事業主貸・事業主借の残高が増えすぎると危険!融資審査・税務調査への影響を税理士が解説

事業主貸・事業主借の残高が増えすぎると危険!融資審査・税務調査への影響を税理士が解説
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事業主貸・事業主借の残高が膨らむと融資審査や税務調査で致命的な問題が生じます。

事業主貸・事業主借はどこに出てくるのか

確定申告書類の中で「事業主貸」「事業主借」という勘定科目が登場するのは、損益計算書(1ページ目)ではありません。青色申告決算書の4ページ目、貸借対照表の中に出てきます。

貸借対照表の左側(資産の部)に事業主貸、右側(負債の部)に事業主借がそれぞれ表示されます。両者の意味はそれぞれ以下のとおりです。

勘定科目意味法人での対応科目
事業主貸事業資金をプライベートのために使った役員貸付金
事業主借事業経費をプライベートの資金で立て替えた役員借入金

📌 ポイント

帳簿に計上している預金口座は「事業に使うための口座」です。同じ個人名義でも、プライベートの口座とは別物として扱います。事業主貸・事業主借は、その境界線を調整するための仮勘定です。

📝 このセクションのまとめ

  • 事業主貸・事業主借は青色申告決算書の貸借対照表に登場する
  • 損益計算書(1ページ目)には出てこない
  • 法人の「役員貸付金」「役員借入金」に相当するイメージ

事業主貸とは何か:具体例と仕訳

事業主貸は、事業資金をプライベートのために使ったときに計上します。個人事業主は法人のような役員報酬という概念がないため、生活費を事業口座から引き出す際にこの勘定科目を使います。

具体的にどんな場面で事業主貸が発生するのか、代表的な例を挙げます。

  • 自分の生活費(給与相当)を事業口座から引き出す
  • 事業用口座から自分の生命保険料を支払う
  • 事業用口座から小規模企業共済の掛金を支払う
  • 家賃など家事関連費の自己否認分(経費から外す部分)を処理する

仕訳で見ると次のようなイメージになります。

場面借方貸方
生活費30万円を事業口座から引き出す事業主貸 300,000普通預金 300,000
生命保険料を事業口座から支払う事業主貸 ××,×××普通預金 ××,×××
家賃の自己否認分を経費から外す事業主貸 ××,×××地代家賃 ××,×××

📌 ポイント

事業主貸は「経費には落とせないが、残高を合わせるための仮勘定」です。仮払金のようなイメージで捉えると理解しやすいです。

📝 このセクションのまとめ

  • 事業主貸は生活費の引き出し・保険料・共済掛金・家事否認分などで発生する
  • 経費ではなく、残高調整のための仮勘定として機能する
  • 真面目に事業をしていても自然と発生するものなので、存在自体は問題ない

事業主借とは何か:具体例と仕訳

事業主借は事業主貸の逆で、事業の経費をプライベートの資金で立て替えたときに計上します。

具体的には以下のような場面で発生します。

  • プライベート名義のクレジットカードで事業の経費を決済した
  • 事業用口座に預金利息が入金された
  • 車を売却して売却収入が発生した
場面借方貸方
プライベートカードで消耗品を購入消耗品費 ××,×××事業主借 ××,×××
預金利息を受け取った普通預金 ×××事業主借 ×××
車を売却した普通預金 ××,×××事業主借 ××,×××

預金利息は利子所得として別区分になり、源泉分離課税で既に源泉徴収されているため確定申告は不要です。車の売却は譲渡所得として別途計算が必要になります。どちらも事業の売上・雑収入に計上するのは誤りなので、事業主借を使って処理します。

📌 ポイント

事業主借は「事業としての自分が、プライベートとしての自分からお金を借りている」イメージです。プライベートカード決済以外ではそれほど頻繁には発生しません。

📝 このセクションのまとめ

  • 事業主借はプライベート資金で経費を立て替えたときに計上する
  • 預金利息(利子所得)や車の売却収入(譲渡所得)も売上ではなく事業主借で処理する
  • 事業主貸に比べると発生頻度は低い

元入れ金との関係:翌年に自動相殺される仕組み

貸借対照表の純資産の部には、元入れ金という項目があります。これは個人事業主・フリーランスにとっての「資本金のようなもの」で、事業をスタートするときに自ら入れたお金のことです。

決算時点の貸借対照表には次の3つが表示されます。

  • 事業主借(例:84,600円)
  • 元入れ金(例:4,624,540円)
  • 青色申告特別控除後の所得金額(例:421,720円)

これらは翌年になると会計ソフトが自動的に相殺・一本化し、新しい元入れ金を計算します。計算式は以下のとおりです。

項目金額加算・減算
事業主借84,600円+加算
元入れ金4,624,540円+加算
当年の所得金額421,720円+加算
事業主貸△2,986円(例)-減算
翌年の元入れ金6,344,860円

📌 ポイント

この相殺作業は会計ソフトが自動で行うため、気づかない人も多いです。事業主貸・事業主借は翌年に元入れ金へ吸収されるため、通常は残高をそれほど気にしなくてよい仮勘定です。

📝 このセクションのまとめ

  • 元入れ金は個人事業主の「資本金のようなもの」
  • 翌年に事業主貸・事業主借・当年所得が元入れ金に自動集約される
  • 会計ソフトが自動処理するため手動作業は不要

