インボイス未登録で得意先から値下げ要求!免税事業者を守る法律を税理士が解説
インボイス未登録を理由とした値下げ要求は法律違反になる可能性があります。免税事業者が自らを守るための法的知識と具体的な対処法を解説します。
インボイス制度とは?消費税ルールの大きな変更点
インボイス制度を一言で言うと、消費税に関するルール変更です。皆さんが得意先に発行する請求書にインボイス番号(登録番号)を取得して記載しなければ、消費税の計算上で無効になってしまうというものです。
インボイス番号の形式は以下のとおりです。
| 事業者区分 | 番号の形式 |
|---|---|
| 法人 | 法人番号(13桁)の先頭に「T」を付けた番号 |
| 個人事業主 | マイナンバーとは別に新たに付与される番号 |
⚠️ 注意
インボイス番号の付与が現在かなり遅れており、未だに自分の番号がわからないという方も多くいます。早めに申請手続きを確認しておきましょう。
📝 このセクションのまとめ
- インボイス制度は消費税に関する大きなルール変更
- 請求書にインボイス番号の記載が必要になる
- 法人は法人番号にT付き、個人事業主は新たな番号が付与される
免税事業者がインボイス番号を持たないとどうなる?
免税事業者とは、現在消費税を受け取っているかもしれないけれども、納めなくてよいと認められている事業者のことです。インボイス番号を持たない場合、得意先から今まで受け取っていた消費税をもらえなくなってしまう可能性があります。
具体的な例で見てみましょう。
| ケース | 得意先からの入金額 | 内訳 |
|---|---|---|
| インボイス番号あり(従来通り) | 1万1,000円 | 商品代1万円+消費税1,000円 |
| インボイス番号なし(2023年10月以降) | 1万円のみ | 消費税1,000円分がもらえなくなる可能性 |
一方で、インボイス番号を取得すると消費税課税事業者に自動的になってしまうため、受け取った消費税1,000円を納税しなければなりません。今までのように受け取りっぱなしにすることはできなくなります。
📝 このセクションのまとめ
- インボイス番号なしだと消費税分(10%)をもらえなくなる可能性がある
- インボイス番号を取得すると課税事業者になり、消費税の納税義務が生じる
- どちらを選んでも一定の負担が発生する
激変緩和措置(2割特例)で負担を軽減できる
急激なルール変更で免税事業者の手取りが大きく減ってしまうことを防ぐため、激変緩和措置(2割特例)が設けられました。
📌 ポイント:激変緩和措置(2割特例)の内容
インボイス登録をして課税事業者になった場合、受け取った消費税のうち20%(2割)だけを納付すればよいという特例です。
例:消費税として1,000円受け取った場合 → 納付額は200円のみ
ただし、この特例は3年間限定です。その後は原則通り全額を納付しなければなりません。
また、インボイス登録をして課税事業者になった場合でも、簡易課税制度を活用することで消費税の節税ができる場合があります。激変緩和措置や簡易課税を組み合わせて、できるだけ負担を抑えながら対応していくことが重要です。
📝 このセクションのまとめ
- 激変緩和措置(2割特例)により、受け取った消費税の20%だけ納付すればよい
- ただし3年間限定の措置であることに注意
- 簡易課税制度の活用も節税の選択肢の一つ
課税事業者になるとどんな手続きが増える?
インボイス登録をして課税事業者になると、今まで不要だったさまざまな手続きが発生します。「できれば避けたい」というのが多くの免税事業者の本音ではないでしょうか。
- インボイス番号の取得手続き
- 請求書発行時にインボイス番号を記載するシステムの導入
- 今までしてこなかった消費税の経理処理(課税・非課税の区分など)
- 消費税の申告書の作成(簡易課税・2割特例など制度の選択が必要)
- 消費税の納付
これらの事務負担が一気に増えるため、特に規模の小さい事業者にとっては大きな負担となります。
📝 このセクションのまとめ
- 課税事業者になると経理・申告・納付など多くの事務が増える
- 小規模事業者ほど負担が大きくなりがち
- 簡易課税や2割特例を使って負担を軽減する方法を検討したい
値下げ要求・取引打ち切り脅しは独占禁止法・下請法違反になる可能性がある
ここからが非常に重要なポイントです。免税事業者のままでいると、得意先から「インボイス番号を取らないなら消費税分は払わない」「課税事業者にならないなら取引を打ち切る」といったプレッシャーをかけられるケースが出てきています。
しかし、こういった行為は独占禁止法や下請法に違反する可能性があります。公正取引委員会が示している具体的な違反事例を見てみましょう。
| 違反行為の例 | 該当する法律 |
|---|---|
| 最初に提示した価格(例:1万1,000円)から、免税事業者であることを理由に後から一方的に値下げを要求する | 下請法・独占禁止法 |
| 「課税事業者にならないなら取引を打ち切る」と通知する | 独占禁止法・下請法 |
| インボイス番号の取得を強制する | 独占禁止法・下請法 |
⚠️ 注意
発注元が独占禁止法や下請法に違反した場合、公正取引委員会から勧告・指導が行われます。それを無視すると罰金や課徴金が科される可能性があります。
