入(請求書に「T+13桁のインボイスナンバー」を記載)
  • 消費税の経理処理(課税・非課税・税率・インボイスの有無の区分)
  • 申告書の作成
  • 納付(時間コスト・金銭コストの両方が発生)

消費税の計算の基本的な仕組みを具体例で見てみましょう。売上1,000万円、経費500万円の事業者で、支払先が全てインボイス番号を持っている場合:

項目金額消費税(10%)
売上(預かった消費税)1,000万円100万円
経費(支払った消費税)500万円50万円
納付すべき消費税50万円

ところが、支払先がインボイス番号を持っていない場合はどうなるでしょうか。支払った50万円の消費税を一切引くことが認められなくなります。この「消費税を引く」仕組みを仕入税額控除と言い、これを受けるための要件が「適格請求書(インボイス)」または「簡易適格請求書」の保存です。

支払先の状況仕入税額控除納付税額負担増
インボイス番号あり50万円控除可50万円
インボイス番号なし控除不可100万円50万円増

📌 少額特例(1万円未満)のポイント

2年前の課税売上高が1億円以下の小規模な事業者については、1件あたり1万円未満の経費については、2029年9月30日までの間、レシートや請求書にインボイス番号の記載がなくても、帳簿(会計データ)の入力がきちんとされていれば仕入税額控除が認められます。

⚠️ よくある勘違い:インボイスがないと経費に落とせない?

これは誤りです。所得税も法人税も、インボイスナンバーの記載がなくても領収書や請求書があれば経費の証拠になります。インボイス番号がないとできなくなるのは、消費税の仕入税額控除だけです。混同しないようにご注意ください。

また、経過措置として当初6年間は、取引先が免税事業者であっても一部控除が認められています。

期間控除できる割合先の例(50万円)での控除額納付税額
最初の3年間(令和5〜7年)80%40万円60万円(10万円増)
次の3年間(令和8〜10年)50%25万円75万円(25万円増)

税理士会はこの経過措置を恒久化するよう提案しているとのことです。ぜひ通ってほしい内容ですね。

さらに、今年(2023年)の個人事業主の方は注意が必要です。1月〜9月は消費税免税の処理、10月1日〜12月31日はインボイス番号取得後の消費税課税処理と、期間を分けて計算しなければなりません。また、1枚の接待交際費の領収書であっても次の区分が必要です。

  • 課税取引か非課税取引か(例:飲食は課税、お祝い金は課税対象外)
  • インボイスがあるかないか
  • 税率が10%か8%か

これらを正確に処理するためには、実質的に会計ソフトなしでの消費税確定申告はほぼ不可能です。

📝 このセクションのまとめ

  • 支払先がインボイスを持っていないと仕入税額控除が受けられず納税額が増える
  • 1万円未満の少額経費は2029年9月末まで帳簿入力のみでOK(課税売上1億円以下の事業者)
  • インボイスがないと「経費に落とせない」は誤り。仕入税額控除ができないだけ
  • 経過措置で最初の3年は80%、次の3年は50%の控除が可能
  • 2023年は1〜9月(免税)と10〜12月(課税)を分けて計算が必要

やるべきこと①:会計ソフトの導入または税理士への依頼

会計データ入力から確定申告までの流れは次の通りです。

  1. 日々の取引を帳簿に記載(会計ソフトで入力)
  2. 売上の請求書・仕入れの請求書・諸経費の領収書や銀行通帳・クレジットカード明細・小口現金帳などをもとに仕訳を入力
  3. 毎月の残高試算表(月次決算書)を作成
  4. 年間の決算書(損益計算書・貸借対照表)を作成
  5. 税金の確定申告書を作成・提出(翌年3月15日・3月31日)

会計ソフトを使うメリットは以下の通りです。

  • 簿記の知識がなくても複式簿記に沿った帳簿作成ができる
  • 入力した取引が自動的に転記・集計される
  • 課税・非課税・8%・10%・インボイスの有無も入力通りに集計される
  • 日付順でなくても自動的に並べ替えてくれる
  • クレジットカード明細やネットバンキングのデータを自動仕訳機能で処理できる
  • 青色申告・電子申告・消費税の簡易課税制度にも対応している