事業主貸の残高が増えすぎると融資審査で詰む理由

通常は翌年に相殺されて消える事業主貸ですが、元入れ金を超えるほど膨らんでしまうと深刻な問題が起きます。

例えば、元入れ金が1,000万円の状態で事業主貸が2,000万円に達した場合、計算上の元入れ金は−1,000万円以上のマイナスになります。これは貸借対照表上で「純資産がマイナス」、つまり債務超過の状態です。

⚠️ 注意

金融機関は融資審査において、単年度の赤字よりも「資産超過か債務超過か」を非常に重視します。債務超過の状態では融資審査の評価が大幅にダウンし、融資を受けられなくなるリスクがあります。

事業主貸が膨らむ主な原因としては次のようなケースが考えられます。

  • 事業口座からプライベートへの引き出しが多すぎる(生活費の取りすぎ)
  • 事業口座から保険料・共済掛金を大量に支払い続けている
  • 事業の利益が少ないのに引き出し額が多い

📝 このセクションのまとめ

  • 事業主貸が元入れ金を超えると、貸借対照表上で債務超過になる
  • 金融機関は債務超過を非常に嫌い、融資審査で大きくマイナス評価される
  • 多少の事業主貸残高はやむを得ないが、元入れ金がマイナスになる規模は要注意

事業主借の残高が増えすぎると脱税を疑われるリスク

事業主借が大きく膨らんでいる場合も、別の問題が生じます。事業主借が増えているということは、帳簿上では収入に計上されていないのに、大きな入金がある状態を意味します。

税務当局の目線では、「本来は売上や雑収入に上げるべき金額を、事業主借という科目を使ってごまかしているのではないか」と疑われる可能性があります。

⚠️ 注意

事業主借の残高が不自然に大きい場合、税務調査で売上除外や所得隠しを疑われるリスクがあります。事業主貸の膨張ほど深刻ではありませんが、正確な処理を心がけることが重要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 事業主借が膨らむと、売上除外・所得隠しを疑われる可能性がある
  • 実害としては事業主貸の膨張(融資審査への影響)の方が事例として多い
  • いずれにせよ、残高が不自然に大きくならないよう管理することが大切

残高が膨らまないための対策2つ

事業主貸・事業主借の残高が過度に膨らまないようにするための対策は、主に2つあります。

対策1:事業用口座とプライベート口座を完全に分ける

最も根本的な解決策は、事業用の口座からは事業上の必要経費だけを支払うことです。生命保険料・長期共済掛金などはプライベート口座から支払い、事業口座には一切通さないようにします。

  • 事業口座:必要経費・事業関連の支払いのみ
  • プライベート口座:生命保険料・小規模企業共済・生活費など

こうすることで、事業主貸が膨らむのを極力抑えることができます。ただし、自分の生活費(給与相当の引き出し)だけはどうしても事業主貸が発生してしまう点は避けられません。

対策2:事業主貸と事業主借を相殺する

どうしても事業口座でプライベートの支払いをしてしまう場合は、後から事業主借で相殺する方法があります。

具体例で見てみましょう。

取引処理結果
生活費30万円を事業口座から引き出す事業主貸 300,000円で処理事業主貸が増える
小規模企業共済3万円を事業口座から支払う事業主貸 30,000円で処理事業主貸がさらに増える
引き出した生活費30万円のうち3万円を共済分として戻す事業主借 30,000円で相殺処理小規模企業共済分はプラスマイナスゼロ

このように、プライベート口座から事業口座へ資金を戻す形にすることで、事業主貸の残高を実質的に圧縮できます。

📌 ポイント

個人事業主・フリーランスであっても、事業とプライベートの財布をしっかり分けることが最重要です。口座を分けるだけで事業主貸の膨張リスクを大幅に下げることができます。

📝 このセクションのまとめ

  • 対策1:事業用口座とプライベート口座を完全に分け、保険料・共済掛金はプライベート口座から支払う
  • 対策2:やむを得ず事業口座でプライベート支払いをした場合は、後から事業主借で相殺する
  • 生活費の引き出し(事業主貸)は避けられないが、それ以外の事業主貸は抑制できる

法人化するときに元入れ金マイナスが引き継がれる危険性

事業主貸の残高が膨らんで元入れ金がマイナスになっている状態で法人化(法人なり)をすると、さらに深刻な問題が発生します。

個人事業から法人に切り替える際は、基本的に個人事業の財産・負債を全て法人に引き継ぎます。元入れ金がマイナスの状態で法人化すると、スタート時点から債務超過の会社として出発することになります。

⚠️ 注意

次のような状況で法人化すると、スタート時点から債務超過になるリスクがあります。

  • 個人事業時代に大きな赤字が続いていた
  • 生活費の引き出し(事業主貸)が利益を大幅に上回っていた
  • 実質的に債務超過の状態のまま事業を続けていた

「もっと早く気をつけておくべきだった」と後悔しないよう、個人事業主の段階から元入れ金の残高を意識することが重要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 法人化の際は個人事業の財産・負債が法人に引き継がれる
  • 元入れ金がマイナスの状態で法人化すると、設立初日から債務超過になる
  • 将来の法人化を見据えるなら、個人事業主の段階から事業主貸の管理が必要

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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