確定申告で国民健康保険料が爆増?税理士が解説する社会保険の落とし穴
確定申告をすると国民健康保険料が上がります。儲かって所得が増えれば当然と思われるかもしれませんが、問題はそれだけではありません。株式の譲渡・自宅の売却・退職金・個人年金など、さまざまなケースで申告が保険料に思わぬ影響を与えます。後で驚いたり後悔したりしないよう、確定申告と国民健康保険料の関係をしっかり押さえておきましょう。
「所得」は1種類じゃない!国民健康保険料の基準になる所得とは
所得と言っても、実は1つではありません。税金や保険料の計算に使われる「所得」には、大きく3種類あります。
| 所得の種類 | 主な用途 |
|---|---|
| 合計所得金額 | 配偶者控除・扶養控除の所得基準、介護保険料・住民税非課税世帯の判定基準 |
| 総所得金額等 | 国民健康保険料・後期高齢者医療保険料の算定基準 |
| 課税所得金額 | 所得税・住民税の税額計算の基準 |
合計所得金額から、前年から繰り越されてきた損失を差し引いたものが総所得金額等です。今回のテーマである国民健康保険料は、この「総所得金額等」が基準になっています。75歳以上の後期高齢者医療保険料も同様です。
⚠️ 注意
合計所得金額・総所得金額等はいずれも所得控除をする前の金額です。医療費控除やふるさと納税をいくら活用しても、国民健康保険料は安くなりません。
📝 このセクションのまとめ
- 国民健康保険料の基準は「総所得金額等」
- 所得控除(医療費控除・ふるさと納税など)は国民健康保険料に影響しない
- 介護保険料・住民税非課税世帯の判定は「合計所得金額」が基準
国民健康保険料の計算方法(東京都の例)
国民健康保険料の計算方法は地域によって異なります。ここでは東京都を例に確認しますが、お住まいの自治体のホームページで必ず確認してください。
保険料には所得割と均等割がありますが、総所得金額等に連動するのは「所得割」です。計算式は以下のとおりです。
📌 所得割保険料の計算式
(前年の総所得金額等 - 住民税の基礎控除額43万円)× 保険料率
この「総所得金額等 - 43万円」の部分を「算定基礎額」と呼びます。
保険料率は以下のとおりです(東京都の例)。
| 区分 | 保険料率 | 対象年齢 |
|---|---|---|
| 医療分 | - | 全加入者 |
| 支援金分 | - | 全加入者 |
| 介護分 | - | 40歳〜64歳 |
| 合計 | 12.65% | 40歳〜64歳(介護分含む) |
なお、令和8年度はさらに保険料率がアップされる見込みです。子ども・子育て支援金も加わり、介護分保険料の対象は40歳から64歳までとなっています。65歳になると介護保険に移行し、75歳になると国民健康保険から脱退して後期高齢者医療保険に加入することになります。
📝 このセクションのまとめ
- 所得割は「総所得金額等 - 43万円」に保険料率を掛けて計算
- 合計保険料率は約12.65%(東京都・40〜64歳の場合)
- 令和8年度以降はさらに保険料率が上がる見込み
【ポイント①】退職金は国民健康保険料の対象外
まず1つ目のポイントは退職金です。退職金をもらっても、国民健康保険料はかかりません。退職金は総所得金額等には含まれないのです。
その理由は、退職金の課税方式にあります。会社が退職金を支払う際、所得税と住民税を天引きして税務署と市区町村役場に納税します。他の所得とは合算せず、単独で税金を計算して源泉徴収する源泉分離課税という方式です。この時点で課税が完了しているため、確定申告は不要です。
📌 退職金の住民税・国民健康保険料への影響
- 退職金から住民税がすでに天引きされているため、翌年の住民税計算には含まれない
- 住民税の合計所得金額にも総所得金額等にも含まれない
- 介護保険料・国民健康保険料もかからない
ただし、所得税の計算においては退職所得は合計所得金額・総所得金額に含まれます。住民税・国民健康保険料の計算とは取り扱いが異なる点に注意が必要です。
📝 このセクションのまとめ
- 退職金は源泉分離課税のため、翌年の住民税・国民健康保険料には影響しない
- 所得税の計算では退職所得は合計所得金額に含まれる(住民税とは異なる)
【ポイント②】特定口座の確定申告は保険料増加の落とし穴
2つ目のポイントは特定口座(上場株式等)です。退職金と似た仕組みで、特定口座で源泉徴収されてそれで終わりにすれば、介護保険料・国民健康保険料はかかりません。
しかし、損益通算・損失の繰越控除・配当控除を行うために特定口座を確定申告すると、合計所得金額や総所得金額等に含まれてしまい、介護保険料・国民健康保険料が増加します。源泉徴収された所得税や住民税が還付されても、それ以上の保険料がかかってしまい、「やらなきゃよかった」と後から気づいても手遅れです。
具体的な数字で見てみましょう。
【損益通算のケース】
特定口座を2つ持っていて、1つの口座で100万円の利益、もう1つの口座で20万円の損失が出ていた場合を考えます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 損益通算後の純利益 | 80万円 |
| 還付される税金(20万円 × 20.315%) | 約4万円 |
| 国民健康保険料の増加額(80万円 × 12.65%) | 約10万円 |
| 差し引き損益 | 約▲6万円の大損 |
⚠️ 注意