すでに会計ソフトの入力に慣れている方は、インボイス対応でひと手間増えるだけです。インボイスがある場合は「適格請求書」、ない場合は「区分記載請求書」を選択する入力が加わります。

主要な会計ソフトのシェアは次の通りです(チャンネルアンケート結果)。

会計ソフトシェア
やよいの青色申告33%
freee会計23%
マネーフォワードクラウド20%

この3つから選んでいただければハズレはないでしょう。

一方、「使いこなす自信がない」「入力する時間がない」という方は、顧問税理士への依頼や、確定申告のみの単発依頼も選択肢になります。

依頼形態内容費用感注意点
顧問契約月次決算・随時相談・申告書作成・税務調査対応月額3〜4万円程度コストは高め
単発(年次)契約申告書作成のみ顧問より安価節税相談・税務調査対応は含まれないのが一般的

⚠️ 注意:消費税申告だけの単発依頼はほぼ受けてもらえない

消費税の申告書を税理士が納税代理人として提出する以上、その計算根拠となる所得税の確定申告内容の確認が必要です。消費税申告のみの依頼はほとんどの事務所が受けていません。依頼するなら所得税も消費税も含めて丸ごと依頼するか、会計データの入力だけ自分で行ってコストを抑えるかを検討しましょう。

⚠️ 注意:これまでいい加減な申告をしていた方は要注意

税理士に依頼することで節税どころか税額が増えるケースも実務上あります。正確な申告に切り替わることで、これまでの過少申告が是正されるためです。

個人事業主の方への個人的なおすすめは、まず会計ソフトを使いこなして自分で申告することです。最近の会計ソフトは非常に優秀で、慣れれば自力での申告書作成が可能です。事業が拡大してきたタイミングで顧問税理士への依頼を検討するのがよいでしょう。

📝 このセクションのまとめ

  • 消費税申告には会計ソフトの導入が実質必須
  • 主要ソフトはやよい・freee・マネーフォワードの3択
  • 税理士に依頼するなら所得税・消費税をまとめて丸投げが基本
  • 顧問契約の相場は月額3〜4万円程度
  • まずは会計ソフトで自力申告にチャレンジするのがおすすめ

やるべきこと②:月次決算で数字を経営に活かす

月次決算とは、毎月の帳簿を月ごとに締めて損益や資金状況を把握することです。会計ソフトの導入がしっかりできていないと、月次決算も難しくなります。

月次決算を行うメリットは次の通りです。

  • 確定申告直前に慌てなくて済む(月次で締めるのでスピーディーな対応が可能)
  • 業績予測・資金繰り対策ができる
  • 毎月の利益状況や資金繰りが見えるので納税予測がしやすくなる
  • 早めの節税対策が実現できる

📌 ポイント

消費税の計算方法は3通りあり(後述)、どれが有利かを判断するには今年の数字が把握できていることが大前提です。月次決算をしていないと、年末になっても節税シミュレーションができません。節税対策をしたい方には月次決算を強くおすすめします。

📝 このセクションのまとめ

  • 月次決算で毎月の業績・資金繰りを把握する
  • 納税予測・節税対策を早めに行うために月次決算は必須
  • 消費税の計算方法シミュレーションも月次決算があってこそ可能

やるべきこと③:消費税の計算方法3つを理解して最有利を選ぶ

消費税の計算方法は以下の3種類です。インボイス制度の導入により、従来の2通りから3通りになりました。

計算方法概要有利になりやすいケース
本則課税(原則課税)実際に預かった消費税から支払った消費税を差し引いて納付赤字・設備投資が多い・輸出業
2割課税預かった消費税の20%だけ納付インボイス登録を機に課税事業者になった方の多く
簡易課税業種ごとに決まった割合(みなし仕入率)で納付額を計算卸売業など仕入率の高い業種

