免税事業者で消費税を請求していなくてもインボイス制度の影響を受ける?税理士が解説

免税事業者で消費税を請求していなくてもインボイス制度の影響を受ける?税理士が解説
e_zeirishi

「消費税を請求していなかった免税事業者は関係ない」は誤解です。インボイス制度が始まると、消費税を請求していなかった免税事業者にも大きな影響が及ぶ可能性があります。

今回解説する内容の全体像

未だに「消費税を従来請求していなかったから、私は関係ないでしょ」という類の質問を受けることがあります。今回はその点について解説していきます。今回の内容を理解すれば、インボイス制度の本質を理解できたことになります。

今回取り上げるテーマは以下の4点です。

  1. 免税事業者は少なくとも経過措置の最初の3年間はインボイス登録しない方がよい理由
  2. 従来、免税事業者で税込みで請求をしていた方がどのような影響を受けるか
  3. 免税事業者で従来消費税を請求していなかった人はどのような影響を受けるか(今回のメインテーマ)
  4. まとめと免税事業者の対策

📝 このセクションのまとめ

  • 「消費税を請求していないから関係ない」は誤解
  • インボイス制度の本質を理解するための重要テーマ

免税事業者は最初の3年間インボイス登録しない方がよい理由

原則として、免税事業者の方は少なくとも経過措置の最初の3年間はインボイス登録しないことをおすすめします。その一番の理由は「経過措置」があるからです。

インボイス制度が始まってからの最初の3年間(2023年10月〜2026年9月)については、免税事業者からの仕入れに含まれる消費税相当分について、いきなり全額が控除できなくなるわけではありません。

📌 ポイント:経過措置の内容

免税事業者から11万円の仕入れを行った場合、含まれる消費税1万円のうち8,000円(8割)については仕入税額控除を受けることができます。よって、買い手が受ける影響は非常に限定的です。

期間仕入税額控除が認められる割合
2023年10月〜2026年9月(最初の3年間)8割
2026年10月〜2029年9月(次の3年間)5割
2029年10月以降0割(全額控除不可)

このような経過措置があることから、買い手である課税事業者側は「2割程度であれば、弱い立場にある免税事業者のために目をつぶろう」「うちの会社で負担しよう」という考え方をする人が多く現れそうです。現に業界的にはそのような動きになっているところが多くなっています。

課税事業者側の理解があるという状況において、免税事業者としてはインボイス制度最初の3年間は登録しない、つまり無視してしまうことも十分容認されると言えます。

さらに、あまり語られない点として、免税事業者がインボイス登録しないことがインボイス推進派への圧力になるということがあります。

現状、免税事業者のインボイス登録率は10%程度と言われています。これが何年も進まないのであれば、インボイス推進派(代表的には財務省)も見直さざるを得ない状況に追い込まれる可能性があります。それ以外にも、システム会社や「免税事業者がもらっていた消費税は益税だ」と強く主張する推進派の勢いを収めることができ、世論も変わってくる可能性があります。

そういった動きによってインボイスの経過措置が緩和されたり、廃止されないまでも条件が緩くなるということも考えられます。よって、そういった意味からも免税事業者の登録はおすすめしません。

⚠️ 注意:経過措置の節目では必ず再検討を

経過措置が終わる節目、すなわち2026年10月(最初の3年間終了)と2029年10月(次の3年間終了)では、自分への影響を改めて考え、インボイス登録をするかどうか検討しなければなりません。

📝 このセクションのまとめ

  • 最初の3年間は免税事業者からの仕入れについて8割の仕入税額控除が認められる経過措置がある
  • 経過措置期間中は登録しないことが十分容認される
  • 免税事業者の登録率が低いままであれば、制度の見直し・緩和につながる可能性もある
  • 経過措置の節目(2026年10月・2029年10月)では必ず再検討する

【前提知識】免税事業者が消費税を含めて請求していた場合の影響

今回のメインテーマの前提として、免税事業者がインボイス制度開始前に消費税を含めて請求していた場合の影響を確認しておきましょう。

例として、売り手が免税事業者、買い手が課税事業者で、免税事業者から課税事業者に22,000円の商品・サービスを販売したとします。請求書には「本体価格 20,000円、消費税 2,000円」もしくは「税込 22,000円」と記載されていました。

この場合、インボイス制度が始まる前は、免税事業者からの仕入れの消費税相当分(2,000円)についても、買い手側で仕入税額控除が認められていました。たとえ免税事業者側で消費税を納税していなかったとしても、控除が認められていたのです。

