インボイス番号を取らなければ消費税を納めなくていいは嘘?税理士が解説する正しい判断と節税策
インボイス未登録でも消費税負担はゼロにならない。正しい知識と節税策を解説します。
「インボイス番号を取らなければ消費税を納めなくていい」は嘘
インボイス制度がスタートして以来、「インボイス番号を登録していなければ消費税を納めなくていいんですよね?」というご質問が非常に多く寄せられています。YouTubeのコメント欄でも同様の声が多数届いているため、この機会にしっかり解説します。
⚠️ 注意
「インボイス番号を登録しなければ消費税を納めなくていい」というのは嘘です。税務署に直接納めるわけではありませんが、取引先を通じて間接的に徴収されているという事実があります。
では実際にどうすればいいのか。結論から言うと、取引先の状況次第ではあるものの、インボイスを取得しつつ消費税を節税するのが最もお得ということになります。もちろん例外もありますので、その点も含めて詳しく解説していきます。
📝 このセクションのまとめ
- インボイス未登録でも消費税負担はゼロにならない
- 税務署への直接納付はないが、取引先を通じた間接負担が発生する
- 基本的にはインボイスを取得しつつ節税するのが最善策
消費税の計算の仕組みをシンプルに理解する
まず消費税の計算の仕方について確認しましょう。ここでは2年前の売上が1,000万円を超えている課税事業者を前提に、売上500万円・経費100万円のケースで考えます(軽減税率は無視して計算)。
| 項目 | 金額 | 消費税(10%) |
|---|---|---|
| 売上 | 500万円 | 仮受消費税 50万円 |
| 経費 | 100万円 | 仮払消費税 10万円 |
| 納付すべき消費税 | — | 40万円(50万 − 10万) |
この計算式が基本です。売上にかかる消費税から、経費にかかった消費税を差し引いた差額40万円を国に納めるのが原則です。
従来の免税事業者(2年前の売上1,000万円以下)の場合は、受け取った消費税50万円から支払った10万円を引いた差額40万円が手元に残っていました。この40万円は所得税・法人税の課税対象にはなりますが、消費税としての納付は不要だったため、大きなメリットがありました。
📌 ポイント
インボイス制度導入の目的は、まさにこの「免税事業者が消費税の差額を手元に残せる」状態をなくすことにあります。国としては、この差額(いわゆる「益税」)を解消したいというわけです。
インボイス制度スタート後は、多くの取引先が「インボイス番号がなければ消費税は払いません」と言ってくるようになります。そうなると、売上500万円に対する消費税の預かりがなくなります。しかし、経費にかかる消費税10万円の負担からは逃れられません。
結果として、手元の資金繰りは消費税に関してマイナス10万円になってしまいます。
| パターン | 内容 | 消費税の収支 |
|---|---|---|
| ①インボイス登録あり(原則) | 50万預かり・40万納付 | ±0 |
| ②インボイス未登録・得意先が消費税を払ってくれる | 50万預かり・納付なし | +40万円(ほぼレアケース) |
| ③インボイス未登録・得意先が消費税を払わない | 預かりなし・経費消費税10万負担 | −10万円 |
②のパターンは「得意先がインボイスなしでも消費税を払ってくれる」という場合ですが、これはほぼレアケースと考えてください。今は払ってくれていても、経営状況が変われば「やっぱりインボイス番号を取得してほしい」と言われる可能性が十分あります。
したがって現実的な比較は①と③になり、±0の①の方が明らかにお得です。
📝 このセクションのまとめ
- 課税事業者の消費税納付額=受け取り消費税 − 支払い消費税
- インボイス未登録で消費税をもらえなくなると、手元資金がマイナス10万円になる
- 得意先が「インボイスなしでも消費税を払う」はレアケースで、将来も保証されない
インボイスを取る・取らない、メリットとデメリットを比較する
インボイスを取得するかどうかは強制ではなく、あくまで自由です。ただし、事業上のメリット・デメリットを正確に把握した上で判断することが重要です。
【インボイスなしの場合】
- ✅ 消費税の申告が不要