4万円の還付を受けても、国民健康保険料が約10万円アップしてしまいます。損益通算後に残った利益が大きいほど、保険料の増加幅が大きくなります。確定申告前に必ずトータルでの損得を計算してください。
【繰越控除のケース】
前年から20万円の譲渡損失を繰り越してきた人が、今年100万円の利益を得た場合を考えます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 確定申告で加算される合計所得金額 | 100万円(繰越控除前の全額) |
| 繰越控除後の課税対象利益 | 80万円 |
| 還付される税金(20万円 × 20.315%) | 約4万円 |
| 国民健康保険料の増加額(80万円 × 12.65%) | 約10万円 |
繰越控除は損益通算より合計所得金額の押し上げがきつく、100万円の利益がそのまま合計所得金額に加算されます。繰越控除によって課税所得は減っても、国民健康保険料の算定基礎額は下がらない点に注意が必要です。
【配当控除のケース】
配当控除は税額を計算した後に控除するため、確定申告した配当所得は合計所得金額・総所得金額等にストレートに加算されます。配当控除の恩恵を受けても、国民健康保険料はその分増加してしまいます。
⚠️ 特に高齢者の方へ
合計所得金額がアップすると介護費用も増加します。さらに住民税非課税世帯から外れてしまうと、医療費・介護費用の自己負担が増えることにもなりかねません。特定口座の確定申告は慎重にメリット・デメリットを見極めてください。
📝 このセクションのまとめ
- 特定口座を源泉徴収ありで完結させれば国民健康保険料への影響はない
- 損益通算・繰越控除・配当控除のために確定申告すると保険料が増加する
- 還付税額より保険料増加額が上回るケースがある
- 繰越控除は損益通算より合計所得金額の押し上げ効果が大きい
- 高齢者は住民税非課税世帯から外れるリスクにも注意が必要
【ポイント③】不動産(自宅)の譲渡所得と3,000万円特別控除の注意点
3つ目のポイントは不動産の譲渡所得です。自宅を売却した場合、売却益から3,000万円の特別控除を差し引くことができます。これにより課税所得がゼロになるケースも多くあります。
ところが、特別控除を差し引く順番が問題です。3,000万円の特別控除は、総所得金額等を計算した後に行われます。つまり、課税所得は出なくても、合計所得金額や総所得金額等には特別控除前の売却益が加算されてしまうのです。
📌 ただし、手当てがされています
土地・建物等の譲渡所得について特別控除がある場合は、控除の金額を総所得金額等に合算するという規定があります。つまり、3,000万円特別控除の適用を受ける場合は、国民健康保険料が爆増しないよう手当てされています。介護保険料についても同様です。
ただし、住民税非課税世帯の判定(合計所得金額)については注意が必要です。自宅を売却して老人ホームや介護施設に入ろうとされている方は、残念ながら1年間だけは住民税非課税世帯から外れてしまう可能性があります。保険料の爆増は避けられても、医療・介護費用の自己負担増は一時的に発生するかもしれません。
📝 このセクションのまとめ
- 自宅売却時の3,000万円特別控除は総所得金額等の計算後に行われる
- 国民健康保険料・介護保険料は特別控除分を考慮した手当てがある
- 住民税非課税世帯の判定には影響が出る可能性があり、1年間は注意が必要
【ポイント④】個人年金は一括受取と分割受取でどう違う?
最後に、個人年金保険を例に一括受取と分割受取の違いを見ていきましょう。
| 受取方法 | 所得区分 | 税金の計算 | 国民健康保険料への影響 |
|---|---|---|---|
| 一括受取 | 一時所得 | (受取額 - 払込保険料合計 - 50万円)× 1/2 に課税。税金は非常に安い | 一度に所得が加算されるため1年だけ大幅アップ |
| 分割受取(年金) | 雑所得 | 毎年の受取額 - 対応する払込保険料 に課税。利益がストレートに課税される | 毎年少しずつアップし続ける |
一括受取は計算式を見るだけで「税金が安い」とわかりますが、一度に所得に乗ってくるため国民健康保険料がドカンと上がります。ただし、1年間だけの辛抱です。
一方、分割受取にすると受け取りを先延ばしにする分、利子(利息)が乗ってきます。この利子が魅力的ではありますが、毎年雑所得として課税され、国民健康保険料も毎年アップし続けます。
📌 一括受取 × NISA活用という選択肢
一括で受け取った後、非課税のNISA口座で運用すれば、その後の運用益には税金も国民健康保険料もかかりません。考え方次第では、一括受取+NISA活用という戦略も有効な選択肢の一つです。
📝 このセクションのまとめ
- 個人年金の一括受取は一時所得となり税金は安いが、1年だけ国民健康保険料が大幅アップ
- 分割受取は雑所得となり毎年課税され、国民健康保険料も毎年増加する
- 一括受取後にNISAで運用する方法も検討の価値がある
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士KOBAYASHIちゃんねる の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 税理士KOBAYASHIちゃんねるを応援しています!
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