インボイス制度で混乱しやすい3つのポイントを税理士が解説

インボイス制度で混乱しやすい3つのポイントを税理士が解説
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インボイス制度は知識が増えるほど混乱しやすいポイントが出てきます。今回は特に間違いやすい3つの項目をピックアップして解説します。

インボイス制度スタートで押さえるべき基本:適格請求書の要件

2023年10月1日からインボイス制度(適格請求書等保存方式)がスタートしました。これに伴い、取引先に発行する領収書・請求書は「適格請求書(インボイス)」の要件を満たしたものにする必要があります。

適格請求書の要件は以下の6つです。すでに登録番号を記載した請求書・領収書を発行している方もいますが、9月中に請求書を出して支払いが10月以降になるケースでは、取引先から登録番号の記載を求められることもあります。しっかりと準備しておきましょう。

  1. 適格請求書発行事業者の氏名または名称
  2. 登録番号
  3. 取引年月日
  4. 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  5. 税率ごとに区分した合計対価の額および適用税率
  6. 税率ごとに区分した消費税額等

📌 ポイント

今まで発行していた請求書・領収書に登録番号を追加し、消費税を税率ごとに区分して記載することが最大の変化点です。この2点ができていない方は早急に対応しましょう。

📝 このセクションのまとめ

  • 適格請求書(インボイス)には6つの記載要件がある
  • 最大の変化は「登録番号の追加」と「消費税の税率別区分表記」
  • 2023年10月1日以降の取引から適用される

返品・値引き時の適格返還請求書とは

ビジネスをしていると、返品や値引き対応が発生することがあります。インボイス制度スタート後は、返品や値引きがあった場合に適格返還請求書を作成して取引先に交付しなければならないというルールに変わります。

また、振込手数料を差し引いて支払いを受けた場合や、自分が振り込む際に手数料を引いた場合も、この値引きに該当するため、本来であれば適格返還請求書の交付が必要となります。

📌 ポイント

振込手数料のたびに適格返還請求書を発行するのは現実的ではありません。そこで税込み1万円未満の少額な返還については、交付義務が免除されるというルールが設けられています。

項目内容
対象となる取引返品・値引き・割戻しなど、売上に係る対価の返還
免除される条件税込み1万円未満の返還
会社規模の制限なし(大企業・中小企業・個人事業主すべて対象)
期間の制限なし(期限なく使用可能)

📝 このセクションのまとめ

  • 返品・値引きがあった場合は適格返還請求書の交付が原則必要
  • 税込み1万円未満の少額返還は交付義務が免除される
  • この免除ルールは会社規模・期間を問わず使える

【混乱ポイント①】「1万円未満」が2種類ある!少額経過措置との違い

ここが最初の大きな混乱ポイントです。前のセクションで紹介した「税込み1万円未満の少額返還インボイスの交付義務免除」と、令和5年(2023年)に新たに発表された「少額経過措置」は、どちらも「1万円未満」という金額が登場しますが、まったく別のルールです。

少額経過措置とは、一定規模以下の事業者が行う仕入れ・経費の支払いで、対価が税込み1万円未満の場合、適格請求書(インボイス)の保存がなくても仕入税額控除が認められるという経過措置です。

比較項目少額返還インボイスの交付義務免除少額経過措置
対象となる取引売上に係る返品・値引き・割戻し仕入れ・経費の支払い
金額の条件税込み1万円未満税込み1万円未満
会社規模の制限なし(規模不問)基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の売上高が5,000万円以下
期間の制限なし(無期限)令和5年10月1日〜令和11年9月30日まで
効果返還インボイスの交付が不要インボイスなしでも仕入税額控除が可能

この動画を視聴している方の多くは売上が1億円以下の事業者だと思いますので、少額経過措置の対象に該当する可能性が高いです。ただし、令和11年9月30日で経過措置は終了します。期限後も同じ処理を続けていると経理ミスの原因となりますので注意が必要です。

⚠️ 注意

少額経過措置には適用期限(令和11年9月30日まで)があります。期限が終了した後も経過措置を適用して仕入税額控除を行うと、正しい確定申告ができなくなります。期限を必ず把握しておきましょう。

📝 このセクションのまとめ

  • 「1万円未満」のルールには2種類ある(交付義務免除と少額経過措置)
  • 交付義務免除は「売上の返還」に関するルールで、規模・期間の制限なし
  • 少額経過措置は「仕入れ・経費」に関するルールで、売上高1億円以下かつ令和11年9月30日まで