- ✅ 税務署への直接納税が不要
- ✅ 実力や人間関係によっては、得意先が消費税を払ってくれる可能性もある(期待値)
- ❌ 取引先から消費税をもらえなくなる可能性が高い
- ❌ 経費の消費税負担が残り、手元資金がマイナスになるリスク
- ❌ 「売上1,000万円未満の零細事業者では?」と取引先からの信用力が低下する
- ❌ 大手企業など新規開拓が難しくなる
⚠️ 注意
建築業界や大手企業では、「インボイス番号の取得がなければ新規のお付き合いはしません」と表明している会社も非常に多いです。下請法・独占禁止法は既存の取引先との関係には適用されますが、新規取引の開始・拒否には基本的に関係ありません。
【インボイスありの場合】
- ✅ 消費税を受け取れる
- ✅ 大手企業との取引・新規開拓がしやすい(これがスタンダードになる)
- ✅ 消費税の節税ができる(計算方法の選択により納税額を大幅に減らせる)
- ❌ 経理処理が複雑になり、事務負担が増える
- ❌ 消費税の申告が必要(年1〜3回以上、まとめて納付するため資金繰りへの影響大)
- ❌ 税理士への依頼コストが増える可能性がある
インボイス登録によって増える具体的な事務負担としては、以下のものが挙げられます。
- 適格請求書(インボイス記載の請求書)発行のためのシステム導入
- 経理処理の工数増加
- 消費税申告書の作成
- 納付手続き
📝 このセクションのまとめ
- インボイスなしは事務負担こそ少ないが、信用力低下・資金繰り悪化のリスクがある
- インボイスありは事務負担が増えるが、消費税の節税・新規開拓のメリットが大きい
- メリット・デメリットをトータルで判断することが重要
業種別:インボイスが必要な業種・不要な業種
インボイス制度の影響は業種によって大きく異なります。BtoC(一般消費者向け)の業種とBtoB(事業者間取引)の業種とでは、対応の必要性がまったく違います。
| カテゴリ | 業種例 | インボイス取得の必要性 |
|---|---|---|
| ほぼ不要 | 飲食店、クリーニング店、床屋・美容室、YouTuber(広告収益)、アパート・マンション経営(住居用)、投資家・デイトレーダー | 低い(BtoCが中心) |
| ほぼ必須 | 家内労働者・内職、生命保険外交員、業務委託社員、ホステス、プロ野球選手、フードデリバリー(Uber Eatsなど)、一人親方・大工 | 高い(BtoBが中心) |
| 取得不要(制度上) | 家庭用太陽光(事業者でないため)、事業用太陽光(国が消費税を払うと表明) | 不要 |
飲食店については、レシートにインボイス番号を記載することになりますが、お客さんがビジネス利用の場合はインボイスの有無を確認することがあります。ただし、インボイスを取得していないからといって消費税を請求してはいけないという法律はありません。お店側が「うちはインボイスを取っていない、それが嫌なら来なくていい」と言う自由もありますし、お客さん側も行くかどうかを自由に選べます。これは自由競争の範囲内です。
床屋・美容室については、そもそも支払い者が経費に計上できる可能性が非常に低いため、インボイスにこだわる人が少ない業種です。ネイルサロンなども同様に考えてよいでしょう。
YouTuberのアドセンス収入(Googleからの広告収益)は国外取引として消費税の課税対象外になっているため、インボイスはそもそも意味がありません。アパート・マンション経営(住居用)は消費税が非課税なので、消費税という概念自体が関わりません。
📌 ポイント
インボイス制度の問題点の一つは、業種による不公平感が非常に強いことです。BtoBの業種はほぼ必須対応を迫られる一方、BtoCの業種は何もしなくて済む場合が多く、同じ「個人事業主」でも置かれた状況がまったく異なります。
📝 このセクションのまとめ
- BtoCが中心の業種(飲食・美容・投資など)はインボイス取得の必要性が低い
- BtoBが中心の業種(一人親方・業務委託など)はインボイス取得がほぼ必須
- 家庭用・事業用太陽光は取得不要(制度上の特例あり)
消費税の節税対策:3つの計算方法を徹底比較
インボイスを取得した場合、消費税の計算方法には3つのパターンがあります。どれを選ぶかによって納税額が大きく変わります。