⚠️ インボイス制度開始後の変化

インボイス制度が始まると、この2,000円分については仕入税額控除が認められなくなります。経過措置により最初の3年間は1,600円(8割)、次の3年間は1,000円(5割)が控除できますが、ゆくゆくは2,000円全額が仕入税額控除の対象外となり、買い手側の消費税負担増となります。

📝 このセクションのまとめ

  • インボイス制度前は免税事業者からの仕入れでも消費税相当分の仕入税額控除が認められていた
  • インボイス制度開始後は経過措置を経て、最終的に全額が控除不可となる

【メインテーマ】消費税を請求していなかった免税事業者への影響

ここからが今回のメインテーマです。免税事業者でもともと消費税を請求していなかった場合、つまり請求書にも消費税分が書かれておらず、買い手と取り交わした契約書にも消費税相当分が記載されていないというケースです。

先ほどの例で言えば、売り手(免税事業者)が20,000円で商品・サービスを販売しており、請求書や契約書に消費税分は一切記載していないという状況です。

📌 重要な前提:消費税は含まれているとみなされる

そもそも免税事業者は消費税を請求できたのでしょうか。答えは「問題ありません、違法でもありません」。免税事業者側でも経費を払うときに消費税を負担しているため、請求する際に消費税を上乗せすることは認められていました。

そして、消費税を明記していない請求書であっても、その金額の中に消費税が含まれているとみなされます。つまり、20,000円という請求は「税込20,000円」と判断されるのです。

この場合、20,000円に含まれる消費税相当額は次のように計算されます。

計算項目金額
税込請求額20,000円
計算式(割り戻し計算)20,000円 ÷ 110% × 10%
消費税相当額1,818円
本体価格(税抜)18,182円

インボイス制度開始前は、この1,818円について買い手側で仕入税額控除を受けることができていました。

ところが、インボイス制度が始まるとどうなるでしょうか。「もともと消費税を請求していないんだから影響はないんじゃないか」という話ではないのです。

⚠️ 消費税を請求していなくても影響を受ける

この1,818円が仕入税額控除の対象とならなくなります。消費税を含めて請求していたケースと同じく、買い手側で1,818円分の消費税負担増となってしまいます。

つまり、インボイス制度開始前から「20,000円で消費税なし」という請求がされていたとしても、実態は「本体価格18,182円+消費税1,818円=税込20,000円」として計算されており、インボイス制度においても同様の考え方で処理されるのです。

その結果、取引相手(課税事業者)は1,818円の消費税を余分に負担しなければならなくなります。これにより、次のようなことが起きる可能性があります。

  • 取引価格の引き下げを要求される
  • 最悪の場合、取引の取りやめ(取引中止)を言い渡される

📝 このセクションのまとめ

  • 消費税を請求書に明記していなくても、取引金額には消費税が含まれているとみなされる
  • 20,000円の請求であれば、1,818円が消費税相当額として計算される
  • インボイス制度開始後はこの1,818円が仕入税額控除の対象外となり、買い手の負担増となる
  • その結果、取引価格の引き下げ要求や取引中止を求められる可能性がある

まとめと免税事業者が取るべき対策

以前から消費税を請求していなかった免税事業者であっても、インボイス制度の影響を受ける可能性があります。ただし、影響を受けないケースも存在します。

影響を受けない(または限定的な)ケースは以下の通りです。

  • 取引相手が一般消費者(個人)の場合
  • 自分が唯一無二の存在であり、取引相手が代替できない場合

その上で、具体的な対策として以下を検討してください。

  1. 取引先(課税事業者)に確認する:「しばらく免税事業者のままでいようと思うが問題ないか」と率直に聞いてみましょう。多くの課税事業者は「大丈夫ですよ」と言ってくれるはずです。
  2. 必要に応じて値引きに応じる:シビアな取引先の場合、買い手の負担増を理由に取引価格の値引きを求められる可能性があります。取引関係を維持したければ、値引き要求に応じることも選択肢の一つです。

📌 インボイス制度の本質

消費税を請求していたかどうかにかかわらず、免税事業者との取引には消費税相当額が含まれているとみなされます。インボイス制度はその消費税相当額について、買い手側の仕入税額控除を認めるかどうかを左右する制度です。「消費税を請求していなかったから関係ない」は誤解であり、免税事業者は取引先との関係を踏まえて慎重に対応を検討する必要があります。

📝 このセクションのまとめ

  • 消費税を請求していなかった免税事業者も、取引相手が課税事業者であれば影響を受ける可能性がある
  • 取引相手が一般消費者や代替不可能な存在であれば影響は受けない
  • まずは取引先に「免税事業者のままで問題ないか」と確認するのが第一歩
  • 取引維持のために値引き交渉に応じることも選択肢として考えておく

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士ナガイ の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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