【混乱ポイント②】消費税の計算方法が3種類に増えた

これまで消費税の計算方法は「一般課税」と「簡易課税」の2種類しかありませんでした。しかしインボイス制度の開始に合わせて、新たに「2割特例」という計算方法が追加され、合計3種類になりました。

それぞれの計算方法と対象者を整理すると以下のとおりです。

計算方法対象者事前届出インボイス保存
2割特例売上高1,000万円以下の免税事業者がインボイス登録により課税事業者になった方不要不要
簡易課税基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者必要(事前に届出)不要
一般課税すべての課税事業者(上記に該当しない場合など)不要必要

2割特例と簡易課税を選択した場合は、仕入先や外注先・経費の支払先から受け取る領収書・請求書のインボイス保存が不要になります。つまり、受け取った書類がインボイスの要件を満たしているかどうかを細かくチェックする必要がなくなるため、経理作業が大幅に楽になります。

📌 ポイント

インボイス登録によって課税事業者になった方の多くは、2割特例または簡易課税を選択するケースが多いと予想されます。ただし、一般課税で計算した方が消費税の納税額が少なくなるケースもあるため、毎年どの計算方法が有利かを判断することが重要です。

⚠️ 注意

簡易課税を選択する場合は事前の届出が必要です。届出の提出期限を過ぎると翌年以降の適用になりますので、提出期限には十分注意してください。

📝 このセクションのまとめ

  • 消費税の計算方法が「一般課税」「簡易課税」「2割特例」の3種類になった
  • 2割特例は売上高1,000万円以下の免税事業者がインボイス登録した場合のみ使える
  • 2割特例・簡易課税を選択するとインボイスの保存が不要になり経理が楽になる
  • 簡易課税は事前届出が必要・売上高5,000万円以下が条件
  • 毎年どの計算方法が有利かを判断することが大切

【混乱ポイント③】「インボイスがないと経費にできない」は間違い

インボイス制度の勉強を進めていくと、「インボイスの保存がないと仕入税額控除ができない」「インボイスの要件をクリアした領収書・請求書でないといけない」という知識が身につきます。

ここで混乱しやすいのが、消費税のルールと所得税のルールがごっちゃになってしまうという現象です。「インボイスがないと経費に計上できないんじゃないか」という勘違いが生まれやすくなります。

📌 ポイント

インボイス制度はあくまで「消費税」のルール変更です。所得税(確定申告における経費計上)のルールは今まで通りです。インボイス番号がないからといって所得税の計算で経費に計上できないわけではありません。

税目インボイス(適格請求書)がない場合の影響
消費税原則として仕入税額控除ができない(経過措置や特例を除く)
所得税影響なし。今まで通りのルールで経費計上が可能

インボイスがないと「仕入税額控除ができない」という意味であって、「所得税の経費計上ができない」という意味ではありません。この2つを混同しないように気をつけましょう。

⚠️ 注意

消費税と所得税はそれぞれ別のルールで動いています。インボイス制度の知識が増えるほど「経費に計上できないのでは?」という誤解が生まれやすくなりますが、所得税の経費計上はインボイスの有無に関係ありません。混同しないよう注意してください。

📝 このセクションのまとめ

  • インボイス制度は「消費税」のルール変更であり、所得税には影響しない
  • インボイスがなくても所得税の経費計上は今まで通り可能
  • 「インボイスなし=仕入税額控除不可」であり「インボイスなし=経費計上不可」ではない

3つの混乱ポイント まとめ

本記事で解説したインボイス制度の混乱しやすいポイントを最後にまとめます。インボイス制度は知識を入れれば入れるほど混乱しやすい構造になっています。以下の3点をしっかり区別して覚えておくことが、正しい経理・正しい確定申告につながります。

混乱ポイント正しい理解
①「1万円未満」が2種類ある「少額返還インボイスの交付義務免除(売上の返還・規模・期間制限なし)」と「少額経過措置(仕入れ・経費・売上1億円以下・令和11年9月30日まで)」は別物
②消費税の計算方法が増えた一般課税・簡易課税に加え「2割特例」が新設。2割特例・簡易課税ならインボイス保存不要で経理が楽になる
③インボイスがないと経費にできない?インボイス制度は消費税のルール。所得税の経費計上は今まで通りで問題なし

インボイス制度がスタートすると、取引先に迷惑をかけたり信用を失ったりするリスクもあります。今から正しい知識を身につけ、スムーズに対応できるよう準備を進めておきましょう。

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士河南のYouTubeチャンネル! の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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