| 計算方法 | 概要 | 主な適用条件 |
|---|---|---|
| 本則課税(原則課税) | 受け取り消費税 − 支払い消費税=納付額 | 赤字の場合は消費税が還付される可能性あり |
| 2割特例 | 受け取り消費税の2割だけ納付すればよい | 免税事業者からインボイス登録で課税転換した事業者限定・3年間限定 |
| 簡易課税 | 業種ごとに定められた「みなし仕入率」で計算 | 基準期間(2年前)の課税売上高が5,000万円以下・事前の届け出が必要 |
具体的に、ライターさんの事例(売上500万円・経費100万円)で3パターンを比較してみましょう。ライターは第5種事業に該当し、簡易課税のみなし仕入率は50%です。
| 計算方法 | 計算式 | 納付消費税額 |
|---|---|---|
| 本則課税 | 50万 − 10万 | 40万円 |
| 2割特例 | 50万 × 20% | 10万円 |
| 簡易課税(第5種) | 50万 × 50% | 25万円 |
📌 ポイント
このケースでは2割特例が最もお得で、本則課税の40万円と比べて30万円も節税できます。さらに、インボイス未登録で消費税を受け取れなかった場合(手元資金マイナス10万円)と比較すると、なんと40万円もお得になる計算です。
ただし、2割特例は現行法では3年間限定です。その後は簡易課税が残る予定ですので、負担は増えますが、それでも本則課税の40万円を全額払わずに済む可能性があります。インボイス制度に対する反対の声は今も強く、2割特例の恒久化なども期待されるところです。
⚠️ 注意
簡易課税を選択するには事前の届け出が必要です。また、基準期間(2年前)の課税売上高が5,000万円以下という条件があります。適用を検討する場合は必ず事前に確認・手続きを行ってください。
📝 このセクションのまとめ
- 消費税の計算方法は「本則課税」「2割特例」「簡易課税」の3パターン
- 免税事業者からインボイス登録した事業者は3年間、2割特例が使える
- ライターの例では2割特例で本則課税より30万円、未登録より40万円お得になる
- 簡易課税は事前届け出と売上5,000万円以下の条件あり
結局どうすればいいのか?判断のステップを解説
以上を踏まえて、インボイスを取得するかどうかの判断は以下のステップで考えることをおすすめします。
- 業種で判断する:BtoBなら取得した方がいい可能性が高い。BtoCの飲食店・美容室などは取らなくても問題ない場合が多い。
- メインの得意先の意向を確認する:「インボイスがなくても消費税を払ってもらえるか」を確認する。ただし、得意先がインボイス制度をよく理解せず適当に返答している可能性もあるので注意が必要。
- インボイスなしでも消費税を払ってもらえる場合:インボイス取得は不要かもしれないが、将来的なリスクも念頭に置いて油断しない。
- インボイスなしだと消費税を払わないと言われた場合:下請法・独占禁止法上の問題がないか確認する。あまりにもひどい対応であれば弁護士に相談することも選択肢の一つ。
- 取得を検討する場合:インボイスを取得した場合の労力・コストと取らない場合を比較し、税額のシミュレーションも行う。トータルで取った方がいいと判断できるなら取得する。
📌 ポイント
インボイス制度開始後の10月以降、「やっぱりインボイスを取る」と言い出す事業者が非常に増えています。消費税の節税方法(特に2割特例)を活用すれば、インボイス未登録の場合より大幅に有利になるケースが多いです。税額のシミュレーションを必ず行った上で判断しましょう。
📝 このセクションのまとめ
- まず業種(BtoB/BtoC)で判断し、次に得意先の意向を確認する
- 不当な対応には下請法・独占禁止法の確認、場合によっては弁護士相談も有効
- 税額シミュレーションを行い、労力・コストを含めてトータルで判断することが最重要
- インボイス取得は強制ではないが、事業上のメリット・デメリットを正確に把握した上で自由に選択する
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!
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