インボイス番号なしでも経費に落とせる?税理士が法人税・消費税をシミュレーション解説
「インボイス番号がないと経費に落とせない」は勘違いです。正しい仕組みを理解して、税負担を正確に把握しましょう。
「インボイス番号がないと経費に落とせない」は本当?
ある個人経営の飲食店のオーナーから、こんなエピソードを聞きました。お客さんから領収書の発行を求められた際、そのお客さんが「インボイス番号の記載がなかったら経費に落とせなくなるから困る」と言ったというのです。
果たして、この考え方は正しいのでしょうか?
⚠️ 注意
「インボイス番号の記載がないと経費に落とせない」というのは勘違い(誤り)です。事業関連性が認められる支出であれば、インボイス番号がなくても経費に計上することができます。
ただし、経費に落とせるかどうかと、消費税の控除ができるかどうかは別の話です。インボイス番号の記載がない領収書・請求書では、消費税の仕入税額控除ができません。これが今日の結論です。
📝 このセクションのまとめ
- インボイス番号がなくても、事業関連性があれば経費に計上できる
- ただし消費税の仕入税額控除はできない
- 「経費に落とせない」という認識は勘違いであり、広く誤解されている
インボイス制度の概要:売上側と仕入側の違い
インボイス制度は、得意先(売上に関するもの)と、仕入先・外注先を含むほぼすべての経費に関して影響があります。この2つに分けて考えると整理しやすくなります。
【売上側(得意先への対応)】
インボイス番号(適格請求書発行事業者登録番号)を取得したら、その番号を請求書または領収書に記載するだけです。従来の請求書の右上などに、「T」から始まる13桁のインボイス番号を記載します。飲食店や小売業など領収書を発行する場合も同様に、インボイス番号を記載して渡すことになります。
【仕入側(支払いへの対応)】
大変なのはこちらの支払い側です。受け取った請求書や領収書に相手がインボイス番号を持っているかどうかの確認が必須となります。そして、インボイス番号の有無によって経理処理や納税額まで変わってきます。
📌 ポイント
インボイス番号の記載がないレシート・請求書に基づく支払いは、経費に落とせないわけではありません。ただし、税金の面で損をしてしまいます。具体的にどれくらい損するのかは、以降のシミュレーションで確認しましょう。
📝 このセクションのまとめ
- 売上側は、請求書・領収書にTから始まる13桁のインボイス番号を記載するだけ
- 仕入側は、相手がインボイス番号を持っているかの確認が必要
- インボイス番号の有無によって、消費税の納税額が変わる
法人税・消費税のシミュレーション:インボイスあり vs なし
インボイスの有無によって、法人税(個人事業主の方は所得税に読み替えてください)と消費税がどのように変わるのかを、具体的な数字でシミュレーションしてみましょう。
以下の2つのケースで比較します。
- ケース①:仕入先・外注先など、すべての経費の支払先がインボイス番号を持っている場合
- ケース②:インボイス番号を誰も持っていない場合
シミュレーションの前提条件は以下の通りです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売上(税抜) | 1,000万円 |
| 売上にかかる消費税(10%) | 100万円(受け取り) |
| 経費(税抜) | 500万円 |
| 経費にかかる消費税(10%) | 50万円(支払い) |
ケース①:インボイス番号あり(通常の計算)
【法人税の計算】
消費税の計算は税抜きベースで行うのが基本です。売上1,000万円から経費500万円を引くと、利益は500万円になります。中小企業の場合、年間所得が800万円以下であれば、法人税・法人住民税・法人事業税をひっくるめておよそ約25%の税率が目安です。
500万円 × 25% = 法人税 約125万円
【消費税の計算】
受け取った消費税100万円から、支払った消費税50万円を引いた差額を納めます。
100万円 − 50万円 = 消費税 50万円
| 税目 | 金額 |
|---|---|
| 法人税(約25%) | 125万円 |
| 消費税 | 50万円 |
| 合計 | 175万円 |
📝 このセクションのまとめ
- インボイスありの場合、法人税125万円+消費税50万円で合計175万円の税負担
- 消費税は受け取り分から支払い分を差し引いて納税(仕入税額控除)
ケース②:インボイス番号なし(税負担はどう変わる?)
インボイス番号がない場合、何が起こるのでしょうか。まず消費税から見ていきましょう。
【消費税の計算】
インボイス番号がない場合、支払った消費税50万円の控除が認められません。つまり、受け取った消費税100万円をそのまま全額納めることになります。
100万円 − 0円 = 消費税 100万円(ケース①の2倍)
【法人税の計算】
ここが多くの人が驚くポイントです。経費500万円は引き続き経費として計上できます。さらに、消費税で控除できなかった50万円が経費に加わります。
- 売上:1,000万円
- 経費:500万円 + 消費税控除できなかった分50万円 = 550万円
- 利益:1,000万円 − 550万円 = 450万円
450万円 × 25% = 法人税 約113万円
ケース①の法人税125万円と比べると、約12万円の節税になっています。インボイス番号がないことで経費が増え、利益が圧縮されるため、法人税は下がるのです。
⚠️ 注意
法人税は下がりますが、消費税が50万円から100万円へと倍額になります。トータルの税負担は増加します。「インボイスがないと節税できる」という見方は、消費税の増加を無視した誤解です。
| 税目 | ケース①(インボイスあり) | ケース②(インボイスなし) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 法人税 | 125万円 | 113万円 | ▲12万円(節税) |
| 消費税 | 50万円 | 100万円 | +50万円(増加) |
| 合計 | 175万円 | 213万円 | +38万円(負担増) |
法人税は節税できても、消費税がそれ以上に増えてしまうため、トータルで38万円もの税負担増となります。「経費はむしろ増えて節税できるけれども、それ以上に消費税がドカンと増えて損する」というのが正確な理解です。
📝 このセクションのまとめ
- インボイスなしでも経費は落とせるが、消費税の控除ができない
- 法人税は約12万円下がる一方、消費税は50万円増えて倍額になる
- トータルでは38万円の税負担増となる
経過措置(特例)で実際の負担増はどのくらい?