これらの法律が設けられている背景には、大手企業とフリーランス・中小事業者の間にある圧倒的な交渉力・情報力・力関係の格差があります。力の強い側が一方的に弱い側をねじ伏せる状況は市場としてよろしくないという考え方に基づいています。
例えば、大手デパートが納入業者に「うちからタオルを仕入れてあげるから、うちの盆踊り・花火大会のチケットを買ってね」といった形で力関係を利用して押し付けるような行為も規制されています。インボイスを巡る強制も、同じ構図として問題視されています。
また最近話題になった事例として、芸能事務所のタレントに対して「移籍するなら干す」と脅すような行為も、独占禁止法違反になる可能性があるとして問題になっています。これと同じ論理が、インボイスを巡る取引先への圧力にも当てはまります。
📌 ポイント:今後の取引価格は双方合意が必要
今後の取引価格は、あくまでも双方が合意した価格でなければなりません。発注元が一方的に「免税事業者だから消費税分は払わない」と決めることは認められません。
📝 このセクションのまとめ
- 免税事業者への一方的な値下げ要求・取引打ち切り脅しは独占禁止法・下請法違反の可能性がある
- 違反した発注元には勧告・罰金・課徴金が科される場合がある
- 取引価格は双方合意が原則
実際に値下げ・取引打ち切りを要求されたらどうすればよいか
「力関係でねじ伏せられて言うことを聞かざるを得ない」と感じている免税事業者の方も多いと思いますが、具体的な対処法があります。
- 交渉の経緯を記録・録音しておく
電話や対面での交渉内容はできるだけ録音しておきましょう。「免税事業者だから消費税分は払わない」という発言があれば、独占禁止法違反の可能性が高まります。 - 弁護士に相談する
実際に届いた通知書や交渉記録を弁護士に見てもらい、「この書き方はまずいのではないか」という意見をもらいます。その弁護士の意見を持って相手方と話し合い、「これって独占禁止法や下請法の問題はないか確認してもらえませんか」と伝えることで、相手方の顧問弁護士が是正してくれる可能性があります。 - 公正取引委員会の相談窓口に問い合わせる
弁護士の知り合いがいない場合でも、公正取引委員会の窓口(電話・メール)に相談することができます。下請法に関しては「下請かけこみ寺」、独占禁止法に関しては「取引かけこみ寺」という相談窓口があります。
📌 ポイント:上手な伝え方のコツ
相手に対して喧嘩腰にならず、「YouTubeで独占禁止法や下請法の話を見たんですが、問題ないか確認してもらえませんか。私が間違っていたら申し訳ないのですが」という形で伝えるのが効果的です。上から押さえつけようとするよりも、「確認してほしい」というスタンスの方が相手にとっても対応しやすく、実際に是正につながりやすいです。
⚠️ 注意
いきなり訴訟を起こすのではなく、まず公正取引委員会への相談や弁護士への相談でワンクッション置くことが重要です。段階的なアプローチで解決できるケースも多くあります。
📝 このセクションのまとめ
- 交渉の経緯は必ず記録・録音しておく
- 弁護士に通知書や交渉記録を見てもらい、法的な意見をもらう
- 弁護士の知り合いがいなければ公正取引委員会の相談窓口(下請かけこみ寺・取引かけこみ寺)を活用する
- いきなり訴訟ではなく、段階的なアプローチが有効
免税事業者はこれからどうすればよいか:インボイス登録する・しないの選択肢
インボイス制度への対応として、免税事業者には大きく2つの選択肢があります。それぞれのポイントを整理します。
| 選択肢 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| インボイス番号を取得する(課税事業者になる) | 得意先への消費税請求が継続できる。激変緩和措置(2割特例・3年間)や簡易課税制度で節税しながら対応できる。 | 消費税の申告・納付・経理処理などの事務負担が増える。3年後は原則通りの納税が必要。 |
| インボイス番号を取得しない(免税のまま) | 消費税の申告・納付・経理処理が不要。 | 得意先から消費税分の値下げを求められる可能性がある。ただし一方的な値下げ要求・取引打ち切り脅しは法的にアウトの可能性がある。 |
インボイス番号を取得しない場合でも、今回解説したように法的な保護を受けられる可能性があります。一方的に損をするしかないわけではありません。
インボイス番号を取得する場合は、激変緩和措置(2割特例)や簡易課税制度を活用して消費税の負担をできるだけ抑えながら進めていくことを検討してください。
📌 ポイント:課税事業者側にも影響がある
なお、消費税の課税事業者にとっても、インボイス番号を持たない仕入先・取引先への支払いがあると自社の消費税負担が増えるという問題があります。この点については別途解説予定です。
📝 このセクションのまとめ
- インボイス登録する場合は激変緩和措置(2割特例)や簡易課税制度で負担を抑える
- インボイス登録しない場合でも、一方的な値下げ要求には法的に対抗できる可能性がある
- どちらの選択をするにせよ、法的な知識を持って対応することが重要
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。 本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!
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