⚠️ 注意:2割課税が使えない場合がある

2割課税は「インボイス登録を機に課税事業者になった方」が対象です。2年前の課税売上高が1,000万円を超えたことで令和5年から課税事業者になった方は、残念ながら2割課税は使えません。本則課税か簡易課税の選択になります。

簡易課税の業種別みなし仕入率と手続き上の注意点

簡易課税では、業種ごとに「みなし仕入率」が定められており、預かった消費税のうちその割合だけを差し引いて残りを納付します。

事業区分業種の例みなし仕入率納付割合
第一種事業卸売業90%10%
第二種事業小売業80%20%
第三種事業製造業・建設業など70%30%
第四種事業飲食業60%40%
第五種事業保険・税理士・コンサルなどサービス業50%50%
第六種事業不動産業40%60%

簡易課税を適用するには、「消費税簡易課税制度選択届出書」を、適用しようとする年度の前年度中に提出する必要があります。

  • 適用要件:基準期間(2年前)の課税売上高が5,000万円以下の事業者のみ
  • 一度選択すると原則として2年間は継続が必要(途中でやめられない)
  • 業態変更を予定している方は特に注意が必要

📌 例外規定:今年10月から課税事業者になった方への特例

本来は令和4年中に簡易課税の選択届出書を提出する必要がありましたが、今年(令和5年)中に届出を提出すれば簡易課税を適用できるという例外規定があります。該当する方は早急に対応しましょう。

📝 このセクションのまとめ

  • 簡易課税は業種ごとのみなし仕入率で納付額を計算する方法
  • 適用には前年度中の届出提出が必要(今年10月デビュー者は今年中でOK)
  • 2年前の課税売上5,000万円以下の事業者のみ適用可能
  • 一度選択したら原則2年間継続が必要

具体的な計算例で比較:どの方法が最も有利か

実際に2つの事例で3つの計算方法を比較してみましょう。

【事例1】アパレル卸売業(自社製作なし、仕入れた商品をそのまま販売)

売上:500万円、仕入れ・その他経費合計:350万円

計算方法計算式納付税額
本則課税預かり消費税50万円 − 支払い消費税35万円15万円
2割課税預かり消費税50万円 × 20%10万円
簡易課税(第一種・卸売業)預かり消費税50万円 × 10%5万円(最有利)

この例では簡易課税が最も有利です。ただし、簡易課税は届出が必要なのでくれぐれも注意してください。また、卸売業だからといって必ず簡易課税が有利とは限りません。例えば経費がもっと多くかかっていて赤字に近い状態であれば、支払った消費税が大きくなり、本則課税で申告することで消費税の還付を受けられる場合もあります。

【事例2】ライター(サービス業)

売上:500万円、経費:100万円

計算方法計算式納付税額
本則課税預かり消費税50万円 − 支払い消費税10万円40万円
2割課税預かり消費税50万円 × 20%10万円(最有利)
簡易課税(第五種・サービス業)預かり消費税50万円 × 50%25万円

この例では2割課税が最も有利です。本来納めるべき40万円が10万円になり、30万円の節税になります。

⚠️ 注意:節税分は雑収入として所得税の課税対象になる

2割課税や簡易課税によって本来の税額より消費税が少なくなった場合、その差額は雑収入として所得税・法人税の課税対象になります。ただし、所得税等の課税対象になることよりも消費税が大幅に下がる金額的メリットの方が大きいため、有利な計算方法を選ぶことは十分意味があります。

📝 このセクションのまとめ

  • 卸売業は簡易課税(第一種:10%納付)が有利になりやすい
  • インボイス登録を機に課税事業者になったライター等のサービス業は2割課税が有利になりやすい
  • 赤字・設備投資が多い・輸出業は本則課税が有利になりやすい
  • 節税分は雑収入として所得税の課税対象になる点に注意
  • どれが有利かは月次決算で数字を把握してからシミュレーションすることが重要

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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