ただし、インボイス制度には経過措置(特例)が設けられています。当面6年間は、取引先が免税事業者(インボイス番号を持っていない事業者)であっても、一部の消費税控除が認められます。
| 期間 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 最初の3年間(2023年10月〜2026年9月) | 80%控除可能 |
| 次の3年間(2026年10月〜2029年9月) | 50%控除可能 |
先ほどのシミュレーション例に経過措置を当てはめると、最初の3年間はどうなるでしょうか。
【消費税の計算(経過措置・80%控除適用)】
支払った消費税50万円のうち、80%にあたる40万円は控除が認められます。
100万円 − 40万円 = 消費税 60万円
【法人税の計算(経過措置・80%控除適用)】
控除できなかった残り10万円(50万円 − 40万円)は経費に加わります。
- 経費:500万円 + 10万円 = 510万円
- 利益:1,000万円 − 510万円 = 490万円
- 法人税:490万円 × 25% = 約123万円
| 税目 | ケース①(インボイスあり) | ケース②(インボイスなし・経過措置80%) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 法人税 | 125万円 | 123万円 | ▲2万円 |
| 消費税 | 50万円 | 60万円 | +10万円 |
| 合計 | 175万円 | 183万円 | +8万円(負担増) |
本来38万円もの税負担増になるところが、経過措置のおかげで当初3年間は約8万円の負担増で済みます。
📌 ポイント
経過措置は当面6年間設けられており、最初の3年間は80%、次の3年間は50%の控除が認められます。この特例が終了すると、インボイスなしの場合の税負担増は大きくなります。将来的な対応も視野に入れておくことが重要です。
📝 このセクションのまとめ
- 経過措置により、最初の3年間は80%、次の3年間は50%の消費税控除が可能
- 経過措置適用中(80%控除)は、税負担増が約8万円に抑えられる
- 経過措置が終了すると、税負担増は38万円に跳ね上がる
インボイス対応をどう判断するか:コストと手間の天秤
インボイスの有無を確認するために、「このお店はインボイス番号がないから利用するのをやめよう」「インボイス対応しているパーキングを探し回る」という行動を取る方もいらっしゃいます。しかし、こういった手間や時間のコストも無視できません。
今回のシミュレーション例のように、経過措置期間中の税負担増が約8万円だとすれば、その8万円をどう評価するかは人によって異なります。
- 8万円は大きいと感じるなら → インボイス番号のある取引先を徹底的に選ぶ判断も合理的
- 8万円よりも手間・時間のほうが惜しいと感じるなら → 従来通りの取引を続けるほうが合理的
大切なのは、「インボイス番号がないと経費に落とせない」という誤った前提で行動しないことです。正しい知識を持ったうえで、税負担増のコストと手間・時間を天秤にかけて判断することが重要です。
📌 ポイント
インボイス番号の有無による税負担増の金額を正確に把握したうえで、インボイス対応先を探すコスト・時間と比較して判断しましょう。「落とせない」という誤解で不必要な手間をかけることは避けるべきです。
📝 このセクションのまとめ
- インボイス番号の有無を確認するための手間・時間にもコストがかかる
- 税負担増の金額と、インボイス対応先を探すコストを比較して判断することが重要
- 「経費に落とせない」という誤解を前提にした行動は避ける
まとめ:インボイス制度の正しい理解
今回の内容を整理すると、以下の通りです。
| よくある誤解 | 正しい理解 |
|---|---|
| インボイス番号がないと経費に落とせない | 経費には落とせる(事業関連性があれば) |
| インボイス番号がなくても税金は変わらない | 消費税の控除ができず、税負担が増える |
| インボイスがないと法人税も増える | 法人税は下がる(経費増加による利益圧縮)が、消費税がそれ以上に増える |
受け取ったレシートにインボイス番号の記載がない場合でも、事業関連性があれば全額経費に計上できます。ただし、消費税の仕入税額控除ができないため、法人税は下がる一方で消費税の負担がそれ以上に増え、トータルでは損をする構造になっています。
今回のシミュレーション例では、経過措置(80%控除)が適用される期間中は約8万円の税負担増、経過措置が終了すると約38万円の税負担増となります。この数字を正しく把握したうえで、インボイス対応についての判断を行うことが大切です。
📌 ポイント
「インボイス番号がないと経費に落とせない」は誤りです。正しくは「経費には落とせるが、消費税の控除ができないため税負担が増える」です。この違いを理解したうえで、周囲の方にも正しい知識を広めましょう。
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。 本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!
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